【ボロス編】ONE PUNCH MAN〜ハゲ抜き転生者マシマシで〜【開始】 作:Nyarlan
「う、うう……」
遠くで轟いた謎の爆発音と衝撃により、気絶していた報道カメラマンの男は目を覚ました。
意識の覚醒と同時に全身をまんべんなく苛んだ痛みによって、彼の乗る報道ヘリが宇宙人の戦闘機に怯えたパイロットの操作ミスによって墜落したことを思い出す。
ハッとした彼は、とっさに商売道具であるテレビカメラを探そうと傾いた機内で体を起こし——
「うおっ!?」
ぐぽおん、という謎の音とともに赤い目元で怪しく光る黄色い双眸。
ヘリの搭乗口を塞ぐほどの巨大な頭部は白く鋭いV字の鍬形を戴いた金属製の鎧武兜のようであり、そんなものと目があってしまった男は思わず腰を抜かしてしまった。
彼は無機質な双眸に見つめられ息を呑み——。
『White Knights-1st、民間ヘリの救助完了』
「……へっ?」
目の前のそれが発した言葉に思わず気の抜けた声を漏らす。
派手な駆動音を鳴らしながらその身を屈め、それは自身より大きなヘリの機体をゆっくりと地面へと下ろした。
『これより敵機の殲滅に移行する』
プシュー、と青い胸元で黄色く塗装された排気口から蒸気を噴出させながら立ち上がってヘリに背を向けるその白い後ろ姿に、彼はようやく相手の正体に思い当たった。
「ホワイトナイツ、という事はホワイトナイトの新機体!? いや、むしろ……ああっ、待ってインタビューを! ってカメラがない!」
そんな風に一人で大騒ぎする報道カメラマンに応える事なく、白い機体は背中のブースターを軽く噴射すると、重力から解き放たれたように空へと浮かんでゆく。
彼は慌ててヘリの搭乗口から身を乗り出しその背中を目で追うと——宇宙人の戦闘機と戦う白い機体をいくつもその目に収めた。
手数が足りない。A市の空をハエのように飛び交う宇宙人の戦闘機を次々に斬り捨て、撃ち落としながらイサムは歯噛みする。
(敵が多すぎる、多数を一気に薙ぎ払える兵器がないと……! リトルブレイバーじゃ制圧力が足りない、まだ未完成ではあるけど今からでもブレイブジャイアントを——)
戦闘の手を一旦止めてでもより高火力の機体へ乗り換えるべきかと葛藤している彼の視界の端で何機かの戦闘機が光線に貫かれて爆散した。そして撃墜される戦闘機の数は増し続け。
〘援軍? 駆動騎士……いや数が多いな、ボフォイ先生が重い腰を上げてくれたのか!?〙
童帝は視界を覆うディスプレイの端に遠くで戦う援軍と見られる人型機械の一機を拡大して映す。
それはボフォイ博士が好む無骨な機体、メタルナイトとはかけ離れた姿をしていた。
白を基調としたトリコロールカラーが映えるそのヒロイックな機体は、彼自身もブレイブシリーズの製作に大きく影響を受けた——。
〘あれは確か、昔設計図を見せてくれた“ガンダム”!?〙
〘にしし、せいかーい!! 実はタバネさん、あの目標いくらか達成してるんだー。さあ、
イサムが驚いたように漏らした声に、姉弟子であるタバネがいたずらっぽく笑う。かつて二人がボフォイ博士の弟子をやっていた頃、タバネは作りたい機体の模型をいくつも彼に見せていたのだ。
その内の一つ、彼女曰くの『機動戦士ガンダム』のデザインは特に心に強く響いたのを彼はよく覚えている。
(僕がブレイブジャイアント一機の調整で手間取ってる間に、タバネさんはあんなたくさん……!)
サーフボードのような物に乗り空を翔ける機体を眺めながら一人歯噛みした。A市の上空ではかつて彼女がかつて夢見たロボットたちが宇宙人の戦闘機たちを相手に大立ち回りを演じている。
〘いやー、ぶっちゃけメンテが大変だし今はあんまり出したくなかったんだけど……この状況じゃー仕方ないよねぇ。へい、ちーちゃん! 各機の戦況はどんな感じ?〙
タバネが語りかけると、インカムからAIによる返答が返ってくる。
〘ホワイトナイツによる敵機の総撃墜数は現在525機、エスカフローネが左腕を損傷したものの戦闘は続行可能だ〙
〘……あちゃあ、勢いで全機出しちゃったけどこの状況に近接ロボはちょっち厳しかったか。ビームライフルとか持たせようとすると
背後から襲撃をかけてきた敵機を振り向きざまに撃ち落としながらタバネは思案する。
〘いいや、どうせ地上もてんやわんやだし、空戦苦手な機体は地上戦に回して! ……さあイサムきゅん、この後のメンテ地獄は一旦忘れて今は全力でやる、よっ!〙
〘……了、解ッ!〙
その言葉と同時に二人は武器を振るい、敵機をまた一つ葬る。
大幅に手数が増えた彼らにとって、もはや宇宙人たちの戦闘機は物の数ではない。掃討が完了するまでそう長くはかからなかった。
※
「もうっ! 何なのよこいつら次から次へと!!」
悲鳴じみた声を上げながらA級ヒーローのオカマイタチが斬撃を飛ばすと、ギャッという悲鳴とともにカエル頭の宇宙人から光線銃を握る腕がごとりと落ちる。
『なんだ今の!? う、撃て撃てぇ!』
そんな光景に慄いたように1歩下がりながらも宇宙人たちは手に持つ光線銃を乱射してくる。しかしその光線の尽くを銀の閃きが叩き落としてゆく。
『ブ、ブラスターの弾丸を切り払いやがった……!?』
「ふうっ、待機していた所を宿のオーナー直々に呼び出されたと思えば、こんな騒ぎになっているとはな」
「師匠はまだS級集会から戻っていない……恐らく、すでにこの事態に巻き込まれ他の場所で戦っているはずだ」
剣と言うにはあまりにも歪な螺旋状の剣を振り青い血を払うブシドリル、油断無く刀を正眼に構えるイアイアン。
S級ヒーロー、アトミック侍の弟子たちはA市ヒーロー協会本部の近くの宿の前で宇宙人の軍勢を相手に大立ち回りを演じていた。
上空を飛び交う戦闘機や降下してくる敵勢力から逃げ惑う市民たちの姿にイアイアンは歯噛みする。
「……カマ、ドリル、市民たちがこの宿にも避難できるよう、少しずつ奴らを押し返していくぞ!」
「
「りょうか——っ!?」
一太刀ごとに軍勢を切り崩して確実に退かせて行く三人だったが、雑兵を押し退け巨大な影がぬっと現れた事で場の雰囲気が一変する。
『おおっ、グルンゴロン上級戦闘員が着てくれたぞ!』
『下等生物どもめ、貴様らもこれでおしまいだ!』
活気づく宇宙人たちの声を浴びて、身の丈四メートルはあろうかという巨大な丸いシルエットが呵呵大笑する。
暗黒盗賊団ダークマター 上級戦闘員
鎧のグルンゴロン 推定災害レベル:鬼
『ゴーロゴロゴロ! 部下たちの救難信号を受けてやってきてみれば、なんだたったの虫けら3匹ではないか!』
「な、何コイツ……!?」
その威容にオカマイタチが気圧されたように一歩後退る。
硬そうな褐色の肌には白銀のプロテクターを纏い、更に額から背中、太く短い尻尾までにかけて背面を黒く硬そうな鱗がびっしりと覆っている。その姿はまるで巨大なアルマジロのようであった。
太い両腕には複雑な形状をした金属製の槌をそれぞれ握っている。
「むう、大きいな。それに中々に硬そうだ」
「だとしてもやる事は変わらん——はあっ!」
気合一発、イアイアンは地を蹴り稲妻の様な勢いで刃を振るう。
銀の閃光が唸りを上げて迫るもグルンゴロンは不敵な笑みを浮かべ、鱗がびっしりと生えた左腕でいとも容易く受け止めた。
「なにっ!」
『馬鹿め、効かぬわ! ぬぅうん!!』
傷一つない左腕で刀ごと彼を押し返すと、猛然とした勢いで金槌を振り上げ、勢い良く振り下ろした。
『爆裂ハンマーッ!』
「ぐっ!?」
打ちおろされた槌がアスファルトを打つと同時にその側面から爆炎が巻き起こり、打撃をしっかりと躱したイアイアンの体を炙りながら吹き飛ばす。
「イアイっ、無事!?」
「なんとか、な……!」
彼は転がるように勢いを殺してから立ち上がり、心配するオカマイタチの横で剣を構え直した。その横を翔けるようにブシドリルが飛び出すと、螺旋状の刃を手元で激しく回転させた。
「斬れんなら、削り取るまでよ!」
『なんのオッ!』
彼のヒーロー名の由来となった必殺の螺旋剣は轟音を立てながら胸の前で交差したグルンゴロンの腕甲殻と激しく火花を散らす。
『ゴロロロロッ、無意味! オレ様の硬さは最上級戦闘員候補に選ばれる程だ、その程度弾き飛ばしてくれる!!』
「ぐ、ぬぬっ……!」
圧倒的な体躯の差により押し返されるブシドリルは大きく仰け反り、辛うじて踏ん張っている状態だった。
今にも押し負けそうな彼の頭上を斬撃がいくつも飛び越える。
連続で放たれたオカマイタチの飛空剣は、顎を引いたグルンゴロンの額にある分厚い甲殻が弾いてしまった。
「硬すぎでしょお!?」
『ぬるいわぁ! ゴロォーッ!』
「ぐあっ!!」「えっ、きゃあっ!!」
太い腕を勢が良く広げられ、ブシドリルもまた弾き飛ばされてしまい、背後に控えていたオカマイタチを巻き込んで転倒する。
「こ、コイツかなり強いわね……!」
倒れ込んだ二人の前に立ち塞がり、剣を構えるイアイアンの額には一筋の汗が流れていた。
その視線の先では手下の宇宙人たちからの賞賛を受けるグルンゴロンの姿があり。その巨体は両腕を広げて二本のハンマーをコンクリートの地面へと付きたてる。
『出るぞ、グルゴロン上級戦闘員の必殺技のデスローリングが!』
『ハハハ、下等生物どもももう終わりだ! やっちまって下さい!』
『ゴーロロロッ! さあ、トドメを刺してやろう!』
太い両腕を回したり屈伸運動をする巨大な姿に、三人は嫌な予感が止まらなかった。
「……まずいな、突っ込んでくるつもりだぞ」
「どうするの!? 後ろは市民満載のホテルよ!」
「むぅ、受け止めるしかあるまい……!」
イアイアンたちが覚悟を決めてそれぞれの得物を手に構えを取ると同時にグルンゴロンが咆哮し、飛び上がると同時にその身体ををくるりと丸めて球体へと変化する。
『ゴロロッ、挽肉にしてやろう! デスロ——』「エンジェル——」
空中で激しく回転し、今にもコンクリートをえぐりながら爆走をしようとした瞬間——その頭上に影が差す、と。
「フォォォオオルッッ!!」『ゴゲェッ!?』
ズダーン、という凄まじい音が響き渡った。
その凄まじい衝撃に地面は陥没し、砕けちったコンクリートの破片と生暖かい液体が周囲に飛び散る。
「なっ!?」「……げえっ」「あらぁ……」
正面を見た彼らの視界に飛び込んできたのは——。
大股開きの股間と、破れた衣類の隙間から見えてはいけないモノがチラリズムしている、控えめに言って地獄のような光景であった。
「ふーっ……イアイアンちゃんにブシドリルちゃん。それにカマちゃんも、苦戦していたようだが無事だったか?」
たった今視界が大丈夫じゃなくなった。イアイアンとブシドリルが思わず絶句していると、べしゃんこに潰れたグルンゴロンの上から野太い声が響く。
ヒップドロップの体制で太い腕を頭上で組み分厚い胸筋をピクピク動かしているのは、彼らの師と同じく集会に出席していたはずのS級ヒーロー、ぷりぷりプリズナーであった。
「い、一体どこから……」
「ヒーロー協会本部ビルの上から地上を見下ろしたらイアイアンちゃん達がピンチなのがタマタマ見えてな。つい飛んできてしまった」
よっこいしょ、と尻の下敷きにした怪物の残骸の上で立ち上がってゴキゴキと体を鳴らすと、ぷりぷりプリズナーは驚き戸惑っている宇宙人たちにヌっと向き直り。
ズボンが破けて丸出しになった尻を向けられたイアイアンとブシドリルは顔をしかめる。
「高所から見た限り、地上全域で男子たちが危険に晒されている。守りを固めるよりなるべく散って戦うべきだろう、落ちながら確認できた大物は俺がなんとかするからイアイアンちゃんたちもバラけて避難ルートを中心に掃討してくれないか」
格好はふざけているが、その声は真剣そのものだった。
イアイアンは宿を横目にしばし思案し、やがて頷く。
「……視野が狭くなっていたな、確かにそれが良さそうだ。ドリル、カマ、俺達も散開して掃討に当たろう」
「そうね、じゃあまずは……」「さっさとここの後片付けだな」
二人が頷くと、三人は改めて宇宙人達へ向き直り剣を構えた。
先頭に立つぷりぷりプリズナーも強く拳を握り——全身の筋肉が膨張し囚人服が弾け飛ぶ。イアイアンとブシドリルは吐き気を堪えた。
「貴様らはこの地の罪なき男子たちを脅かした……絶対にゆるさん」
ビキビキと血管を浮き上がらせながら怒声を発する変態の圧に、ようやく現状を理解した宇宙人たちは震え上がる。
「イクぞ!」「ええ!」「「…………」」
4人はその場の敵の尽くを薙ぎ倒し、散開して行った。
対空雑魚:タバネが切り札を切って完了
対地雑魚:ビルから飛び降りたぷりぷりプリズナー+アトミック弟子三剣士参戦で大きく進行
対地雑魚は残りジラちゃんとか他の地上戦力の描写をやったら締めですね、あと1、2シーンかな?
ボロス戦以外はなるべくサクッと片付けたいところ……!
次回はボロス戦の進行&いくつかの戦闘をフィニッシュ予定、実はボロス戦から先に書いてたんですがホワイトナイツ登場とぷりぷりプリズナーのその後と三剣士を先にやろうと思い直しました
・童帝(イサム)
ブレイブジャイアント等のロボットデザインはかつてタバネが見せたガンダム等に影響された事にした、多分原作のもカラーリング的にパロディだろうと推定して
・ホワイトナイト(篠ノ之束の転生者)
明らかに手が足りない怪人協会編まで温存しておこうと思っていたホワイトナイツを解禁、メンテ&修理地獄が決定する
ホワイトナイツは白系のロボットから転生者たちに投票させて人気の高いものから制作したとかなんとか
なおエスカフローネはブライト博士の「ワタシスポンサー…ツヨイネ…」の一声で制作決定した、ちゃんと変形もする
なお武装や内部はこれまでに出てきたISモドキ(無人機)と大差ないので特殊なエネルギーによる兵装等は搭載されていない模様
全部で何機あるか何がいるかは細かく決めてません、実はロボットアニメあんまり詳しくないので……
・グルンゴロン(推定災害レベル:鬼)
暗黒盗賊団ダークマターの上級戦闘員。ゴロン族ではない
体長4mほどのアルマジロに似た宇宙人で、鉄より硬い甲殻に覆われた体を持ち金属製の火薬仕込みハンマー二本をブンブン振り回す。
必殺技は身体を丸めて全身の甲殻が逆立せながら高速回転して突進する「デスローリング」、触れるものをミンチにする必殺技だが、それを放つ直前に空から降ってきたぷりぷりプリズナーの生ケツに押しつぶされて絶命した。