そして、お久しぶりです。
とりあえず、ノイズの気配が次々に消えてる所に行ってみたが…
なんか次々に門みたいなところに入って消えて行ってる。
もしかして、アレ通れば外出られるんじゃね?
よし、そうと決まれば行ってみよう。
あっ、消えちゃった…くそぅ…
仕方ない、次に出てくるの待つかね…
とりあえず、邪魔も無くなったし待ちながら座標把握できるか試してみるか。
***
自宅に戻った雪音クリスは呆然とする。
鍵の掛かっていない玄関のドア、中身が入ったままの二人分の湯呑み、無くなっているネフシュタンの鎧…そして、玄関に残っている同居人の靴。
しかし…何処を探しても、肝心のヘンテコな言葉を話すあの同居人の姿が見当たらない。
確かにそれら一つ一つは状況証拠でしかない。
入れ違いの可能性だってもちろんあるだろう。
しかし、それら全てをまとめて連想される一つの結論について、良い方向に受け取れる程、雪音クリスは楽観主義者では無かった。
「……赦さねぇ」
「赦さねぇぞッ!!フィーネェッ!!!!!」
夕日が赤黒く変色する少女の鎧を照らしていた。
***
雪音クリスを見失った翼は、ひとまず帰投のため、特異対策機動部二課、つまり私立リディアン音楽院へと向かっていた。
「まもなくリディアンの筈なのだが…」
「ッ!?何だ、これは!?」
そう、リディアン音楽院があった場所は確かにここだ。
しかし、そこに慣れ親しんだ学舎は無く、代わりに天を突くかのような異様な塔が立っていたのだ。
「シンフォギア装者か…ご苦労な事だ」
声の主の方に振り返る。
「まさか…櫻井女史!?」
そこには、ネフシュタンの鎧を纏う終焉の巫女の姿があった。
「間もなく私の悲願は成就される。大人しくそこで見ていなさい」
「何を言っている!?櫻井女史!?」
「月を穿つ!!」
塔が発光を始める。
状況は飲み込めていないが、間違いなく善からぬ事が起きようとしている。
~Gatrandis babel ziggurat edenal~
「この歌…まさか!?」
翼が歌の正体に気付く。
~Emustolronzen fine el baral zizzl~
この歌は…絶唱だ。
~Gatrandis babel ziggurat edenal~
「でも…一体何処から…」
~Emustolronzen fine el zizzl~
「させるかよォォォォッ!!」
翼の遥か後方、今まさに放たれた月を破壊する為の砲撃に対して、丁度横合いになる形で一筋の流星が放たれる。
ガングニール。
何物をも貫き通す無双の一振り。
完全聖遺物として在れば、まさにその名に偽りなく、全てを貫いたであろう。
しかし、欠片を残すのみとなったその力では、たとえ使い手の命掛けの一撃であったとしても不滅の聖剣を動力源とする超級の砲撃に対しては、僅かばかり軌道を逸らすに留まる。
しかして、逸らされた軌道は誤差の範囲に収まらず直撃軌道から外れ、月の一部を損壊させるのみに留まった。
「へっ、ざまぁみやが…れ」
そう呟いて天羽奏は地に臥せる。
「奏っ!!」
翼が奏に駆け寄る。
「どうして…?」
「翼ががんばってんのに、アタシだけ休んでる訳にいかねぇだろ?」
「でもっ!!そんな身体で歌ったら…!」
「大丈夫…少し休んだら、アタシも行くからさ…翼、頼…んだ」
かつての相棒にエールを託し、天羽奏は意識を手放した。
***
「ハッ、無駄な事を」
「………無駄だ…と?」
「そう、無駄だ。一撃で終わるなど兵器としては欠陥品。何度でも撃てるからこそ兵器足りえるのだ。一度凌いだ所で所詮は時間の無駄に過ぎん」
「無駄と…言ったか?命を賭して、大切な物を守り抜く事を!お前は無駄とせせら嗤ったか!!」
翼にとって、これ以上己の半身を侮辱される事は、我慢ならなかった。
今まさに、怒りに身を任せ終焉の巫女に斬りかからんとしたその時に…
黒い影が割り込む。
「ミツケタゾ!!フィーネェェェェッ!!!」
「なっ!?」
突然の乱入者に対して、フィーネも刺の鞭を放つが、乱射される銃弾に悉く軌道を逸らされる。
「お前…雪音?」
「バカな!?死んだ筈では…」
今度は翼が混乱する。
何故、櫻井了子が雪音クリスを知っていて、その上で死んだなどと認識しているのか?
「テメエダケハユルサネェッ!!アイツヲ…アイツヲォォォォッ!!」
そんな周囲の混乱などお構い無しにクリスはフィーネに向けて突撃する。
「クッ、もはや人に非ずかっ!!」
フィーネもネフシュタンの鞭で応戦するが、クリスの獣染みた動きに翻弄され、有効打が与えられない。
「チッ、こんな事をしている場合では…」
クリスの無差別砲撃でカ・ディンギルに無視できないダメージが与えられている。
早急に対処しなければ、二射目の砲撃に耐えきれない。
しかし、裏を返せば、二射目が放たれさえすれば己の勝ちは確定するのだ。
クリスは明らかに己を狙っているのだから、カ・ディンギルから引き離せばいいのだが、当然翼も無視できない。
少しずつ、フィーネは焦り始めていた。
神崎蘭子に風鳴弦十郎。
計画の最大の障害は既に排除し、己の勝利は確実だった筈なのだ。
しかし、結果として、カ・ディンギルの一射目は天羽奏によって逸らされ、今まさに雪音クリスによって、二射目が危うい状況まで追い込まれている。
己にとって、取るに足らないと侮っていたシンフォギアによって。
あり得ない。
己の造り出した玩具にそこまでの力は想定されていない。
一体何がここまで自分を追い込んでいるのか?
とにかく、今は雪音クリスを排除しなければ…
しかし、そんな中、クリスの前に立ちはだかったのは、フィーネでも翼でも無かった。
「クリスちゃん…クリスちゃんが何で怒ってるのか私には解らないけど…たぶん蘭子ちゃんの事だよね?」
立花響だ。
敵味方問わぬクリスの銃撃は響にも襲い掛かる。
「でもね?クリスちゃん」
しかし、その身に銃撃を受けて傷だらけになりながらも、全く怯む事無く、最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に向かっていき、ついにはクリスを抱き締める。
「蘭子ちゃんを…信じてあげよ?」
涙を流しながら、クリスの暴走が解ける。
そのまま、クリスは意識を失い、響に身体を預ける。
「立花っ!…まったく、無茶をし過ぎだ」
「翼さん…すみません。後…頼みます」
「あぁ、任せておけ」
そのまま力尽きたのか、響もまたクリスを庇うようにして倒れ込むのであった。
***
ついにこの場で剣を携えるのは自分1人となってしまった。
しかし、託された想いが、独りでない事を教えてくれる。
♪絶刀・天ノ羽々斬
「…待たせたな」
フィーネに向けて歩みを進める。
「どこまでも剣、か…」
「今日に折れて死んでも…明日に人として歌う為に」
そうだ、もはや己はただの剣に非ず。
「風鳴翼が歌うのは…
「人の世が剣を受け入れる事などありはせぬ!!」
ネフシュタンの鞭を回避し、最速の斬撃を繰り出す。
―蒼ノ一閃―
そのまま返す刀で空中に飛び、巨大化させたアームドギアと共に渾身の一撃を叩き込む。
―天ノ逆鱗―
その一撃は多重に繰り出される鞭の結界によって阻まれるが、翼の狙いはそこにあった。
巨大化したアームドギアを足場に臨界に達さんとする塔に向けて飛び立つ。
―炎鳥獄翔斬―
「狙いはカ・ディンギルか!!」
フィーネの追撃が迫る。
数度躱すも、執拗に鞭は追い迫り、まさに翼を討たんとした次の瞬間…
「へっ…一度当たっちまえば、追撃は出来ねえよな!」
「奏!?」
天羽奏が身体を張って鞭を受け止めていた。
「翼、両翼揃ったツヴァイウィングならさ…」
「あぁ!どこまでだって翔んでいける!!」
「やめろォォォォっ!!」
そうして、風鳴翼と天羽奏。
ツヴァイウィング二人の捨て身の一撃によって、天を穿つ筈の塔はついにその役割を果たす事無く崩壊していくのであった。
***
「クソッ!!私の計画が、まさかこんな奴らに!!」
フィーネが呪詛を振り撒きながら周囲に当たり散らす。
「それもこれも貴様等のせいだッ!!」
満身創痍でギアすら解除された響とクリスを蹴り飛ばす。
自身の計画を台無しにしてくれたのだ。
もはや楽に死なせるつもりなど毛頭無い。
「月を破壊し、統一言語を取り戻し再び世界を一つに束ねる筈だった…だったのに!!」
フィーネが二人に迫る。
♪私立リディアン音楽院校歌
破壊された校舎のスピーカーから音が発せられる。
「何だこれは…?」
音の発生源を探し、辺りを見渡す。
「何が聞こえている?この不快な…歌…」
「歌…だ…と!?」
気付けば長い夜は終わりを告げ、辺りに朝日が射し込んでいた。
「聴こえる…」
「皆の歌が…」
♪Synchrogazer
無言で響とクリスは見つめ合い、頷く。
「私達を支えてくれてる皆はいつだって側に…」
「皆が歌ってるんだ…だからッ!!」
「まだ歌えるッ!」
「頑張れるッ!!」
二人で叫ぶ。
「「闘えるッ!!!」」
立花響と雪音クリスが手を繋ぎ、立ち上がると同時に二人の纏うアウフヴァッヘン波形にフィーネが弾き飛ばされる。
「まだ闘えるだと!?」
「何を支えに立ち上がる?何を握って力と変える?」
「鳴り渡る不快な歌の仕業か?そうだ、心は確かに折り砕いたはず…なのに、何を纏っている?」
「それは私の造った物か?お前の纏うそれは一体何だ?なんなのだ?」
破壊された天を穿つ塔の跡地からそれぞれ
「―傷ついた悪姫―」
「シ・ン・フォ」
「第二形態!」
「ギィィッ――ヴウゥワアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
「我が名はブリュンヒルデッ!!」
今回は
魂の波動纏いし聖衣=シンフォギア
フィーネの質問責めからのシンフォギィヴゥワアァに空気読まずに割り込むらんらん。
これがやりたかった(笑)