始まりの出会いから結構かかっていますがそろそろプロローグ部分にあたる今のお話も佳境に入ります!
それでは本編どうぞ!
翠屋から少しだけ離れた住宅街に高町家はあった。
立地も駅に近く、庭も池があるぐらい広く、道場まであるちょっとしたお屋敷のような一軒家だ。
そこの二階の自室でなのはは一匹のフェレットと共にベッドに腰かけ、宙に浮かべたモニターの向こうのクロノたちにオーズとの接触について報告をしていた。
「仮面ライダー…?」
「オーズ?」
「うん。話してみて乱暴そうな人じゃなかったけど、これに巻き込む訳にはいかないって言ってメダルのこととかは教えてくれなかったの。」
聞いたことも無い名前に揃って首を傾げるエイミィとクロノになのははオーズとの会話やレイジングハートが記録していた戦闘データを見せて説明した。
「うわ!?分身した!これも魔法とは違う力なの?」
逃げられた理由の分身したオーズの姿を見てエイミィは思わず身を引いた。
ここまで増えると正直引く気もする。
見た目も全身虫なのも余計にそうさせるのだろう。
「魔力も感知出来なかったですし、何より魔法技術その物を向こうも把握していない様子でしたので恐らくは。」
高町家で過ごすときはフェレットの姿に変身しているユーノが口を開いた。
あの時、オーズもこちらの魔法を初めて見た様子で興味津々だったことを思い出して伝えた。
「この彼の隣にいるのは何だ?腕だけのように見えるが。」
「オーズの仲間らしい。自立して動いて彼をサポートしていたよ。」
「目眩ましのあの火も凄かったの!しばらく痛くて目が開けれなかったの。」
撮られた写真には腕だけの何かとしか言い様の無いオーズの仲間が火球を放つ寸前の場面のものもあった。
次になのはが目を開けた時には二人は遠くまで逃走しており、ユーノが足止めをしてくれていなければ振り切られていたかもしれなかった。
「状況はだいたい分かった。とにかく今日は二人ともご苦労だったね。名前とこの姿を変えたデータを取れただけでも御の字だ。」
「集めることが出来た情報はこっちでまとめておくからデータの転送よろしくね。二人ともお疲れ様!」
二人から労いの言葉をもらい、通信を終えた。
「なのは、どうしたの?」
ベッドに腰掛け、上を向いて何か考えているなのはにユーノは声をかけた。
「え?ああ、あのオーズっていう人やっぱり悪い人には感じなくて。私とも戦おうと思えばいつでも反撃してこれたのに一度も攻撃もしてこなかったし。」
「そうだね。僕のバインドも跳ね返すだけで術者の僕には何もしなかったし、初めから逃げるのが目的だったとしても少しは攻めた方が逃げやすくなったろうに。」
「それにね、私最後のバスターを撃つときに威力の調整をミスしたの。それが直撃してどうしようと思ってたらあの人平気だからって言って許してくれたの。
お話してみて何となくだけど明るくて、実際は優しい人なのかなって思ったの。」
「じゃあ次に会うときは…。」
ユーノの問いになのははクスッと笑った。
彼も正直答えは解っていた。
「必ずちゃんとお話ししてもらうよ!」
「だね!」
聞こえはしていないがその頃夕食中の八神家では当の本人のエイジが身震いをしていた。
「なんか嫌な感じがする…。」
「いいからさっさと飯食え。」
気にも留めず食事を続けるアンクだった。
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なのはたちとの遭遇から一週間が経ち、アンクは拠点となるマンションの一室から高町家を眺めていた。
広いリビングにはテレビとテーブル、ソファーだけでいささかもの寂しくあった。
あれからも何度か翠屋に通い、家もこの近くだと聞き出して場所を把握していた。
窓際の赤いフカフカとしたソファーに寝転がっているとなのはが帰ってくるのが見えた。
同じ学校の友人であろう少女の黒い高級外車に送られてきた彼女は家に入っていった。
「こっちを監視するって言ったのは俺とはいえ、これじゃストーカーだな。」
自嘲気味に一人そう言っているとスマホが鳴った。
「やあ!アンク君!」
「ハァ…どうした?何か用か?」
電話相手の宗正のテンションの高さにため息をこぼしつつも応対した。
「あと、お前は何でいつもテレビ電話なんだ。」
「知っているだろう?私は相手の顔を見て話したいのだよ。今よろしかったかな?」
「別にいいが。」
キッチンの冷凍庫から棒アイスを一つ取りに行きながらアンクは答えた。
「本当に君はそれが好きだね~。まだシーズンという訳でも無いのに。」
「別にいいだろ。俺はこいつがあった方が色々捗るんだよ。悪いか?」
今のアンクは人間と同じように世界を感じることが出来る。
グリードにとって本来五感は有るようで無いと言えるほどに不完全な状態でしかなかった。
先代オーズの時代に彼はヤミーとの戦いで瀕死の重体となっていた青年、泉信吾の体を半ば乗っ取る形で取り憑き、共生した。
人の体越しに初めて味わったアイスを特に気に入り、これを持ち出した交渉ならば少なくとも素直に話を聞くほどだった。
グリードにとって見えるものは歪に見え、聞こえる音はノイズ混じり。
口にあるものの味など分からず、雨の後の匂いも感じれず、熱いも冷たいも、痛みさえも鈍くしか分からなかった。
人間よりも強大で計り知れない力と欲望を持っていたがどうあってもそれを満たすことは出来ない…それがグリードという"意思"を持つが、"命"とは言えない存在だった。
それはコアメダルを9枚揃えて完全体となっても変わらなかった。
アンクもかつてはそうだった。
世界を見たい、触れたいと思い続けてその手を伸ばした。
だがそれは自分の核となるコアが割れるまで叶わなかった。
いや、正確にはもう既に叶っていたことに彼はその時気づいた。
ただのメダルの塊であった自分が様々な思いを味わい、声を聞き、誰かと共に過ごした時間。
片手じゃ足りないほどの思い出を持ち死ぬとこまで来た…彼は満足していた。
そして残された相棒…火野映司はその後も彼と出会えるいつかの明日を目指し、世界を見て回った。
長い時間はかかったがその日は来た。
その時用いた方法により、アンクは人に取り憑かずとも世界を見ることが叶った。
ちなみに今も信吾青年と同じ容姿をしているのはこの姿が一番しっくりくるからである。
「一向に構わないよ。先日渡されたあの魔法使い君たちとの交戦データの詳細分析の報告のために連絡したのだよ。」
「何か分かったのか?」
「大いに興味深いものだったよ。」
分厚いファイルを広げ、嬉々として宗正は答えた。
「既存の技術ではここまでのエネルギーを作り出そうとするならば大規模な設備とコストが必要となるものをあの少女と彼女の持つ杖は可能としていた。
いやはや、まさかここまでのものとはね…。」
映し出された数値や既存の技術との比較グラフを見て、アンクは予想以上だと思った。
「あのなのはとかいうヤツは威力調整をミスしたとか言ってたが、それでも抑えてこれだけのものになるとはな。
それにオーズは遠距離戦となると手数が薄くなる。
どうにかしたいところだがな。」
「メダル技術でもここまでのものを作ることは可能かもしれないがいかんせん、未だに研究中のことが多くてね。
安全かどうかも危ういものだからね。
今あるメダルを利用した力もアンク君から提供してもらったメダジャリバーとカンドロイドシステム、ライドベンダーまでしか完成に至っていないものでね。」
こちらに来るとき、アンクは元いた世界での協力態勢を取っていた財団、鴻上ファウンデーションで開発されてオーズやアンクが使用していたメダルシステムのいくつかの設計データを持ち込んでいた。
提供したのはファウンデーションの研究員として、オーズとしてデータを渡されていた映司だった。
「それはまた開発していくしかねえだろ。」
「何とかしていくよ。あとエイジのアイディア品は完成したよ。」
「ああ、あれか。」
魔法を使う際、特殊な波長データが観測されることを突き止めたエイジは研究班に判別機の作成を依頼していた。
唐突にまた現れ、交戦状態となることを避けるため、持ち運び可能な接近アラームとも言えるものを自身で設計し、制作を任せていた。
「先ほどそちらに現地での研究チームを編成し、派遣。
そのチームに機体を持たせておいたから受け取ってもらいたい。」
「分かった。そいつらの寝床もここでいいだろ。無駄に広いことだしな。」
「そうだね。そうしてくれると連絡もしやすい。」
「そういえば一つ気になったんだが?」
「?」
連絡を受けた時から気にはなっていた。
「エイジには連絡しなかったのか?機体も頼んだのはアイツだったんだから伝えればいいだろ。」
宗正は頭を撫で、苦笑を浮かべていた。
「実はアンク君の前にもかけたんだがね、ほら、いつものアレだよ。」
そう言われるとアンクは頬杖を突き、大きくため息をした。
ゲーム制作に入ったようだ。
エイジはその天賦の才とも言える独創性に溢れ、他を魅了するゲームを幾つも生み出し、自身もそれを作り出しみんなを笑顔にすることをこの上無い喜びとしていた。
そして作り始めたらヤミーが出現でもしない限りは作り続ける。
幸い、一度作り始めてから完成までは信じられない程に早いが並みのことでは止まらない。
単純に彼にとってもそれが楽しくてしょうがないらしい。
「会社としてはありがたいのだが、父としては体を壊しでもしないかでこれはいつも心配だよ。」
「まあ、今回は近くに自分のゲームを楽しみにしてるヤツもいるんだ。無茶はしないだろ。それにアイツは余程でも無いとへばらないぞ。」
数年間一緒にいるアンクはもちろん、その父である宗正もその熱中っぷりには大分頭を抱えていた。
会社の看板商品ともなるエイジの才能だが宗正は彼のことを心配する気持ちも強かった。
今でこそ栄養補給はしっかりするようになったが一度スイッチが入ると寝ずに入浴、トイレ以外はやりたいようにやってしまって倒れそうになることが昔は多々あった。
その度に自分がよく飛んでいったものだと彼はしみじみと思い返した。
「それでもやはり心配はす…ん?噂をすればだよ。もう新作を一つ上げたそうだ。」
件の爆走息子からのメッセージには新作ソフトの完成報告と宗正が送った研究チーム派遣のメールに対しての返事が添えられていた。
「着手から一週間足らず…新記録更新だね。」
「近くに理想のモニターがいるからな。アイツもいつも以上に作ってて楽しいんだろ。」
そんなことを話している中で、アンクは何か異様な気配を感じた。
ずっと隠れていたのか、今まさに生まれたのか、この瞬間になるまで気付かなかった無数の悪意の気配を…。
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「これで…よし!完成!」
「やったー!おめでとうございますー!」
「サンキュー!!」
アンクと宗正の通信より一時間程前、八神家ではエイジとはやてが元気にはしゃいでいた。
開発していた新作ゲーム「ドレミファビート」の根幹プログラムが今まさに完成したのである。
「いや~はやてちゃんもありがとね!君と話しているとアイディアが出るわ出るわ!
今回はかなりの自信作になったよ!」
「そんな風に言うてもらえるとなんや、照れますね。私もまさかこんなに見せてもうただけや無くて、言うたことを取り入れてもらえるとは思いませんでした!」
「いやいや!テスターをしてくれる子でもこんなに的確な意見はなかなか無いよー!」
今回のゲームは大雑把に言えば画面上から流れてくる譜面にタイミング良くボタンを押す音楽リズムゲームだがこれだけではエイジは物足りないと思っていた。
八神家でしばらく過ごすことを決めた次の日から製作を始めたがグラフィック、設定などはすぐ決めれたがある悩みが生じた。
音楽に合わせて全身をリズムに乗せてプレイするゲームで、手軽にダンスをするように楽しめるのがコンセプトなのだが、これでははやてのような子達も楽しむことが出来ない。
筐体となるゲーム機は最近発売したばかりの手に持ったリモコンとテレビ画面がリンクし、振ったり回したりして操作をする次世代型のものだ。
ただ動かすだけで操作出来るので手の動きに合わせればはやてのように体が不自由な子でも楽しめると思い取り組んだが、やはり足とのリンクは手のコントローラーだけでは限界があった。
そこでエイジははやてに「音楽ゲームでしてみたいことって何か無いかな?」と一番楽しんでもらいたいファンの声を直に聞くことにした。
「ん~…。せやったら楽器を弾いてみたいですね。
ギターとかドラムとか現実やとちょお難しそうでゲームの中やったら上手には無理やとしてもやってみたいなーなんて。」
この意見にエイジは刺激を受けた。
今現在ではそんなゲーム実は無かったのだ。
「なるほど…。確かに家庭で誰でも楽器演奏で遊べるゲームは他の所も俺も作ったことが無いものだねー。
それは作り甲斐がありそうだ!早速作るからはやてちゃんちょっと遊んでみてよ!」
「はい!やりたいです!」
こうして作っていく中でユーザーとしてはやてはこうしたい、あれをしてみたいと生の声を伝え、エイジはそのオーダー以上のものを現実に叶えた。
最初の構想通りのリモコンを振ってリズム良く譜面をなぞるモード、はやての提案したギターやドラムなどの楽器で演奏できるモードのそれぞれで作り始めた。
後者はリモコンを楽器に見立て、ボタン操作や振動でさも楽器を使っているように感じれることをコンセプトに製作した。
エイジははやてのくれる注文に大いに共感し、同時にそれを叶えた時に彼女が見せてくれる笑顔に自分のしていることはやっぱり間違いじゃないと改めて思え、自然と頬が緩んだ。
そして今朝、仕上げにまでたどり着いた。
「…やっぱり来て良かったな。」
「え?何がです?」
エイジへのリクエストをメモにまとめていたはやてはエイジの呟きに反応し、顔を上げた。
「手紙、あったでしょ。マイティーに入ってたあの応募用紙。あれね、俺実は一番最初に読んだのはやてちゃんのだったんだ。」
「え?そやったんですか?」
コーヒーが苦手というエイジのためにはやてが淹れた紅茶を飲みながらエイジは語った。
「めちゃくちゃ綺麗な字で書いてあったから本当に9歳なのかと思ったのとスッゴい面白いゲームのリクエスト書いてくれてるのに何だろうね…色々遠慮する子だなぁと思ってね。
「絶対この子に会いたいな。」って思ったの。」
カップを置いて、いつもの優しい笑顔を向けるエイジにはやては顔を赤らめた。
「でもまた何でそう思いはったんですか?
そんなある意味面倒くさそうなんの所に。」
「いやね、何か昔の俺に似てるなぁって思ったんだ。」
「昔のエイジさんですか?」
「そう。今でこそこんな風にやりたいようにやってるわけだけどね、一時期はもうそれこそザ・ネガティブ!の権化みたいだったんだよ。」
意外なエイジの過去にいまいちパッとその姿が浮かばないはやてだった。
「「どうせ俺は何も出来ないし、誰かの為にもなれない」なーんてずーっと考えて、今にしてみたらこんなにもったいない時間の使い方はそう無いと思うよ。」
「…じゃあ今エイジさんはこんなに明るなって、みんなのこと思って色々するようになったんは何があったんですか?」
聞いていいのか正直分からなかったが、どうしてもその答えにはやては辿り着きたかった。
「気づかせてくれた人がいたんだよ。ずっとそばにいてくれた父さん、力を手に入れた俺を近くで支えてくれるアンク…。
みーんなが教えてくれた!
人はどこまで行っても一人じゃないってね!」
自分に笑顔の意味を教えてくれた、ある人たちのことを思いながらはやてに伝えた。
「一人じゃない…ですか?」
「そ!絶対に人は何かしらどこかで繋がってる、支え合うものなんだよ。はやてちゃんの素晴らしいアイディアでもっとこのゲームは面白くなる!
それも誰かの笑顔になるとっても素敵なことなんだよ!」
エイジはこれを伝えたかった。
はやての手紙は丁寧な文体でエイジの作るゲームへの熱い思いと細かな、そして彼も気付かなかった工夫点のリクエスト、そして何より楽しんでいることが綴られていた。
だがどこか寂しさも感じさせた。
自分を卑下するような、他人と距離を置くような、敢えて自分を孤立させている…ある出来事を境にエイジが昔そうなったようなことを9歳の少女がしていることに彼はひどく気に病んだ。
だから気づかせてあげたかった。
自分も他人を喜ばせたり、笑顔にさせることが出来ると。
そして自分もそうしていいのだということに。
「ホンマに…エイジさんは強引な人や。」
「あ!よく言われるよ!感覚だけでお前は生きてんのかってアンクに言われたことあるし。」
「アンクさんもなかなかキツイこと言いますね。」
「少しはお手柔らかにしてもらいたいもんだよ、ホント!」
「アハハ!」
これが完成する直前までのことである。
一つの大事な作品が完成したことで開放的な気分になったので二人はアンクの所に散歩に出かけることにした。
二人は恐らく買い貯めて置いたであろうアイスを食べ尽くしているであろうアンクのために彼の好きな種類を買っていた。
「ホンマにアンクさんってアイス好きなんですね~。」
「まあアイツには主食というかね、片時も手放せないものなんだよ、うん。」
車椅子を押しながら、ゲームの完成報告メールを送りつつ答えた。
「よほどですね~。エイジさんは特に好きなもんとか無いんですか?」
「ああー…そうだね~…。」
空を見上げて、捻り出すように考えて出た答えは
「…誰かが手作りで作ってくれたものなら何でも好きだよ!」
「そらまたメチャ広いストライクゾーンですね!」
「まあね。作ってくれる人の真心が一番の調味料だよ!はやてちゃんの料理みたいにね♪」
「作り甲斐ある人ですね~。せやったら今夜も楽しみにしとってくださいね。腕によりをかけてやります!」
「おー燃えてるね~!」
これは一段と思うエイジの目にふと、車椅子にかかった手提げ鞄の中に入ったあの本が入ってきた。
はやて曰く、「ずっと一緒にいてくれる大事な家族みたいなもんなんで」とのことで、こうして出掛ける時も連れていくそうだ。
「エイジさんもその子のことえらい気に入ってくれましたね。」
何を見ているか気づいたはやてが彼に振り返りつつ話した。
「うん。何かこうして見てるだけでもどうしてか落ち着いた気分にさせてくれるし、この表紙の手触りがなんだか心地よくてね~。」
最近では製作の合間に一息つきがてらにエイジはこの本の表紙を丁寧に拭いて元々キレイだったものをと更に宝石のようにピカピカしていた。
触れると頭がスッキリしてシュッとするとは彼の談だ。
「多分この子もエイジさんのこと気に入ってくれてると思います。」
「そうだと嬉しいよ。」
そんな事を話しているとポケットの端末から着信音が鳴った。
アンクからだった。
「あ、アンク?丁度良かった。今からそっちに…」
「エイジ。ヤミーだ。それも大量のだ!」
「何だって?」
「ずっと気配を出さないよう隠れてたのか、相当な数だ!まだ孵化してないがもうそんなに時間は無いぞ!」
どうやら卵から孵化する水棲系ヤミーが数を増やしていたようだ。
「今場所を送るからさっさと来い!」
「…どうやらアンク。こっちもそうは行かないみたいだわ。」
二人の目の前には虎の爪とバッタの脚を持つ、どうにも見覚えのある怪物が現れていた。
「えらい親近感の沸きたくないそっくりさんがいらっしゃったわ。」
「チッ…。もう一体か!」
「そっちの現場には先に行っててくれ。タカ抜きさんに早々にご退場していただいた後にすぐに向かうよ!」
「さっさとしろよ!」
通話を切ると同時にベルトとメダルを取り出したエイジははやてを路地裏に避難させると臨戦態勢に入った。
「似てても手加減してあげる程に俺もお人好しでは無いからね。変身!」
タトバ!タ・ト・バ!
タトバコンボに変身しすぐさまリーチのあるジャリバーで切りつけに行くオーズの一撃を展開しっぱなしの歪なトラクローで受け止めるヤミーに、彼はある違和感を持った。
軽すぎる。
感じたその疑問はすぐに的中し、ヤミーの防御はすぐに崩れて縦一閃にジャリバーの一撃が入った。
まだ成長し切っていないヤミーだったのかと一瞬よぎったがすぐに分かったその答えにエイジはすぐさま反転した。
「きゃあ!」
このタイプは宿主に寄生し、実体化出来るまでになると主を逆に自身の体内に取り込む猫系ヤミーの特徴も持っていた。
だから隙を見て宿主を助け出そうとしていたが、こっちの体の中には宿主はいなかった。
今まさにはやてを捕らえている女性がヤミーの親であり、こちらは独立して動けるヤミー…昆虫系と猫系の二人で一体の複合型ヤミーだった。
「はぁ…はぁ…や~っと見つけたー…。私の大事な…」
どうやら猫側のヤミーの本体は未だに彼女に寄生しているようで意識は欲望に呑まれているようだが、はやてを見て何故かいとおしそうにしていた。
「はやてちゃん!!…っ!?」
ヤミーの力でか、気を失っているはやてにまとわりつくような形でその頬を撫で回す彼女の下へと駆け出そうとしたが、突然の背後からの一撃に身をよろめた。
後ろには先ほど腹を裂かれたヤミーが散ったメダルを回収し、回復していた。
「こんの虫頭め。不意討ちかよ。」
オーズが受け身を取っているとヤミーは彼女を取り込み一体化し、はやてを車椅子ごと抱えて高速で逃げてしまった。
「待て!」
エイジも追いかけようとバッタレッグで跳ぼうとした時、足に何かが絡み付いてきた。
ミイラ男のように全身に包帯状の帯が巻かれた容貌のヤミーの中でも最下層の屑ヤミーが二体、オーズの両足に這った状態でしがみついていた。
すぐさま振りほどいて後ろに跳び距離を置いた。
屑ヤミーはセルメダルを割って生み出す、グリードたちにとってもお手軽なヤミーだが知能は皆無に等しく、アンクに言わせれば「こんなもん使うのはよっぽど落ちぶれた時」とまでの評価だった。
だが実際に相手にすると殴る、蹴るなどの物理的打撃に対して強く、多数のこの個体に囲まれたりすると厄介な上に足止めを食らう。
トラのメダルをウナギに換えて、亜種形態のタカウバとなったオーズは両手のウナギウィップを振り回し、ヤミーをあっという間に消滅させた。
物理的にダメでも電流などの副次エネルギーに対しては脆弱と判明しているので対処は容易だ。
しかし肝心のトラバッタヤミーははやてを連れて逃げてしまった。
騒ぎになる前に物陰に隠れ、変身を解いたエイジにアンクからのメッセージが入った。
『ヤミーの巣の場所が分かった。
この間の蜂と戦った公園のすぐ近くのマンションの一室だ。すぐに来い。
後、お前が戦ってたヤミーもその部屋に逃げ込んだ。』
「…頼れるヤツだ。」
端末をしまいエイジは現場まで駆けていった。
いかがでしたでしょうか?
一作のゲームを作るのが速すぎると思いましたが、そのゲームの基本となるベースデータをあらかじめ作っていることとと黎斗さん並みの才能をエイジを持っているとお考えいただければ幸いです。
それとエイジの過去。
これはどこかのタイミングで綴ります。
それではまた次回で!