G6話です。
とりあえず、切歌ちゃんと調ちゃんも捕まえたし、もう疲れたから帰りたい。
「デェェェスッ!!」
ん?なんか切歌ちゃんが叫んでるな…
―切・呪りeッTぉ―
拘束されながら鎌だけ飛ばすとか器用な事するなぁ…
って、調ちゃんの拘束が解けてる!?
「調!!キテレツ連れて逃げるデスよ!!」
「そんな…それじゃあ…」
「アタシより、ソイツがいないとマムが…」
「切ちゃんが蘭子の鬼畜拘束プレイの餌食に!!」
「うん、調が何を言ってるかわからないデスよ…」
うん、切歌ちゃん…俺も同感だよ…
やっぱり、まともに会話が成立しそうなのは切歌ちゃんだけかな…
残念フィルター付きの俺が言うのも何なんだけどネ!
「逃がすか!!」
翼さんが追おうとするが、手で制止する。
「神崎!?何故…」
「禁忌の少女と対峙するには、我が魔力に静謐を欲す…」
「えっと…調ちゃんと向き合うのは心の準備が欲しいみたいです」
響ちゃんが通訳してくれる。
「そ、そうか…その、心中察する…」
うん、なんだろうね…
その同情の目は俺の心にクリティカルだなぁ…
***
とりあえず、捕まえた切歌ちゃんを二課の仮設本部まで連行する。
俺としては、マリアもいるし、家に連れて帰りたいところなんだが、さすがに交戦がバレてるので、マリアみたいなこっそり転移は難しいからな…
まぁ、後でダメ元で弦十郎さんにお願いしてみよう。
「さて、では暁切歌君、君には聞きたい事がある」
「黙秘するデス!!何も喋らないデス!!」
「え?でも今喋ってない?」
「バカ!!話の腰を折るな!!」
響ちゃんの素朴な疑問に、クリスちゃんがツッコミを入れる。
相変わらず仲良いなぁ…
さすが、未来ちゃんと3人で俺をハブって週2回遊びに行く仲なだけある。
別に悔しくなんかないやい!!
「ななな何の事デスか!!?アタシは喋ってないデスよ!!」
この娘も大概チョロそうだよなぁ…
「いや、聞きたいのは一つなんだが…こちらでも今裏を取らせている所だが、ウェル博士の言っていた月の落下は本当の事だろうか?」
弦十郎さんが軌道修正する。
色々とチャチャばかりで、イラつくだろうに大人って凄いなぁ…
「…本当デス!!でもそれ以上は喋らないデス!!」
頑なになっちゃったか…
これ以上喋らすには触手の出番かな?
「いや、それだけ聞ければ十分だ」
え?もうちょっと尋問とかしないの?
まだ触手出てないよ?
「師匠、何かいい案があるんですか?」
「了子君のところに行く。蘭子君と…切歌君は一緒に来てくれ」
え?フィーネさんのところ行くの?
だったらさ?いい加減ショタ連れていこうよ…
おっさんと美少女と謎言語女じゃおねショタできないじゃん…
***
「ヒッ!?ソイツを私に近付けるなッ!!」
「ギャーッ!!?オバケがいるデスッ!!?」
もう…入っていきなりなんでこんなにカオスなの?
てか、フィーネさんの反応はわからんでもないけど、切歌ちゃんはどうしたの?
「櫻井了子は死んだ筈デスよッ!!?じゃないとマリアが…」
ん?なんで今マリアの名前が…
「ん?どういう事だ?」
「マリアには…フィーネの魂が宿っているデスよ…それで月の落下を察知できたってマムが…」
「ハッ、F.I.S.の考えそうな事だな。大方、私が死んだと思って体よく次の指導者を担ぎ上げたんだろう」
うーん…よくわからんな。
まぁ、それは帰ったら本人に聞いてみるか。
割と長時間置いてきぼりだし、逃げてなきゃいいけど…
「しかし、了子君。君以外の人間にフィーネの魂が宿る可能性は?」
「あり得んな。私の使うリィンカーネーションは謂わば魂の転移。分割は出来んよ」
いや、こんな愛が重い人が何人もいたら普通に嫌だよね。
ん?て事はこの人がここにいる限り、他にフィーネは現れないって事か。
まぁ、あんなオカンが実はフィーネさんでしたとか言われてもそれはそれで嫌だしね…
「で?私に聞きたいのはそんな話じゃないだろう?話すからソイツを私の視界に入れないでくれ」
ずいぶん嫌われたものだ…
俺はただおねショタして欲しいだけなのに…
「わかった。聞きたいのは月の落下とその対策について、だ」
…弦十郎さんの問いにフィーネさんが考え込む。
「…おそらく、カ・ディンギルの砲撃によって、バラルの呪詛を司る月遺跡に何らかの不具合が生じているのだろう」
つまり元凶アンタかよ…
「そして、F.I.S.が掲げる対策は十中八九フロンティアだ。カストディアンが残した恒星間航行船で月が落下する前に地球より脱出する手筈だった筈だ。フロンティア起動の鍵、ネフィリムと神獣鏡は私があそこに持ち込んだからな」
それも元凶アンタかよ…
アレ?なんか今さらっと重要ワード言わなかった?
「…他に考えうる対策は?」
「…そこにいるだろう。その忌々しい小娘なら、月を破壊する事も月遺跡を修復して公転軌道を正常に戻す事も容易い筈だ。というかソイツに関しては何が出来ても不思議じゃない」
…え?俺?
「いや…蘭子君の聖遺物では破壊は出来ても修復は…」
「フッ、炎と冷気を操る聖遺物だけで、バビロニアの宝物庫からの脱出など可能なものか。その小娘は、もっと大きな…そう、神の寵愛でも受けているかのような力を持っている」
……まさかここまで分析されてるとはな…
まぁ、神というか変な守銭奴の邪神に付きまとわれてはいる。
ほぼ当たりじゃねぇか…
「まぁ、どうやるかまでは、力を与えた本人にでも聞いてみるんだな。さぁ、話す事は話したぞ?早々に帰ってくれ」
半ば追い出される形でフィーネさんとの話は終了した。
いや、あの事務員一方的だし、会いたい時に会える訳じゃねぇんだよ…
***
簡単に事務員に会う手段も無いので、とりあえず切歌ちゃんを家で預かってもいいか弦十郎さんに聞いてみたら意外とすんなりとOKが出た。
捕まえたはいいが、年頃の女の子をどう扱っていいか、弦十郎さんにもわからなかったらしい。
うーん…不自然なくらい女っ気無いもんね。
誰か心に決めた人でもいるんかね?
まぁ、それはさておき…
「アタシをどうするつもりデスか!!ガルルルル!!」
めっちゃ警戒されてる。
まぁ、無理もないよね…
俺自身あまり意味わかってないけど、調ちゃんがどMになった原因俺らしいし…
でも、比較的マトモそうに見えるし、美少女だし、この娘にはあんま嫌われたくないなぁ…
「普遍の識者よ…我が魔王城に誘おう」
「ままま魔王城デスかッ!!?そんな…まままさか拷問するつもりデスかッ!!?い、痛いのはちょっと遠慮したいデスよ」
つまり痛くなければいいと?
これは触手の出番かな?
「クックックッ、魔王城に帰還した暁には贄を供してくれようぞ」
「ギャーッ!!捕虜虐待反対デスよッ!!?」
うん、ちょっとリアクション面白いからなんか楽しくなってビビらせすぎた。
まぁ、普通に喋っただけなんだけどね…
いやぁ、どうやって説明するかな…
と思ってたら、クリスちゃんに後ろからチョップされる。
「コラ、あんまビビらすんじゃねぇよ。コイツが言ってんのは、家に連れて行って飯でも食おうってだけだ」
「…え?ゴハン…デスか…?」
さすがクリスちゃん。
何処に出しても恥ずかしくない、出来た嫁だ。
「おう、一晩中戦闘だったからな、朝飯にベーコンエッグでも作ってやるよ」
「べ、ベーコンエッグ…す、既に美味しそうな予感がするデスよ…ハッ、まさかそうやって油断させておいて…」
「お前普段何食べてんだよ…ま、こちとら疲れてるし、眠くて仕方ねぇんだよ。飯食ったらアタシもコイツも寝るから外出以外は好きにしてくれて構わねぇよ」
「ムムムム…し、仕方ないデスね、そこまで言うなら食べてやるデス!!」
やはりチョロい。
クリスちゃんも大概だけど、この娘もちょっと将来が心配になるレベルだよね…
とかなんとか言いつつ、家の鍵を開けてドアを開けたら…
「…随分と遅かったわね?朝帰りとは恐れ入るわ?」
青筋を立てたマリアがガ○ナ立ち、もとい仁王立ちで待っていた。
なんか未だかつて無いプレッシャーを感じるんだけど…
***
「…で?一晩中一体何処をほっつき歩いてたのかしら?」
「いい?装者だなんだ言っても貴女達はまだ高校生なのよ?」
「夜中に目が覚めた時、散歩すると言ってた雪音クリスどころか蘭子までいなかった時の私の気持ちがわかるかしら?」
「だいたい貴女達はねぇ…」
マリアの説教は続いている。
いい加減正座解いちゃダメ?足痺れてきたんだけど…
「聞いてるのッ!!?」
はい、すみません。
「ていうか、お前…アタシもコイツもいなかったのに、逃げなかったのかよ?」
うん、それは俺も思った。
「え?……………………………ハッ!!?」
「おい、アホだ、アホがいるぞ…」
どうやら、隙を見て逃げるよりも、溢れんばかりの母性が完全勝利してたらしい。
「ま、まぁ、逃げようと思えば逃げられたわよ?って何よ!?その目は!?」
ウン、ソウデスネー…
今の今まで逃げる気が無かったもんね…
「ていうか、何でマリアがいるデス?」
「え!?嘘!?切歌じゃない!?まさか貴女も捕まったの!?」
ホント、今さらダヨネー…
今回は
再臨せし終焉の巫女=再登場のフィーネさん
割と核心まで推察してたフィーネさん。
伊達に数千年生きていないという事ですね。
そして着々とらんらんの天敵の座を固めていくたやマさん(笑)