リリカルなのは-オーズクロニクル   作:スターみかん

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どうもお待たせしました!

スターです!

お待ちしていただいた方々には本当に申し訳ありません。

今回もなかなかのボリュームとなりますので、楽しみにしてもらっていた分だけ満足していただければ幸いです!

それではどうぞ!


第9話「共闘と大増殖と一網打尽の奇策」

昼下がり、公園近くのマンションは騒然としていた。

 

マンションを中心として公開を含んだ周囲には警察による包囲がしかれていた。

 

「何この騒ぎ!?」

 

「さっきおばさん達のお話を聞いたら爆弾が仕掛けられてるとか言ってたよ。」

 

「本当に!?」

 

多くの野次馬の中、なのはは友人の月村すずかとアリサ・バニングスの二人と共にこの騒動の様子を見に来ていた。

 

「(ユーノ君、聞こえる?)」

 

二人の会話を聞きつつ、なのはは立ち入り禁止となっている公園の木の上からフェレットの姿で様子を伺っているユーノに対して思念通話を送った。

 

「(うん。聞こえてるよ。)」

 

魔法技術の一つである頭の中で思ったことで会話するこの方法で連絡しつつ、ユーノは観測を続けた。

 

「(爆弾騒ぎにしては警察の人達もマンションの中に入ってる様子も無いし、何かおかしいね。)」

 

部外者が入れないように立ち入り禁止の黄色のテープを張り警戒しているが、マンション付近には一般人はおろか警察官の姿も見当たらなかった。

 

「(そうなの?こっちでもお巡りさんたちも爆弾としか答えてくれなくて。)」

 

なのは達のいる公園付近のテープの外ではマンションに自宅を持つ人達が状況を説明するよう警察と揉めているようだが、詰め寄られている警察官も詳細が伝えられていないのか漠然としたことしか説明出来ていなかった。

 

「(それに何だろう…。とっても嫌な感じがするの。

何なのか分からないけど、あんまり良くはないものがいっぱいいるような…。)」

 

「(僕も何か感じるよ。ジュエルシードの暴走体みたいに何かが暴れ出そうとしているような感じ…もしかするとこの間のあのメダルの怪物と関係があるものかもしれない。

とりあえず僕は建物を探査してみるよ。)」

 

「(気をつけてね。)」

 

そう二人が推察していると先ほどから揉めているテープ前に一人の人物が現れた。

 

「申し訳ありませんがこれより先はこちらとしても調査中でして、一般の方々の安全のためにと何分ご理解をよろしくお願いします!」

 

「何よ!こっちはあそこが家なのよ!何があったかぐらい教えなさ…って何するのよ!?」

 

騒いで、興奮している住民とその勢いに狼狽える警官の前に割って入った人物になのはは見覚えがあった。

 

「死にてえのか?さっさと下がれ。」

 

「な、何なのよ?!あんた!」

 

「警察関係だ。」

 

「け、警察ならそんな態度無いんじゃない!こっちは一般市民よ!もうすこ…」

 

「だったらとっとと下がってろ。

今からここで何かあっても野次馬に来てる連中の安全も保証出来るか分からんぞ。」

 

凄みを利かせるアンクに住民が怯んだ隙を見て彼は大声で野次馬に呼び掛けた。

 

「テープはあくまで参考だ!

わざわざ野次馬してまで死にたいやつはどいつだ!

とっとと散れ!!」

 

乱暴な言葉に反感を抱く者もいたが、あまりの気迫に野次馬達はしぶしぶと散っていった。

 

「何よ!あの人!」

 

「怖かったね~。」

 

アリサとすずかも帰ることにしたが途中なのはは人混みの中で二人と敢えてはぐれた。

 

「(なのは!見つけたよ!マンションの部屋の中にいる!

この間とはまた違うけど、確かにメダルの怪物だ!)」

 

「(本当!?)」

 

「(ああ。でも数が比じゃない!卵みたいなのがたくさん集まってて今にも出てきそうになってる!)」

 

4階の一室のリビング前の木の枝に乗って中の様子を伺っているユーノはなのはに念話を送り、状況を伝えた。

 

窓は割れ、部屋から押し出されるようにバスケットボール程の卵がはみ出し、内部から今にも産まれようとしているのか、葡萄のように連なったそれは一つ一つが揺れ動き、それこそ一つの意思を持った生物のように体をなしていた。

 

「(個体によってタイプが複数あるのか分からないけど、この量が一斉に現れたらこの辺りは…。)」

 

この間は不意討ち同然で、数も一体だけだったため一撃で仕留めることが出来たがそんな大群を相手にするならば二人では到底手が足りない。

 

そう考え込んでいると突然大声で呼び掛けられ、なのははびっくりした。

 

「おい!そこの!」

 

「は、はい!?」

 

テープ近くの木陰に隠れるようになっていた場所で念話をしていたなのはは、周りに不満そうな顔をしている警察官たちを連れてこちらに歩み寄って来ていた。

 

「えっと…?」

 

テープ前で見かけた時からなのはは彼に気づいてはいたが、忙しそうなこともあり挨拶は控えていた。

 

「あ?翠屋のとこの子供か。

こんなところで何してるんだ。危ねえぞ。」

 

「す、すいません。パトカーとかお巡りさんたちが大勢来てるんで何があったのかなーって気になっちゃって…。」

 

「野次馬は早死にするぞ。さっさと家に帰れ。

こんなところにいられてもこっちも邪魔だ。」

 

「ちょっと!黒斗さん!もう少しあなた言い方ってもんが!大体先ほどの住民への対応と言い、乱暴にも程が…」

 

先ほど、住民に詰め寄られていた警官が意見を出してきたがアンクの眼力に思わず語の途中で引っ込んだ。

 

「とりあえずこいつは俺がつまみ出してくるからここの警備は任せたぞ。

おい。確かなのはだったよな?」

 

「は、はい!」

 

「そんなビビるな。さっさと行くぞ。」

 

「ちょっと!」

 

警官の呼び止めも無視してアンクはなのはの手を取り、そそくさと現場から離れた。

 

「(ユーノ君…ちょっと待っててね~!)」

 

念話でも無く心の中で引っ張られるままになのはは叫んでいた。

 

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ほどなく住民たちが避難して人気の無いマンションの路地裏まで来るとアンクはそこで彼女の手を話した。

 

「ほら。あまり野次馬根性なんてつけるなよ。

ろくな目に会わないからな。」

 

「す、すいません。」

 

それだけ言うと踵を返して戻ろうとするアンクになのはは呼び掛けた。

 

「あの、黒斗…さん?」

 

「あ?」

 

振り返ったアンクに少々びくっとしたなのはだったが質問を続けた。

 

「黒斗さんはお巡りさんなんですか?」

 

「ああ…まぁそんなとこだ。なんか文句でもあんのか?」

 

「いえいえ!とんでもない!黒斗さん結構怖い人かなと思ったんですけど、さっきも小さい子を守ってあげてたし、優しい人だなぁって。」

 

テープ前でのひと悶着の時、後ろから押し掛けて来た住民に押し出されて転けそうになった小さな男の子をすんででキャッチしていたのをなのはは見ていた。

 

「それにちょっと怒ってたからあんなにキツイ言い方だったんですよね?」

 

「ハッ!別に優しくなんか無えよ。ほら、さっさと家に帰れ。」

 

「はーい!」

 

それだけ言うと彼は背を向けて元来た道を戻って現場に向かった。

 

なのはから見えないところまで来たアンクはこの後起こることを想像して悪い笑顔を浮かべた。

 

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-

-

アンクに促され、帰る振りをしたなのはは彼と分かれた路地までこっそり戻って来ていた。

 

「(ユーノ君!お待たせ!まだあの怪物は産まれてない?)」

 

「(なのは!さっきよりもかなり活発になってきてるよ!

正直もういつ産まれてもおかしくないぐらいだ!)」

 

卵の脈打ちもどんどんと大きくなって、透けて見える魚影のような体躯はこちらが見ようとしているのか、その黒い目で辺りを焦点の合わない視線で探っていた。

 

「(こうなったらもう結界を張って中で押さえ込もう!なのはもこっちに来て!)」

 

「(了解!すぐに行くよ!)」

 

念話を切り、首に掛けたペンダントに引っ提げられているレイジングハートを手に取り声を掛けた。

 

「行くよ、レイジングハート!」

 

「お、準備出来た?」

 

愛機からの応答よりも早く、すぐそばの塀の上にいつの間にかいたオーズが尋ねてきた。

 

「あ、あなたは!?」

 

「よ!少し振りだね、なのはちゃん。」

 

-

-

-

ヤミーの巣食うマンションの一室ではオーズとの戦闘から撤退したトラバッタヤミーがじっと座り込んでいた。

 

部屋の壁には孵化寸前の水棲系ヤミーの卵がぎっしりと張られ、その表面の色が僅かな光を反射して部屋を薄く水色に照らしていた。

 

その目の前には連れ去られたはやてがいた。

 

不思議とはやては落ち着いていた。

 

オーズとヤミーの戦闘を目の当たりにするのに少し慣れていたこともあるが、ここまで強引に連れてこられた以外には別段このヤミーが襲ってきたりすることも無く今にまで至っているからである。

 

流石に怖くないとまでは言えないが逃げようにも車椅子の車輪に卵から出ている粘液が絡み付き、身動きが取れないのである。

 

「ヴゥ…」 

 

それまで静かだったヤミーが急に呻き、身震いをするとその体はメダルに変わってその内より一人の女性が現れ、メダルは彼女の中へと吸い込まれるように消えていった。

 

覚束無い、ふらふらとした足取りではやての下にまで近寄ると躓いたのか車椅子の手すりに掴まった。

 

「きゃ!」

 

「ああ…。ごめんね。痛かったわよね…。寂しかったわよね…。」

 

女性が倒れこんできたことに驚いたが彼女は謝りながらはやての頬に手を当て、愛おしそうに撫でた。

 

「私もずっと会いたかった…。あなたを失ってから気が狂いそうで…。でもこうして戻って来てくれた。」

 

「ちょ、ちょお待ってください!一体何の…」

 

そこまで話した段階ではやては部屋の隅のあるものに気づいた。

 

怪物の巣になっていることを差し引いてもゴミや服が散乱している部屋の中で一点だけ綺麗に掃除されて、卵もへばりついていな仏壇とはやてとそう変わらない年頃の女の子の笑顔の写真の存在に。

 

「ずっとおかしいと思ってたのよ。あなたが死んだわけないって。

なのにみんな「あの子はもういない」なんて言って…。私からあなたを奪いたかったのよ!

でももう大丈夫…これからはずっと一緒よ…。」

 

そう言いながら彼女ははやてを抱き締めた。

 

この人は自分のことを亡くなった娘と思い込んでいる。

 

写真の子と自分は正直似ても似つかない。

 

なぜそう思い込んでいるのかは分からないけれど彼女の気持ちのある一部分は分かったような気になった。

 

優しく自分をその腕に手を掛けようとその時、突然女性は苦しみだして抱擁を解いた。

 

投げ出されるに解放されたため車椅子から落ちたはやては先ほどとは逆に体をメダルに包まれていく女性の姿が目に入った。

 

「うぅっ…!助…けて!」

 

全身をメダルに包まれつつも僅かに残った右腕を伸ばす彼女にはやては戸惑った。

 

「わた…シを…一人に…しナイデ…」

 

ヤミーに取り込まれながら消え入る放ったその言葉にハッとなったはやては自分の手を思い切り伸ばした。

 

絡んだ指と指が空しくもこぼれ、彼女はそのままヤミーに呑まれてしまった。

 

その目からは溢れんばかりの涙が一滴流れ落ちていた。

 

「グルルゥ…。…ゥヴァアー!!」

 

再び顕現したトラバッタヤミーが咆哮を上げるのに呼応するように無数にある卵たちの表面にひびが入り、そして…

 

-

-

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「今の雄叫びのようなのは…一体?」

 

マンションの周囲で警戒にあたっている警察官たちにもヤミーの咆哮は届き動揺が広がっていた。

 

「な、なあ、少し近寄って様子を探らないか?」

 

「バカ!待機していろって指示が出てるだろ!」

 

現場の警官たちには野次馬ら一般人はもちろんのことで自分たちも不用意に現場への接近は特別捜査官である黒斗捜査官…アンクの指示まで許されていなかった。

 

「だが何が起きているのかこっちも分かってないんだし状況把握のためにも…」

 

「知る必要は無い。さっさと下がれ。」

 

警官たちのやり取りの後ろから、なのはを予定の場所へと連れていったアンクが割って入ってきた。

 

「く、黒斗捜査官!」

 

「バカが。指示を出すまで待機と言っただろうが。」

 

ヤミー・グリード対策の為に極秘で処理する必要があるので、このような案件に現場で指揮を取るためアンクは特別捜査官という名目で陣頭に立っていた。

 

ちなみに警察上層部への根回しはファウンデーションの仕事だ。

 

いつもの私服姿と違い、黒いダークスーツに身を包んだアンクに睨まれた好奇心旺盛な警官は頭を垂れ、スゴスゴと持ち場へと戻った。

 

携帯の時計とマンションに視界を向けてそろそろだと判断した。

 

「よし!指示を出す!今から30分後に二号棟の4階、403号室に突入する。それまでに各自準備しろ!」

 

「「「は、はい!!!」」」

 

急な指示に戸惑いつつ、慌ただしく配置の編成や装備の準備をする警官を尻目にアンクはエイジに提案した作戦を思い返していた。

 

「あの子たちに頼る~?しかしだな…」

 

なのはたちの力を借りることをアンクは提案していた。

 

「今回は数が厄介なタイプで人間の多い住宅街にそれがいる。

おまけに複合型のヤミーまでいてそいつがはやてを連れてるんならスピード勝負だろ。

使えるもんは使うに越したことは無いだろ。」

 

ヤミー騒ぎが起きれば目敏くまた出てくるとふんでいた。

 

奴等も未だに正体も分からない怪物を黙って見過ごすとは思えないほどのお人好しだと感じたからだ。

 

「それにこの間のあの結界でならこんな密集地でも穏便に戦えるだろ。」

 

「そりゃそうかもしれんけどもな…。

まぁあの子も多分それを望んで来るだろうし、今回は交渉してみるよ。」

 

そうして予想通りに現場に現れたなのはをオーズと引き会わせたのである。

 

マンション脇の民家の屋根に一瞬オーズが見えたと思えばすぐに消えた。

 

どうやらなのはたちとの交渉を終えて結界を張ったようだ。

 

「(さっさと片付けろよ。)」

 

心の中でそう呟くように思い、自分も処理に回った。

 

-

-

-

 

「「「キシャー!!」」」

 

卵から一斉に孵化を始めた魚の形をしたヤミーは自分たちの一番近くのリビングの窓を割り、流れるように外へ外へと向かった。

 

ヤミーたちはまるで川の中洲の陸地のようにトラバッタヤミーとはやてを避けていた。

 

「グゥルル…。」

 

獲物を品定めするようにヤミーははやてをその白目を剥き出しにした虚ろな目で凝視しつつ、にじりにじりとその腕に生えた鋭利な虎の爪を波打つような動きで動かして近寄ってきた。

 

そして目前まで来たヤミーはその爪を振り…下ろさなかった。

 

「え?」

 

一瞬何が起こったか分からないがヤミーの前にはメダジャリバーで爪を受け止めるオーズが立っていた。

 

「はやてちゃんお待たせ!ケガは無い!?」

 

右手で剣の峰を抑え、鍔迫り合いを繰り広げつつもオーズは首だけ振り返らせてはやての安否を気遣った。

 

「エイ…」

 

そこまで言いかけたが右手で全力の「シーッ!」のポーズを取り、その先を話すのを静止した。

 

剣を抑えていた右腕を離したため、力の均衡を崩してオーズははやてのすぐそばの壁に吹き飛ばされてしまった。

 

「あ…すいません!」

 

「だ、大丈夫!でもはやてちゃんが無事そうで良かったよ!

それと…ごめんね!俺が近くにいながらこんな危ない場所に…。」

 

壁に寄りかかりながら立ち上がりつつ、はやてに申し訳無さそうに謝罪した。

 

「でもこうやって来てくれました!」

 

優しくイタズラぽく笑いながらもエイジにならってかサムズアップを贈るはやてにオーズは素顔ならクシャッとした笑みを見せていた所だった。

 

「グォアァー!!」

 

両腕を広げ雄叫びを上げるヤミーがこちらに突っ込んで来たが、動きを読み切っていたオーズは右腕のトラクローでヤミーの振り下ろしてきた爪を受けきり、ジャリバーを下から腹に目掛けて切り上げた。

 

「あ!その中には女の人が…。」

 

「ああ!大丈夫!その人も必ず助けるよ!その為にも…」

 

重い一撃に怯んだヤミーの隙をつき、ベルトからバッタのメダルを取り出すと今度は黄色のメダルを装填しスキャナーを滑らせた。

 

タカ!

 

トラ!

 

チーター!

 

バッタレッグの代わりに今度は部分部分に小さな穴の開いた黄色の足となった。

 

「ハッ!ソリャ!」

 

姿を変えたと同時に壁を蹴り、反動を生かしてヤミーに目にも止まらぬ連続蹴りを繰り出した。

 

蹴られる度にヤミーからどんどんセルメダルが剥ぎ取られて行く中でメダルとは違う、奥の方に人の手が見えた。

 

「もう少し…!」

 

右腕のクローを壁に突き刺して支えを作り、蹴ることを止めずに伸ばせるだけ左手を伸ばしその手を掴み思い切り引っ張り出した。

 

掴み出された勢いで女性ははやてのすぐ近くに投げ出された。

 

ヤミーの卵の殻がクッションになり、ケガはさせていないようだ。

 

「はやてちゃんその人のこと任せていいかな!?

もうヤミーとは切り離されたから影響は無くなってるからもう暴れたりはしないよ!」

 

「は、はい!」

 

かなりのメダルを削り取られ弱まったのか、トラバッタヤミーはふらふらと立ち上がった。

 

「そういえばさっきの魚みたいなんはほっといてええんですか?」

 

先ほど飛び出て行ったきり一匹も戻って来ないヤミーをはやては不思議に思った。

 

「頼りになる助っ人さんが相手してくれてるよ♪」

 

-

-

-

 

「なのは!そっちにまた大勢行ったよ!」

 

「了解!レイジングハート!」

 

「OK」

 

なのはは魔力追尾弾のディバインシューターを自身の目の前に精製すると宙を泳ぐように飛び、自分目掛けて突進してくるヤミーの群れへと狙いを定めた。

 

「シュート!!」

 

放たれた弾丸は群れの先頭集団を貫通していき、中心部で散弾式に炸裂しヤミーたちをメダルへと変えていった。

 

だが…

 

「ダメだ!また増殖した!」

 

倒される寸前にこのヤミーは元になったであろう魚のように腹に卵を抱えており、それが残って新たな個体として活動を続けた。

 

戦闘開始から幾度となくこの大増殖を繰り返しており、その数は只でさえ多かった最初よりもその数を増やしていた。

 

「聞いてた通りだけどこれじゃ切りがないね…。」

 

少し時を戻し、現場近くでなのはとオーズが再び合間見えた場面にまで戻る。

 

「あなたはオーズさん!」

 

「やあ。悪いね、あんまり関わらない方が良いって自分で言っといたくせにこうして出向いて来るちゃって。」

 

バツが悪そうに自嘲気味にそう話し、彼は塀から降りてなのはに歩み寄った。

 

「本当ですよ!お話をお聞きしたかっただけですのに、あんなに増えて全力で逃げちゃうんだなんて!」

 

なのはもオーズの緑色の複眼を真っ直ぐに見つつも少し怒ったように先日の逃走をたしなめた。

 

「それに…。」

 

「それに?」

 

「謝りたかったんです。逃げられたからって調整も疎かにしてケガさせちゃうかもしれない攻撃を当てちゃったことを…。本当にごめんなさい!」

 

正直拍子抜けのオーズはそれを聞いて一拍置いた後に小さく「フフッ」と笑った。

 

「前にも言ったけど君は優しい子だね。なあに!確かにちょっと痛かったけど人間多少の刺激は必要不可欠!

かなり面白い体験したと思ったぐらいだよ。」

 

大袈裟な身振り手振りでそう語る彼になのはも多少戸惑ったが本心からそう言っているように感じて笑みをこぼした。

 

「はい、これでその話はおしまいで早速で悪いし、何よりこの間自分で言ってたことをねじ曲げちゃうんだけど…折り入って頼みたいことがあるんだけど…聞いてくれるかな?」

 

我ながら実に都合のいい話だと理解はしつつも故あっての事情で頼らざるを得ないオーズは恥を忍んでなのはに尋ねた。

 

「もちろんです!」

 

「即答だね~。こちらとしても若干驚きだよ。」

 

「だって助けて欲しいって言ってる人を私は絶対知らないふりするなんてしたくないですもん!」

 

「…そっか。じゃあよろしく頼むよ。」

 

何か思うところがあったのか、空を見上げた後にオーズはなのはとの相談に移った。

 

聞いてもらいたいことはこの後産まれる水棲系ヤミーの処理だった。

 

「あれは元々増殖して数がある程度集まってから一斉に孵化するタイプの個体なんだけど今回はどうしてかそれぞれの個体の体内にまた別の個体を生むように出来てるみたいでね。

パパッと俺がやっちゃいたんだけど増殖タイプとはまた別のタイプが一体いてね、ソイツを早くどうにかしなきゃいけないんだ。」

 

「何か事情があるんですか?」

 

「まあ、ちょっとね…。ソイツも通常個体と違ってかなり強いからほっとけないけど、卵の方はここら一帯に拡がられると一大事になりかねないから…」

 

「あ!もしかして私たちの結界が必要なんですか?」

 

「Exactly!お察し通りあれならそう簡単には逃げれないでしょ。」

 

「なるほど!じゃあ早速行きましょう!

レイジングハート!」

 

「All right.Stand by ready.」

 

「セートアーップ!!」

 

純白のバリアジャケットをその身に纏い、念話でユーノに事情を伝えて結界の展開を頼んだ。

 

通信を終えた数秒後には二人はもう結界内に入っていた。

 

「これでえーと…」

 

「ああヤミーだね、アイツらの名前は。」

 

「…は簡単には逃げられないです!」

 

自身の名前しか教えていなかったので知らなくて当然なのだが無理くり会話の流れ繋げた力業を微笑ましく思いつつも辺りを見回し、改めて魔法の汎用性の高さにオーズは感心していた。

 

「じゃあ行こうか。お互い無事に行こう。」

 

「はい!」

 

そうして二人はこの地で共に戦っているのであった。

 

「(頼られちゃったからにはしっかりやらないと…。)」

 

だが倒しても倒してもその分増えられてはこちらがその内圧されてしまう。

 

「倒したら増えちゃうし、これじゃどうすれば。」

 

鋭利な歯を剥き出しに自分に突進してくるヤミーの群れをシューターでいなしつつ思考を巡らせるなのはの視界にある光景が入った。

 

シューターが自身のそばを掠めた個体がダメージも負っていないのに卵を残してメダルへと還元され、産み落とされた卵は増殖せずにそのまま地面へと落ちた。

 

「これってもしかして…シャケのヤミーなのかな?」

 

「シャケ?あのよく朝ごはんで出てくる赤い身の魚のこと?」

 

なのはの疑問に近くにいたユーノが興味を示して聞いてきた。

 

「うん。前にお父さんと見てたテレビでシャケは卵を産んだらそのまま死んじゃうってやってたんだけど、もしかしたらこのヤミーは自分がやられるって思ったら後は卵を産んで自分は消えちゃうんじゃないかな?」

 

「そうか!この怪物たちは元の姿を取った生き物と同じ生態も模しているからそれをそのまま受けるんだ!」

 

ユーノの推察通り、ヤミーは自身の素体となった生物と同じようにその特性と生態も自分の力とする。

 

例えそれがマイナスに働くことだとしても。

 

「ならユーノ君!私に考えがあるんだけど!」

 

最初にその提案を聞いた時は驚いたが、相手の特性を考えてもこれが最も効率的で確実だと彼も納得してサポートに回ることにした。

 

「仕上げは合図と一緒にやるからね!」

 

「了解!」

 

そのやり取りと共に一度ヤミーからユーノは思い切り離れ、逆になのははシャケヤミーの群れに目掛けてディバインバスターの短縮版の砲撃であるショートバスターを撃ち込んで自身に注意を引き付けた。

 

思惑通りにこちらに突っ込んで来るのを確認し、ユーノを追おうとする個体にもシューターをお見舞いしつつ、自身は高く飛び上がった。

 

全ての個体が一斉になのはを追いかけて上空へと上がって行った。

 

「(なのは!いいよ!)」

 

ユーノからの念話を合図になのはは上昇に急制動をかけ、真下に向けてレイジングハートの砲口を向けた。

 

「ユーノ君行くよ!」

 

「「3、2、1…」」

 

二人のカウントダウンが進むにつれてレイジングハートのバレルから桃色の光が輝いていった。

 

そして…

 

「「0!!!」」

 

ディバインバスターが放たれる寸前に群れの真下から突如現れたユーノの拘束魔法である網状の鎖-ホールディングネットが危険を察知してメダルと卵へと姿を変えた一団を包み込み、そのまま光の奔流を浴びせた。

 

卵だけとなれば再びヤミーとなり、卵を蓄えるまでのタイムラグを突いて殲滅出来ると踏んだのである。

 

「ふう~…。やったよユーノ君!まだ下に残ってる?」

 

「大丈夫だよ。やっぱり全個体がなのはを追いかけてたみたい。

一匹も残っていないよ。」

 

それを聞いて一安心したが、すぐに気持ちを切り替えた。

 

まだオーズとこれとは別個体のヤミーの戦闘が続いていたからだ。

 

すぐに助けに行こうと下降を試みたその時異様な光景が目に入った。

 

オーズが突入した一室からマンションの半分がその奥にある建物共々に文字通り空間ごと、それこそ結界ごと一刀両断に斬られたのである。

 

「え?ええぇーーー?!!」

 

なのはの驚きの声と共に結界はガラスが割れるかのように散っていった。

 

 




今回も結構長くなってしまいました。

ヤミーが暴走させたあの女性の欲望はまた次回で説明が入りますが、もし自分が同じ立場だったら正直乗り越えられるかどうか辛いものです。

失ったものとどう向き合うか、そしてそこからどう歩むべきか。

エイジの信念にも関わることを次回綴ります。

話は変わりますがヤミーのモチーフの特性を生かし、落とし込むのが結構大変だったりしますがその分面白く、調べる度に新たな為になる知識になったりして勉強になったりします!

また次回もお楽しみにしていてください!
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