【ボロス編】ONE PUNCH MAN〜ハゲ抜き転生者マシマシで〜【開始】   作:Nyarlan

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転生者たちの死闘録-1 深海王編
転生者たち-2[無能力者と能力者]/深海王対策会議


【転生者たち-2[無能力者と能力者]】

 

 E市のとある中学校では、終礼を終えた生徒たちがまばらに帰り始めていた。

 そんな中で、校門前で楽しげに会話するグループの一つにシゲオの姿もあった。

 

 彼は同世代の少年と校門手前で手を振り別れると、人通りの少ない道を進み、やがて立ち止まる。

 

(さて、と――)

 

 彼は自身の体を足元から慎重に自身の能力の力場で覆い始める。生き物へ干渉する時は特に強く集中するのが彼の癖だ。

 師であるタツマキからも早く慣れろと繰り返し注意されているものの、トラウマを拭い去るのは容易なことではない。

 力場の膜が全身を包み込み、いざ重力から解き放たれようとした、その時であった。

 

――バキン。

 

「……え?」

 

 ガラスの砕け散るような奇妙な音と共に彼を覆う力場が突如として霧散した。

 

「ふゥン、他作品が元の超能力にも効くンだな」

――ッ!?

 

 彼の背後にはいつの間にか人が立っており、気付けば右肩を掴まれている。

 低く唸るような声にシゲオが慌てて振り返ると、肩に置かれていた手が今度は彼の左手首を掴んだ。

 

「おっと、能力は封じさせてもらおうか」

 

 今度は少しおどけたような声が彼のすぐ頭上から聞こえてくる。

 その言葉で彼はようやく自身の能力が使えないことに気付く。

 

 彼が怯えを含んだ視線を向けると、背後の人物はニヤリと笑った。その人物はシゲオよりも背が高く、見た目の雰囲気や服装からして高校生のようだ。シゲオの手首を握る青年は黒髪をワックスでウニのように逆立てた特徴的な髪型をしている。

 

 その横に立つもう一人は短い白髪に赤い目をした中性的な顔立ちで、黒地に白のV模様が並ぶゼブラ柄のTシャツを着ていた。

 

――それらの情報から、シゲオは相手の正体を察する。

 

 特殊能力全般を無効化する右手(イマジンブレイカー)を持つ上条当麻、ベクトル操作という何か凄い能力を持つ一方通行(アクセラレータ)――とある魔術の禁書目録、その主人公格の転生者であろうと彼は朧気ながら察することができた。

 

 そんな二人の転生者の様子に不穏なものを感じて狼狽えるシゲオを一方通行(アクセラレータ)は鼻で笑って一歩近づいてくる。

 

「ッハ、コイツが転生者最強の一角ねェ? 能力があってもこのビビリっぷりじゃただのガキと同じじゃねェか」

 

 そう言って意地悪く嗤うと、彼はおもむろに手を持ち上げシゲオの目の前に近づけてゆく。

 

「知ってっかも知れねェが、“ベクトル操作”で体内の電気をアレすると派手な事になるらしいぜェ? 試してみるかァ?」

「――ッ!?」

 

 その言葉でシゲオは慌てて身をよじるが、上条当麻による拘束は強固でありひ弱な彼では振りほどく事ができない。

 ジワジワと近づいてくる手は、彼の目の前まで来ると顔を掴むためか大きく広げられて停止する――と、シゲオはその手のひらに何かが書かれている事に気付いた。

 

――ドッキリ 大☆成☆功!

 

「……へあっ?!」

 

 シゲオが気の抜けた声を上げると同時に拘束が緩み、周囲に堰を切ったような笑い声が響いた。

 腹を抱えて笑う二人に、混乱していたシゲオもようやくからかわれていた事に気付いてムスッとした表情になる。

 

「……ジャギさんといい、この手のイタズラ流行ってるんですか?」

 

 過剰反応で攻撃されたらどうするのかと彼が問うと、上条当麻(ツンツンあたま)の転生者は右手をヒラヒラさせながら答える。

 

「そのための幻想殺し、ってな。悪い悪い、新入り転生者が超能力者だって聞いたからつい試したくなっちまって」

「せっかくだしちょっとしたドッキリやろうぜ、ってなったンだわ。まあ、詫びに飯でも奢るから水に流してくれや!」

 

 からからと笑いながらそんな風に言う二人に、シゲオも脱力した様子でため息をつく。

 

「まあ、いいですけど……とりあえずはじめまして、モブサイコ100の影山茂夫の姿で転生した者です」

 

 よろしく、と軽く会釈する彼に改めて向き直り二人はニッと笑う。

 

「おう、よろしく。俺は見ての通り『とある』の上条当麻の転生者」

 

「ンで、()()()がァ……ちょっと待ってろ」

 

 一方通行(アクセラレータ)の転生者はおもむろに後ろを向くと何やらゴソゴソし始める。たっぷり数十秒かけてから振り向いた()()に疑問符を浮かべていたシゲオは驚愕した。

 

「お待たせェ! アタシは()()()()()の転生者だ、それと残念ながらベクトル操作は使えませェン!」

 

 そう言って一方通行(アクセラレータ)の改め鈴科百合子(すずしなゆりこ)の転生者はいたずらっぽく笑う。

 

「お、女の人……?」

 

 瞳は赤から黒へ変わり、取り外された白いウィッグの下からはセミロングの黒髪が現れ。そして先程まで平坦だった胸部は特別大きくはないものの、それとわかる程度の膨らみを有している。

 

「あ、ちなみに前世では男だからよろしくゥ!」

「ええっ!?」

 

 おどけるようにバチリとウインクをしつつのそんなカミングアウトにシゲオが目を剥くと、二人はそんな彼のリアクションを愉快そうに笑って受け止めた。

 

 

 ぞぞ、と豪快に音を立てながらユリコが豚骨ラーメンを啜る。

 

「つーわけで、クソ神の気まぐれのせいでアタシだけなんか女になってたって訳なンだわ。『鈴科百合子』ってのも他の転生者に聞くまで知らなかったくらいだ」

「えぇ……」

 

 醤油ラーメンに載ったメンマを箸でつまみながらシゲオはドン引きした表情をする。

 

「僕も勝手にキャラクター選ばれたようなものですけど……それはちょっと酷い。……色々と大変じゃないですか?」

「アー、まァ? 前世の記憶を取り戻した頃にはもう今更って感じだったから、別に不便したりは無かったなァ」 

 

 れんげでスープを掬いながらそんなことを言うユリコの脇腹をトウマが肘でつつく。

 

「むしろ記憶取り戻すまでの期間お前の両親がすげー苦労してたじゃん。平気で足広げて座ったり、風呂上りに半裸でウロウロしたりするおまえを矯正してさ」

「なッ、それはガキの頃の話だろォが!?」

 

 赤面してプルプルと震えるユリコにトウマがケラケラと笑う。

 

「中学入る間際までそんな感じだったからな、遊びに行ったらパンイチで首にタオル巻いたまま片手上げて挨拶するもんだからコイツのかーさんが怒る怒る。あの時のゲンコツの音は今でも覚えてるぜ」

「テメェ人の黒歴史をッ……! ラーメンハゲ、煮卵2つコイツの支払いで頼むわ!」

「ちょおっ!?」

 

 慌てた様子のトウマの傍らで、ラーメン屋の店主が煮卵を取り出しながら口を開いた。

 

「ハゲはやめろハゲは。オレは頭剃ってねぇだろうが」

「えー? ラーメンハゲでいいじゃン、その方が通りいいっしょ」

 

 悪気なくそんなことを言い放つ彼女に、店主は短く刈り上げた坊主頭を手で押さえながら再びため息をつく。

 

「ラーメンハゲにも芹沢達也(せりざわたつや)っつー名前があるんだよ……ほら、煮卵2つ。二百円な」

「へェー知らなかった。……あ、1個はシゲオの」

 

 ユリコはさして興味なさそうにそう言いながら小皿の煮卵の半分をシゲオの丼へ箸で移した。

 

「あ、ありがとうございます。……それにしても、転生者のラーメン屋がうちの学校の近所にあったんですね」

 

 受け取った煮卵をかじりながら感慨深げに店内を見渡す彼に、店主はニコリと営業スマイルを浮かべた。

 

「ああ、同じ転生者のよしみでコレからは贔屓にしてくれると助かるよ。今日はチャーシューオマケしてやるから」

「結構安くてウマいのにあんま客来てないみたいだしな」

 

 前世のネットで見た覚えのあるコマと同じ笑顔で気前よくシゲオの丼へ厚切りのチャーシューを乗せる店主にトウマがそんなふうに言う。

 

「いや今の時間考えろよ、飯時には早いだろ。ほかの転生者連中も近く寄ったら来てくれるし、流行ってないわけじゃないんだぜ」

 

 原作の本人みたくカリスマラーメン店主って訳ではないがとボヤく彼にシゲオはふと湧いた疑問を口にした。

 

「そういえば、なんでそのキャラクターを選んだんですか?」

 

 何か思い入れがあるのかと尋ねた彼に、店主は困ったように笑う。

 

「いやあ、別にそういうわけじゃない。元々オレは漫画だのアニメだの見るタイプの人間じゃなくてな、現場の事故でポックリ逝く少し前にたまたま散髪屋の待ち時間に暇つぶしに読んだ漫画が『ラーメン発見伝』だったんだよ」

 

 それを思い出したから一念発起してラーメン屋を開いたって訳さと笑う店主に、シゲオは苦笑した。

 

「それはなんというか……思い切りましたね」

「ま、一度は終わった人生だ。ちょっとくらい思い切ったことしてみようってな! バケモンと戦ったりは御免だけどな」

 

 それだけいうと、店主は洗い物を始めた。

 

「思い切ったことねェ、たしかに他の転生者連中も前世できなかった事をやってる奴多いしなァ」

 

 ずぞぞ、と麺を啜りながらユリコが言う。

 

(前世できなかった事、かあ……)

「シゲオは何かあるのか? 前世でやり残した事」

 

 シゲオが煮卵をかじりながら思案していると、一足先に麺を食べ終えたトウマがそんな風に問い掛けた。

 

「僕はある意味、今まさにやってる感じですね」

「あン? ラーメン食うことが?」

 

 ユリコの頓珍漢な言葉に少し笑いながら、シゲオは続ける。

 

「違います。前世だと病弱だったので……今こうして普通に学校に通ってる事自体が、前世でやりたかった事だと思います」

 

 シゲオがしみじみと言えば、二人は顔を見合わせて笑顔を作る。

 

「へえ、それじゃあ学生らしい事沢山しなくちゃだな!」

「そォだな、まず手始めに来月あるうちの学園祭にでも来ねェ? 学校にもう一人いる転生者の一人バンドが演奏やるし」

 

 そんな風に誘われて、シゲオははにかみながら頷いた。

 

「ぜひ行かせてもらいます。というか他にも転生者の人が学校に?」

 

「ああ、前世で何とかっていうミュージシャンのファンで、それのコピーバンド的な活動やってるんだと。学年違うからあんまり絡み無いけど、動画サイトとかでも結構注目されてるらしいぜ」

「ちなみに、アタシと同じTS転生者な。何か例のミュージシャン縁のキャラを自分で望んだとか……まァ、今度紹介してやるよ」

 

 そうこうする内に三人はラーメンを食べ終え、店主から「また来てくれよ!」と笑顔で見送られながら店を出た。

 

「それじゃ、今日は強引に呼び止めて悪かったな」

「こっちこそ、ラーメンごちそうさまでした。学園祭、楽しみにしてますね! ……そうだ」

 

 シゲオはふと思いついたように手を叩くと、二人に問いかけた。

 

「お二人は、前世でやり残した……というか、今世でやりたい事とかあるんですか?」

 

 そんな問いに、トウマは少し頭を捻りつつ答える。

 

「んー、そういやそのテの事はあんまり考えたことなかったな……ユリコは何かあるか?」

 

 トウマに話を振られたユリコは少し考えると。

 

「そォだなァ……そ、その、恋とかン゙ン゙!! やっぱ陸上かなァ! 今度こそインターハイで選抜される事かなァ!

 

「うおっ、いきなりどうした!?」

「な、なンでもねーし?」

 

 いきなり顔を赤らめながら声を張り上げた彼女と、それにギョッとするトウマの姿を見てシゲオはなんとなく事情を察して微笑ましい気分となる。

 

 そんな生暖かい視線に気付いたユリコは、大きく咳払いした。

 

「よォし、それじゃあ今日は解散な! 今度また遊ぼうや、学生転生者のオフ会みたいなのも今度あるから紹介したらァ」

「オフ会まであるんですね……よろしくお願いします」

 

 シゲオと二人は連絡先を交換し、その日は解散となる。

 年齢の近い転生者と友誼を結べた事に少々浮かれた気持ちで帰路についたのであった。

 


 

【深海王対策会議】

 

――隕石騒動から数日後。

 特殊(S)生物(C)保護(P)研究所の会議室には錚々たる面々が集まっていた。

 

 ホワイトボードの前に置かれた――標準サイズだが相対的に――小さな丸椅子に窮屈そうに座っているのはヒーロー協会の最終兵器たるNo,1ヒーロー・オールマイト。ホワイトボードにはこの場の進行役たる彼の几帳面そうな文字が並んでいる。

 

 ズラリと並んだ白い長机の端に突っ伏して寝息を立てているのは同じくS級ヒーローのホワイトナイトことタバネ。その背中へ甲斐甲斐しくブランケットを掛けるのは彼女の隣に座る助手であるジョウタロウ――が操る“スタンド”スタープラチナだ。

 周囲からは腕を組みため息をつくジョウタロウの横で毛布がひとりでに浮き上がり広がる光景にしか見えていない。

 

 そんな光景を肘杖つきながら眺めているのは、対怪人専門の私設戦闘集団“ハンターズ”の斬り込み隊長たるガッツ。同じくハンターズ隊長格のセタンタとシロウは療養のため欠席している。

 

 そのガッツの隣でトレードマークである特注の仮面を持ち上げて茶を飲んでいるのは、A級ヒーロー『鉄仮面』ことジャギ。

 

 会議室最後方で洋菓子を貪るのは金髪碧眼幼女ボディのDr.ブライト。隣でボウル山盛りに盛られたアカシアの葉をもぐもぐと頬張っているのが怪人ヒーロー・チャーミングジラフことジラ。

 

 ……そして、どこからか拾ってきたらしき子猫を膝に載せデレデレしているのがA級ヒーロー"バネヒゲ"――の姿をしたメタモン。

 

 ――この場に集まっているのは、転生者の中で戦闘を生業とする者達(一部例外含む)であった。

 オールマイトはいつものようにホワイトボードの右上に書かれた『サイタマ』の文字にペケを付けると、大きく咳払いをした。

 

「えー、皆も知っての通りだが先日『巨大隕石』の破壊が完了した。原作通りなら、間もなく海人族による地上侵攻が起こるはず――」

 

 オールマイトの言葉に、茶を啜っていたジャギが挙手をする。

 

「ぶっちゃけ、深海王自体は大した障害でもねェだろ? 災害レベルは鬼、出現を確認次第S級の誰かをぶつけりゃ終わる」

 

 アンタとかそこのウサギとか、などと特に緊張感もなく言う彼に、オールマイトは出鼻をくじかれる。

 

「……いや、うん、まあそうなんだけどね?」

 

「ま、問題はいつ来るかが分かんねぇソレの為に海辺に貴重な戦力を張り付けてられないって所だな」

「加えて、場所を誰も把握してねェ事か」

 

 ガッツとジョウタロウの言葉に、進行役として言おうとしていたことの大半を取られたオールマイトがしょんぼりと萎れる。

 

むぐむぐ……ゴクン、人類の生存域の中で主要なビーチは三箇所だったな。西部のJ市、南部のO市と北部のS市で見事にバラけているから、いくらキミでも移動にはそれなりの時間がかかるだろうねぇ」

 

 菓子のクリームを鼻の頭に付けながら、金髪幼女のブライトがそんなことを言う。ちなみにクリームはわざと付けたものである。

 

「はーい! わたしも海に行きたいです!」

 

 アカシアの葉を口の端から覗かせながら挙手するこれは素である。頭フレンズだから仕方がないのだ。

 遊びに行くんじゃないんだぞ、とツッコミが飛んでくると彼女はこころもちしゅんとして手を引っ込めた。

 

「……あらかじめタバネさんのホワイトナイトを一台ずつ配置しておけば遠隔で討伐できるのでは?」

 

 バネヒゲの姿をしたメタモンが頭に子猫を乗せながらそんな疑問を口にすると、爆睡する本人の代わりにジョウタロウが答える。

 

「悪いがそれは法の問題で無理だ、ヒーローつってもホワイトナイトは兵器だからな。これはメタルナイト等他のヒーローにも当てはまる話だが、怪人災害対策の為とはいえあのレベルの兵器を個人所有している事自体あまり良く思われていない。ヒーロー協会はともかく政府は平常時の兵器持ち出しを認めねぇ」

「まァ、武力チラつかせて無理矢理押し通す事も出来ん訳じゃないだろうが、仮にもヒーローだからな」

 

 ギシ、と椅子の背もたれを鳴らしながら言うジャギにオールマイトも同意するように頷いた。

 

「うん、それに彼女は今計画のために長期間のデスマーチ中だから、あまり余計な仕事を押し付けたくもないしね」

「……つかそんなキツいなら家で休んでりゃいいのになんでわざわざ引っ張って来た? 座るなり気絶するように寝たが」

 

 皆それなりの声量で話していると言うのに全く起きる気配のないタバネの姿にガッツが呆れたように言うと、ジョウタロウが深くため息をつく。

 

「コイツは一見アッパラパーに見えるが意外と責任感が強い。特に期日が近付いてる今ラボに置いとくとエンドレスに作業しやがるから連れてきて気絶させた。なまじ肉体が強いと無理が利いちまうからな」

「気絶させた、って……オイオイ」

 

 そう言って手刀を振り下ろすジェスチャを見せるジョウタロウにガッツも少し引き気味に笑う。

 

「……まあ、とにかく今回は身一つで戦える我々の頑張り所だね! 幸い深海王は災害レベル鬼、言われた通り対処自体は難しくない」

 

 そう言って広くブ厚い胸板を叩くオールマイト。

 

「ちなみにハンターズ(うち)は先日の怪人災害による怪我人多数で休業中な、セタンタとシロウも猪にやられた傷で入院中なんで残念ながら動けるのはオレだけだ。駆けつけやすいのは……J市だな」

「おれは普段の担当地区から近いO市なら出られるぜ、まァ秘孔が効かなきゃ簡単には勝てねェだろうが時間稼ぎくらいできらァ」

 

 ガッツとジャギの宣言に、部屋の後方でアカシアの葉を飲み込んだジラが天高く挙手する。

 

「はいはーい! じゃああたしはS市に行きますっ! さっそくですが水着買いに行ってきていいですか!」

「いや、だから遊びに行くんじゃねぇんだぞ……」

 

 ガッツが呆れを含んだ視線を彼女に向ける中、ウトウトする子猫を膝の上で撫でながらメタモンが言う。首輪の鈴がちりんと鳴った。

 

「ふむ、ではその間の研究所の警備はワタクシの担当ですかねぇ。まあ、どうせ何も起きはしないでしょうが」

 

 意見がまとまったところで、オールマイトが揚々と頷いた。

 

「Hum、配置はこんなものでいいかな。……いやあ、しかし人員が本当にギリギリだね!」

「転生者は数居れど、戦える奴は少ないからな。いざとなりゃ俺もやれなくもないが……なるべく勘弁して欲しいもんだ」

 

 ジョウタロウの言葉にケーキを食べ終えたブライトは袖で口元を拭いながら、人形のように整った顔で胡散臭い笑みを浮かべる。

 

「意気込んで戦闘系キャラを選んでも、実際に戦ってみて心折れる転生者は少なくないからねぇ。まあ、そういう彼らもいざとなれば自衛くらいはしてくれるだろうさ」

「そういう人たちが戦わずに済む為に存在するのがヒーローなのさ、私もサイタマには及ばずとも精一杯やらせてもらうよ。さて、次の議題だが、近頃新しく転生者らしい人物が……」

 

 そうして、会議は滞りなく進んでゆく。

 人々が束の間の平和を謳歌している間にも、未来を知る彼らは着々と来る危機への対処を進めているのだ。




芹沢達也(ラーメンハゲ)の転生者
原作漫画で主人公とヒロインの合計知名度を上回ってそうな人気を誇るラーメンハゲに転生した一般人系モブ転生者の一人。
前世と同じく工事現場で働いていたが、前世の記憶を取り戻してから数年後には勉強の末ラーメン屋を開店した思い切りの良い男。
この世界での名前は何故か苗字の『セリザワ』。名前より苗字のほうが有名なブライト博士と同じパターン。
なお、スキンヘッドではなく3mmくらい残した坊主頭。

・一人バンド転生者
どこぞのミュージシャンと同じ苗字を持つJKキャラにTS転生した思い切りのいいヤツ、モブ一般人枠転生者。

・学生転生者オフ会
学生系モブ転生者たちの集い。おめェ戦えるだろってのが混じってたりもするが、メタ的&メンタル的な理由で非戦闘員。そんな彼らも家族に怪人でもけしかければ覚醒するやつも出るかも?(外道)

・深海王襲撃地点をだれも覚えていない転生者たち
候補地は大きなビーチのあるJ市、O市、S市の3つ……正解はどこか覚えてます? 私はググりました。

・法律とか国とか
捏造全開。普通に考えて国家としてメタルナイト級の兵力を自前で持ってる個人とかヒーローでも嫌だよね。
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