Inferior Stratos   作:ユキ (旧 rain time)

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短編日常回 二本立て


第12話 旧友と恋

 クラス対抗戦が終わってすぐの土曜日。本当なら鈴とデートでも誘おうと思ったが、先日の無人ISの件で国に報告をしなければならないという事で断られてしまった。簪も報告しなければならないようで見かけなかった。代表候補生でもやることがあって大変だな。

 ただ、やっと暇な時間ができたから行きたかったところに行ける

 

「で、自分も付いて行っていいとこなのか?」

「ああ。兄さんに合わせたい人がいるんだ」

「そうか。だがこの場所って・・・」

 

 今いるのは俺が昔、兄さんの家族になる前の町にいる。ここにはろくな思い出がない。織斑に迫害され、町ぐるみでも差別を受けていた場所だ。はっきり言ってこんな町は焦土にしたい。でもそうするとあいつらの家まで被害が出てしまう。

 

「兄さんの言う通りさ。でも大事な友達がここにいる。そいつらと会いたいし、兄さんにも会わせたいんだ」

「なるほどな・・・で、そろそろ着くのか?」

「ああ、っとここだ」

 

 土曜日だから多分アイツらはいるだろう。元気だといいんだけどな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

 俺の名は五反田弾。実家が五反田食堂のため、休みの日は家の手伝いをしている。お昼時の時間が過ぎたためか、今客はいない。けどいつ客が来るかわからないから店番しながらテレビを見ている。ちょうど男性IS操縦者についての話をしている

 織斑一春のことをやけに持ち上げているが、こいつは正真正銘のクズだ。双子の弟をいじめて、行方不明と聞いた時は喜んでいた人間だ。こいつの本性が全国に知れ渡れば、評価は変わるんじゃないかと思うが、俺が言ったところで誰も聞きやしないだろう

 次に遠藤兄弟のことが上がるもコメンテーターは興味がないようですぐ次の話題に移ってしまった。だけど、男性IS操縦者の遠藤一夏を見ると昔を思い出す。俺の親友の一夏の面影があるのだ。しかも名前も同じ。一度だけでも会って話をしてみたい。そして、一夏なのかと・・・俺の親友の一夏なのかと聞きたい。

 

ガラララッ

 

 っと、お客さんが来たようだ。高校生くらいの男が二人組・・・って

 

「え!?」

 

 思わず声が出てしまった。明らかにこの二人はさっきテレビで見た男性IS操縦者にそっくりだった。片方はメガネかけてて、もう一方は・・・やはり俺の知っている一夏が成長した顔にそっくりだ。でも、今は客で来ているし・・・いきなりこちらから質問するのは店としてよくない。平静を装いつつ、会計の時に質問でもしよう

 テーブル席に二人を座らせ、お冷を渡す

 

「ここって何がお勧め?一夏」

 

 やっぱりこの兄弟はあの男性IS操縦者たちかもな

 

「俺は知ってるからそれでいい?」

「わかった、一夏に任せよう」

 

 すみませーん、と店員を呼ぶ声がしたので注文を伺いに行く

 

「お待たせしました、何にしましょう」

「それじゃあ・・・『業火野菜炒め』を二つで」

 

 

 ・・・え?

 

「な、なんで・・・」

 

 なんでこのメニューを知っているんだ?これはここで働いたやつしか知らない裏メニューなのに・・・

 まさか・・・!

 

「一夏なのか・・・?俺の知っている・・・」

「ああ、久しぶりだな。弾」

 

 

 

 

 

 

 

 俺がここの裏メニューを注文すると、弾は俺に気づいたようだ。こいつ、イケメンになってるじゃないか。でも昔と変わらない雰囲気を持っている

 すると固まっていた弾が厨房にダッシュして叫ぶ

 

「じいちゃん!!蘭!!一夏が!一夏が来た!!!」

 

 すると厨房から筋骨隆々な老人、厳さんと中学生の女子、蘭ちゃんが来る

 

「弾、何を言ってやがる、一夏君は・・・」

「そうだよ、お兄。一夏さんは・・・」

「お久しぶりです。厳さん、蘭ちゃん」

 

 二人とも俺の姿を見て固まる

 厳さんは変わって無いな~、蘭ちゃんはかわいくなったな。昔の数少ないいい思い出が蘇ってくる

 

「い、一夏さん・・・?」

「一夏君なのか・・・?」

「はい。その・・・何というか・・・ただいま戻りました」

 

 その後、蘭ちゃんに泣きつかれたり、弾にどこにいたんだよ!と肩揺さぶられたり、厳さんには心配かけやがって!!と軽いヘッドロックをかけられた。さらに弾と蘭ちゃんのお母さんである蓮さんに昔の友人である数馬も来て、俺が無事だったのを喜んでくれた。

 ああ、よかった。みんな元気でいて。それに俺のことずっと覚えていてくれてありがとう

 

 

 

 

 

 みんなが落ち着いてからテーブルに座って話始める。他の客が入らないように臨時休業の看板を立てたらしく、心置きなく話せる

 

「で、なんだが・・・一夏、その男は誰だ?」

「ああ、こちらは俺の今の兄さんで男性IS操縦者の遠藤雪広だ」

「遠藤雪広です。今の一夏の兄です。一夏の味方になってくれていてありがとうございます」

 

 兄さんが一礼して自己紹介をする。そういえば兄さんはまだ自己紹介してなかったな

 だが、今の発言に蘭ちゃんが反応する

 

「今の兄?」

「ああ、話すと長くなるけどもう織斑を捨てたんだ」

 

 小5の時に誘拐され雪兄さんに拾われたこと、遠藤一夏になったこと、IS学園に兄さんともども入学したこと、鈴がIS学園に来たことを話した

 

「鈴もIS学園にいるんだな!それなら安心したぜ」

「でも今日来れなかったのは残念です」

「まあ、いつでも会えるからさ。またみんなで集まろう!」

 

 そうしよう、とみんなが賛同する。今度は鈴も来られるときに来よう

 その後、俺が行方不明になった後ここでは何があったかをみんなから聞いた、といってもいい内容ではなかったが。とにかく織斑派閥が大きかったこと、皆織斑の信者みたいになっていたことだった。弾と数馬はうまく生活をしていて、織斑と関わらないようにしていたし、蘭ちゃんは私立の聖マリアンヌ女学園に行くことで織斑との接触を避けていたとのこと。蓮さん、厳さん、ファインプレーです

 

「アイツ、蘭にも口説いてきやがったこともあってな」

「下心丸見えだったよ」

「ホントですよ!あの目は今でも忘れませんもん!体をなめるように見たあの目を!!」

「あのクソガキ、半殺しにしようか考えていたぞ」

「蘭ちゃんも大変だったな。厳さん、気持ちは十分にわかります」

「・・・ところでアイツはIS学園でも人気者なのか?」

 

 弾が恐る恐る聞いてくる。すると兄さんが待ってましたとばかりにしゃべり始める

 

「いや、IS学園の公式戦で自分たちに惨敗したから人気者ではないな」

「そうか・・・って!一夏あのクズに圧勝したのか!?」

「ああ、まあ・・・」

「見せようか?一夏とクズの公式戦。データはあるし、テレビで映せるしな」

 

 なんで持っているんだよ!!なんか恥ずかしいわ!!

 

「マジで!?見たい!!」

「俺も!!」

「私も!!」

 

 って、みんな見たいのかよ!!厳さんも蓮さんも心なしか見たがっているし、兄さんはもう準備完了させているし!!

 

「それじゃあ始まり始まり~」

 

 仕方ない、もう一度どこが駄目だったかを反省するように見よう!そうしないと見れないわ!!

 結局俺と兄さんの試合も見ることになり、俺が勝った時に拍手された。嬉しいけれども流石に恥ずかしかった。

 

 

 

 帰り道、兄さんと横に並んで歩いている。今日は楽しかったし、会えてよかった

 

「いい友達だったな」

「そりゃあ、昔の友達だからな」

「そうか・・・ところで別れ際に蘭ちゃんと何話していたんだ?」

「・・・そこはプライベートということで」

 

 そっか、と兄さんは言い返し、それ以上の追及はしてこなかった。別れ際に蘭ちゃんが言ったこと

 

「鈴さんの思いに答えてくださいね」

 

 だった。なんで蘭ちゃんが知っているのか疑問もあるが、その言葉は重い。俺は鈴の告白に逃げているからだ。鈴も待ってくれてはいるがそれに甘えてはいけない。俺も早くその自信を持たないと・・・鈴を幸せにする自信を。

 

「待っていてくれ、鈴」

 

 その独り言は夕焼けの空に溶けていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は変わり、金曜日の放課後。一夏と鈴は企業報告をしているらしくそれぞれの部屋で報告をしている。ということで簪を誘って模擬戦をやった。共に形態変化をしたが、簪は単一能力の光極(こうぎょく)を操作するのに気を取られ過ぎたために、その隙を突いて自分が勝った。とは言いつつ、自分も遠距離攻撃がないため、かなりの接戦となった。

 今二人でピットに入り、その試合を映像で振り返っている

 

「まだこの子を使いこなせてないな・・・」

「これから使いこなせればいいんじゃないか?」

 

 いきなり使いこなせるほうが少数なわけだし、時間はまだあるからこれから使いこなせればいいだろう

 

「でも雪広はうまく使いこなせていそうだし・・・」

 

 なんかむくれてしまった。やべ、ここからどういう言葉で返したらいいかわからないぞ。これが男子校出身の弊害か

 

「「・・・」」

 

 無音。どうしようかと簪の顔を見る。むくれてはいないが、どことなく赤い気がする

 と、簪が沈黙を破る

 

「・・・あのさ、雪広」

「うん?」

「あの時助けてくれてありがとうね」

 

 あの時?簪を助けた覚えはないのだが・・・

 

「あの時って?」

「クラス対抗戦で三組との対戦の時、雪広のおかげで立て直すことができたんだよ」

「あれか。でも応援しただけだぞ」

 

 それに一夏も応援していたし、と付け足す。

 すると簪は体を寄せるようにしてきた

 

「それだけじゃない、無人ISが来て放送室を守ったでしょ?」

「ああ、でもあれは簪を守ってはないと思うが・・・」

「ううん、私が助けられなかった人たちを雪広は助けることができた」

 

 それにも一夏はいたんだがと思ったが口には出さない。

 すると簪はおもむろに立って言う

 

「私ね、昔・・・最近までヒーローに憧れていたんだ。みんなを・・・私を助けてくれるヒーローを」

「うん」

「実際そんな私を助けてくれるヒーローなんていない、そう思っていたんだ」

 

 でも、と簪は言葉を区切って話す

 

「私に手を差し伸べてくれる人がいた。目標に押しつぶされそうだった私を助けてくれる人がいた」

「・・・」

「その人は私に新たな道を導いてくれた。そして私が助けられなかった人も助けた、それで思ったんだ。その人は私の理想のヒーローだったんだって」

「・・・自分ってわけか」

「・・・そうだよ」

「・・・言っておくが自分は全員を助けるようなヒーローなんかじゃないと思うぞ」

 

 実際、イギリスの代表候補をこの手でつぶしているしな

 

「簪が思っている勧善懲悪のヒーローとはかけ離れている、自分はそんなんじゃない。簪が思っているような人間じゃないぞ」

「・・・確かにそうかもしれない」

 

 でも、と簪は言葉を続ける

 

「私が助けたかった人も助けてくれた。何より私を救ってくれた。希望を与えてくれた。だから・・・」

 

 簪は深呼吸して、自分の目を見つめてはっきり言う

 

 

 

「私は、雪広のことが好きなの」

 

 

 

 ・・・これが告白と言うものだろう。予想外のことで思考が止まる

 

 再び沈黙が支配する。何というべきか、何を言うべきなのか・・・

 

 声を出そうとした時、簪が慌てたようにしゃべり始める

 

「と、と、という事でね!私の気持ち伝えたから!あっ!きょ、今日は女子会開くから準備しないと!じゃあ、またね!!」

 

 返事待ってるからね!と言って逃げるようにピットから去っていった。簪がいなくなって一人となったことで、次第に思考がまとまってくる

 

 ・・・まさかそれほど好意をもっていたとは。よもや告白されるとは・・・

 

 これが多くの男子高校生が求めていた告白なのだろう

 今自分はどんな顔しているだろうか。いや、言われなくてもわかる。多分・・・

 

 

 

 

 ()()()で満たされている顔をしている

 

「駄目だよ・・・自分なんかに・・・人の成り損ないの自分なんかに・・・恋しちゃ・・・」

 

 うつむき、頭を抱えた自分の悲痛な独り言はピットの中に消えていった

 

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