とりあえず1期終わったので、区切りと少し本編の補完に戦姫絶唱しないです。
小ネタ集なのでいつもより短め。
*** 取調室にて ***
ここは、特異災害対策機動部二課の仮設本部の取調室。
今日は司令である風鳴弦十郎と、シンフォギア装者の立花響、雪音クリスという面々で櫻井了子、フィーネの取り調べを行う。
「了子君、君の目的についてだが…」
まずは弦十郎が質問する。
室内が妙に匂うが、気のせいだろうと無視をする。
「私をまだその名で呼ぶか…まぁいい。私の目的はバラルの呪詛から人類を解放する事だ」
「そのバラルの呪詛って、なんなんですか?」
バラルの呪詛、という聞き慣れない単語に響が質問を投げ掛ける。
少なくとも、学校の授業では聞いた事が無い。
もっとも、彼女は学校の授業自体をあまり聞いていないのだが。
「人同士の完全相互理解、すなわち統一言語を阻んでいる呪いだ」
人の完全相互理解に統一言語。
また響にとって難しい単語が出てくる。
なんとか自分なりに噛み砕いて理解しようとするが…
「つまり蘭子ちゃんの言葉が統一言語って事ですか!?」
「何故そうなるっ!!?」
いきなり話が飛躍した。
「え?だってわかるし…ねぇクリスちゃん?」
「おう…まぁ、あいつはヘンテコな言い回ししやがるけど、言いたい事はだいたい解るな」
「…君たちが特殊なんじゃないか?」
自分は普通に解らないぞ、と思い弦十郎は嘆息したのであった。
『あながち間違いでもないんですけどねぇ』
聞こえる筈も無いが、その様子を見ていた緑の事務員は微笑むのだった。
*** 覚醒魔王と防人 ***
「魂の波動に魔力が昂るわ!」
「ふむ…常在戦場」
「っ!?我が深淵を覗くのであれば、我に魅入られる事も覚悟するのだな!」
「フッ、友の危難を前にして、鞘走らずにいられようか?」
「っ!!?黒く染まる堕天使の翼は、輝きを戻し天上高く舞い上がるであろう!!」
「話はベッドで聞かせて貰おう!!」
「っ!!!?闇に飲まれよっ!!」
「や、やみのま!」
その場を通り掛かった奏が一部始終をニコニコしながら見ていた未来に声を掛ける。
「なぁ…あいつらは何をやってんだ?」
「…さぁ?」
どうやらやり取りが高度過ぎて未来にも理解できなかったようだ。
*** マネージャーのお仕事 ***
「奏さん、来週の翼さんのスケジュールですが…」
「木曜日なら空いてるんじゃねぇか?」
緒川慎次と天羽奏が話し合う。
二人は風鳴翼のマネージャー業を分担しており、主にビジネス面を緒川が、プライベート面を奏が担当している。
「次にこれです。復興ライブQUEENS of MUSICへの出演オファーが来てます」
「アメリカで期待の新人歌姫との共演だったか?アタシとしちゃ、翼が別の誰かと歌うってのに複雑なんだが、仕事だしなぁ…」
かつての相方が自分以外の人間と歌う。
奏にとっては、少し面白くないが、ノイズ被害で疲弊した人々に勇気を与えるのも翼の大事な仕事だ。
私情は抜きにするべきだろう。
「ま、翼の本当の姿を知ってるのは、アタシと蘭子だけって事で我慢するか」
帰ったら、蘭子を誘って、翼の部屋を掃除しよう。
そう思って、奏は気持ちを切り替えるのだった。
「翼さん…散らかし癖、まだ直ってないんですね…」
「あれは一生直らねぇんじゃねぇか?」
そういえば、ここにも本当の翼を知る人間が居た。
最近は奏がやるので出番が無いが、一時期は緒川も翼の部屋を掃除していた時期がある。
下着まで緒川に片付けさせて何も思わないのはどうかと思う。
*** いきのこれ!社畜さん ***
「はぁ…今日も残業か…」
神崎蘭子の活躍により、概ね後始末も終わったかのように見えるが、それは現場に出る人間の仕事であり、彼…藤尭朔也のような事務職には適用されない。
何せ、処理すべき書類や櫻井了子から押収した聖遺物の解析など、仕事は山のようにあるのだ。
「ボヤかないの…口より手を動かして」
それは、隣で端末を操作する友里あおいも同様だ。
既に目にくっきりと隈が出来ており、寝る間を惜しんで事務処理を優先している事が窺える。
期限が近い書類から処理しているが、一向に無くなる気配は無い。
『我が眷属よ!魂を猛らせよ!』
藤尭の端末から、元気の良い美少女の声が発せられる。
それは、藤尭朔也が比較的仕事が少ない時に彼の情熱の全てを注ぎ込んで作った人工知能プログラムだ。
神崎蘭子の言語パターンを解析し、本人のように喋るサポートオペレーター。
「はぁ…らんらんがいるから頑張れるようなもんだよ」
それを横目に友里は気持ち悪っ、と思うが口には出さずスルーする。
藤尭が神崎蘭子の隠れファンである事は友里も知っているので、あまり言わないようにしている。
そもそも、二課内でも非公式に隠れファンクラブが出来るくらい、神崎蘭子は人気なのだ。
下手にツッコミを入れてファンクラブ会長藤尭の蘭子愛に火を付けてしまうと、ただでさえ終わりの見えない仕事が一向に進まなくなる。
『闇に飲まれよ!』
後日、その人工知能が響や未来に見つかり、彼女達に嘆願され、端末用に改修を加える等の余計な仕事が増える事になるのだが、それはまた別の話。
*** 笑顔です ***
都内にあるメイド喫茶。
響、未来、クリスで集まる時はここを使うのがもはやお馴染みになっていた。
響が周囲を見渡す。
今日の客層は…
よく見る無表情のミステリアスな女性…アンドロイド疑惑がある。
何故か大量の眼鏡をテーブルの上に置いてうっとりしてる女の子…ちょっと関わりたくないかな…
入った瞬間からクリスちゃんをガン見してる女の子…なんか手つきがいやらしいなぁ…
周りは珈琲とか紅茶なのに1人緑茶とお煎餅を食べている女の子…迷子じゃないよね?『違いましてー』っ!!?直接脳内に!?
と、相変わらずのカオスな客層だ。
今日も今日とて、蘭子に関する話が白熱してきた所なのだが…
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
「あの…やはり私にはこういった場所は…」
「えー?P君のケチ☆いいじゃん!ね?」
「ん?あー、別にいいんじゃない?飴くれるし」
新しい客が来たようだ。
随分賑やかそうだが、よく見ると金髪のギャルっぽい女の子とそれ以外の温度差がかなり激しいようだ。
男性がクリスの方を見て、少し驚く。
もっとも、表情の変化が乏しい彼が驚いているとは、よほど身近で信頼している人間でなければ察せないが。
「P君どうしたの?なんかあっちの女の子見てビックリしてたけど」
「まー、プロデューサーはプロデューサーだからねー。ビックリするアイドルの卵でも見つけたんじゃない?」
「あっ、いえ。知り合いを見かけたもので」
「そうなの?挨拶とかしなくていいの?」
「はい、お友達とご一緒のようなのでお邪魔しては悪いでしょう」
「ふーん。まぁプロデューサーがそれでいいならいいんじゃない?」
最後にポツリとプロデューサーと呼ばれた男性が微笑みながら呟く。
「いい…笑顔です」
またネタが貯まってきたら、ちょくちょく書く予定。