【ボロス編】ONE PUNCH MAN〜ハゲ抜き転生者マシマシで〜【開始】 作:Nyarlan
数ヶ月前の怪人災害で崩壊し未だに放置される郊外のビル、その残骸を前に小柄な人影が二つ立っていた。一人はやや緊張した面持ちをした中学生の少年――シゲオ。
彼が両手をゆっくりと持ち上げた彼の視界の中で、正面にある瓦礫の山が緑色の光に包まれる。
「――避難が間に合ったお陰でここに犠牲者は居なかった。でも、崩壊した建物の中には被害者が紛れてることが多いわ。力場の持つ触覚を研ぎ澄ませればそれらを感知することもできる……今回はマネキンを混ぜてるから、それを人に見立てて選り分けなさい」
少年の横で腕組みしてそう言う小柄な少女……もとい女性は、S級ヒーロー“戦慄のタツマキ”。揃って最高位の超能力者であるこの二人は師弟関係なのである。
彼女のアドバイスにシゲオがコクリと頷くと、重い瓦礫の群れがゆっくりと浮かび上がり始める。
「間違って瓦礫で被災者を潰さないように一定以上の大きさの物は特に意識を払って。あと、人間は見つけ次第必ずバリアで包むこと」
「はい、先生」
そう答えたシゲオの額には早くも汗が浮かび始める。
本来ならばこの瓦礫を持ち上げる程度は彼にとって負担にはならない。しかし、そこに求められる緻密な操作は確実に彼の気力を削る。
やがて宙でうごめいていた瓦礫の中から淡い光を放つ球体に包まれたマネキンが十体ほど飛び出すと、二人の前にそっと並べられた。
「はぁ、はぁ……終わり、ました」
額の汗を腕で拭いながら大きく息を吐くシゲオを見て、タツマキは腕組みをしたまま頷いた。
「ん、とりあえずは及第点。課題は自分でわかってるわね?」
「……はい、マネキンの判別に手間取って余計な物にまでバリアを張っていた事。判別が終わるまで時間がかかったこと、ですかね」
「よろしい、実際の人間は質感でもう少し分かりやすいから安心しなさい。で、もう一つはアンタ自身の守りが疎かになってる事」
指を立ててそう指摘するタツマキに、彼は首を傾げる。
「自身の守り、ですか?」
息を整えたシゲオへの返答として彼女は手を軽く振るった。
――すると周囲の瓦礫が集まりパズルのように噛み合ってゆき、あっと言う間に二人を囲う一室が組み上がる。
呆気にとられるシゲオを後目に、タツマキは説明を始めた。
「はい、アンタが建物の中にいる時に爆発事故が起こりましたー」
その言葉と同時に出来上がった壁の一部が吹き飛ぶ。
彼は咄嗟に腕で顔を覆うが、飛んできた瓦礫はすべてタツマキの作ったバリアに阻まれる。恐る恐る目を開けたシゲオの眼前には瓦礫の下敷きとなったマネキンが転がっていた。
「アンタは慌てて超能力を起動し、救助を始めます……すると」
次の瞬間、天井が音を立てて崩れ落ちる。轟音を立てて降り注ぐ瓦礫は二人を押し潰す直前でピタリと静止した。
「天井が崩れてアンタはペチャンコになって死んでしまいました。……こうならないために、最低でもバリアを維持できる程度のマルチタスクはこなせるようになりなさい」
目を白黒とさせる彼の前で無数の瓦礫はふわりと浮き上がり元あったように片付けられてゆく。こくこくと頷くシゲオに、タツマキはパチンと一つ手を打つ。
「ハイ、今日はここまで。まあ、アンタも最初に比べれば大分マシにはなったんじゃないの? 時間は掛かってもマネキン自体は全部判別できてたワケだし」
「……ありがとうございます」
褒められた彼が照れたように笑みを浮かべると、彼女はふんと鼻を鳴らした。
「ま、あとは自主練でもして練度を上げることね。いつも言ってるけど、日常から使って慣らすのよ? 超能力者としてのアンタはハイハイで転んだトラウマで成長を止めてた赤子なんだから」
「あ、赤子……精進します……」
浮かれた弟子に釘を刺したタツマキは腕時計を確認して小さく伸びをする。
「それじゃ、私はそろそろ帰るわ。ここで自主練しても構わないけど、あまり遅くしないようにしなさい」
「あ、はい。今日もありがとうございました」
空の彼方へと消えていく師の姿を見送ると、シゲオは再び瓦礫と向かい合った。
彼は自らの手をじっと見つめ、つぶやく。
「……赤子、赤子かぁ……うん、まあ、頑張ろう」
厳しい評価に少々しょぼくれた声が路地裏に虚しく響きわたった。
※
「今回の怪物は災害レベルの割には弱かったわね、得したわ」
無数の石片が突き刺さり息絶えた様子の怪物を前に、体の線が出る薄手の黒いドレスを着た女が暗緑色のショートヘアを掻き上げた。
怪人の死骸を道の端へ運搬する黒スーツの構成員たちを眺め薄く笑みを浮かべる彼女のもとに、同じく黒スーツ姿で百合の髪飾りを身に着けた少女が駆け寄ってくる。
「お疲れ様です、フブキ様! 協会への報告、完了しました」
「ええ、ご苦労様。じゃあ、今日はここらで拠点へ戻りましょうか」
「「「はっ!」」」
構成員の男たちの返事が周囲に響き渡る。
――彼女らは“フブキ組”。
B級1位のヒーロー、“地獄のフブキ”によって集められた同ランクのヒーローたちで構成され、数の利を活かした効率的な怪人討伐と手柄の分配により全員のランク維持を目的とするヒーロー協会でも最大の派閥である。
「それで、例の少年の手がかりは何か掴めたかしら?」
組で所有する車の後部座席でフブキが尋ねると、握る長い睫毛の男がハンドルを握りながら口を開く。
「……申し訳ありませんが、あまり有効な情報は得られていません。直接接触したオールマイト曰く、本人も目立つ事を嫌い一般人かつ未成年の学生であるからと詳しい情報は伏せているようです」
「新聞に掲載された写真でもブレザー姿と小柄な体格からおそらく中学生程度である事と、髪型がオカッパであることぐらいしか……」
「制服も特に特徴のないありふれたデザインのものですし、小さな写真からでは特定も難しそうですね」
助手席で縮こまる大柄な男と彼女の隣に座る少女が続けて答える。
総じて芳しいとは言えない答えにフブキは表情を曇らせ「一筋縄ではいかない、か」とポツリとつぶやいた。
「……あの怪人災害で救助活動を行っていた能力者の少年。記事の内容が本当なら、私に並ぶ出力すら持ってるかもね」
そんな彼女の言葉に、車内の構成員たちの表情が引き締まる。
「もしヒーローを志すなら私の強力なライバルになり得る。そうじゃないとしても、あれほどの力を遊ばせておくのは勿体無い」
フブキは口元に手をやり、流れゆく車窓の景色を物憂げな表情で眺めながらため息をつくと、空を睨んだ。
「必ず、この少年を私の手中に収めてみせるわ。その能力は姉を超えるための強力な武器にな――え!? あれ? ちょ、ちょっとまって山猿、車を止めてちょうだい!」
「は、はいっ!?」
キィッ、と急ブレーキの音と共に車が急停止する。
キメ顔で台詞を吐く途中で慌て始めた彼女に部下たちが訝しげな表情を向ける中、フブキは車のドアを開けて外へ飛び出した。
「フ、フブキ様……?」
「――高出力の念動力波を検知したわ。姉の波長じゃないし、今確認されてる他の能力者とは比べ物にならない出力よ」
その背を追って慌てて出てきた少女はその言葉に息を呑む。
「っ、じゃあ……?」
「……ええ、件の少年の可能性が高いわ。山猿は他の構成員たちに連絡を入れておいてちょうだい、マツゲ、リリーも行くわよ!」
「「「はっ!」」」
そう言って駆け出したフブキを三人の前男女が追って走る。
路地を進み、人気のない道をゆく三人の視界にはやがて瓦礫の散らばる一角が映り込んできた。
(少し前に大型怪人が暴れた現場? こんな所で何を……ッ!)
再び発せられた力場の波動にフブキが息を飲み、そのあまりの出力は彼女の白い肌を粟立たせた。横に立つ三人も、目の前で繰り広げられる光景に目を剥いている。
(この量の瓦礫、苦もなくこれほど緻密な操作をするなんて、もしかして私より……)
無数の瓦礫がそれぞれが無秩序に、無造作にぐるぐると回りながら宙を舞っている。
巨大な破片の群れが少しずつ角度を変え、まるで立体パズルのようにつなぎ合わされていく光景に、四人は圧倒された。
(……はっ、呆けてる場合じゃなかった)
いち早く我に返り目的を思い出したフブキは小柄な背中へ向けて1歩進み出すと、こほんと大きく咳払いする。
「ちょっといいかしら?」
「……えっ?」
手を踊らせて力場を操作していた少年は突然背後から投げかけられた声に素っ頓狂な声を上げると、弾かれたように振り返った。
「急に声を掛けて悪いわね、少し――」がしゃあん
笑みを浮かべ、なるべく優しげな声で語りかけた声は彼の背後で組み上がりつつあった瓦礫の崩れ落ちる音に半ばから押し流された。
あまりに格好のつかない状況にフブキは笑顔のまま固まり、組員達は内心で頭を抱える。そんな様子に困惑しつつ、少年は口を開く。
「え、ええと……何かご用でしょうか?」
「……こほん、少し前にA市を襲った怪人災害の最中に超能力を使って救助活動を行っていたのはアナタで間違いないわね?」
気を取り直して単刀直入に切り出したフブキに、少年――シゲオはおずおずといった様子で頷いてみせる。
「ふふ、ずっと探していたのよ。アナタはヒーローを目指しているでしょう、私が仲間に入れてあげるわ」
「えっ」
いきなりそんなことを言われて素っ頓狂な表情で固まった彼に、フブキはフッと笑い言葉を続ける。
「自己紹介が遅れたわね。まあ知ってるでしょうけど、私はB級1位のヒーロー“地獄のフブキ”。アナタと同じ、超能力者よ」
「は、はぁ……」
「私はB級ヒーローの中から優秀な者を集めて組織を作っているの。その組織、“フブキ組”へアナタを迎えに来たの」
そう言って不敵な笑みを浮かべる彼女に対し、シゲオは曖昧な表情のまま黙り込んでしまう。そんな様子に、フブキの内心はにわかに焦りがにじみ出し始める。
……おかしい。これだけの力を持って災害救助活動を行う善性もあり、こうして鍛錬もするほど意欲に満ち溢れているならば、ヒーローを目指しているのは明らかなのに、と。
「えーと、わざわざ誘ってもらって申し訳ないんですけど……」
少しばかり考えるような仕草を見せつつもやがてそんな風に断りを入れようとした彼の言葉を遮り、フブキは口を開く。
「遠慮しているのかしら? 災害救助へ積極的に参加するくらいなのだからアナタはおそらくヒーローを目指しているのでしょう? 大丈夫よ、アナタくらいの年齢でも力さえあればヒーローになる事に問題はないわ、現に貴方よりも年下のS級ヒーローだっているのよ? 私の見立てならアナタは私ほどじゃなくても十分に強力な超能力者だし、なんなら確実にB級からスタート出来るように下駄をはかせるように協会へ一筆書いてあげてもいいわ。それから……」
必死だな。
などという感想を口にする者は流石にいなかったものの、そんな風にまくし立てる彼女にシゲオは目を白黒させる。
そしてフブキはちらりと背後を振り向き、ハラハラとした表情で事態を見守る少女に目をやると──パチンと手を打った。
「ええと、そうだわ! 見たところアナタ中学生くらいでしょう?」
「そうですけど……」
彼がおずおずと肯定すると彼女は後ろを振り向き、戸惑い顔の少女――三節棍のリリーの背をぐいと押してシゲオの前に突き出した。
「えっ、えっ、ふ、フブキ様……?」
「この可愛い子はアナタと同年代だけど、フブキ組の立派な構成員なのよ! ほら、リリー、挨拶なさい」
「は、はい、えと、あの、B級ヒーロー“三節棍のリリー”です……」
フブキの顔をちらりと伺いながらも、少女はぺこりと一礼する。ゆるやかに揺れる百合の髪飾りを眺めつつ、シゲオも会釈を返す。
「えっと、どうも、シゲオです……?」
千載一遇のチャンスにテンパった様子でなりふり構わず空回りし続けるフブキに、シゲオは宗教勧誘みたいだな、などと内心思った。
「どう? フブキ組へ入りたくなってきたんじゃないかしら?」
「えー、と。ホント申し訳ないんですけど――」
ピキリ、とフブキは再び笑顔のままフリーズする。たっぷりと数秒は硬直してからようやく再起動を果たした彼女は、ついに余裕を完全に失い彼の肩へがっと掴みかかる。
「な、なんでよっ、リリーじゃ不満だっての!!?」
「うわっ! い、いやそうじゃないですけど!?」
まるであてがわれた女に不満があるから断ったかのような彼女の言い草に、シゲオは全力で首を振る。
「じゃあなんだっての! 私の野望の為にも、アナタには絶対フブキ組に加入してもらうわよ……!」
「そ、そんなこと言われてもっ……」
涙目で少年の肩を揺するフブキ、困惑した表情でなすがままに揺すられるシゲオ、尊敬するリーダーの乱心に狼狽えるマツゲと山猿。
混迷を極めた路地裏の中で、フブキの言い草のせいで告白したわけでもないのにフラレたような微妙な心持ちとなっていたリリーはふと視界の隅に人影を見つける……と。
「……フブキ、アンタその辺にしときなさい」
「はあ!? このレベルでフリーの超能力者なんて、組に引き入れない、選択肢……はっ!?」
ガクガクとシゲオの肩を揺さぶっていたフブキは頭上から降ってきた声に動きを止め、ガバリと顔を上げて目を剥いた。
「お、おおおお、お姉ちゃん!?!?」
静かに高度を落し地面へ降り立った人物――タツマキに、フブキは激しく動揺した様子で目を泳がせる。
「な、なんでお姉ちゃんがこんな所に……はっ!」
何かに気づいた様子の彼女は、掴んでいた華奢な両肩をぐいっと引き寄せて奪われまいとするように抱きすくめた。
「わぷっ!?」
二つの大きく柔らかなクッションに圧迫され、顔を真っ赤にしてもがくシゲオへ深い嫉妬の篭った3人分の視線が突き刺さる。
「だ、ダメよ! この子は私が先に見つけたんだから! というか、お姉ちゃん一人で十二分に過剰戦力でしょうが!!!」
吠えるフブキに対し、タツマキは――妹の胸に顔を押し付けられて茹だった様子のシゲオも含め――ジト目で見つつ大きくため息をついた。
「……あのねぇ。派閥ごっこは結構だけど、そこに一般人を巻き込むのはよしなさいって言ってんの」
「ああっ!!」
タツマキの右手がクイッと引き寄せるような動きをすると、フブキの胸の中からズルリと茹でダコが引きずり出される。
捕まえようとするフブキの手は虚しく空を切り、そのまま勢い余ってその場に膝をついて転んでしまう。
「わ、あ……あ、ありがとうございます先生、助かりました」
「あら? そんな事言って、随分と堪能してたようだけど」
「い、いやそんな……!」
地面に降ろされた少年と姉の会話に、フブキは目を見開く。
「──先生? えっ、先生ってどういう事!?」
「え? どうもこうも、オールマイトに頼まれてこの子の超能力の扱いについて指導してるだけよ」
そんな回答を聞いた彼女は呆然とした表情のまま腰砕けとなり、ヘナヘナとその場にうずくまってしまった。
「そ、そんな、既にお姉ちゃんがツバつけた後だったなんて……」
「「フブキ様っ!?」」「お、お気を確かにっ!!」
「フブキ組の戦力大幅増強計画が」などとうわ言をつぶやくフブキと失意に暮れる上司を前に右往左往する組員たち。
「そういえば、帰ったんじゃなかったんですか?」
そんな騒々しい一団を横目にシゲオがそんな疑問を口にすると、タツマキはフンと鼻を鳴らしつつ妹へ視線を向ける。
「帰る途中に
彼女の言葉に、倒れていたフブキはビクリと肩を震わせる。
まるで叱られるのを恐れるようにプルプルと震えだす妹に、タツマキは額に手を当てながら大きくため息をつく。
「──この私を超えるために、派閥を組んで色々やってるのは結構」
腰に手を当て、小さな体躯で見下ろしながらタツマキは言う。
「どっかの筋肉バカは例外としても毎月の事件解決数でみれば
タツマキはその
団体と個人という違いはあれど、解決数上位勢である彼女を上回る数の事件を捌くのは並大抵ではない。
「組織を指揮し効率的に活動するのはいいと思うわ。協会でも評価されてるし、なんなら私も褒めてあげたいくらいよ」
「……え?」
そんな言葉にフブキは驚いて顔を上げる。
彼女にとっての
(てっきり、弱者を束ねて私を越えようなんて片腹痛いとか言われるのかと……ッ!?)
「でもね?」
褒められたことで意外そうに目を丸くした彼女の目の前に、ずいっとタツマキの小さな顔が寄せられる。
「ちょーっとばかし、ヒーローにあるまじきことをやってるっていう噂も耳に入ってきてるのよね? 口止めはしてるみたいだけど」
笑顔でそう言うタツマキを前に、フブキの顔からサッと血の気が引くのが周囲から見てよくわかった。
「まあ、脅された程度で折れるヒーローもどうかと思うし? 今のとこ直に見た訳でもないし? まだちょーっと様子見してる段階ではあるんだけどね?」
「あ、あの……お、お姉ちゃん……?」
口元を引きつらせておずおずと姉を見上げるフブキの額へ、タツマキの手がゆっくりと伸びてくる。
(あわ、あわわわ……や、
恐怖にガタガタと震え目を硬く閉じたフブキの額に、ビシリと軽い衝撃が走る。……いわゆる、“デコピン”である。
「“おいた”は程々にしておきなさい?」
「――ひゃい」
ぱたり。呂律の回らない口で返事をし再び地に倒れたフブキを慌てて介抱する三人の姿を横目に、タツマキは深くため息をつく。
「上昇志向があるのは結構なことなんだけどね。ま、アンタがヒーローになりたいなら、一旦この子の下に付くってのもアリではあるわ」
「そうなんですか?」
髪を掻き上げつつそんなことを言う彼女に、シゲオは首を傾げた。
「新人ヒーローの大半は“どうやって活動すればいいか”っていう根本的なところで躓きがちなの。協会じゃ本当に基礎的な事しか教えないし、現役ヒーローにもその辺を手取り足取り教えて回る暇はない。その点、組織に所属すれば勝手にノウハウが叩き込まれるもの」
「なるほど……」
感心したように頷くシゲオだったが、タツマキはてんやわんやしているフブキ組の連中を見て深くため息をつく。
「ま、その子達はそこを克服できたB級の上澄みしか相手しないんだけど。新人を拾い上げて育てるならもっと評価も上がるでしょうに」
まあいいわ、と肩を落として彼女はシゲオに視線を戻すと。
「――さ、今日はもう送ってったげる」
そんな風に行って、自宅方向の空を顎で示した。
「え? でも妹さんたちは……?」
「子供じゃないんだし、勝手に帰るわ。ていうか、立ち直ってまたアンタに絡んで来ても面倒でしょ」
先程のやり取りを思い出した彼はこくこくと頷き、先導するように飛び立ったタツマキの後ろをついて行く。
未だに騒がしい路地裏の一角を少しだけ振り返ってからシゲオは帰路についた。
•影山茂夫の転生者
今回役得だったヤツ。柔らかかったそうです。
順調に超能力者として成長中、でもヒーローになる決心はまだついていないらしい。
•戦慄のタツマキ
某筋肉の影響でヒーローとしての在り方とかに関する意識マシマシ。
妹にも厳しい、かとおもいきや従わない相手に対する競合者潰しなんて噂を聞いても「めっ!」で済ませたくらいにはやっぱり妹に甘い。
他のヒーローがそんな事やってる現場とか見たら多分軽く絞る。
•フブキ組の三人
フブキがご執心なシゲオに対して嫉妬心メラメラ。
•地獄のフブキ
なんと初登場である。原作よりマイルドな姉ではあるが、やっぱり劣等感を覚えるのかフブキ組を結成して姉超えを目指す事で姉に認められたいと奮闘している。
今回、「めっ」とされたので少なくとも当面は過激な活動は控えるとかなんとか。
人生初となる「ファンアート」なるものをはんたー様より頂いたことをここに自慢します。
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