【ボロス編】ONE PUNCH MAN〜ハゲ抜き転生者マシマシで〜【開始】   作:Nyarlan

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第五話 - 博士たち

 一昔前に一人の天才科学者がいた。

 

 彼の名はジーナス。その知力と観察力は常人を凌駕し、これまでに数々の発見や発明を成し遂げてきた。

 人々は彼の発明に惜しみない称賛を贈ったが、彼の思想に賛同する者はいなかった。

 

――人類という種の人工的進化。

 

 遺伝子操作により人類をより強い種へと変化させるべきという彼の主張は受け入れられることがなく、彼は世界に失望し始める。

 

 現状に満足し、停滞している人類はジーナスにとって頭の悪い動物にしか見えなかったのだ。

その現状を打破するため、彼は研究にのめり込み……。

 

――ある人物と出会ったのだ。

 

「キミ、面白い研究をしているらしいね」

 

 ブライト博士。研究者の家に生まれ、あらゆる分野でジーナスに劣らぬ功績を残す“異端児”であった。

 

 

※※※

 

「人類は今も尚、自ら進化を続けている」

 

 ある平日の夕方の研究所にて、ジーナスは真面目な表情で話を聞いているシゲオに目をやりながらなにやら記号等が書かれた図面をスクリーンに映し出してみせていた。

……当然、シゲオは欠片も理解していない。

 

「こちらが旧来の人類、こちらが進化の途中にある人類の遺伝子だ。この進化はここ数十年の間に急速に進んでいる」

 

 画面が切り替わり、シゲオも見知った顔がいくつか映し出される。オールマイトやタツマキ、他のS級の面々等。

 シゲオ自身の顔もあった。

 

「世の中に君のような超能力者や、オールマイトを代表とする身体機能に特化した存在――いわゆる超人が少しずつ増えているのだ」

 

 そういって手に持った指し棒でスクリーンを叩くジーナス。

 

「……私が幼い頃には、こういった存在は稀であった。私や先生のように頭脳に特化した存在がいくらか居た程度か」

「はあ」

「そして新人類の増加とともに、発生件数の増えてるものがある」

 

 分かるかね? と尋ねるジーナスに、シゲオの隣で勢いよく手が上がった。暇だからと同席したジラである。

 

「わかりました、答えはヤギね!」

 

「畜生の戯言はいいとして……」

「畜生!?」

「せっかく咲いた中庭のツツジを根こそぎおやつにされたとマルゴリが嘆いてたぞ、ヒト扱いされたいならそれなりの振る舞いをしろ」

「蜜と花弁のハーモニーが美味しくて、つい!」

 

 ショックを受けるジラと彼女の奇行を暴露したジーナスのじゃれ合いに苦笑しつつ、シゲオは控えめに手を上げる。

 

「答えは怪人、ですよね」

「正解、だ」

 

 ジラからそらした視線はまっすぐとシゲオに向けられ、ジーナスの端正な顔に笑みが浮かぶ。

 

「怪人、怪生物は年を経る毎に発生件数が増えており、とりわけてここ十年は急速に加速している。知っているな?」

「はい、近代史の授業で習いました。かつては数年に一度、十年前で数カ月に一度、ここ数年はほとんど毎日のように……」

 

 彼は先日巻き込まれた事案について思い出し、身震いする。

 

「そのとおり。では発生率の高まった怪人の“種類”はわかるか?」

「種類、ですか? えー、地底人、地球の使者……」

 

 シゲオが近頃起きた怪人災害について思い巡らせていると、それをジーナスの手が制した。

 

「大きな事案は無視してくれて構わない、あれらは割と例外的だ」

「ええと……わからないです」

 

 降参とばかりにシゲオが呻くと、ジーナスは笑みを浮かべる。

 

「ならば教えよう、答えは人間から変化した怪人だ」

「人から……それって」

 

 シゲオは思い当たった事柄に思わず息を呑む。ジラはどこからか取り出した大きな葉をかじり始める。

 

「ヒーローを始めとした超人と怪人。それらは表裏一体の存在だ」

 

 プロジェクターの明かりで、ジーナスの眼鏡が白く光った。

 

「負の感情を溜め込み過度のストレスにより肉体に異変をきたし、異形に変化したのが怪人であれば。健全な精神のもと肉体が正当に進化した者が超人であり、新人類だ」

 

 スクリーンにはなにかの細胞のような物が映し出される。シゲオにはそれが何か分からないが、ジーナスは興奮したように言う。

 

「かつて私は停滞を受け入れ進化をやめた人類に失望していた……。しかし私達が気付かない内に進んでいたのだ、それも急速に!」

 

「教えてくれたブライト博士には、今でも感謝している。あの時気付かなければ、私は人類の進化を我が手で起こさんとしただろう」

 

 そう言って、ジーナスはコップの水をあおる。

 

「とまあ、コレが私の研究さ」

「わざわざ講義していただいてありがとうございます」

「なに、構わない。キミのような優秀な遺伝子を持った新人類に興味を持ってもらえて、少し張り切ってしまった」

「長くてよくわかりませんでした!」

「お前には端から期待などしておらん」

 

(……この子ホントに前世は人間だったんだろうか)

 

 元気一杯にそんなことをのたまうジラを横目にそんな失礼な事を考えるシゲオ。なお彼もこの講義を半分も理解していない。

 

――ズン、という地響きとともに研究所が揺れる。蛍光灯がチカチカと明滅し、空のコップが床に落ちて割れる……寸前に緑の力場が包み込み机に戻っていった。

 その様子をジーナスがしげしげと眺める。

 

「見事だ。……しかし何事だ、中庭の方からのようだが」

「あー、またブライト博士でしょうか?」

「何でもかんでも先生のせいに……大抵間違ってないから困るな」

 

 妙な事はだいたいブライトのせいとばかりに言うジラに同意するジーナス。そんな様子にシゲオは普段の人間関係を垣間見る。

 研究所内はあれよあれよという間に警報が鳴り始め、周囲もざわつき始めた。シゲオはため息を一つつく。

 

「とりあず、なんかあったら困るのでちょっと見てきますね」

「あ、わたしも行きます!」

 

 

 

――数分前。

 

「きょきょきょきょ! ついに究極の植物活性剤『花咲G3』が完成したぞぉ弟よッ!」

 

 そう言って白衣の男が掲げたフラスコには、奇妙な輝きを放っているライトグリーンの液体が満たされていた。

 

「これでお前が世話する大切な庭木はたちまちに蘇る! またあのキリン娘がつまみ食いしようともすぐさま元通りだ!」

「ありがとう兄さん! せっかく綺麗に咲いたツツジの花が一晩で消えて悔しかったんだ……」

 

 それを受け取る筋肉質な青年は嬉しそうに笑う。

 彼らこそ、この研究所に所属する若き研究者とその弟――フケガオとマルゴリの兄弟である。

 

「さっそく花を蘇らせようではないか!」

「うん、行こう兄さん!」

 

 そう言って中庭に向かった二人は、中庭の隅にあるツツジの木へと向かった。丁寧に剪定されたツツジの木にはこの時期咲き誇っているはずの花が一輪もない。咲いた途端に、根こそぎおやつにしてしまった馬鹿(ジラ)が居るからである。

 

 マルゴリは悔しげに拳を握りしめる。彼はトレーニングが終わると研究所の植物の世話をすることが日課となっていた。

 筋肉と同じく、植物も手入れをすればそれに応えて育ってくれる。その喜びに目覚めた彼は、手ずからに育てた植物達の開花をいつも楽しみにしていたのだ。

 

「さあ、お前の手で蒔いておやり! その方が植物も喜ぶはずだ!」

 

 そう言って手渡されたフラスコの中身を、マルゴリはゆっくりとツツジの根本にかけてやった。

 するとまるで動物のようにツツジの枝葉がうねり始め、枝からは花目が付き、蕾となり、そして見る間に花が咲いた。

 

「おおっ、やったぞ成功だ! きょきょきょっ!」

 

 奇声を上げ喜ぶフケガオとは対照的に、マルゴリは静かな歓喜に打ち震えていた。そして伸ばした手でそっと淡い色の花弁に触れ……未だに蠢いている枝にその太い腕を絡め取られた。

 

「え?」「きょ?」

 

 ツツジは見る見るその体積を増してゆき、広がった根が地面を剥がし、枝は太く長く、葉や花弁は分厚く大きく。そのサイズは広い中庭を覆い尽くさんばかりだ。

 

……そして巨大化してゆくツツジの中央には巨大な花が生まれ、それが甘ったるい異臭を放ちながら開花する。

 

『ヴォォオオオオオオ!!!!!』

 

 その花はまるで猛獣の口のように棘が生え揃い、涎のように蜜を滴らせながら咆哮をあげた。

 

大怪樹どとうのツツジ 推定災害レベル:鬼

 

触手のように蠢くツツジの枝葉に絡め取られた二人は空中でお互いに顔を見合わせると、全身から冷や汗を滴らせる。

 

「お、大きく育ちすぎだぁあああああああ!?」

「というかもはやこれツツジじゃないよ兄さああぁん!!」

 

 二人は枝の触手に振り回されながら絶叫を上げた。マルゴリの体が怪樹の口元へゆっくりと運ばれ始める。

 

「たっ、たすけて兄さん! たすけぺっ?!」

「やめろバケモノ! 食うなら私を食え、弟には手を出すなぁ!」

 

 到底届かぬ手を伸ばすフケガオの努力も虚しく、怪樹は彼の首を締めて気絶させ、口へどんどん引き寄せてゆく――その時、その体を締め上げていた触手が切断された。

 

「ったく、()()とんでもない事やらかしやがって……!」

 

 朱槍の軌跡が煌めき、枝葉が次々と切断される。

 

「俺がゲイ・ボルグのメンテに来てて良かったなぁオッサン!」

 

 朱槍の穂先でフケガオを締め付ける枝葉を切断し、青い鎧の戦士――セタンタがそう吼えた。

 

「おお、助かった! だが私はおっさんではない、まだ25だ!」

「その顔で年下かよっ、っと!」

 

 マルゴリを回収したフケガオに迫る触手を切り払い、更に一本、二本と叩きつけられる触手を軽やかな身のこなしで躱すセタンタ。

逃れたフケガオが素早く近くの警報機のスイッチを入れると、研究所内にブザー音が鳴り響く。

 

「じきに助けが来る! それまでなんとか耐えぁあああああ!?」

 

 彼がそう叫ぶや否や足元に忍び寄っていた触手が再びマルゴリ共々吊るし上げるのを見てセタンタは舌打ちする。

 

「ルーンさえ使えりゃ纏めて焼き払ってやるんだが、なっ!」

 

 複数の触手を切り払い、弾き、時には避け……しかし手数が足りずセタンタは徐々に押され始めた。

 

(……人間とはいえクー・フーリンの身体に産まれてこのザマとは、ガッツの奴を笑えねぇなクソッタレ!)

 

「――危ないッ!」「かはっ!?」

 

 そうして余計な事を考えていたからであろうか、フケガオの警告も虚しく触手の一つがついに朱槍を弾き飛ばし彼の体を捉えた。

 

「くっ、うおっ!?」

 

 全身に巻き付く圧迫感と持ち上げられる浮遊感がセタンタを襲う。逆さ吊りにされた彼は即座に身を起こし脚に巻き付いた枝葉を引きちぎろうと掻き毟るも、素手で千切れる強度ではない。

 

(マズったな、援軍が来るまでの時間持つか?)

 

 一旦息を整えようと脱力すると、彼の視界に白衣の女が映る。

 

「ランサーが死んだっ!」

 

 残念な事にブライトシスターズの片割れであった。

 

「……死んでねーよ」

 

 研究所のピンチにも関わらずふざけた発言をしてくれる所長(ブライト)に、セタンタは頭痛がする思いであった。

 こめかみを押さえる彼に対し、彼女はいつもの胡散臭い笑みを湛えてただ立っていた。

 

「で、非戦闘用の肉体で野次馬か? 見ての通りピンチなんだが」

 

 横を見れば、フケガオがマルゴリと仲良く気絶して吊られている。研究所内の戦力が集まるまでの時間稼ぎをしていたセタンタであるが、真っ先に来た人物に期待できない事に落胆する。

 

「いやあ、せっかくの触手に絡んでるのが男ばかりだと華がないのではないかと思ってね?」

「……は?」

 

 そう言うが早いか、怪樹の枝葉が伸びてきてブライトを絡め取る。

 枝葉は脚伝いに白衣を捲りあげながら上半身へと伸び、逆さ吊りの体勢で全身を強固に固定する。

 

「んっ、ふっ……これが触手プレイと言うものか。これはなかなか」

「頭沸いてんじゃねーの?」

 

 自ら要救助者――別に助けなくとも差支えはないが――を増やしにきたブライトに対し、セタンタは呆れてしまう。

 なお、触手に締め付けられて強調された豊かな胸部や顕になった太腿などに視線が行ったりはしていない。ないったらない。

 

 そんな視線を気にもせず、ブライトは逆さ吊りのまま思案顔をしばらくしたかと思えば。

 

「ふむ、ブライト・ガールやブライト・ロリータも持ってくるか?」

 

 などとのたまった。

 

「や め ろ。これ以上面倒を増やすな!」

「冗談だ。それよりそろそろ……ほら」

 

 ギッ、と怪樹が短く悲鳴を上げる。セタンタが視線をやると、怪樹の花は見えない何かによって空へと引き抜かれようとしていた。

 それは子供が地面に生えたタンポポを意味もなく引き抜くような気軽さを感じる光景であった。

 

『ギッ……ギギギ……! ギシャアアアア!?』

 

 バツンと太いワイヤーが切れるような音とともに怪樹の根が大地から引き剥がされてゆき、やがてその全貌が空中に晒される。

 セタンタはそのなんの技巧も感じられない、幼子の所業の如き稚拙そのものな力任せの――圧倒的な力に、自然と畏怖を抱いた。

 

(……これが、異能を生まれ持つ転生者の力か)

 

 右手を掲げてその力を行使する少年が研究所のマスコット(ジラ)と共に奥の棟から歩いてくる姿を見つけたセタンタは深くため息を吐く。

 彼は長年の鍛錬や怪人、怪物との数えきれぬ死闘を乗り越え技を磨いて生きてきた。肉体に宿った戦いの才能を活かしながら。

……しかし、ただ生まれ持っただけのその力に勝てるビジョンがただのひと欠片も見えなかった。

 

(俺じゃなく本物なら……いや、やめとこう)

 

 彼はそんな考えを頭を振って振り払う。この強大な力の持ち主は自分たちの味方なのだ、対処を考えるよりこの稚拙な運用をどうにかしてやる方が建設的であると。

 

「すみません、ちぎる前に引っこ抜けちゃったんですけど……」

「頑丈なんですねー」

 

 そんな間の抜けた声に、セタンタは再び深くため息をついた。

 

「タツマキみたいに捩じ切りゃいいだろ、それか両側から引張って千切るかだな。とりあえず先にそこの槍取ってくれや」

「あ、はい!」

 

 少年――シゲオが左手をかざすと、愛用の朱槍がセタンタの手元に飛んでくる。彼は手早く自らの足に絡んだ枝葉の触手を切り離し、そのまま触手伝いに登って気絶したフケガオとマルゴリを回収して地面へと降りた。

 どさりと地面に二人を下ろした彼の頭上から声が降ってくる。

 

「……おおい、何か忘れてないかい?」

 

 枝葉に肢体を深く締め上げられ、妙に扇情的な姿で逆さ吊りになったブライトだが、胡散臭い笑みは健在である。

 

「はン、テメェはしばらく頭冷やしとけ」

 

 突き放した言葉に対して、ブライトはキョトンとした表情をしたかと思えば、その顔はすぐにニヤニヤ笑いへと変わる。

 

「なるほど。私の縛られた姿をもっと長く眺めていたいのだね? さあ遠慮は不要だ、存分に楽しみたま――」

 

 言わせねえよとばかりに赤い閃光が彼女を吊る枝葉を切断し、その体が地面へ無造作に叩きつけられる。背中から落ちたブライトはぴぎゅ、と奇妙な声を上げてそのままぐったりと動かなくなる。

 

「捩じ切る……意外と難しいなこれ……えいっ!」

 

 そんな気合の入った声が聞こえたかと思うと、怪樹の花がぐるりと一回転して地面へ転がり落ち、全身を痙攣させる。

 捩じ切った断面からはバケツをひっくり返したように粘度の高い蜜が噴き出し、真下でぐったりとするブライトへ降り注ぐ。

 乱れた白衣はべったり蜜に濡れて彼女の体に張り付いており……。

 

「……あっ」

 

 落ちた花を視線で追った先でそんな光景を見つけたシゲオはやや頬を赤らめながらもなんとも言えない表情となる。

 

「一応忠告しといてやるが、見た目がいいからって女のブライトに色気を感じてるようじゃ後で痛い目見るぞ、いやマジで」

「あの、いえ、別に僕は……」

 

 顔を真っ赤にしてしどろもどろになるシゲオの様子に「若いな」と苦笑いしつつ、セタンタはブライトを米俵のように担ぎ上げる。

 

「まーその反応からするに、合算してもかなり若けぇなアンタ? アンタの噂はかねがね聞いちゃいるが、会うのは初めてだな」

 

 セタンタがそう切り出すと、シゲオはハッとして会釈する。

 

「すみません、ご挨拶が遅れました……モブサイコのシゲオです。TYPE-MOONのクー・フーリンさん、で合ってますよね?」

 

 そう尋ねる彼に、セタンタは頷く。

 

「正解、と言いたい所だが……俺の事はセタンタと呼びな。クランの猛犬(クー・フーリン)と呼ばれるにゃまだ早いヒヨッコでね」

「……?」

 

 よく分かっていない様子のシゲオに苦笑しつつ、セタンタは朱槍の穂先で事切れた怪樹を指し示す。

 

「悪いが広がってると邪魔になるし、適当に丸めて裏手の実験広場の隅に置いといてくれや。後始末は研究所の職員がやるだろうよ」

「あ、わかりました」

 

 了承したシゲオが作業を始めると、ジラは落ちた巨大な花を持ち上げ滴る蜜を指で掬って舐めながらその背を追いかけていった。

 

「……いつも思うがアイツ(ジラ)は頭がキリン過ぎないか?」

「そこが彼女の魅力じゃあないか」

「うおっ!?」

 

 独り言に反応する声に気の抜けていたセタンタは驚いて担いでいたブライトを落としてしまう。ビタンと地面に叩きつけられた肉体を見て、声をかけてきた白衣の男(ブライト)は苦笑を浮かべる。

 

「……いつも思うが、君らは私の体の扱いが雑じゃないかね?」

「雑な扱いされるだけの理由を作らないでくれるとこっちとしても助かるんだがな。ほら、テメェの体くらいテメェで面倒見ろ」

 

 首根っこをつまみ上げて投げ渡された肉体を危なげなくキャッチしたブライト(白衣の男)はニヤリと笑う。

 

「別に持って帰って貰っても構わんのだが?」

「おぞましいこと言うんじゃねぇ」

「おや、その割にこちらの私の肢体に興味がお有りのようだったが」

 

 見られる視線は意外とわかる物なのだよとにやにや笑いを浮かべる彼にセタンタはげんなりとする。

 

「やめろください」

「ふふ、今日はこのくらいにしておこうか。マルゴリ君とフケガオ博士の方は頼んでいいかね?」

「二人とも俺かよ……医務室へ運んでおくから処置は頼むわ」

 

 ため息混じりに二人の体を担ぎ上げた彼に、ブライト(白衣の男)は笑顔で白衣の女(ブライト)を差し出す。

 

「ああ、女体を運びたいなら代わるぞ。希望するなら医務室のブライト(わたし)も二時間ほど席を外すが?」

「そろそろ残機減らすぞコラ」

「おっと、それは困る。今日のおフザケはこの辺にしておくよ」

 

 そう言って笑いながら去ってゆく彼に、セタンタは大きなため息をついた。

 

「この研究所、ホントに大丈夫かコレ……」

 

 セクハラ博士(ブライト)ウッカリで怪物を発生させる博士(フケガオ)危険思想を持つ博士(ジーナス)と曲者だらけの研究所は常に騒ぎが絶えないのであった。




・大怪樹どとうのつつじ
初のオリジナルの怪物。名前は語呂で適当に。
見た目のイメージは最初ヘルバオムにするつもりが描写的にTerrariaのプランテラっぽくなった?

・ジーナス博士
進化の家発足の理由を「進化の歩みを止め、停滞に満足する人類への不満」という解釈で推し進めつつ、怪人の発生率とともにヒーローを代表にする超人的身体能力を持った人々を「進化の過程である」と言うふうにでっち上げて改心の理由付け的な感じにした。

・フケガオ博士
元々のバックボーンがあまりないので……まあ、昔お世話になったブライト博士の転生者のもとで今も働いてる的な(雑)
上腕二頭キングは色々困るので作らせない代わりに今回はそのへんの草木から怪人レベル鬼級を作れる薬を作ってもらった。
このくらいの騒ぎは割とよくあること。

・マルゴリ
こいつ研究所で普段何してるんだろ?って思ってたらなんか庭師的なアレに喜びを感じてた。

・ブライト博士の転生者
セクハラ常習犯。
乗ったが最後、他の個体が実況を始めるであろう。
モブ転生者たくさん出すの大変だし、研究所の雑用とかコイツがほぼやってることにしてもいいかもしれない。

・セタンタの転生者
クー・フーリンに憧れて転生したものの強さが届かない事に悔しく思いながら日々鍛錬してる。
何もしなくても強くなるキャラを羨ましく思うことはあれど、自身の選択に後悔はしていない。

・影山茂夫の転生者
暇なときは放課後に研究所まで飛んで遊びにくる。

・アミメキリンのフレンズの転生者
転生してから数カ月キリンの脳で生きていたためフレンズ化して記憶を取り戻してからもだいぶん頭がキリン。道草をよく食う(物理)


オールマイトの転生者さんがなかなか出てこないぞ……メインキャラじゃなかったのかな?

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