G5話です。
何故かクリスちゃんが張り詰めた顔をしている。
声を掛けても「なんでもねぇ」の一点張りでよくわからん。
あのチビッ子達に挑戦されてたのと、何か関係あるんかな?
ん?何で知ってるかって?
見てたからね?
『やみにのまれよ』
久々登場のちっちゃい俺だ。
クリスちゃんや響ちゃん、未来ちゃんなど主要メンバーにはいつも監視を付けてるのだ。
まぁ、相変わらず報告内容はよくわからんのだけどね…
んで、視覚共有して見てたけど、なんかチビッ子達に決闘とか言われてたっぽい。
んー、さすがにそれは介入した方が良さそうかな?
響ちゃんの様子もなんか元気無くてちょっと心配だしね。
それに、女の子同士なんだから決闘みたいな血生臭い事やるより、キャッキャウフフな百合の花を咲かせたらいいと思うの。
その光景が見れるなら、俺は全力で応援するのも吝かではない。
「じゃ、アタシはちょっと散歩してくるわ」
「そ…じゃあ私は蘭子をお風呂に入れるわね。さ、蘭子行きましょ♪」
マリアに有無を言わさず引き摺られていく…
もはやこの扱いにも慣れてしまったな…
***
神崎蘭子に散歩と言って家を出た雪音クリスは、そのまま特異対策機動部二課へと足を運ぶ。
丁度、風鳴翼が敵性装者が申し出てきた決闘について、報告しているところだった。
「あ、クリスちゃん…」
「シけた面してんじゃねぇよ、お前はバカみたいに底無しに明るいのだけが取り柄じゃねぇか」
元気の無い立花響にクリスが言う。
不器用ながら彼女なりの同僚への激励なのだろう。
「うん…そうだね…くよくよするなんて私らしくなかったかも…でも、決闘なんて…私達、ホントに解り合えないのかなぁ?」
「立花…」
「通じないなら通じ合うまでぶつけてみろ!言葉より強い力がある事を知らぬ君たちではあるまい」
響の頭に手を置き、風鳴弦十郎が檄を飛ばす。
「師匠…言ってる事、全然わかりません…でも、やってみますッ!!」
その光景を天羽奏は何も言わず微笑みながら見守る。
あぁ、きっとこの子はもう大丈夫だ、と。
その時…
「ノイズの反応パターンを検知!この場所は…」
藤尭朔也がノイズ出現を報告する。
「狼煙とは古風な真似を…」
「特別封鎖地域、カ・ディンギル跡地です!」
***
カ・ディンギル跡地。
先日、フィーネのルナアタックによって崩壊した地域だ。
そこに赴く3人を待ち構えていたのは…
「ようやく来ましたねぇ!待ちくたびれて眼鏡がずり落ちるところでしたよ!!」
「…誰?」
「さぁ?おめぇ知ってるか?」
「いや、私も初対面だ」
「それよりも、調ちゃんと切歌ちゃんは!?」
「英雄であるボクをそれよりも呼ばわりは納得いきませんが…彼女達なら謹慎中ですよ、だからボクがこうして出張ってきてるワケです!!」
ウェル博士がソロモンの杖を翳すと大量のノイズが現れる。
「チィッ!!誰かは知らねぇがソロモンの杖をッ!!」
「英雄になるボクを知らないなんて、無知なお子さまには、ここで我々の糧になって貰いますよ!!」
「何を企てるF.I.S.!!」
ノイズを処理しながら、翼が問う。
「企てるゥ?人聞きの悪い」
「我々が望むのは人類の救!済!月の落下にて損なわれる無辜な命を可能な限り救い出す事ですよッ!!」
「月が…落ちる…?」
「馬鹿な!?そんな事を各国政府が黙っている筈が…」
「黙ってるに決まっているでしょう!自分達で処理できない極大の災厄を前に一体何が出来るというのですか?」
「さぁ、お話はここまでです!我々の人類救済の礎となりなさい!」
「なッ!!?ぐぁっ!!」
突如、地中から現れた黒い自律型聖遺物、ネフィリムの攻撃がクリスに直撃し、クリスが意識を失う。
「雪音!?くっ!?」
駆け寄った翼もノイズの粘着性の糸に絡まれる。
続いて唯1人自由に動ける響にネフィリムが襲い掛かるが…
―Laevatein―
炎の柱がネフィリムと周囲のノイズを包み込む。
「ヒィィッ!!?な、何者だぁッ!!?」
「傷ついた悪姫」
「我が名はブリュンヒルデ!!」
漆黒の衣を纏う堕天使が舞い降りた。
***
よし、やっとマリアが寝てくれたから出て来れたわ…
さ、我が嫁クリスちゃんを助ける為に早速…
ん?あのモヤシ生きてたの?
チビッ子達は出てきてないみたいだし、状況どうなってんの?
ってクリスちゃんが倒れてる!?
「…誰だ」
「神崎?」
「蘭子…ちゃん?」
「我が眷属に不敬を働きし不届者は誰だッ!!!」
俺の怒りに呼応して、炎の渦が巻き起こる。
「ヒィィッ!!?貴女はこちら側じゃ…仕方ない!!ネフィリム、アイツを…神崎蘭子を排除しろォ!!」
狼狽えるモヤシの号令で黒い変な奴が襲い掛かってくる。
…お前か?
まぁ、許すつもりなんて欠片も無いし、どうでもいいか。
ただ、消えろ。
―獄炎ノ一閃―
炎の刃で切り裂く。
が、あまり効いていないのか、斬った先から再生しているみたいだ。
「うひ、うひひひひ…ネフィリムは暴食の力で炎を操る完全聖遺物ゥ!そう!貴女の力は、ネフィリムにとってエサも同然ッ!!」
「この力が…ネフィリムがあれば!ボクこそが英雄だぁァァァッ!!」
―Absolute Zero―
「うひ?」
炎が駄目なら、凍らせるだけだ。
強制的に対象の温度を絶対零度にする技を受けて、黒い奴は凍り付く。
人に向けて撃つのはさすがに気が引けるけど、コイツなら遠慮無しだ。
「な…なんですかァ!!?その技は!!?聞いてない、聞いてないですよォッ!!?」
知るか。
こっちは今頭にキてんだよ!
「穿て!」
「止めろォォォォッ!!」
合図と共に黒い奴が砕ける。
「ヒ、ヒィィィィィッ!!?」
モヤシが何回も転けながら逃げて行く。
まぁ、逃がさないけどね?
「封書!!」
とりあえず、拘束しといて後でお仕置きだ。
そんな事より、今はクリスちゃんだ。
「豊穣の女神よ!!」
「ん……はは、お前なんでいんだよ…黙って終わらせようと思ってたアタシがバカみてぇじゃねぇか…」
良かった…怪我はしてるけど無事みたいだ。
さて、それじゃあクリスちゃんを傷つけた奴に報いを受けさせないとな。
でも相手男だし、テンション下がるなぁ…
男の娘なら一考以上の価値があるんだけど、どう見てもヒョロガリのモヤシだしなぁ…
♪獄鎌・イガリマ
とかなんとか拷問方法を考えてたら、モヤシを拘束してた紙が切り裂かれる。
「下手打ちやがって、このキテレツ!!さっさと撤退しやがれデス!!」
「蘭子…」
えぇー、ここでチビッ子出てくんのかよ…
「調、やるデスよ!!」
「蘭子…」
ん?なんかピンクの方のチビッ子…調ちゃんだったか?
見るからに赤い顔してるし、どうしたの?
熱でもあんの?今日はもう帰ったら?
「どうしたデスか、調!?」
「蘭子に敵意を向けられるのも…いい」
………はい?
ちょっと待って?俺の聞き間違いかな?
「ハァ…ハァ…敵なら蘭子に罵られ放題…これはいい…すごくいい」
「し、調!?なんでそんなに息が荒くなってるデスか!!?大丈夫なんデスか!!?」
…なんかしばらく見ない間にロリっ娘が開いてはいけない扉を開いてたんだけど…
マリアはオカンだし調ちゃんはMだしモヤシはマッドだし、もうヤダこの集団…
まともそうに見える切歌ちゃんも語尾がちょっと変だし、なんかありそうって疑っちゃうわ…
***
「と、とにかく仕切り直すデス!!」
切歌ちゃんがそう言う。
まだモチベ続くのすごいね!!
俺もう戦う感じじゃないんだけど…
「な、何してやがるデスか!!さっさと構えるデスよッ!!」
え?ヤダよ…だって…
「蘭子のオシオキ…ハァ…ハァ」
どう見ても攻撃がご褒美にしかならなそうじゃん…
そういうプレイを否定するつもりはないけど、俺はまだノーマルでいたい。
え?百合はノーマルに入るのか、って?
精神的に男だからセーフだよ!
しかし、どうやって切り抜けようかね…
俺的にはクリスちゃんが無事だったし、元凶は倒したからもう帰りたいんだけど…
「やるデス!!」
「蘭子!今行く!!」
チビッ子達はやる気みたいだし…
ん?翼さん、何して…
―影縫い―
「な!?動けないデス!!」
「くっ!?
「蒼の歌姫…」
「いや…あまりにも隙だらけだったのでな、もしかしてまずかっただろうか?」
…うん、なんかしっくりはこないけど、俺の精神衛生的にはグッジョブかな…
ていうか、Mっ子は人の名前に変なルビ入れるのやめてくれる?
「しかし…対人戦技がこのような形で役に立つとはな…」
うん…なんか感慨に耽ってるけど、扱い困るし助かったよ…
うまい具合に拘束して無力化できたし。
………ん?拘束?
「私を縛り付けていいのは蘭子だけッ!!」
「し、調が遠くに行っちゃってる気がして怖いデスよ!!?」
なんと驚く事にロリっ娘は精神力だけで拘束の中、動いていた…
うん、切歌ちゃん…一緒に居たいなら、たぶん調ちゃんと同じところに行かないともう手遅れだと思うな…
「その…神崎?ご指名みたいだし任せてもいいか?」
やだなぁ…怖いなぁ…
「………封書」
「あぁ!!私今蘭子に…蘭子に拘束されてる!!」
1人で盛り上がるロリっ娘以外、その場にいた全員が疲れた目をしていた…
今回は
憤怒抱きし魔王と禁忌の少女=激おこらんらんと扉を開いた調です(笑)
相変わらずタイトルと内容のギャップが…
まぁ今さらですが(笑)