チート転生したらしいが熊本弁しか喋れない   作:祥和

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闇に飲まれよ!(お疲れさまです)

忘年会シーズンのおかげでちょっと更新不安定です…


第20話 翳りし陽光

私立リディアン音楽院。

 

そこに通う1回生、小日向未来は憂鬱だった。

授業中、ふと右端の席を見る。

 

その席には今は誰も座っていない。

その席の主、神崎蘭子は、あの事件以降ずっと休んだままだからだ。

 

「…さん、小日向さん」

 

「え?あ、はい!」

 

どうやら、教師に当てられていたようだ。

未来は慌てて意識を授業に戻すが…

 

「どうやら心ここにあらずみたいですね、では、その悩みは次の講義までに晴らしておいてください」

 

「は、はい、すみません」

 

「うえぇ…先生の対応、私の時と全然違う」

 

響が不満を漏らすが…

 

「当たり前です!立花さんはいつもいつもいつもいつもいつもいつも私の授業を聞く気自体が無いんですから!!」

 

「うぇぇっ!!?いやぁ…そんな事は無いというか…ちょっとはあるというか…」

 

「立花さん!!」

 

教室が笑い声に包まれる。

授業を聞いていない響が先生に怒られる。

実にいつも通りの光景だ。

 

だが、そのいつもと変わらない筈の光景の中に無くてはならない親友の姿は、何処を探してもずっと見当たらないままだった。

 

***

 

「運動をしましょう!食べたら食べた分消費すればいいのよ!」

 

「さ、さすがマリアデス!」

 

マリアがなんか言い出した。

昨日の鍋のシメ事件をまだ引き摺ってるみたいだ。

こいつ、クリスちゃんが学校行ってていないからってやりたい放題だよな…

まぁ、別に勝手にやればいいんじゃない?

 

「じゃあ、動きやすい格好に着替えましょう」

 

「デスデスデース!」

 

マリアと切歌ちゃんに引き摺られていく。

えぇ…なんで俺もやる事になってんの?

 

「じゃあ、まずは腹筋から。お腹周りに効く運動と言えばコレよね!蘭子は私の足を押さえてて頂戴」

 

はぁ…めんどくさいけど仕方ないなぁ…

と最初はあんまり乗り気じゃなかったんだが…

 

「19…20!」

 

正直、腹筋という運動を侮っていたと言わざるを得ない。

考えてみれば、身体を上下に起こす運動なのだ。

 

つまりそれは…足を押さえている俺の目の前でマリアの豊かな双丘がこれでもかという位に暴れ回っているという事だ。

しかもそれが一定間隔で近付いてくるのだ。

これは…なんというか…凄い、癖になりそう。

今度クリスちゃん、響ちゃん、奏さんも誘ってみよう。

翼さんと未来ちゃんは…うん、まぁ…ね?

いや、おっぱいに貴賤なんて無いんだけどね?

あまりこういう趣旨には向かないかなぁって…

いや、仲間外れは良くないな。

俺はいつもクリスちゃん達に仲間外れにされてるけど仕返しみたいで気分悪いし。

やっぱりみんな誘ってやるのが一番だな!

 

「次はアタシデス!」

 

次は切歌ちゃんか。

 

「デース…デース!」

 

うん、マリア程のインパクトと暴れ具合では無いけど、しっかりと自己主張している。

美乳って言葉が良く似合う感じだ。

割と幼い感じがするし、中学生くらいだろうか?

今からこれだと今後の成長がとても楽しみだ。

しかし、数が全部デースだから今何回やってんのか全然わからんな…

 

「1セット終わったデース!」

 

「じゃあ、次は蘭子ね?私が足を持っていてあげるわ」

 

俺?俺はいいよ…

いや待てよ…足を押さえる為に前屈みになっているこの体勢で俺が上体を起こすと…丁度谷間が目の前に来るような…

………仕方ないな、頑張るか。

 

「よし、じゃあ次はスクワットよ!私についてこれるかしら!!」

 

「負けないデース!」

 

マリアと切歌ちゃんが競争と言わんばかりに高速でスクワットを始める。

流れる健康的な汗、高速の上下運動によって激しく揺れる果実。

絶景はまだまだ続くのだった。

あぁ…ここが天国だったか…

 

***

 

「いやぁ、私達女子高生なのに粉物食べ過ぎでしょ」

 

「ふらわーのおばちゃんのお好み焼きは別腹だからね!!」

 

「でも、新校舎になって、ふらわーにも行きにくくなっちゃったね」

 

「たまに食べるからこそ、ナイスです」

 

元気の無い未来に気を使った響が企画したお好み焼きパーティーの帰り道。

尤も、名目こそ未来を元気付ける為なのだが、お好み焼きを3枚平らげた響が一番楽しんでいたのは言うまでもない。

自分が楽しくないのに、一緒にいる人が楽しい訳がない。

だから、彼女はいつでも自分が楽しむ事にも全力なのだ。

 

しかし、そんな和気あいあいと歩いていた響達の前に一人の少女が立ちはだかる。

 

「やっと見つけた」

 

「調ちゃん!?未来達は逃げ…」

 

「用があるのは貴女じゃない。貴女はこいつらと遊んでて」

 

響の周りにノイズが現れる。

即座にシンフォギアを纏う響だが、ノイズの処理を余儀なくされる。

 

「じー」

 

調が未来達を品定めするように見る。

 

「な…なにかな?私達は響が心配なんだけど…」

 

未来が代表して調に話し掛ける。

 

「うん、やっぱり貴女だと思う」

 

「一体何を…」

 

「私達に力を貸して欲しい。弱い人達を守る為の力を」

 

「どういう…こと?」

 

調のいきなりの申し出に未来が困惑する。

しかし、そのような力が…親友を守れるような力が自分にあるのなら、それは…

 

「一言で言うなら、愛」

 

「何故そこで愛!?」

 

いきなりの突飛な言葉に訳がわからなくなる。

だが、調の言葉に何故か心が惹かれている。

愛…その言葉一つで全て見透かされたようにさえ思えた。

 

「私にはわからない。でも、大事な事みたい」

 

「それは…たしかに大事だろうけど…」

 

何故自分なのだろうか?

確かに、響や蘭子は戦っている。

自分だけが守られている現状にずっとやきもきしていた。

 

「貴女に…自分を変えたいという想いがあるなら、手を取って?」

 

「私は…」

 

わからない。

常識的に考えれば、認定特異災害とまで言われているノイズを扱うような危険な集団だ。

手を取れる訳がない。

しかし、愛という妙に刺さる言葉と大切な人に守られるだけの自分という現状…考えると心が落ち着かない…

そういった迷いが未来を立ち止まらせていた。

 

「残念、時間切れ」

 

調が呟いた次の瞬間、炎の柱が立ち上ぼり、響を囲んでいたノイズ達が消滅する。

 

「やっぱり来たね、蘭子。これもまた愛」

 

「我が至宝に手を出そうとは不届き者よ!!」

 

***

 

いやぁ焦った。

マリア達のおっぱい観賞してたらいきなりちっちゃい俺が響ちゃん達がノイズに襲われてるって言うから急いで来たって感じなんだが…

 

「あぁ…睨む目もいい。蘭子、もっとウジ虫を見るような目で私を見て」

 

上下に揺れる絶景を手放して来たってのに、またMっ子の相手しないといかんのかよ…

この子の相手、俺の精神が物凄く疲れるんだよね…

 

「でも、残念だけど今日は蘭子の相手はしてられない。貴女、一緒に来て」

 

調ちゃんが未来ちゃんに手を差し伸べる。

未来ちゃんを人質にするつもりか?

それだけは許さないよ?

あ…でも、これ逆効果なのか…

Mってどうすれば勝てるの?

優しくしても厳しくしても何やっても喜ばれる気がするんだけど…

 

「でも…私は…」

 

とりあえず、向こうの狙いは未来ちゃんみたいだから、それは阻止しよう。

 

「陽光受けし者よ!」

 

「蘭子…その…久しぶり…」

 

ん?なんかモジモジしてるけど、どうしたんだろう?トイレ?

まぁ、俺の方は未来ちゃんをいつも見てるからあんま久しぶりって感じはしないんだけど、一応そういう事になるのかな?

 

「フッ、我が魂は悠久の時を統べる故、久しきとは思わぬが…」

 

「………は?」

 

アレ?なんか間違えちゃったかなぁ…

この残念フィルター、狙って出てくる訳じゃないからなぁ…

ちょぉっと未来ちゃんの目が怖いんだけど…

 

「わ、我が魂は陽光受けし者と共にある故、紡がれし時など無価値よ」

 

「うんうん、そうだよね?それで?」

 

良かった…持ち直した…

なんだったんだろう…今一瞬物凄いプレッシャーを感じた…

 

「ここは我に任せて撤退を!」

 

「……それで、また隠し事するのかな?」

 

全然持ち直せてませんでした…

スッゲー冷えきった目で見られてる。

あっ、でもなんかゾクゾクするかも…

ヤバい、調ちゃんの気持ちがちょっとだけわかる気がする。

いや、俺はノーマルだよ?ノーマルだからね!

 

「…調ちゃんだったよね?行こう」

 

「え?でも、いいの?」

 

「いいよ、()()()()は私と会うのなんて、久しぶりでも何でもないみたいだし相変わらず隠し事ばっかりだし、行こう」

 

ちょっと待って!

なんでそんなムキになってんの?

 

「陽光受けし者よ!」

 

「………何?まだ何かあるのかな?」

 

「陽光受けし者が闘争に身を置く必要などない!」

 

「我が守る…我が全て守護する故、陽光受けし者は安寧と平穏を享受せよ!」

 

これは嘘偽りない本心だ。

親友の安全と日常の為にここまでやっているんだ。

未来ちゃんが平穏に暮らせるなら、俺はがんばれる。

月の落下も事務員次第だけど絶対に止めてみせる。

事務員と会えないなら最悪、破壊しちゃえばいい訳だし…

 

「……そんなの嫌…嫌だよ…蘭子は全然わかってない!行こう、調ちゃん」

 

しかし、俺の想いは未来ちゃんには届かず、未来ちゃんは調ちゃんと一緒に行ってしまうのだった。

その後ろ姿をただ呆然と見ているしか無かったのだった…

 

最後に見せた未来ちゃんの涙の意味はわからないままだった。




今回は
翳りし陽光=闇に飲まれる393

調勧誘時点で揺れてたのに、らんらんが後押ししちゃいましたね。
まぁ、人の感情に疎いらんらんが顕著に出てしまったので、仕方ないですね。

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