【ボロス編】ONE PUNCH MAN〜ハゲ抜き転生者マシマシで〜【開始】   作:Nyarlan

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転生者たち-3[転生者と魔法]

「あ、セタンタさん。退院したんですね」

「おう、シゲオか。見舞い以来だな」

 

 ある休日、研究所へ顔を出しに来たシゲオは研究所の正門の前に立つセタンタとばったり遭遇していた。

 

「ま、入れ違いにガッツのヤツが入院したわけだが」

「あー、はい……先日、お見舞いに行ったんですけど、その」

 

 シゲオは律儀な事にガッツの見舞いにも行っており――その事を思い出した彼は少しバツの悪そうな顔をする。

 そんな彼の頭を、セタンタは乱暴に撫でくりまわしてやる。

 

「わわっ!?」

「……ったく、ガキンチョがそんな顔してんじゃねーよ」

 

 ボサボサになったオカッパ頭から手を離すと、彼はため息をつく。

 

「確かに、お前さんの超能力がありゃ深海王なんてひと捻りだったろうさ。だが今はまだヒーローでもなけりゃ俺達みたいな賞金稼ぎ(バウンティハンター)でもねぇ、一般人の学生だ」

「……はい、ガッツさんにも同じ事を言われました」

 

 俯きがちにそう言うシゲオの表情はなおも晴れない。

 どうにも彼は、超能力の鍛錬を始めてから――正確には超能力を積極的に使い出してから――こういった()()()()に不要な責任を感じ始めてしまっている。とは、彼の師である戦慄のタツマキの言だ。

 

――この世界では怪人や怪生物を原因とした災害が多発している。

 ヒーローという抑止力を持ってしても、それらによる犠牲者は日々当たり前のように発生しており。今までそれをどこか遠いものに感じていた彼は自らが身に宿す力の強大さを改めて実感した結果、それがあればどれほど人を救えたのかとつい考えてしまうのだという。

 

(……俺達にとっちゃ、都合のいい話だ。こいつ(シゲオ)の行く先がヒーローに傾けば、危機をどうにかできる可能性は上がる)

 

――影山茂夫。シゲオが転生時に与えられた姿は、この世界の元となる漫画“ワンパンマン”と作者を同じくする“モブサイコ100”の主人公のものである。生まれ持った超能力の才能はまさに強大無比。

 原作の本人(影山茂夫)より明らかに練度が低い(シゲオ)ですらセタンタの知る転生者、あるいはこの世界のヒーローと比較しても最上位級の強さである事は明白であった。

 

 彼に力を持つ者としての責任感が芽生えヒーローへの道を進む事は、これから待ち受ける超級の災害に対しての備えとして、この世界で明日を迎えるために必要不可欠な()()と言ってもよいだろう。

――しかし。

 

「相手が敵対的な異生物だろうが、意思を持って会話ができる怪人を倒す事は、瓦礫をどけたり怪物化した植木を毟るのとは訳が違う。ついでに言えばお前ですらも必ず勝てるとは限らねぇ」

 

 セタンタは穏やかに、諭すようにそう声をかけた。

 

「そこがどうしても駄目でやめた新人ヒーローもいるって話だからな。……ま、残り時間は少ないがゆっくりと覚悟を決めてくれや」

「戦わなくていい、とは言ってくれないんですね」

「そりゃ、俺も死にたかないからな! ブライトの野郎の試算じゃ、例の宇宙海賊(ボロス)を倒すのはオールマイト含むS級の総掛りでも厳しいって話だ。そこで負けたら……言うまでもねぇよな?」

「励ますのか脅すのかどっちかにしてください……」

 

 暗い未来を想像して顔を青くする彼に、セタンタはけらけらと笑う。

 

「まあ、ガッツもジャギの治療で大分よくなったって話だし、生きてりゃ大抵なんとかしてくれる。いつか戦う時が来てもそこは安心しろ」

「凄いですよね、傷や骨折も本来の何倍も早く治るなんて魔法みたい。そういえば、セタンタさんの“元ネタ”も魔術使えるんでしたっけ?」

 

 ジャギの治療を受けたというガッツから聞いた話を思い出したシゲオがそんな風に言うと、セタンタは顔をしかめた。

 

「あー、魔術なぁ。残念ながら俺もシロウも使えねぇんだわ」

「え、そうなんですか?」

 

 そんな意外な回答に、シゲオは目を丸くする。超能力があるなら、魔法や魔術もあるだろうと考えていたからだ。

 

「魔術ってのは、どうも完全な我流で何とかなる範囲じゃねえからな。まずTYPE-MOON型(おれら)の魔術に必要な回路の開き方、つーかそもそもホントにあるのかすら分からねえんだよ」

 

 そしてそれを調べるためにセタンタとシロウはブライトに解剖されかけた事もあるのだという。シゲオは少し引いた。

 

「なるほど……じゃあ、魔法や魔術はこの世界にはないんですね」

 

 最も根本的なところから躓いているという魔術事情に、シゲオは少し残念そうに嘆息した。しかし、セタンタはそれに首を振る。

 

「──いや、それが全く存在し無いわけじゃないんだわ。というかちょうど研究所に来てんぜ、“魔法使い”の転生者が」

 

 

 

──研究所、談話室。

 

「……その瞬間、石室内の気温が数度下がったように探索者諸君は錯覚する。床に描かれた紋様が怪しく輝き、地鳴りのような音が鳴り響くと、諸君の目の前で“闇”が宙に浮かび上がる」

 

「その闇の中から滑り落ちるように何かが這い出した。ぬるりとした鱗に覆われた長大な尾が床に落ちると同時に、シューシューと空気を震わせる音が鳴り響くのを諸君は聴いた」

 

「とっさにその音の発生源を探った探索者諸君は──見てしまう。大蛇の尾を持つ巨大かついびつなヒト型が、チロチロと舌を出しながら踏みするように睨めつけたる、縦長の瞳孔を」

 

「──と、いうワケで。召喚された神格『イグ』を目撃した探索者諸君は1/1d10のSANチェックをお願いします」

 

 椅子に座る一人の少女が話し終えると、談話室内に3つの悲鳴が響きわたった。

 

ヴェアアアア!? なんでーっ、今ボスの蛇人間倒したじゃない!?」「召喚阻止したじゃん! 詠唱止めたじゃん〜!」「私の探索者もうSAN値ギリギリなんですが……!」

 

「いやいや、さっき資料室で情報開示したわよね、儀式は生贄の血を魔法陣に注ぐ事で完了するって。拳銃で倒したら当然血が出るし」

 

  阿鼻叫喚といった様相を示す三人にサイコロを差し出しながら、対面に一人座る少女が呆れたように言う。

 

「そうだった。すっかり忘れてた……c2成功」「だってボス現れたらとりあえずしばくっしょ、武器も充実してたし……g4おうふ失敗3、3減少」「h9ハイ当然のように失敗、6、6減少で不定入りまーす……」

「んもー、この脳筋探索者たちめ……あら?」

 

 カラコロきゃあきゃあと姦しい談話室を入り口から覗き込む人影を視界の端に捉えた少女が資料から顔を上げる。

 

「えーと、お邪魔しちゃいました……?」

 

 賑やかな室内をのぞき込んでいた少年――シゲオがそう尋ねる。

 

「あー、こちらこそ騒がしくしちゃって……ってアナタ、もしかして例の超能力者の子かしら?」

「あ、ええと、は、はい……」

 

 腰まで伸ばされた緩やかに波打つピンクブロンドの長髪。肌はシミ一つない白磁の輝きを放っており、切れ長の目は綺麗な鳶色をしている。

 精巧な人形を思わせる端正な顔立ちの少女に見つめられ、シゲオは思わずどぎまぎとしてしまう。

 そんなシゲオの姿を見て、談話室の卓を囲んでいたうちの一人である青髪の少女がからかうように口笛を吹く。

 

「おおっと〜これはこれは? なんとなんと、我ら転生者希望の星が転生者随一のトンチキ(珍妙で意味不明な)娘にたぶらかされてますよ?」

 

 それに便乗するように黒髪の少女が囃し立てると、彼女はカチンと来た様子で立ち上がる。

 

「はぁ? だれがトンチキ転生者ですって? そう言うアンタは転生者随一の本末転倒娘でしょうが」

「喧嘩を売ってるなら買いますよこの貧乳」

「おあいにくさま、わたしはこれが究極にして完成形なの。しかしまあ、他人(ひと)様の体型をどうこう言うだけあってご立派な体型ですこと」

「……ほう?」

 

 黒髪の少女も立ち上がり、赤い目を光らせながらずいと歩み寄るが、対する桃髪の少女はどこ吹く風だ。

 

「あー、もう。その辺にしとこう? その本末転倒ってのは私達の大半が刺さるし……というか、その子困ってるよ?」

 

 混沌とした状況を諌めるように、呆れた様子で状況を見守っていた明るい金髪の少女がため息をつく。

 

 

 

「――ええと、もうご存知みたいですけど。“モブサイコ100”の影山茂夫の転生者です、よろしくお願いします」

 

 ぺこりと頭を下げるシゲオにぱちぱちと拍手が響く。

 

「よろろー。んじゃ、つぎ私ね」

 

 そう言って立ち上がったのは、腰まで届く青い長髪の少女。

 泣きぼくろを持ったミントグリーンの瞳は、いたずらっぽい輝きを放ちながら黒髪の少女に視線を送る。「あっ」と何か察したような声を無視して彼女は立ち上がると、いきなり大きく広げた腕を素早く胸の前で交差させた。

 

「――我が名はコナタ! 研究所最新のTS転生者にして、“らき☆すた”泉こなたの姿を借りし者! かがみんとの百合を志し夢破れた私を笑うがいい! 百合は()()ものであり、()()ものではないと私は知った!!」

「!?」「この野郎またやりやがりましたね……!」

 

 呆気にとられるシゲオの前で、青髪に泣きぼくろが特徴的な少女――コナタはドヤ顔のまま着席する。

 

「と、言うわけでコナタでーす」

「こいつめぇ、初対面の時といい勝手に人の持ちネタを……じゃあ次! 私が本物ってヤツを見せてやりますよっ!」

 

 苦々しい表情でコナタの自己紹介を見ていた黒髪の少女は勢いよく立ち上がると、ダッシュでどこかへと走り去る。

 

「ええ……?」

「ごめん、悪いけど待ってあげてくれる?」

 

 困惑しっぱなしのシゲオに桃髪の少女がため息をついてそう言うのとほぼ同時、乱暴な足音とともに黒髪の少女が戻ってきた。

 

「ぜぇ……ぜぇ……お待たせ、しました……!」

 

 肩で息をする彼女はどこから持ってきたのか顔の様な模様が施されたトンガリ帽子と黒いマントを身に着け左目には眼帯、そして右手には宝玉のようなものが付いた長い杖が握られている。

 

「ふぅ、ふぅ……よし!」

 

 呼吸を整えた彼女は大きく息を吸い、キレキレのポーズを決めた。

 

「我が名はメグミン! “このすば”の爆裂娘(めぐみん)となりて、ぼっち少女(ゆんゆん)と百合の花を咲き乱れさせんと目論む前世を持つ者ッ!」

 

ばさりとマントを強く翻し、赤い目をぼんやりと光らせながら少女は杖を掲げる。

 

「我らが覗きし変転する性の(TS転生)深淵を知りたいか? ならば教えてやろう! 心の伴侶(推しキャラ)触れ合い(イチャラブし)たいと願うなら! 清き花園を汚す(百合に挟まる)事を恐れず、汝ありのままに征くべし(TS転生はやめておけ)と!」

 

 言いたい事を言い終えると、少女――メグミンは遠い目をしてふっと笑い、そのまま着席した。しん、と静まった談話室の中で、彼女は金髪の少女に目配せした。

 

「さ、口上は纏まりましたか? 次はあなたですよ」

「えっ、私もこの流れを継承するの!?」

 

 無言で圧を掛けるメグミンとコナタの期待に満ちた視線に負け、彼女はヤケクソ気味に立ち上がり、見様見真似にポーズを取る。

 

「え、えーと、えーとっ……ん、ん゙ん! あー、わ、我が名はココア! えー、“ごちうさ”の保登心愛(ほとここあ)の転生者にして、ラビットハウスでチノちゃんと仲良くなりたいと願った者! 想いは変わらずとも、色々と邪心は抜けましたっ!」 

 

 顔を赤らめながらも、口上を言い切った少女――ココアが着席する。

 ぱちぱちと小さな拍手を受けてやや満更でもなさそうな表情をしている辺り、彼女も案外悪ノリも嫌いではないらしい。

 

「……と、いうワケで。我ら3名、本末転倒型TS転生者です」

 

 そんな風に3名を総括するメグミンに、シゲオは首を傾げる。

 

「えと、女性キャラを選んで後悔しているって事ですか?」

「そこは別に後悔って程でも……。ぶっちゃけ、曲がりなりにも十年以上女の子やってきたので、今更記憶を取り戻したとして()()というものでもないんですよね」

「単に、“前世で推しキャラと百合百合しい関係になりたいと思ってTS転生したのに、女の子を性的な目で見れなくなっちゃった”ってだけの話だねー。まさに本末転倒!」

「そもそも目当ての推しキャラもこの世界には居ないしねぇ、私も記憶が戻った頃には初恋が男性アイドルだったぐらいだし」

 

 そして“仮に推しが居たとしても中身が違うのでさほど嬉しくもない”という身も蓋もない結論に、シゲオは苦笑いを浮かべた。

 

「と、そんな中で異彩を放つのがそこのトンチキ転生者です」

「だから、誰がトンチキよ。……さて、私も自己紹介しようかしら」

 

 そう言って、桃色の髪の少女がおもむろに懐から白い棒を取り出して立ち上がる。左手に先程まで使っていた本(TRPGのルールブック)を開き持ち、右手の杖を頭上へ掲げる──すると、風もないのに彼女の服や長い髪が緩やかには波打ち始める。

 

「我が名はルイズ。転生者随一の美少女にして、稀有な力たる虚無(ゼロ)の魔法をこの身に宿す者――」

 

 その言葉と目の当たりにした現象に、シゲオはここへ来た目的である“魔法使いの転生者”が彼女である事に気付いた。

 一体どんな魔法を見せてくれるのかと彼が期待していると――。

 

「――この至上の美貌に見惚れたか? ならば我とともに美の深淵を鑑賞する権利を汝に与えましょう」

 

 ドヤ顔でそう宣言し、彼女は杖を仕舞い込んで代わりに写真の束を取り出してシゲオに手渡した。彼女自身のブロマイドである。

 更には彼女自身も更に写真を取り出してそれを舐め回す用に見つめ始めた。

 

「ふふっ、やっぱりルイズはかわいいわ……最ッ高……!」

「ええ……?」

 

 目を輝かせながら蕩けた表情で自らのブロマイドに頬擦りする彼女の姿にシゲオが困惑していると、メグミンが深くため息をつく。

 

「……わかりましたか? これが彼女がTS転生者随一のトンチキと言われる所以。我々が“推しと絡む”のを目的に転生先を選んだのに対して、彼女は“推しに()()”のを目的とした上、その感性を維持し続けているのです。前世の自我が無駄に強固ですよね」

「記憶が戻る前も暇さえあれば鏡眺めたり自撮りして部屋に貼り付けていたって言うから筋金入りだよね〜」

「ある意味尊敬に値するよね、うん」

「えぇ……」

 

 四人の畏怖の視線を一身に受けながら自分自身のブロマイドをひとしきり眺めたあと、ルイズは満足気な吐息をもらしながら写真を大切そうにしまいこんだ。シゲオも貰ったブロマイドをそっとポケットに入れる。

 

「……さて、自己紹介は済んだわね。わたし達に何か用事かしら?」

「うわぁ! いきなり 落ち着くな!」

 

 すん、と急激に表情を引き締めた彼女にコナタがどこかで聞いたような野次を飛ばすと談話室にどっと笑いが起こり、ルイズは「なによー」とむくれた。

 

「ええと、魔法使いの転生者がいるとセタンタさんから聞きまして」

 

 シゲオがそう言うと、4人は納得したように「あー」ときれいに声を揃えて頷いた。

 

「なるほど、魔法を見に来たのか〜。たまに居る、って言うか私もその子との出会いはそんな感じだったし」

「魔法だもんねー、やっぱり気になるよね」

「右に同じく、自分が得られなかった(まほう)を持ってる人が居ると聞けばやっぱり気になりますからね……」

 

 「あるあるー」と口々に頷く三人。

 

「なんだ、ルイズ(わたし)の美少女っぷりを見に来たわけじゃないのね。残念だけど、見せられる魔法はすごく地味なのしかないわ」

「そうなんですか?」

「残念ながらね。……ところであなた、“ゼロの使い魔”(わたしの元ネタ)についてどれくらい知ってる?」

 

 彼女の質問に、シゲオが「名前くらいは」と答える。

 その返答に、ルイズはやや残念そうな面持ちで説明を始めた。

 

ルイズ(わたし)は一般的な魔法がほぼ使えない代わりに特別な魔法が使えるキャラなんだけど……ブライト博士やオールマイトから可能な限り魔力は温存するように頼まれてるの」

「え、あの二人から?」

 

 最強の転生者にして不動のNo.1ヒーローと、転生者たちの元締めにして頭脳。そんな二人から直々の要請。

 不意に転がり出てきた予想外の名前に彼は思わず目を見開く。

 

「そ。ルイズはね、()()()でも研究所の最終兵器の1人なんだって、凄いでしょ」

「なんでアンタが自慢げなのよ……ってか()()()ってなによ()()()って」

 

 何故かドヤ顔で無い胸を張るコナタに、ルイズはジト目で一睨みすると、大きくため息をついて説明を始める。

 

「わたしは、というかルイズは精神力……いわゆるMPを年単位で溜め込める特性と、それを消費すればするだけ威力を増す強力な魔法を使えるの。ここまで言えば、なんとなく話が見えてくるんじゃないかしら」

 

 そこまで言われれば、シゲオにもピンときた。

 直近に控えた、世界最大の危機への備えであると。

 

「あ、対ボロスの……!?」

「そ。ブライト博士曰く、“悪足掻きのセカンドプラン”ですって。オールマイト及びS級ヒーローが破れたときが私の大舞台よ」

「オールマイトがほぼ相打ちってくらいギリギリ負けたとかでもなきゃ倒せる保証はないってのが“悪足掻き”感出てるよね」

「……無駄撃ちできないから実際どこまで威力が出るか測れないんだもん、しょうがないでしょ」

 

 コナタの補足に、ルイズは拗ねたようにそう言った。

 そんな彼女を横目に、メグミンとココアがシゲオに視線を向ける。

 

「ま、そういう訳ですから、転生者一同アナタの活躍には期待してるんです。……ホントに頼みますよ?」

「無責任なお願いなのは分かってるけど、もしもヒーローが負けちゃってたらって思うと、凄く怖くて……ご、ごめんね、プレッシャーかけちゃって……」

「――――――――」

 

 縋るような視線を受けた彼は思わずたじろいでしまう。

 転生者故、確かに彼も訪れる脅威を知っている。しかし。

 

 ――彼は知っている。本物には程遠いと卑下しながらも、真に迫る程の強さまで自らを鍛え上げたオールマイトの姿を借りた転生者を。

 

 ――彼は知っている。原作でも圧倒的な強さを誇り、実際に強大無比な力を持つ事を日々間近に感じる戦慄のタツマキというヒーローを。

 

 故にシゲオは、どこか楽観視していた部分があった。なにも自分が戦う必要はないのではないかと。

 そんなところで、先日起きたのが海人族襲撃事件だ。

 転生者たちも比較的楽観視していた中、シゲオの顔見知りでもあるガッツが片腕を失う重症を負った。

 もし、深海王と相対したのがシゲオであったなら、誰にも被害を出さずに撃退できただろう。タツマキに師事した事によって自らの持つ力の強さを実感し始めた彼は、そう思わずにはいられなかった。

 

 ――ボロスを倒すには、オールマイトを含むS級総掛かりでも厳しいって話だ。

 

 先ほどセタンタから改めて聞かされた言葉が、彼の脳裏をよぎる。

 すうと息を整えながら、シゲオは口を開く。

 

「……そう、です、ね。戦うのは怖いですけど、負けるわけにはいかないので……僕なりに、出来る事をやりたいと思います」

「頼むよ〜、勝てたらほっぺにチューくらいはしてあげるからさぁ」

 

 コナタの茶化すような言葉に、ここに来てようやく決意を固められそうな彼が曖昧に笑う。

 そしてルイズが杖を手に、笑みを浮かべた。

 

「――さてと、頑張ってくれるアナタへの(はなむけ)に何か魔法を見せてあげましょうかね」

「え、いいんですか? 魔力の温存は……」

「コモン・マジックなら消費も少ないし誤差みたいなもんよ。さて、何がいいかしらね。念力……は、アナタの方が得意でしょうし、ロック、アンロックは流石に地味過ぎるし……ディティクト・マジック、もいまいちパッとしないのよね……」

 

 わくわくとするシゲオの前で、彼女は考え込む。

 その表情には冷や汗が浮かび始め、ややあって引き攣った顔で杖を握りしめた。

 

「えーと、じゃあ……ライト!」

 

 そう言って彼女が掲げた杖、その先端に眩い光が灯る。

 

「「「「…………」」」」

 

「「「地味ッ!」」」

 

「分かってんのよそんな事は!! しょうがないでしょコモン(一般)・マジックなんだからッ!」

「あ、あはは……」

 

 逆にシゲオが超能力を披露した事により、その場は盛り上がったという。




・セタンタ(クー・フーリン)の転生者
帰り際正門前でシロウ待ちをしていた所にシゲオと遭遇。
まだイマイチ覚悟が決まってないシゲオに発破をかける。
ゼロ魔型魔法は残念ながら習得できなかった。

・影山茂夫の転生者
ようやく戦う決意が固まりつつある男。
ルイズのブロマイドはそっと持ち帰った。

・泉こなたの転生者
TS転生して推しと百合したかった転生者その1。ルイズと同じ学校。
比較的新参の転生者だが、すごく馴染んでる。
シゲオの力も合わせた上でボロスを討伐できたらほっぺにチューしてあげると約束した。
「多分次期S級ヒーローだし、軽くツバつけといて損はないよねー」

・めぐみんの転生者
TS転生して推しと百合したかった転生者その2。
めぐみんロールプレイは転生者(内輪)限定、素は割と大人しい。
「コスプレ衣装はブライト博士に頼めば格安でハイクオリティの物を作ってくれます。ガチ装備はタバネさんやジョウタロウさんですね」
「魔法? 冒険者カードが作れないせいか使えません。ルイズのも体系が違うのか無理でした……どうも、魔力自体はあるそうなんですが」

・保登心愛の転生者
TS転生して推しと百合したかった転生者その3。
比較的常識人なせいかキャラが薄い。家が近いので研究所食堂でバイトしてる。
イケメン男性アイドルか初恋な割と普通の女子に仕上がった。そのアイドルは何気にアマイマスク。
が、最近はテレビでオールマイトとアマイマスクのツーショットをみるとドキドキするらしい。
大体アマイさんの態度のせい。
「オールマイト×アマイマスク……だ、ダメダメっ! 面識ある身内で掛け算なんて……!!」

・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの転生者
推しに()()ことを選んだヤベーやつ。
コナタと同じ学校に通うルイズコピペを暗唱できる女。
ラノベ表紙とかを再現したブロマイドは常に持ち歩いているが、スイッチが入らない限りは割と普通。
転生者陣営の隠し最終兵器の一人であり“悪足掻きのセカンドプラン”、もとい16年溜めた魔力でエクスプロージョンをブッパする係。
なおブライトの試算では“ワンチャンなくはない”程度だとか。虚無覚醒済み扱いなのかコモン・マジックは使える。
「ゼロ魔型の魔法は血筋が重要みたいで、他の転生者には使えないみたいね、うちの家系でも血が薄まりすぎてラインメイジすら希よ。わたしの魔力の強さは隔世遺伝によるものですって」
「サモン・サーヴァント? 少なくともヒト型の誰かが呼ばれるんでしょうけど、分ってて拉致するのはちょっと……。ワールド・ドアの魔法も呪文思い出せないし、異世界から召喚しちゃうと帰せないもの。あと、なんかとんでもないもの呼び出しても困るし」

・TRPGルルブ
経験者たちの前世の記憶を結集してブライトがこの世界の別作品のルルブを改変して編纂したもの。
クトゥルフ以外にも何種類かあり、最近の転生者達の中ではサタスペやシャドウランもアツいらしい。

今回はTS転生者少女組が登場。
おそらく出番は少ないので補足マシマシ。彼女らはインドア派でユリコさんはスポーツ少女なのであまり趣味が合わないとかなんとか。
ユリコさんの例もあるように、当作品でTS転生すると割と普通に女の子になってしまいます。封印された過去の記憶よりも直近の十数年の経験の方が重い上、大抵の場合思春期迎えてから思い出すので。

ちなみに彼女らはヒロインとかでもなく、ルイズ以外は特に役割もない半モブの一般人。ルイズに関してはボロス戦でオールマイトたちが敗北した場合宇宙船ごと粉砕する役割がある。
ちなみに作戦は“ヤケクソ決死のサードプラン”まで存在する。
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