Inferior Stratos 作:ユキ (旧 rain time)
1戦目は3組vs4組
クラス対抗戦当日。IS学園の行事の一つで、各学年のクラスで争う大会。優勝した組にはクラス全員にデザートの半年フリーパスが貰えるらしいが、自分にとってはそれほど重要じゃない。実際、自分は4組、一夏は2組の手伝いをしていたもんだし。
しかしながら、選手ではない人間が鈴や簪の控室に行くのはどうかと思ったので、自分たちは観客席にいる。クラスで固まる必要もないため、主に2組と4組の生徒が多くいるところに席を取っている
「まずはどこからだっけ?一夏」
「まずは3組対4組、その後1組対2組、休憩挟んで勝ち上がった組同士の戦いになる」
「ほー、つまり決勝は2組対4組になるわけか」
「まあ、そうなるよな」
簪が代表候補でない人に負けないと思うし、鈴がクズに負けるのは考えられない。3組には失礼かもしれないが、流石に差が大きすぎる
「ま、優勝するのは簪だがな」
「は?鈴が優勝するに決まっているだろ?」
「は?」
「やるか?」
「なんかここで火花が散っているね~」
自分の隣にはのほほんさんがいる。どうやら彼女は生徒会所属でお菓子を食べられるらしく、デザートパスにそれほど興味がないようだ。何より簪の従者で友達だから自分と同じく、実質4組の手伝いをしていた
「ま、まずは簪の応援だな、兄さん」
「ああ、簪が出てきたな」
「3組のほうも出てきた。あと5分くらいで試合が始まるな」
「かんちゃん、大丈夫だよね?」
「おいおい、のほほんさんが不安になってどうする?さすがに勝てるだろう」
一夏がのほほんさんを励ます。実践はこれが初めてだが、訓練機相手なら心配ない。国家代表ならわからないが、言い方は悪いが一般生徒だ。負けるはずない
「まずは、簪の応援をしよう。この場を盛り上げよう!!」
勝てよ!簪!!
私にとって、そしてこの子にとっての初めての公式戦。織斑をこの手で倒すことはなさそうだが、初戦で鈴と当たらなくてよかった。とはいっても、気を緩めることはしない。実際、イギリスの元代表候補がやらかしているからだ
3組の代表が出てくる。そして、相手から通信が来る
「それがあんたの専用機?」
「・・・そうだけど」
「そんな機体が専用機なんだ。これなら私でも勝てるわ。」
これは相手の本心だろうか、それとも挑発だろうか。どちらにせよ、聞き流すのがいいと雪広にも言われていた。でも、機体のことを馬鹿にされるのはちょっと許せない。この子は4組のみんなと本音、そして雪広とともに作り上げた機体だ。だからこそ、ここは相手に挑発をし返す
「でもあなたは専用機を持ってないじゃない。・・・持てない、ってほうが正しいのかもしれないけど」
「何だって?」
「そうでしょう、あなたは代表候補でもテストパイロットでもないんだから。あなたの発言は私への僻みにしか聞こえないよ」
相手のペースを崩す、雪広がよくやるやり方だと教えてくれた。思った以上にすらすら言葉が出て私自身もびっくりだ。相手は顔を赤くしている。どうやらこちらの挑発が効いているようだ。こんな人をクラス代表にしたのは間違いなんじゃない?
と、試合開始のブザーが鳴る
「落ちろおおお!!」
相手はラファール・リヴァイヴ、汎用性の高い訓練機だ。試合開始とともにフルオートマシンガンで攻める。でもあまりにも単調すぎる
余裕で避けた後、こちらのアサルトライフルで1発撃つ。狙いは相手のマシンガンだ。相手は攻めることに手いっぱいだったのか、回避することなくマシンガンに命中し、爆散する。これも雪広に教わった戦法だ。相手の武器を破壊して、反撃の芽を極限まで減らす戦法だ
「私の機体を馬鹿にしてその程度なの?」
「うるさい!」
漏れた本音に対し、相手はより怒る。だが取り出してきたのは実体シールド。一回防御に回ろうという事か。相手もただ突っ込む馬鹿ではないようだ
「これならどう?ライフル程度じゃあ破壊なんてできないわよ?」
別に正直にライフルで応じる必要はない。こちらは私の十八番である薙刀をコールし、切り下ろす。流石に破壊はできないが、それでも相手は防御に精いっぱいだ。それならば攻撃の手を緩めない。リーチを生かした突きで何度も攻める。いくらシールドが強固でも同じ個所、それも一点を集中的に狙われると脆くなる。つまり、
「し、シールドが!!」
「破壊できたけど、どう?」
これで防御しても意味がないことを示す。私の機体を馬鹿にしておいてこの程度なんて・・・身の程を知らなさすぎる。これなら・・・
「この!『姉のお飾り』のくせに!」
え?コイツ、今なんて?頭が真っ白になる。相手は私の動きが止まったのを見て顔を歪める
「そうよ、姉の劣化版だと言ったのよ!そうでしょう?あなたのお姉さんならこんなセコイことせずに攻めてくるのに、アンタはネチネチ嫌らしいことしかできないじゃない」
・・・違う、ちがう、ちがう、ちがう!!
「違う!!」
「違わないわよ、姉の付属品!」
違う!私は姉の付属品じゃない!私は私だ!
「ほら、スキだらけ!」
「キャアアア!!」
いけない、試合中なのに目の前に集中できていない!立て直そうと距離を取り、ライフルで連射する。でも当たらない。当てたいのに当たらない
「ほら、全然当たってないわよ」
「うるさい!!」
「もう一丁!!」
「ああっ!!」
まずい、完全にペースが乱されている。どうすれば、どうすれば・・・わからない、どうしたら、どうしよう・・・
負けちゃうの・・・?ここまで頑張ってきたのに?4組のみんなとの頑張りが無駄になっちゃうの?
それは嫌だ、負けたくない。でも、余計に焦ってしまう。どうしようどうしようどうしよう・・・
「簪~・・・」
?どこからか声がする。気のせいか、幻聴か・・・
「簪~~~!!!!」
いや、観客席からだ。聞いたことのある声、私の知っている声。真っ暗だった時に光を照らしてくれた雪広の声。
顔を上げるといた。雪広と一夏が見えた。でも彼らはさっきまでなかった横断幕を持っている。そこにはこう書かれていた
『お前は お前だ!』
・・・そうだ。私は私だ。更識楯無の妹ではあるけれども、姉の付属品じゃなく、私は・・・更識簪だ!
雪広だって言っていたじゃないか、『人の意見を正直に聞くな』と。そう教えられたじゃないか!何弱気になっているんだ私!!
そう考えを改めていたが、私は失念をしていた。これが試合中であったことに。
「なにぼさっとしてるのよ!」
声に気づき焦るが、時既に遅い。目の前にグレネードが2つ、ピンはすでに抜かれている
「しまっ・・・」
目の前で爆発が起きた
「あれ?」
さっきまで私はアリーナで試合をしていたはずだ。でも今私は見知らぬ水色の空間にいる。なぜかISスーツでもなく、制服になっている。いてもたってもいられず、歩くとそこから波紋が発生する。下は水面みたいになっているが私は映っていない
「夢?」
そう思っていると前に人らしきものがいる。が、なぜかぼやけていて男か女かさえもわからない。もっと言ってしまうと見た目では人かどうかもわからない。
でも私は人だと認識している。
「君はどうして力が欲しいんだい?」
その人が私に問いかけてくる。
なぜ力が欲しいのか・・・ありのままの考えをその人にぶつける
「前だったら『姉に追いつくため』って答えていたと思う。でも、そうじゃないってことに気づいたの」
「・・・」
「私は、『私を見てほしい、私個人を見てほしい』。だから求めるかな。力を」
でも、それだけじゃない。もっと私の中にあるもの、私の本質であり、最近考えが変わった私の夢を語る。
「私ね、ヒーローに憧れていたの。完全無欠で、弱い私を救ってくれるヒーローを。でも、そんなんじゃダメだって教えてくれる友達がいたの」
雪広はそんな受け身じゃだめだ、って言ってた。最初は私も反論したが、その後に言った言葉で世界が変わった
「『だったら
私みたいに弱者だった人が努力して強い人に勝つ。このことで弱い人の希望のヒーローとなる。そう雪広は教えてくれた。初めてそう聞いた時は頭を強く殴られるほどの衝撃を受けた。でも、そうだ。私がお姉ちゃんに勝てたら、それは努力を積み重ねている人たちの希望になる。
「だから、『私がみんなのヒーローになるために』力がほしい」
「・・・プッ」
アハハ、とその人が笑う。だが、だんだんとその輪郭がはっきりしてくる。見ると銀髪で、銀の制服に包まれた中学生くらいの男の子になった
「ヒーローになるために、力が欲しい・・・か。面白いね!」
「・・・変かな?」
「ううん、全然いいよ!気に入ったよ!」
でも、と彼は言う
「でも、君はまだ隠していることがあるでしょ」
「え!?」
「ズバリ、簪ちゃんはもっと『はっちゃけたいでしょ』」
「!?」
「僕にはわかるよ。君のお姉さんみたいに明るく、皆を盛り上げる陽キャになりたいんでしょ」
すべて知られている。お姉ちゃんに憧れていたのも、何でもできるだけじゃなく、ムードメーカーであったこともそうだった。私もそうなりたかったけど、その勇気が持てなかった
「・・・私にもできるかな?やってもいいかな?」
「できるさ!自信持って!クラスのみんなに慕われていたんだし、大丈夫だよ!」
「そうか・・・それならやってみる!」
「うん!その意気だよ!」
彼としっかり握手をする。それと同時に視界がぼやけてくる
「じゃあね、『僕のマスター』。ちょっとばかりサービスをしてあげる」
「え?」
「君が
どういうこと?それになんで私の名前を?
そう思ったが、問う前に意識が途切れた
「かんちゃん!!!」
「意識がこっちに向き過ぎたのはマズかったか・・・」
「やばいかもな、兄さん・・・」
明らかにペースが乱されていたため、それをリセットさせようとはした。だが、意識をこちらに向けさせ過ぎてしまったようだ。何もしないよりはましと思ったが、裏目に出てしまったかもしれないな・・・
砂煙により、簪の姿が見えない。それが自分たちに余計な焦りを生む
「でも、まだ終わってないよね、負けてないよね!?」
「落ち着け、のほほんさん。まだ試合終了のアナウンスはないから負けてはいない。多分負けることはないと思う。ただ」
「ただ?」
「機体があまりにも損傷すると、次の試合までに100%の力を出し切れるかが分からない」
それに、訓練機に手こずったことも、のちの評価で影響するかもしれない。それほどダメージがなければ・・・?
「兄さん、どうした?」
「いや、簪の機体が見えたような気がしたんだが・・・あんなに明るかったか?」
簪の打鉄弐式は淡い水色の機体だったはず。なんか銀色に見えたような?太陽光の反射をした影響か?
砂煙がだんだんと晴れ、簪の姿があらわになる
「「!?」」
「かんちゃん!!って、え!?」
簪は無傷だった。だが、そうじゃない。
あまりの変化に自分とのほほんさんは動揺する
「せ、
「いや、
イレギュラーか?俺たちなら男性IS操縦者だから可能性はありそうだが、簪においてそれは無いと思う。もしくは簪の隠れた才能か?はたまた、そういう機体なのか?
混乱する中、一夏がふとつぶやく
「
「「え?」」
「形態変化ならこの変化の説明がつくんじゃないか?俺たちしか前例がない分、ありえそうだし」
確かに。自分たちも機体の色が大きく変わるし、まだ形態変化は仕組みが分かっていない。簪もなれないと断言はできない
「それに、そうじゃなかったとしても機体はほぼ無傷になっているからいいことなんじゃないか?」
「そ、そうだね!」
一夏の言う通りだ。悪い状態ではないから、これは喜ぶべき状況だ。間違いなくこの試合は勝てる。ただ、
「なんか、ライバルに塩送りすぎたかもしれないな」
学年別トーナメント、強敵を作ってしまったかもしれないな
視界が開ける。現実世界に戻ったようだ。自分の姿を見ると、面影はあるがよりシャープになった形で、色も銀色になっていた。機体のダメージも直っている。もしかして、さっきの世界はISのコアの世界だろうか?ISには人格があり、そこには世界があるらしい、とは言われているが・・・そうなら、あの少年は
「な、なんなのよ!その機体は!?」
まだ試合中だった。でも心なしか、気分がすっごくいい。今までにないハイな気分だ
「いや~、ありがとね!君のおかげでさらに強くなったみたいだよ!」
口調も変わっているのが分かる。でもすごく嬉しい。
信じられないかもしれないが、これが私の《素》だ。小さい頃は姉と同じくらいに活発だったのだが、姉と比較されたりとされた結果、陰キャみたいな引っ込み思案な子になってしまった。
でも、それを今日この場で断ち切る!!
「ふん!機体が変わったところで、所詮は付属品のあんたには負けないわよ!」
「別に付属品でも簪は簪だし。嫌味で言ったところで、もう簪には意味ないよ~」
「!?」
さっきまでと性格が大きく変わったことで相手が動揺してる。そんな隙を見逃さないよ
「スキだらけ!」
「キャア!」
薙刀で大きく振りかぶって斬る。油断していたから溜めの時間をかけることができ、その分SEを大きく削る
卑怯だ、なんだ、と相手が言ってくるがもう気にしない。もうさっさと終わらせよう
「もういいよ、じゃあね。簪のアンチさん。簪の引き立て役をありがとう!」
そう言って山嵐のミサイルポットを開き、ミサイルを発射する。本来なら全部発射したかったが、あとの試合も考えて半分の24発を撃ち込む。ま、それでも見栄えはいいけどね。悪役を爆破させて倒すなんて、まさにヒーローっぽいじゃん!
実際に24発全てが直撃し、爆発する。それと同時にブザーが鳴る
「試合終了。勝者、更識簪」
歓声が上がる。特に4組の所の盛り上がりは凄いのが見ただけで分かる。4組の皆に感謝しかない
「4組のみんな~!ありがと~~!!!」
私の言葉に反応するように会場全体が盛り上がる。4組のみんなもすごく喜んでいる。雪広なんか両手を上げて喜んでくれてる。こんな思いは今までなかった。私がみんなの期待に応え、それをみんなが喜ぶ姿が見られる。これほどうれしいことだったのか
でも、まだだ。あと一つ、さっきよりも強い鈴が勝ちあがる。優勝の為にも気を引き締めないとね!私のデザートパスの為にも!
ちょっとストーリーが強引と言うか、まあそんな感じです
簪は原作よりもかなり明るい性格になります。特に形態変化時は一人称が「簪」になるレベルで明るい(ちょいウザめな?)キャラになりました
形態変化の秘密も解明する一歩となりそうです