Inferior Stratos 作:ユキ (旧 rain time)
「あれ?」
ここは・・・どこ?確かデュノア社にいて・・・社長夫人が改造したISを展開して・・・それで、僕は・・・
「!?」
撃たれた。それも頭を撃ちぬかれたんだった!!上半身を起こし、急いで手で触って頭を確認する。
が、血は出ていない。傷ついてはいないようだ。でも不安だったから
「え!?」
なんで水面の上で座ってるの!?それにどうしてIS学園の制服なの!?それよりもここどこ!?見渡しても水平線しかない。雪広も一夏も・・・誰もいない。どうしよう・・・
「知りてえか?」
いきなり声がした。しかも後ろから
後ろを振り向くと人影がいた。人ではなく人の影が立体としていた。だが、これがさっきの声の主なのだろうと妙に納得してしまう
「ここは死後の世界さ。つまりお前は死んだのさ」
「・・・」
僕は死んだのか・・・そうだよね。SEが少ない中で頭を撃たれて無傷なわけないよね
「でも、俺様は寛大だからお前に元の世界に戻るチャンスを与えよう」
「・・・」
「戻りたいだろう?うん?」
「いや、いい」
「・・・は?」
もうどうでもよくなっちゃった。死んだというのならもうそれでいいや。戻ったところであの義母にやられるんじゃあ、意味ないよ
「もういいんだ。早くお母さんのところに連れてってよ」
「・・・」
疲れた。もう楽になりたい
・・・これならもう苦しまずに済む・・・これなら
「いいのかよ」
「え?」
「いいのか、と俺は聞いているんだ」
何も答えない。もうどうだって・・・
「元の世界に戻りたくねえのかよ!!」
黒い影は手らしきもので僕の胸倉をつかんで立ち上がらせる
「何諦めてんだよ!戻るんじゃないのかよ!!」
「もういいさ。僕の人生そんなもんさ・・・」
「違うんだよ!俺様が言いたいのはな!」
影が一呼吸して
次の言葉で心のダムが壊れる
「こんな時まで、
「!!」
「生憎、ここは俺様とテメエしかいねえんだよ!それともなんだァ!?満足した人生だったか!?」
・・・そんなわけない
「母親が死んで、父親のモルモットで幸せだったか!義理の母親に泥棒猫の娘と言われて嬉しかったか!」
「・・・い」
「その後の二年は充実していたか!IS学園では男装できて嬉しかったか!!」
「・・・さい」
「父親の本心を知って、理解する前に義母に殺されて!お前の人生は満足だったんだな!ああそうか!!お前の人生は幸せだ!!お前は幸せ者だなあ!!!」
「うるさい黙れえええええええ!!!!!!!!!」
影の胸倉をつかみ返す
「お母さんが死んで、泥棒猫の娘と言われて、したくもない男装をさせられて、スパイ行為をやらされて、殺されて・・・そんな人生が嬉しい訳あるか!!!!」
「・・・」
「女の子として学校に行きたい!クラスメイトと遊びたい!オシャレしたい!楽しく生きたい!!恋人だって作りたい!!・・・それに!!」
「それがお前の本音だろう」
「ッ!!」
「こうでもしないとお前は本心を言わねえだろう」
「・・・テメエ!!」
こいつの掌の上だったのかよ!ムカツク!!
「それに俺はお前のことを知っている。お前が2年近く
「な!?」
「さっきのがお前の本当の姿だろう?うん?」
・・・ああ、そうさ
「そうだ!あれが僕の本当の姿さ!!おとなしいだって?他人に気を使えるだって?周りが信用できない中ならそうなるのも当然だろう!!!」
小さい頃はやんちゃで男勝りだった。でもお母さんが死んで、引き取られたくもなかった人に引き取られて・・・そんな状況だと本当の性格を隠さざるを得ないだろう!
「で、どうするんだ?お前は元の世界に戻りたいのか?」
「・・・ああ!戻りたいさ!」
まだやりたいこともたくさんある。それに・・・
「じゃあ、俺様がじきじきに力をやると言ったら、欲しいか?」
「・・・ほしい」
「どうしてだ?」
どうしてかだって?そんなの当然だ!
「僕を助けてくれた雪広や一夏、事情を分かってくれた鈴たちの思いを無下にしないために!僕がこれからの人生を謳歌するために!そして!―――のために!」
「・・・」
「ふーっ、ふーっ・・・」
久々に大声で叫びまくったために息が荒くなる。そんな音しか聞こえない
「ふっ、ははは!!」
「な、何がおかしい!!」
「良かった、お前がそう言う思いでいるんだったら俺はお前に
「は?何言って・・・」
待て、使われてもいい?そもそも、なんでこいつは僕のことを知っている?
いつの間にか影は僕の手から離れていた
「まずは謝らなければならないことがある。ここは死後の世界ではない。お前は今仮死状態さ。頭を撃たれて」
「・・・」
「まあ、正確には撃ちぬかれてはいない。でも完全に衝撃は殺せていないから、頭蓋骨はヒビ入っているし出血もしている。でもこのままじゃあ命の危機だ」
「・・・」
「でもその傷は俺様が治してやる。今回だけの出血大サービスだ」
「お前は一体?それに死後の世界じゃないならここは・・・」
すると影から人に変わる。黒の学ランを全開にし、オレンジのシャツを着ている、ザ・不良の男子高校生だ。髪もオレンジに黒のメッシュが入っている
「最初はこんな貧相な奴かと思ったが、お前が『俺の主人』で良かったよ」
「は?待て・・・」
視界が急にぼやける。クソ、まだお前のことを聞いては・・・
「俺様のことは分かるだろう?言葉を交わさなくともお前ならわかるはずだ」
「・・・そうか」
そういうことか。こいつは・・・
「じゃあな。あのメス豚を黙らせろよな」
意識がなくなる
「テメエエエ!!!」
「よくもシャルロットを!!!」
「アハハッ!まさか泥棒猫の娘がかばうとはね!これは傑作だわ!!」
こいつは許せない!!義理とはいえ、娘を殺してそれが正しいだって!?ふざけんな!!
「ガアアアアアア!!!」
「ハアアアアアア!!!」
俺たちは怒りによって形態変化する。どうやら俺も怒りで形態変化ができるようになったようだ。立てるようになり、SEもかなり残っている。これでヤツを潰す!
「ヴォアアア!!」
「ッラア!」
兄さんが爪で薙ぎ払おうと突っ込む。ワンテンポずらして俺も別角度でこいつの首を取りに行く!いつものスピードではないがこれなら・・・
「じゃあこうしましょ」
ロマーヌが杖で何か振り払うようにする
ドン!
「!!」
「かはっ!」
さっきまであった圧力が一気に消えた。だが、さっきまでその力に対抗して上向きに出力を大きく出していたため、天井に激突してしまう。まさかオンオフができるのかよ!
「無様ね!ならもう一度這いつくばりなさい!!」
「ゴゥ!!」
「ごほっ!!」
また上から圧力が加わり、床に叩きつけられる。
「ほらほらほら!!!」
上に、下に叩きつけられる。ただSEが削られてしまう。何もできないのか!
改めて上から圧力をかけられ、這いつくばってしまう。機体よりも体のダメージが大きく、思うように力が入らない・・・
「さーて、それじゃあ改めてそこの無能に制裁を与えてやるわ。今度は邪魔も入らないし」
くそ!俺たちは見るしかできないのかよ!シャルロットを無駄死にさせてしまうのか!まともな人が殺されるのを黙ってみるしか道はないのかよ!!
「これで!ガキもろとも死になさい!!」
ヘヴィーボウガンをアルベールさんのほうへ連射する。アルベールさんはシャルロットを抱きしめたまま動かない!
「やめろおおおおお!!!」
叫ぶ。でもそんな都合よくヒーローは現れない。神がいるならなんでこんな運命をたどらせるのか・・・ヒーローがいるなら何故あの二人を救ってくれないのか
そんな思い虚しくアルベールさんの所に弾丸の雨が降る。土煙で様子が見えない
「くそおおおお!!!」
「さーて、今度はゴミたちを処分しないとねえ?」
どうして、どうしてこうなんだ!こんなクズがのうのうと生きて、罪もない人が殺されるんだ!どうして・・・どうして!!
「な!?」
どうした?兄さんが何か驚いた顔になる。向いているほうはシャルロットがいたところだ。土煙が薄れて・・・
「え!?」
「何よ?私の後ろになんかいるっていうの?」
ロマーヌは後ろを振り向く。そこにいたのは・・・
「「シャルロット!?」」
「ど、どうして!?この手で殺したはずなのに!!」
シャルロットがラファール・リヴァイブを展開して立っていた。だけど何か様子がおかしい
「くひ、くひひひっ・・・」
足を開いて両手を顔で覆いながら笑う。それに笑い方もそんな風ではなかったはずだが・・・
「ひひひひひひゃはははははは!!!!」
いきなりシャルロットの体と機体が黒く染まる。何事かと誰もしゃべらない
足元から黒が消え去ると、そこにはラファール・リヴァイブがいた。しかし、シャルロットの愛機であった明るいオレンジではなく、濁ったようなダークオレンジのカラーリングで、ところどころに黒のラインがある。
これは、まさか・・・
「
シャルロットもできるようになったのか!?た、確かにシャルロットはつらい過去を持っていた。だがISのシンクロ率は分からないし、なによりストレスを感じていたのか?明らかに死んでいたはずだが
「・・・そうか」
兄さんが理性を取り戻し、この状況を理解したようだ
「『死』は大きな
ってことはあのクズが結果的にシャルロットを強めたことになるのか!
「ふん!死にぞこないが!だったらもう一度殺してやる!!」
再度圧をかけるようにロマーヌは杖を掲げる。が、その前にシャルロットは右手を突き出す
するとシャルロットの身長くらいの大鎌が出てくる。そして大きく振りかぶって、その先端を地面に突き刺す
「
そうシャルロットは言い、引き抜くとそこから影が出てくる。その影はだんだんとシャルロットと同じ大きさの人型となってシャルロットの隣に立つ
「その影もろとも這いつくばりなさい!!」
先ほどの杖をシャルロット目掛け振り下ろす。するとシャルロット
「な!?も、もう一度!」
再び杖を振り下ろすも、影は動じない。するとシャルロットがロマーヌに言う
「お前さ、やっぱり脳みそ無いよね」
「な、なんですってえ!?」
「こいつは僕のSEから生まれた、いわゆる
「だから何だって言うのよ!!」
「お前のその特殊武装はいわゆる質量をもつものに作用する。つまり、質量をほぼ持たない物には効果ないでしょ?」
「な!?」
なんてことだ。つまりシャルロットの単一能力はヤツのあの特殊武装を無視できるわけか!
「だからこうなる」
シャルロットの影は瞬間加速でロマーヌに接近し、手を剣に変えて切りつける
「キャアアアア!!!」
すると先ほどまでの圧力が消える。兄さんもシャルロットも同じように動けるようになった
「よし!これなら戦える!」
「援護するぞシャルロッ・・・」
「いらねえ!!」
「な、何言ってるんだ!」
「ここはやらせてくれ・・・というかアレは
「だけど!」
「いいじゃねえか。好きにやらせようぜ。一夏。それとも今のシャルロットがあのクズに負けるとでも?」
確かにあの特殊武装がなければ素人が乗っている機体だ。まず問題ない。でも万が一のこともある
「わかった。万が一の時はすぐに乱入する。そのときは文句言うなよ」
「なら、そうならないようにするまでさ!!」
影が即座にヤツの背後に回り込み、シャルロットの方へ斬り飛ばす。為す術なく、ヤツは吹っ飛ばされ、シャルロットはタイミングよくボディーブローを入れる。この時にヤツは杖を落とし、シャルロットはそれを踏み折る
特殊武装のないロマーヌの機体を強制解除にするまでに時間はかからなかった
クズが俺に命乞いをする
「お、お願い・・・いままであなたにやってきたことを謝るから・・・お願い・・・」
「・・・」
「お、お金とかいくらでも払うわ!だからお願い!!」
俺は剣を取り出し上に掲げる。振り下ろせばいつでも殺せる
「ま、待って!!お願い!殺さないで!!な、
今の言葉、つい最近俺が雪広に言った言葉だ。そのとき雪広に注意されたっけ。
でも俺は甘くないからな
「殺さないで?何でもするから?俺を殺しといてよくそんなセリフを吐けるね」
「そ、それは・・・事故!事故なのよ!殺すつもりなんてなかったの!!」
はっ、呆れた。そして醜く言い訳するこいつに腹が立ってきた
「これからは親子仲良く暮らしましょう!今までのことを水に流して!!」
ザシュッ!!
上げていた剣をそのままクズの右肩に振り下ろす
「え?」
地面にクズの右腕が落ちる。あまりの出来事に頭が追い付いてないようだ。だが、切り口から出るおびただしい鮮血に意識と痛みがやっと追いつく
「いや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「うるせえなあ!」
今度はより鋭く、薄い剣を右の逆手で取り出しクズの口に入れる。そして思いっきり右に動かす
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
クズの左側が口裂け女のようになる。もっとも、血が噴き出しているが。ははっ、これはいい
「滑稽な姿になったじゃないか!ええ!?ロマーヌよお!」
「あ゛っ・・・あ゛あ゛っ・・・」
「ねえねえ、今どんな気持ち?見下していた妾の子にいたぶられて、どんな気持ちかい?ええ!?」
「あ゛あ゛っ・・・あ゛あ゛っ・・・」
「なんだよ、もっと反応しろよ!つまんねえなあ!!」
もういいや、これだけやればもう十分だ。もう一度剣を呼び出し大きく振りかぶる
「じゃあね、ロマーヌ・デュノア。後悔しながら死ね。そして・・・地獄に落ちろ!!!」
「~~~~~~~~!!!!!」
そのままヤツの脳天に振り下ろす!これで!くたばれ!!
ガアンッ!!
は?なんで
「何で止めるんだよ、雪広」
雪広がまるでクズを守るようにして俺の剣を受け止める。すごく、すごく気に入らない
「どうして止めるんだよ!おい!!」
「確かに、こいつを殺すのは悪くない。こいつは死んで当然の人間だからな」
「だったら!そこをどけ!!」
「
「・・・は?」
声?そんなの、聞こえてなかった・・・
「シャルロット・・・」
「!」
アルベールのほうを向く。すると彼はつらそうな顔で俺に語り掛ける
「頼む・・・それだけはやめてくれ・・・」
「・・・なんでですか。この女を擁護するんですか」
やっぱりこの男は俺よりもこのクズが大事なのか・・・
「違う!!私は、お前に殺人をしてほしくないんだ!」
「!」
「確かにこの女は裁かれる必要のある人間だ。死刑でもいいだろう。だが、お前が殺すのは父としてしてほしくないんだ!!」
「だけど・・・だけど!!」
「分かっている!いまさら父親面するなということも!私に言う資格がないという事も!だが、頼む・・・シャルロット・・・」
俺は・・・俺は・・・!
「ううわああああああ!!!!」
再度剣を振りかぶって、振り下ろす
誰もいない床に
「・・・分かった。これで終わりにする」
駄目だ。あの人の泣きそうな顔を見ると、俺も辛くなる。それにこいつはどうせ裁かれるんだ。殺すよりももっと生き恥を晒して・・・もらわないと・・・
あれ・・・?いしき・・・が・・・
「シャルロット!!」
いきなりシャルロットが倒れてしまい、アルベールさんが慌てる。ISも解除され、横たわっている。すぐに自分たちもISを解除して駆けつけ、脈と呼吸を確認
「・・・脈拍・・・呼吸、ともに正常です。多分疲労で倒れたのでしょう」
「よ、良かった・・・」
「でも万が一のこともあるし、検査は必要だよな?」
「ああ、それなら到着したんじゃないか?」
かすかにサイレンの音がする。やっと到着したか
「あとはその人たちに任せよう」
この後、自分たちは事情徴収のために警察に・・・と思いきや、先ほどまでの戦闘で負傷したために病院に行くことに。ロマーヌ達も手当てを受けてから逮捕されるとのこと。そしてアルベールさんも先ほどまでの戦闘で少し巻き込まれたため、全員そろって病院へと行くことになった。
こうして、デュノア社での戦闘は幕を閉じた
malédiction フランス語で「呪い」です
次でシャルロットの家問題は終了予定
(裏話)
実はここのデュノア社戦は1話で完結させる予定でした。そのため、第16話とその次の題名をつなげて「誰がために鐘は鳴る」にしよう、と思ったのですが長くなってしまったがゆえ、第17話の題名を挿入することに
「誰がために鐘は鳴る」・・・いいですよね