チート転生したらしいが熊本弁しか喋れない   作:祥和

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闇に飲まれよッ!!

少し遅くなりましたが、絶唱しないです。


戦姫絶唱しないシンフォギアG

*** 調、思い立つ ***

 

力が、足りない。

 

月読調には、愛する神崎蘭子に色々とされたい事とは別に、弱い人達、戦う力を持たない人々を守りたいという願いがある。

しかし、今回の件で痛い程身に染みていた。

 

圧倒的な力の前では、自分もまた弱い人間の1人に過ぎないのだという事を。

 

「切ちゃん、どうやったら、蘭子みたいに強くなれるのかな?」

 

「藪から棒にどうしたデスか?」

 

「私はもっと強くなりたい。弱い人達を守れるくらいにッ!!」

 

「調…やっと戻ってきたデスねッ!!」

 

それは純粋な、力への渇望の吐露だった。

切歌もようやく自分の知っている調に戻ったと喜んだ。

 

「でもどうしよう?そもそも私には個性からして足りてないし…」

 

「一回、辞書で個性って単語を調べてみるといいデスよ?」

 

「うーん…蘭子みたいに…」

 

「聞いてないデスね…」

 

やっぱり早とちりだったかも、と切歌が思い始めた時だった。

 

「そうだッ!!蘭子みたいな言葉使いをマスターしたら私達も強くなれるんじゃないかなッ!!?」

 

「調が元に戻ってくれたと安心した途端にコレデスよ…」

 

純粋さはすぐに迷子になった。

 

「そうと決まれば山籠り!修行だねッ!!行くよッ、切ちゃんッ!!」

 

「なんでアタシもやる事になってるデスかッ!!?」

 

せめて家でやれ、家で。

 

*** アタシ様は告らせたい ***

 

はじめはおかしな奴だと思っていた。

言葉使いは訳わかんねぇし、強さに関しては輪をかけてデタラメだし。

とにかく変な奴、それしかなかった。

でも、命を救われた。

 

一緒に居ると安心するし、頼られると頑張りたくなる。

そんな側面が見えてきたあたりで、気付いた。

気付いてしまった。

 

アタシはどうしようもなく、アイツに惹かれてるって事に。

 

だけど、こんな性格だから、なかなか素直に気持ちを伝えられそうにない。

まぁ、一緒に住んでるんだし、そのうち言えるだろ…

 

それから、半年が過ぎた!!

その間、特に進展は無かった!!

 

いや、おかしいだろッ!!?

ライバルどころか、同居人まで増えてやがるしッ!!?

 

ヤベェ…このままじゃぜってぇ何もねぇ気がする。

アタシから言うのは…その…無理だ。

まぁ、それだけは痛い程わかった…

 

やっぱアイツから来て貰うしかねぇな…

 

 

こうして、雪音クリスは決意を新たにした。

しかし、近い将来思い知る。

古今東西、恋愛とは、()()()()()()()()()()なのである、という事を。

そして、神崎蘭子に頭脳戦は無意味である事を。

 

*** 調、修行する ***

 

「じゃあ、始めよう。切ちゃん」

 

「もう既に帰りたいデスよ…」

 

切歌を強制的に連行し、神崎蘭子の言葉使いをマスターするべく、山に着いた調が懐いた感情は…

 

感謝だった。

 

自分を変えてくれた蘭子に

そして、この世界に

更には自分を産んでくれた顔も名前さえ知らない両親に

 

自分なりに少しでも恩を返そうと思い立ったのが

 

一日一万回

感謝の闇に飲まれよ!!

 

気を整え

 

拝み

 

構えて

 

闇に飲まれよ!

 

一連の動作をこなすのに当初は5~6秒

 

一万回闇に飲まれるまで、初日は18時間以上を費やした。

 

夜の帳が降りて闇に飲まれたら倒れるように寝る。

 

起きてまた闇に飲まれよ!を繰り返す日々。

初日の途中から切歌の姿は見当たらなかったが、集中していたため、気付いていなかった。

 

2週間が過ぎた頃、異変に気付く。

 

一万回闇に飲まれても、日が暮れていない。

そう、闇に飲まれているのに、闇に飲まれていないという矛盾ッ!!

その矛盾を実感した時、切歌がいない事にようやく気付いた。

 

月読調、齢15にして、完全に羽化する。

 

切歌を探しに山を降りた彼女のやみのまは、

 

音をーーー置き去りにしていたッ!!

 

*** 犬猿の仲 ***

 

「クリス、切歌見なかった?」

 

最近増えた同居人がもう1人を探してるみたいだ。

 

「いや、アタシは見てねぇぞ」

 

ていうか、お前らもう捕虜でもなんでもねぇんだから自分達の家探せば?

別にコイツを狙ってる訳でもねぇみてぇだし。

 

「ちょっとお買い物を頼もうと思ったのだけど…蘭子は見てない?」

 

「普遍の識者は、禁忌の少女と禁足地へと旅立ったわ」

 

相変わらず、わかりにくいな…

禁足地って単語は初めて聞くからわかんねぇ…

 

「山…?何しに?」

 

…は?今の…なんでコイツはわかったんだ?

アタシの方が付き合い長ぇ筈だよな?

 

「我の預り知るところではない」

 

「それもそうね…でも困ったわね。私は蘭子をお風呂に入れないといけないし、クリスは料理中だし…」

 

んな事ぁどうでもいい。

アタシすらわかんねぇ単語をなんで知ってんだよ。

 

「仕方ないわね。買い物は後で私が行くわ。じゃあ、お風呂入りましょ、蘭子」

 

だからナチュラルに一緒に風呂入ってんじゃねぇよッ!!

やっぱアイツとは仲良く出来る気がしねぇッ!!

 

*** この身は剣 ***

 

「翼さんの次の出演についてですが…」

 

「あぁ…おっ、結構オファー来てんな、人気者だねぇ」

 

奏と緒川さんは打ち合わせか…

 

「まぁ…蘭子さん程では…」

 

「あれは特殊過ぎるだろ…」

 

ふむ…少し手持ち無沙汰だな。

こういう時はこの前考えていた歌の歌詞を考えておくか。

 

ーー体は(つるぎ)で出来ているーー

 

お、なかなかいいフレーズだなッ!

なんか…歪な生き方しか出来ない奴が国に身を捧げるしか生き方を知らない女と出会う物語が思い浮かんだぞ♪

ふふ…まるで我が身のようではないか。

その場合、果たして私はどちらなのだろうな…

おっと、しんみりしている場合ではないな。

 

ーー血潮は鉄で心は硝子ーー

 

いいな♪なかなか今日は冴えてるぞ♪

この身を(つるぎ)と鍛えし我が身も、かくあるべしだ。

 

ーー幾たびの戦場(いくさば)を越えて不敗ーー

 

いいぞ、いいぞ♪

まぁ、神崎のおかげというかなんというかであまり目立たないのはアレだが、嘘ではないしなッ!

…嘘ではないしなッ!!

 

…少し熱くなってしまったな、いかんいかん…

ふむ、次は…

 

ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない

 

 

ただの一度も敗走はなく、ただの一度も勝利もなし

 

どちらが良いだろうか?

悩むな…次のフレーズに直結する繋ぎだけにここは重要だぞ。

 

こういう時は…歌のタイトルから考えて合う歌詞を選ぶのが定石か。

 

そうだな…この歌、いや、もはや(つるぎ)と呼ぶに相応しい物の銘は…無限の…

 

「翼さんの次の出演は料理番組に決定しましたッ!!」

 

え?は?何?緒川さん?

料理番組?(つるぎ)であり、歌女(うため)である私に?

いやいや、自慢じゃないけど料理のりの字も知らないですよ?

 

「いやぁ、正直、クイズ番組とかなり迷ったのですが、翼さんの新境地の開拓、というテーマなら女性らしさも大事かと思いまして」

 

いや、勝手に話を進められても困るというか…

 

あっ、さっきまでの歌詞が飛んじゃった…

 

*** 調、切歌を探す ***

 

「切ちゃん、どこに行ったんだろう?」

 

切歌を探して、山を降りた調だが、勿論手掛かりなど持ち合わせていない。

ちなみに切歌は当たり前に帰宅しているので、そのまま世話になっている蘭子宅に帰るのが正解だが、彼女はスタートの段階で切歌が帰宅しているという選択肢を除外していた。

 

「切ちゃん…まさか、敵に拐われたの?」

 

この少女は一体、何と戦っているのだろうか?

 

「待っててね、切ちゃん。今、助けるからッ!!」

 

根は良い子なのだろう…たぶん、きっと。

 

それから…

 

「武というよりは舞、舞踊だね。しかし、何故石や木を…?」

 

「なんだァ?てめェ……」

 

「やみのまッ!!」

 

「立ち上がる事すら…遥かに遠い…大きな収穫だ…次に活か…せる……………」

 

「安心していいよ。弱い人達は私が守護(まも)るから」

 

「殺"し"て"や"る"ぅ"ぅ"ッ!!」

 

………なんか色々やっていた。

 

*** 立花響の憂鬱 ***

 

テレビをボーっと眺めながら考える。

なんか最近蘭子ちゃんと会えてないなぁ…

 

『さて、今日の防人クッキングの時間だ』

 

いつも取材とかで忙しそうだし…

なんか一気に距離が遠くなっちゃった気がするなぁ…

 

『ではアシスタントの君、今日の献立を頼む』

 

『フフーン♪カワイイボクが発表しますよッ!!今日は、ハンバーグです』

 

ていうか、え?翼さん何やってんの?

たしか料理とか全く出来ないって奏さんが言ってなかった?

うわぁ…アシスタントの女の子、すごい楽しそうだけど何にも聞いてないのかなぁ…

聞いててアレなら、すごいプロの子だなぁ…

私より若そうなのに、アイドルってすごいなぁ。

 

『ではまずは具材を斬るッ!!』

 

『アレ?なんか切るのニュアンスがおかしくないですか?って、ななな何やってるんですかッ!?そんな長い刃物使ったらダメですよッ!?』

 

『?古来より炊事場は戦場(いくさば)と言うだろう?』

 

『え?まさかこの人ほんとに番組の趣旨わかってないんですか!?』

 

あぁ、やっぱり何も聞いてなかったんだなぁ…

ていうかコレ、放送して大丈夫なのかな?

もう既に放送事故ギリギリな気がするんだけど…

 

『このような長さでも剣には相違無いッ!!ならば往く道は一つッ!!』

 

『あぁあぁァぁッ!?ダメですッ!!危ないですッ!!包丁を持たない方の手は猫の手ですよッ!!』

 

『クッ…まさかこの身にまだ流す程の涙が残されていようとはッ!!』

 

『いや、玉ねぎ切ってるだけですよねッ!?普通出ますし、大袈裟ですよッ!!』

 

『焼くだと?甘く見ないで貰おうかッ!!』

 

『焼くってそういう意味じゃないですッ!!今どこから火を出したんですかッ!?スタッフさんッ!?早く消火器ッ!!』

 

『今度こそ汚名を灌がせて貰うッ!!風鳴翼、推して参るッ!!』

 

『油ッ!!注いでるの油ッ!!しかもそんなに注がなくていいですッ!!天ぷらでも揚げるつもりですかッ!?』

 

………………うわぁ

私も料理は人の事言えないけどこれはひどい…

 

『うむッ!なかなか良い出来だッ!!ハンバーグ、完成だッ!!』

 

『ゼェ…ゼェ…ゼェ…ここまで酷い人は事務所の先輩方にもなかなかいないですよ…久しぶりにバラエティのロケじゃないと思ったら…コレ、ロケより大変じゃないですか…え?レギュラー?ちょっ、ちょっと待って下さいよッ!!たしかアシスタントは新人の子と交代制って…え?SNSが炎上したからしばらく無理?あの子、いつも炎上してるじゃないですかッ!?』

 

この子、すごいなぁ…

でも、テレビ局もよくこれを放送しようと思ったね…

勇気あるなぁ…

 

しかし、私の感想とは裏腹に、この番組は世間では大ヒットし、国民的料理番組とまで呼ばれるようになるのだった…

…この国、ほんとに大丈夫?

 

まぁ、途中テレビの感想ばっかりになっちゃったけど…くよくよしてても始まらないよねッ!!

そんなのはきっと私らしくないッ!!

よしッ!!だったらまずは、行動しないとッ!!

 

思い付いたまま、玄関を出る。

 

蘭子ちゃんに、会いに行くんだ。

 

「やはり蘭子の家ね。いつ行く?私も同行するよ」

 

愛が重院…

 

「私も響も蘭子成分が最近不足気味だもんねッ!!クリスばっかり独占しちゃってズルいから、私達も今日は蘭子の家に泊まりに行こうね。あ、もちろん響の事もちゃんと好きだよ?そこは勘違いしないでね?私にとって響も蘭子もどっちも大事でどっちも大好きってだけだから。やっぱり中学校からの付き合いもあるし、リディアンでもずっと一緒って約束したもんね?それから…」

 

なんか私って未来によくおかしな子って言われるけど、未来も大概なんじゃないかなぁ…

 

*** Shirabe homecoming ***

 

立花響と小日向未来が神崎蘭子に会いに行く道中の事。

 

「むっ、やっと見つけた」

 

「あっ、調ちゃん」

 

「調ちゃん、なんか変わった?」

 

「お前ら、人ん家の前で何やってやがんだ?」

 

ここに、神崎蘭子を想う4人の女傑が集結するッ!!

 

「御託は後、切ちゃんはどこ?」

 

しかし、その内の1人、月読調は既に臨戦態勢に入っていた。

まさに…一触即発ッ!!

どうやら、というかやはり、調にとっての敵とは彼女達だったらしい。

途中のやり取りは一体何だったのだろうか?

 

「切歌ちゃん?今日は見てないけど…」

 

「私も見てないね」

 

「嘘。切ちゃんを人質に取るなんて…」

 

「いや、アイツなら…」

 

「あくまでもしらを切るつもりならッ!!」

 

その場に居た全員が身構える。

 

違う。

 

デタラメで不合理な鍛練の結果、今の調は生物としてのステージを1ランク上げている。

それを肌で感じ取ったが故の、警戒。

 

しかし、鍛練の質であれば響やクリスも負けてはいない。

何せ、響の師匠はあの人類、いや、実質生物界最強の男であるし、クリスもまた文句を言いながらもそういった実力者から課せられた訓練に付き合っている。

未来は先日の一件以来、なんか色々通り越した高みに至っていた。

 

だが、彼女らをして無視できない。

そういったプレッシャーを目の前の少女から感じ取っていた。

 

全員が警戒を最大限にしていた。

最悪、3対1ででも彼女を抑えなければ、周囲に被害が及びかねない。

 

来るッ!!

 

全員が動こうとした刹那、ソレは突然現れた。

 

「あっ、調。やっと帰ってきたデスか?」

 

「アレ?切ちゃん?」

 

「蘭子さんが大丈夫って言ってたから心配はしてなかったデスけど、あまりにも長いとちょっぴり寂しいデスよ」

 

完全に虚を突かれた調は切歌に抱きつかれ、身動きが取れなくなっていた。

 

その場に居る切歌を除く全員が戦慄していた。

あの瞬間の調には隙など微塵も見当たらなかった。

それをこうも容易く捕らえる事など出来うるのであろうか?

 

「クリスさん!!ようやく調も帰ってきたデスし、今日はゴチソウがいいデスよッ!!」

 

全員が顔を見合せるが、

 

「へいへい…つうか、お前は毎日がゴチソウとかいつも言ってるじゃねぇか」

 

毒気を抜かれたクリスが返すのをきっかけに、全員の緊張した空気が解かれる。

おそらく、深く考えるだけ無駄だとわかってしまったのだ。

だが、その日から彼女達の中で切歌の評価は一段上がる事になる。

何の毒気も持ち合わせず、無害そうでいる割に、重要なタイミングで重要な人物を押さえる存在。

戦闘であれ恋愛であれ、敵に回した時、こういう相手が一番厄介だ、と。

 

 

その日、神崎家では後で合流した翼や奏も交えて、久方ぶりのパーティーが開かれたのだった。

ちなみに長期間無断で家を空けた調は後でマリアにこってり絞られた。

やはり最強はオカンだったらしい。

 

*** ??? ***

 

『………神殺しと凶祓いはどちらも健在ですか…他はともかく、組まれると厄介ですねぇ』

 

『まぁ、厄介な事が認識できただけ、良しとしますか…なかなか、全部が思い通り、という訳にはいきませんね』

 

『世界の破壊者は…潰すよりは懐柔した方が良さそうですね…アイドルの本分です。期待してますよ?蘭子ちゃん』

 

他に誰も居ない事務所で、緑衣の事務員は微笑む。

 

それは、誰に向けた微笑みなのだろうか…




なんか色々思い付いたネタぶっ込んだら本編より長く……

もうちょっとらんらん出したかったんですが、熊本成分は本編で補強します。

XDでまさかの星6たやマさん降臨しました。
育成超厳しいデス…
覚醒初回から小素材1500要求って鬼デスか?

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