【ボロス編】ONE PUNCH MAN〜ハゲ抜き転生者マシマシで〜【開始】   作:Nyarlan

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第十六話 - 迎撃作戦

「A市上空を覆う巨大な宇宙船が砲弾の雨を降らせてくる。当然、これを素直に受ければ夥しい死者が出る事になるが……キミには、これの迎撃を行ってもらいたい

 

 某日。ブライトからの呼び出しを受け研究所で行われた会議に参加したシゲオは、そう告げられた。

 

 


 

 

――A市・ヒーロー協会本部。

 その黒く巨大なビルの屋上にシゲオは立っていた。

 見上げた空はまばらに浮かぶ白い雲がゆっくりと流れる気持ちの良い晴天。

 ……しかし、それを見る彼の心の中には暗雲が立ち込めている。

 

 行き交う無数の車の群れ。休日でも忙しそうに歩く姿のサラリーマン。楽しそうにふざけ合いながら歩く学生たち。

 仲睦まじく寄り添い歩く恋人たち。小さな子供を乗せたベビーカーを押しながら、笑顔で会話する若い夫婦。

 杖をつきゆっくりと横断歩道を渡る老人。その老人の手を引き、信号を渡るヒーローらしき男性。

 

 ビルから見下ろす眼下では、人類圏で最も栄えた都市に相応しく広大な街並みが広がり、人々の営みが行われていた。

 

 ――その光景は、キミが護らなければ地獄に変わる。

 

「……っ!」

 

 シゲオは、ブライトに言われた言葉を思い出して身震いする。この惨劇を防げるのは、()()()()()()()()()()()()()()()しかいない。

 こればかりは転生者(にせもの)のオールマイトではカバーしきれないのだと告げた時のオールマイトの表情はシゲオの脳裏に強く焼き付いていた。

 

 転生者たちの持つ“原作知識”は大きな力ではあるが、出処の明かせないこの情報は活用手段がかなり限られている。

 ……親交の深いオールマイトが言いくるめてタツマキと共に待機する事は不可能ではないだろう。

 事実、シゲオが現れなければやむを得ずそうする計画であったという。しかし、実際に事が起こってしまえば、情報の出処を深く追及される事は避けられない。

 それらのリスクを避けた上で、A市の防衛を成し遂げる為には彼の力が必要不可欠なのだ。

 

「大丈夫……範囲も、質量も問題ないことは確認済み……あとは、焦らずに実行するだけ……僕が、やらなきゃいけない」

 

 無数の命を背負うプレッシャー。

 そして、この街を瓦礫と死体の山へ変えんとする殺戮者の存在が彼の心に恐怖を滲ませる。

 彼は未だ平和な街並みから目を逸らすと、重圧を課してきた張本人たちの一部がいる会議室の方へと恨めし気な視線を向けるのだった。

 

 

 

 

「全くもう、急に呼び出すから塾を放り出して来る羽目になったじゃないか。ずっと前から予約してくれてる受講者なのに……」

 

 チン、という軽快な音とともにエレベーターの扉が開くと、ブツブツと苛立った様子でつぶやきながら一人の少年が足早に歩き出す。

 彼は口に咥えたロリポップキャンディを乱暴に噛み砕き、咀嚼しながら廊下を進んで指示された会議室の扉の前まで辿り着く。

「久しく――ノリが道場に――から――ウも張り合いが無さげで困っておるぞ?」

「いや申し訳ない、何せ最近は――でして。それよりジ――女の様子は――」

 

「急いで来たけど、もう割と集まってるみたいだな……」

 

 扉から漏れ聞こえる会話に気づいた彼は、小さくため息をつくと扉に手をかける ――と。

 

「失礼しま――もふっ!?

 

 扉をあけてすぐ目の前に現れた白く巨大な何かに、少年は頭から無防備に突っ込んでしまう。

 それとほぼ同時に彼の後頭部はロックされ、その顔面は柔らかい何かに埋もれるように捕獲されてしまった。

 

「イサムきゅぅん、おっひさー♡」

もがああああっ!?

 

 頭上から降ってきた声に全てを察して少年――イサムは慌てて藻掻くが、彼の年齢相応の小柄な身体はガッチリとホールドされてしまって全く抜け出せない。

 

「タバネくん、イサム少年が窒息してるからその辺に……」

「おおっと、ゴメンネ! よいしょっと」

 

 ふわりと足元に浮遊感を感じると同時に、イサムの顔面はようやくその大きく柔らかな圧迫から解放された。

 

「――ぷはあっ! もうっ、いきなり何するんですか!」

 

 彼が荒く息を吐きながら目を開けると、目にニコニコ笑顔の女性――元・妹弟子(タバネ)の顔面が飛び込んでくる。

 その頭には機械式の兎耳が彼女の感情を表すようにピコピコと跳ねていた。

 

「めんごめんご、いやあ、最近忙しくて全然会えなかったからイサムキュンゼピンの摂取がしたくてさぁ……すぅ――

んぎゃーっ、なに頭嗅いでるんですか!?」

 

 自分の髪に顔を埋めるという蛮行にはイサムも全力で抵抗した。そして顔をトマトのように赤くしながらぷりぷりと肩を怒らせる彼の姿に周りは苦笑するばかりであった。

 

もうっ、先に来たならふざけてないでこれが何のための招集なのか教えて下さいよ! こっちは何ヶ月待ちの受講生を放り出してやって来たんですからね!」

 

「あー、その事なんだがね」

 

 怒り心頭といった様子の彼に横から大きな影が話しかける。小柄なイサムが見上げると、そこには申し訳なさそうに佇むオールマイトの姿があった。

 

「実は我々も未だ詳細は聞かされていないんだ。“とても大事な案件だから全員揃ってから話したい”との事だよ」

「……オールマイトさんでもまだ教えてもらえていない、と。じゃあ焦ってもしょうがない、着席して待ちましょう」

 

 そう言って彼は深くため息をついた。

 

 

 

 それからしばらく経ちS級ヒーローたちの集合が終わると、特徴的な形をした鼻の中年男性が慌ただしく入室してくる。

 

「……皆よく集まってくれた、私は今回の説明役を任されたシッチだ。メタルナイトは連絡が取れない状況にあるため欠席となる」

 

 男――シッチはかっちりと着込んだスーツの首元を緩め、ハンカチで汗を拭いながらぐるりと会議室へ視線を巡らせる。

 

 

 一人はピチピチの囚人服に身を包む筋骨隆々とした青髭の巨漢、S級15位ぷりぷりプリズナー

 

 一人はバッチリ固めたリーゼントがトレードマークの改造学ランを着た青年、S級14位金属バット

 

 一人はタンクトップの力を十全に引き出すべく鍛え上げた肉体を誇る金髪の大男、S級13位タンクトップマスター

 

 一人は女性と見紛うほどにしなやかに締まった細身の肉体を持つ長い金髪の男性、S級12位閃光のフラッシュ

 

 一人は個性豊かな面々の中でも一際異彩を放つ、白い犬の着ぐるみに身を包んだ男、S級11位番犬マン

 

 一人は極限まで肥大した筋肉を美しく黒光りさせているこの面々で最大の大入道、S級10位超合金クロビカリ

 

 一人は持ち込んだ食料をひたすらに貪っている規格外の肥満体の男、S級9位豚神

 

 一人は全身を漆黒のボディアーマーで覆い、モノアイを赤く光らせるサイボーグ、S級8位駆動騎士

 

 一人は女性の膝の上で諦観の表情を浮かべる一同の中でぶっちぎり最年少の男子児童、S級6位童帝

 

 一人は童帝を膝に抱えてご満悦な機械の兎耳を頭につけたグラマラスな女性、S級5位ホワイトナイト

 

 一人は特徴的な茶筅髪に和装姿というサムライ然とした姿の男、S級4位アトミック侍

 

 一人は集まった面々の中でも最高齢であろう銀色の髭を蓄えた老人、S級3位シルバーファング

 

 一人は身体の線が出る黒の薄いドレスに身を包んだ少女然とした華奢で小柄な女性、S級2位戦慄のタツマキ

 

 そして最後に、青を基調とした三原色のヒーロースーツにマッチョボディを押し込んだ彫りの深い金髪の超人。

 ――S級1位、オールマイト

 

 

 この広い会議室の中には人類の領域を守護する協会所属ヒーローの中でも別格の存在たる()1()5()()()S()()()()()()の内、メタルナイトを除く全員が所狭しと勢揃いしていた。

 

「……んで、今回はなんの集まりなんじゃ」

 

 シルバーファングが口火を切ると、その横で肘杖をついたタツマキが苛ついた様子でため息を吐く。

 

「この忙しい私達をなんの説明もなく2時間も待たせて、協会は一体どういうつもり?」

 

 口には出さずとも他の者も同感だったらしく、何人かは同意するように小さく頷いた。

 

「待たせたことに関しては謝罪しよう。しかし今回の案件はどうしても君たち全員に揃って聞いて貰いたかったのだ、できればメタルナイトにも出席してもらいたかったが……これ以上は埒が明かない」

 

 シッチは静かに目を開くと、全員を見渡しディスプレイも兼ねたテーブルに手を置いて身を乗り出す勢いで口を開いた。

 

「ヒーロー界の頂点に立つ君たちに集まってもらったのは他でもない、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そんなあまりにも漠然とした内容に、彼らの大半は面食らった様子でシッチの顔を見返した。

 その視線を彼は受け流し、強い視線で一同を睥睨した。

 

「……今回ばかりは超人揃いの君たちとて命を落とす可能性もある、今なら退席してもS級に籍は残すと約束しよう。しかし、話を聞いたからには事が終わるまで軟禁させてもらうこととなる。完全なる対外秘としなければ大きな混乱を生みかねないからな」

 

 聞く覚悟はいいか、と問うシッチの言葉に会議室はシンと静まりかえる。その静寂を、デスクへ乱暴に脚を乗せる音が突き破る。

 彼らが音の発生源に視線を向ければ、学ランの青年――ヒーロー、金属バットが青筋を浮かべてシッチを睨みつけていた。

 

「その話、本当に俺達をここに足止めするだけの内容なんだろうなぁオイ。こっちは大事な妹の大事なピアノ演奏会を抜け出して来たんだ……大したことねぇ話ならこの本部ぶっ潰すぞコラ

 

 苛立ちを隠せない彼を含め、当然の如く誰一人席を立つ者はいない。シッチは目を伏せ、静かに語り始めた。

 

「大預言者シバワワ様が死んだ」

 

 その言葉に、何人かが眉を顰める。

 

「……殺されたの?」

「いいや、事件性はない。半年後までの未来を占っていたところ、気が動転したのか息が荒くなり咳が出たため、のど飴を口に入れたら喉に詰まって死んだらしい」

 

 緊張を帯びたタツマキの声色に対するそんな答えに、会議室の空気がやや弛緩する。

 

「なるほど、今後は未来予想抜きで災害対策をしなければならない、というのが今回の話の核だな?」

 

 クロビカリが白い歯を見せながら言うと、彼は首を振る。

 

「……シバワワ様は全てを見通す訳ではない、これまでも予知抜きで切り抜けた災害は数多くあるのだ。しかしそれでも我々がシバワワ様の身辺警護をし特別扱いしていたのは、その予言が決して外れることがないからであり――問題の核となるのは」

 

 彼はおもむろに懐から一つの紙片を取り出すと、テーブルに備え付けられたスキャナの上へとそれを置く。

 

「シバワワ様が喉をつまらせながらも最期に書き遺してくださった、この小さなメモにあるこれが、最後の大予言文!」

 

 テーブル全体が光り、全員が見えるように巨大化したホログラムが卓上をゆっくりと回転していた。

 

 

――地球がヤバい!!!

 

 

「読めるな? 地球が、ヤバいのだ!!!

 

 冷や汗を顔いっぱいにかきながら宣言するシッチ。

 

「いいか、シバワワ様の予言はこれまで100%確実にすべてが的中してきた! 危険生物の発生、大地震、洪水! あらゆる大災害を予知してきたが取り乱したり、ましてや“ヤバい”などと表現した事はこれまでに一度もなかった……!!」

 

 怯えるように震えながらも、彼はテーブルを強く叩く。

 

「過去に数多の犠牲を生んだ自然災害や鬼や竜レベルの怪人の襲来を、遥かに凌駕するような“ヤバい”事態が起きようとしている、それも半年以内にだ……!!」

 

 肩で息をしながらそう言い終えたシッチの言葉を受けて、会議室内はシンと静まり返る。

 ヒーローたちが沈黙する中、オールマイトとホワイトナイトは静かに視線を合わせた。

 

 

 

 

「ううっ、緊張してきたぁ……!」

 

 A市の中央にあるオープンカフェで、明るい金髪の少女が身震いしながら空をチラチラと伺っている。

 

「いやいや、私達が緊張してもしょうがないっしょ」

 

 そんな様子に隣に座る青髪の少女は苦笑する。

 

「でも、防ぐとはいえ砲弾が降ってくるんですよ? コナタは怖くないんですか? 私は地味に後悔してますよ……」

「別に二人とも私に付き合わなくてもよかったのにー」

 

 それに同席する黒髪の少女も同じく小刻みに震えながら縮こまるように席に座っている。

 目の前に置かれたカフェオレは手付かずのまますっかりと冷めてしまっていた。

 

「まー、私も怖くないわけじゃないけど。どうせ私の家A市だし、もし万一負けちゃったらどこに居ても同じだし?」

 

 青髪の少女――コナタはそびえ立つヒーロー協会本部ビルを仰ぎ見ながら微かに震えるスプーンでパフェをすくって口へ運ぶ。

 

「それなら、せっかくだしやれることやった方がまだ怖くないかなって思ってさ。それに……ルイズは役目があって逃げられないしね」

 

 パフェのフレークを咀嚼しながらそう言うコナタに、黒髪の少女――メグミンは冷えたカフェオレを一気に飲み干した。

 

「……あーもうっ、一人だけカッコイイこと言いよってからにっ! いいでしょう、私だってなけなしの勇気を振り絞ってやりますよ!」

「わ、私も――ってきゃっ!?

 

 決意表明のために声を上げようとした少女――ココアの言葉を遮るようにA市に突風が吹き荒れた。

 慌ててスカートを押さえた三人が仰ぎ見ると、空を翔ける5つの影がヒーロー協会本部ビルへ攻撃を仕掛けているのが視界に入る。

 

 ――そして。

 

「……っ、来るよみんな!」

 

 次の瞬間、燦々と降り注ぐ真昼の太陽光は突如として現れた巨大な物体に遮られ街に広大な影を落としていた。

 

 

 

『うふわははははっ! 深海王も地底王も滅びた今、ヒーローとやらを消せば地上は我らのもの! この天空王についてこい!』

 

「…………っ!!」

 

 ビルと空気を揺らしながら耳をつんざく爆発音に耐え、シゲオは機を待っていた。

 

――時が来れば、前兆として“天空王”一行がビルを襲撃してくるはずだ。これは時報だと思って無視して構えておいてくれ。大事なのはその後だ。

 

 ブライトの言葉を守り、彼は屋上の物陰で時を待つ。

 恐怖をねじ伏せ、勇気を奮い立たせながら。

 

――君がやるべき事、君にしかできない事はただ一つ。

 

 不意に、連続していた爆発音がパタリと止む。

 

「……ここ、だっ!」

 

 それと同時に、シゲオは空を――突如として出現した巨大な宇宙戦艦を睨みつけると同時に、予め張り巡らせておいた微弱な力場の()へと渾身の力を流し込む。

 

――超能力は精神(こころ)の力よ。ビビってたら力なんて出ないわ。

 

 いつか聞いた師の言葉を胸に、彼は心に火をつける。 

 この街の罪なき命が奪われる。日常を謳歌する知らない人々が、彼も知る友人知人が。

 そして信じて手伝いに来た転生者(どうほう)が。

 侵略という理不尽な殺戮に晒される。

 

 燃やした怒りで恐怖を塗りつぶす。

 火が灯る心は力を帯び、街の上空へ蜘蛛の巣状に張り巡らされていた力場の網は一般人の目にも可視化するほどの強烈な力を滾らせた。

 

――宇宙船から降り注ぐ無数の砲弾を受け止める事。そして受け止めた砲弾を打ち返し、砲を壊し第二波を撃たせない事だ。

 

 その直後、街全体を揺るがすような強烈な衝撃を伴う巨大な砲弾の群れが豪雨の如く降り注いでくる。

 

 舞台装置(サイタマ)を欠いた状態で、最終演目(フィナーレ)は幕を開けた。




転生者マイト「喉につまらないよう粒の小さいのど飴差し入れしてたのに……気に入らなかったのかな……」

in
オールマイト&ホワイトナイト(篠ノ之束)の転生者

out
ブラスト(職業ヒーローにはならず、あくまで趣味のまま)
キング(サイタマがいないので空白の手柄が発生せず)
ゾンビマン(ジーナスが悪落ちしなかったので未改造)
ジェノス(サイタマがいないので野生のサイボーグのまま)

まさかのS級合計人数が二人減少!!
しかし肉体派を中心に強化入ったのと、表立って動かないブラスト&メタルナイトの代わりに積極的に動く転生マイト&タバネがいる事や、まだヒーローではないもののタツマキ級の力があるシゲオも居るので総合力はアップしてる……?
なおハゲの不在(致命傷)

・天空王御一行
ナレ死以下の扱いな襲撃開始のアラーム。
原作で瞬殺された連中にも活躍をと思ってもまともな戦闘を追加するのが極めて困難なタイミングで出現しやがる。

・A市に居るTS転生者組
戦う力とか皆無な彼女らを含む一般人系転生者ですが、一部の有志はA市全域に散らばるように配置されています。
もちろん、入院中のガッツを除くハンターズ組やジャギ様なども来ていますが彼らも含め別に戦闘のために来たわけではありません。
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