チート転生したらしいが熊本弁しか喋れない   作:祥和

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闇に飲まれよッ!!(凄くお久しぶりです…)

生きてました。
一応、Gクライマックスです。


第25話 70億の絶唱

時は少し遡る。

 

ソロモンの杖を回収し、蘭子と別れ翼、響と合流したクリス。

 

「クリスちゃんッ!!無事だったんだッ!!」

 

「だぁぁッ!!いちいちくっつくんじゃねぇよッ!!」

 

「雪音、無事だったのは重畳だ」

 

抱き着いてくる響を引き剥がしながら、クリスは蘭子の望みを伝えるべく話を切り出そうとするが…

 

「なぁ…」

 

「シッ」

 

翼に止められる。

 

「翼さん、どうしたんですか?」

 

「何か聞こえないか?」

 

耳を澄ましてみると、確かに何か聞こえる。

これは…

 

「誰か近くに居ないかしら!?何か…着る物持ってない!!?」

 

全裸のマリア・カデンツァヴナ・イヴが泣きながら服を求めて蹲っていた…

 

***

 

「…服は私が貸そう」

 

「翼さん、いつも替えの服とか持ち歩いてるんですかッ!!?」

 

「あぁ、防人として当然の心構えだなッ!!」

 

「何を想定した当然だよ…」

 

「よし、これだ」

 

「え……翼さん…それは……」

 

翼が取り出したのはリディアン音楽院の制服。

………制服である。

 

「オイオイ…さすがにソイツを着せるのは…」

 

「む…?何がおかしいのだ?」

 

風鳴翼にはマリア・カデンツァヴナ・イヴ(21)が高校の制服を装備するという事が何を意味するのか本当に理解出来ていなかった。

 

「まぁいい。マリア、これを着てくれ!!」

 

「ヒック…ありがとう、つば……さ?」

 

受け取った服を確認し、顔面蒼白になるマリア。

 

「こ…これを私に着ろっていうの…?無理よッ!!私には出来っこないわ!!」

 

「?…何故マリアはここまで拒絶するんだ?」

 

「そりゃあ…」

 

「ねぇ?どう好意的に見ても…」

 

「?まぁいい。時間もあまり無い事だし、無理やりにでも着て貰うぞ」

 

「え……?翼、ちょっと待ってッ!!お願い!クリス!!たすけ…」

 

助けを求められたクリスだが、翼に引き摺られていくマリアをただ眺める事しかできなかった。

合掌!!

 

***

 

「それで…何か言いかけてなかったか?雪音」

 

「ん?あぁ…アイツから頼み事があるんだが…」

 

「蘭子ちゃんから?私に出来る事なら何だってするよッ!!」

 

「…いや、適任なのはセンパイとアイツなんだが…」

 

意識的に視線を外していた人物の方を見る。

 

「うぅ…胸周りがキツいわ…なんで私がこんな格好を…マム、セレナ…私、もう駄目かも…」

 

だいぶご傷心のようである。

しかし、蘭子の望む全世界から歌を集めるという所業を成すには世界的知名度を誇る彼女の協力は不可欠だ。

何とか立ち直ってもらうしかない。

掛ける言葉は見当たらないが…

 

「私では、世界を救えない…セレナの歌を…無駄な物にしてしまう…」

 

ちょっと年齢と胸のサイズが合わない服を着たくらいでマイナス思考過ぎじゃないだろうか?

クリスが声を掛けようと歩み寄ろうとすると…

 

「セレナ……私は…歌で、世界を救いたい…」

 

何か受信し始めた…

 

♪Apple

 

そして歌い始めた。

 

「クリスちゃん…何?今一体何が起こってるの?」

 

「アタシにわかるかよ…なんか、アイツが思ってたよりヤベェ奴だって事くらいしかわかんねぇよ…」

 

「む?急に歌いたくなる事くらい、あるだろう?」

 

響とクリスには急に歌い始めたマリアを見守る事しか出来なかった。

そして、翼は安定して空気が読めていなかった。

 

『マリア!聞こえますか?マリアッ!!』

 

「マム…?マムッ!!?」

 

謎の受信は終わり、今度は本当に通信のようだ。

 

『マリア…世界を救うには貴女の歌が必要です』

 

『フロンティアの力で月遺跡を修復すれば、月の落下を阻止できそうです。その為には、世界中からフォニックゲインを集める必要があります』

 

どうやら、この通信相手が元々マリアが説得したかった人物らしい。

逆に説得されているようだが…

 

『マリア、私の事は心配無用です。もはや貴女を縛り付けるものはありません。行きなさい、マリア。行って…世界を救ってきなさい』

 

まるで遺言のような言い方だった。

しかし、その当人だけに伝わる言葉は、マリア・カデンツァヴナ・イヴを奮起させるには十分すぎた。

 

「………OK、マム…世界最高のステージの幕を上げましょうッ!!」

 

同時に、パァンッ!!と渇いた音が響き渡る。

意気込んで胸を張った瞬間に制服のボタンが全て弾け飛んでしまったのだ。

辺り一帯が静寂に包まれる中、弾け飛んだボタンが跳ねる音だけが響き渡る…

 

固まるマリア。

狼狽える響。

呆れるクリス。

涙を流す翼。

 

…少女達の世界が静止した瞬間だった。

 

***

 

もう、いきなり邪魔してきて何なの、こいつ。

俺は未来ちゃんと話するので忙しいから、さっさとご退場願おうかね?

 

「我が覇道を妨げる輩よ!!塵と消え行けッ!!」

 

―Niflheimr―

 

黒い怪物が氷の塊になって崩れ落ちるが…

 

『いくら破壊しても無駄ですよォォォッ!!』

 

即座に新しく構築される。

 

『このフロンティアと同化したネフィリムは無限の再生能力を持っているようなむぉのぉォォォッ!!』

 

邪魔だなぁ…響ちゃん達もいるから、この遺跡ごと壊す訳にもいかんし、めんどくせぇ…

未来ちゃんの方はバリアで防げてるけど、時間の問題な気もするし、ちゃっちゃと排除しないと集中できん。

今まで大雑把で雑な戦い方しかしてこなかった弊害が出てるなぁ…

そんな事を考えていると…

 

「雄ォォォォッ!!」

 

凄まじい雄叫びと共に、人類最強が来た。

怪物はパンチ一発で粉々に砕けていた…

 

………やっぱりあの人、人間じゃないよ…

 

***

 

「蘭子君!!こっちはオレに任せろ!!ノイズが相手でないなら、こっちのもんだッ!!」

 

目の前の完全聖遺物と対峙しながら、風鳴弦十郎は神崎蘭子に声を掛ける。

 

「…感謝する。無双の戦神よッ!!」

 

「応よッ!!思いっ切りぶつかってこいッ!!」

 

強者故のシンパシーか、互いに心配の声を掛ける事無く、互いの相手へと向かい合う。

お互いに敵に負ける事など微塵にも思っていないかのような示し合わせだった。

 

「さて…オレの相手はコイツだが…ウェル博士ッ!!」

 

『ヒィィィィィッ!!?一体何なのですか、貴方はッ!!ボクの邪魔をするなら…』

 

「知らいでかッ!!子どものやりたい事に手を貸せない大人なんて、カッコ悪くて仕方ないんだよッ!!」

 

『ヒッ…ヒィィィィィッ!!?や、やれッ!!暴食の二つ名で呼ばれたその力で、焼き尽くせッ!!ネフィリィィィムッ!!』

 

ウェル博士の指示で吐き出したネフィリムの火球によって、辺りが焦土となる。

 

『ヒ、ヒヒヒヒヒッ!!ネフィリムの炎にただの人間が耐えられる訳がないィィィッ!!』

 

しかし…

 

「オラァァァッ!!」

 

何事も無かったかのように、ネフィリムに拳打を叩き込む弦十郎。

 

『ヒッ、ヒィィィィィッ!!?あ、あの炎を喰らって…あ、貴方は本当に人間ですかッ!!?』

 

「炎は発勁でかき消したッ!!まぁ、さすがに靴は駄目になったがな…」

 

「だがな…ウェル博士ッ!!あまり人間の力を舐めるなよッ!!」

 

そんな事できる人間はあなただけです。

 

『し、しかァァしッ!!貴方が如何に規格外だろうと、こちらの優位は揺るがないィィィィッ!!』

 

ウェル博士の必死の言葉と共に再生を始めるネフィリム。

戦局は千日手の様相を迎えようとしていたが…

 

「噴ッ!!」

 

弦十郎の掌底がネフィリムの腹部に突き刺さる。

 

『な、何度やってもボクのネフィリムには…』

 

しかし、本来発生する筈の衝撃は腹部を突き抜けて背部から発生し、糸の切れた人形のようにそのまま崩れ落ち、稼働を停止させるのだった。

 

『ど、どうしたんだ!?た、立てぇッ!!ネフィリムッ!!立ち上がれェッ!!ネフィリィィィッム!!』

 

「浸透勁で内部のみを破壊した。外傷が無ければ、再生は出来まい」

 

「さぁッ!!年貢の納め時だッ!!首を洗って待っていろッ!!ウェル博士ッ!!」

 

『ヒ、ヒィィィィィィッ!!?』

 

完全聖遺物相手に僅か5分足らずの攻防での決着。

これが、特殊災害対策機動部二課司令、風鳴弦十郎の本来の戦闘力である。

 

***

 

うわぁ…

フォロー要らんと思ってはいたけど、あっちもう終わってら…

なんかもうあの人がノイズに対抗できる手段探すのが一番人類の為になるんじゃないかな…

無限再生する奴を破壊せずに機能だけ停止させるって俺でも出来るかどうかわからんのだけど…

まぁ…モヤシの確保はこのまま弦十郎さんに任せようかな…

 

―流星―

 

気が向こうに散っていた隙に未来ちゃんが放った光でバリアにヒビが入る。

ヤベッ…

 

「転移ッ!!」

 

咄嗟に未来ちゃんの後ろに転移で退避すると…あッ!!

 

「わがうつしみははいごにてんいせし」

 

「うん、ありがとう蘭子。後で抱っこしてあげるね」

 

「このていどぞうさもない」

 

行方不明だった未来ちゃん担当が未来ちゃんの背中にくっついていた…

アイツ…ちゃっかり買収されてやがる…

そうか…そのせいでこっちの居場所が全部筒抜けだったのか…

 

しかし、抱っことかで買収されるなんて、一体誰に似たんだよ…

チクショウ…俺だよ!!

 

まぁ…これで全自動ヤンデレシステムの謎も解けたし…

 

「待っててね、蘭子…蘭子を倒して…アレ?おかしいな…私、どうして蘭子を…?」

 

これ以上、未来ちゃんをあのままにしておけない。

だけど、いまいち決め手に欠けるんだよな…

主に制御しきれる自信が無いこのパワーのせいだけど…

 

~Seilien coffin airget-lamh tron~

 

攻めあぐねていたその時、歌が聞こえた…

 

***

 

♪始まりの歌<バベル>

 

調がいる

切歌がいる

マムもセレナもついている

それに…あの子も独り戦ってる

 

みんながいるなら、これくらいの奇跡…

 

「安いものッ!!」

 

色々と精神的な重傷を負ったマリアだったが、合流した調や切歌のフォローもあってなんとか立ち直っていた。

世界中から歌を集めるという役割も、妙にふて腐れた翼と共に、見事に立ち回っていた。

もはや、恥ずかしいの極限まで達していたため、逆に怖い物が無くなっていたのである。

 

(あの頃の、泣いてばかりいた私はもう居ない)

 

そして、ここにきて、破損した筈の銀の腕、アガートラームの起動と装者6人による同時絶唱展開。

彼女は今、奇跡を起こす為にここに居る。

 

「惹かれ合う音色に、理由なんていらない」

 

「アタシも、つける薬が無いな」

 

「それはお互い様デスよ」

 

「貴女がやっている事、偽善と言ってごめんなさい」

 

「うん、もう気にして…」

 

「でも、それとこれとは別の話で蘭子のペットの座は譲らない」

 

「ゴメン…ちょぉっと何言ってるか、わからないかな…」

 

我が道を往く月読調は健在のようである。

 

「響達も私の邪魔をするの…?でも、たった6人で…私は止められないッ!!」

 

未来の光が、アガートラームのバリアフィールドを侵食していく。

こと聖遺物に対し、その力は絶大だった。

 

しかし、彼女…いや、彼女達の想いは…

 

「6人じゃない…」

 

「私が束ねるこの歌は…」

 

「70億のッ!!絶唱ッ!!」

 

奇跡を願う人々の想いが、歌を通じて奇跡の体現者、神崎蘭子の元に集まっていく。

 

「傷ついた悪姫ッ!!」

 

「最終形態ッ!!」

 

「我が名はブリュンヒルデッ!!」

 

光り輝く灰被りの乙女(シンデレラガール)の真の姿が解放された瞬間だった。

 

***

 

『ふぅ…何度かヒヤヒヤする場面もありましたが…及第点ですかね』

 

『これで、名実共に神の代行者(アイドル)として活躍できますね、蘭子ちゃん』

 

緑の服を着た事務員は、その笑みを深めるのであった…




Gは後1話です。
例によって書き溜め無いのと仕事の影響で次の更新未定なので気長にお待ちくださいませ。

早くキャロル書きたいんだけどなぁ…
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