Inferior Stratos   作:rain time

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 祝、20話!
 まさかここまで行けるとは・・・私自身びっくりです

 今回何と男主人公たちが!(コマーシャル風)


第20話 悪魔の言霊

 週が明けた月曜の放課後。あたしは学年別トーナメントに向けて第三アリーナで調整をしている。一夏たちはうまくいったらしく、昨日の夜に一夏から国際電話で聞いた。ケガしたって聞いた時は焦っちゃったけど、無事で何よりだったわ。一夏たちは向こうの時間で昨日の昼に飛行機で日本に帰るって言っていたから、もう日本にはいる時間だろう。明日から授業に復帰するとのこと。会うのは明日までの辛抱ね。

 それにしても簪が来ないわね。何かあったのかしら?

 

「お待たせ~」

「遅かったじゃない?どうしたのよ」

「お姉ちゃんたら、ま~た仕事をさぼっていたから・・・やりなさい!って喝を与えていたの」

「またあの人は・・・頼りになるのかならないのか」

「時に頼れるニート的な?」

 

 めちゃめちゃディスってるわね。楯無さんいたら泣くわよ、きっと

 

「そういえばなんだけど・・・今朝の噂聞いた?」

「ああ、『学年別トーナメントで優勝したら男子のうち誰かと交際できる』ってやつ?」

「それ。鈴はどう思う?」

「どうせデマでしょ。どっかの誰かが言ったのか、もしくは尾ひれがついた結果があれなんじゃない?女子が好きそうな話題じゃない」

 

 もしくは生徒のやる気を出すために楯無さんが言ったか

 何はともあれ、噂に振り回されるのはよくない。しっかりと情報源とかを確認しないとね

 

「で、ホントのとこはどうなの?」

「別に、そもそも一夏や雪広に対して拒否権がないじゃない。そういうのはアイツら嫌うわ」

「だよね~特に雪広は嫌いそう」

 

 とはいえ敗退するつもりもない。こっちだって中国の代表候補生としての意地があるもの!

 

「噂がどうであれ私は負けるつもりなんてないよ。もちろん鈴にも」

「ふふん!今日こそアンタを完全攻略してやるわ!」

 

 実は簪に対して負け越している。まだ形態変化についていけず、こちらが不利になってしまうことが多い。何とかしてトーナメントまでに戦略を立てないと

 運よくここにはあたしたち以外誰もいない。今すぐに模擬戦を始められる。そう思った矢先・・・

 

「おい!なんでてめえらがいる!」

「ここは一春が使うんだ!貴様らはさっさと出ていけ!!」

 

 チッ、思わず舌打ちをしてしまう。なんで織斑一春(クズ)篠ノ之箒(取り巻き)が来るんだ。そもそもあたしたちが金曜の昼に申請した時はアンタらが使うとはどこにも書いてなかったわよ?

 

「どうせアンタのお姉さんに頼んで強引に変えたんでしょう?ブリュンヒルデの七光り君?」

「なんだと!?俺を馬鹿にしやがって!!」

「貴様!許さん!!」

 

 否定しないってことはほぼ確定ね。本当にあのクズ教師、公平性のかけらもない。ふざけやがって

 だが、こちらも黙って引き下がるのも癪だ

 

「だったら相手してあげるわよ。負けたらここから立ち去りなさい」

「ふん!俺様が負けるわけねえ!」

「何言ってるの?あんたに負ける未来が見えないわよ。何だったらそこのモップも相手してやるわ」

「何だと!?馬鹿にするな!!」

 

 二対一ならいい練習相手にはなる。簪の前に準備運動がてらやってやる。と思ったのだが

 

「ちょっと!私も戦いたいよ!」

「じゃあ二対二にする?でもそれだと速攻よ?」

「じゃあじゃんけんしよ!勝った方があれらとやるで」

「なめやがってええ!!!」

「成敗してくれる!!」

 

 馬鹿にされて激昂したクズどもが私たちに切りかかる。まだ試合が始まっていないのに、ホント最低で低能なやつらね。ならこちらも・・・

 

ドゴン!

「「「「!?」」」」

 

 クズどもが突っ込んでくる直線状に砲弾が飛来する。いきなりのことでクズどもも緊急停止し、砲弾が飛んできた方向を見る

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

 織斑の顔がゆがむ。そういえばコイツ、入学してすぐにボーデヴィッヒに殴られていたわね。詳しくは知らないけど

 

「貴様!邪魔をするな!!」

「教官の弟の『白式』に日本の『打鉄弐式』、中国の『甲龍(こうりゅう)』か・・・データで見たほうがまだ強そうではあったな」

「何だと!?」

「一春を馬鹿にするな!!」

 

 味方・・・ではなさそうね。これはどうなるやら。三つ巴ならまだマシ。厄介なのは奴らが手を組むこと、だけどそれはなさそうね

 

「何?さりげなく私をディスってるけど、アンチ?」

「いちいち噛みついたら負けよ、簪」

「大丈夫、大丈夫。落ち着いているよ~」

 

 こんな見え見えの煽りに乗るつもりはない。どうせこの場で戦闘させ情報を引きぬくか、もしくは大会前に潰しにかかるか

 こいつの雰囲気からでしか詳しく察する情報がないのはつらいわね。雪広はシャルロットのことでボーデヴィッヒのことを何も調べられていないから何にも分からないのよね。あたしも簪も組が違うし、一夏たちもいなかったから一組に行く理由もなかったし。

 

「まずはテメエから潰してやる!!」

「ハッ!教官の弟にあるまじき弱さ、そんな奴が専用機を持とうと私にかなうはずが無い!何なら貴様ら四人まとめて来たらどうだ?」

「俺様に喧嘩売ったことを後悔させてやる!!いくぞ、箒!!」

「ああ!!その無駄口を叩けなくしてやる!!」

 

 と、馬鹿二人はボーデヴィッヒに突っ込んでいく。あたしたちはというと・・・

 

「どうする?」

「私はパス。あいつらの仲間と思われるのは死んでもごめんだよ。やる気が一気に失せちゃった」

「奇遇ね。あたしも」

 

 さっきの言葉、アイツにとっては煽るつもりでいたようだがあたしたちにとってはやる気が失せる内容だ。あたしもあんなクズどもと一括りにされるのはごめんだわ

 

「で、どうかしら?この試合」

「どう考えてもアンチ(ボーデヴィッヒ)が勝つでしょう?逆に負けたら専用機を持つ代表候補生として恥だよ」

 

 アンチって・・・まあ合っているけどね

 

 

 

 試合内容?5分くらいで決したわよ。速攻で取り巻き(モップ)が落とされ、クズも零落白夜を当てられずにボコされた。ただその試合でアイツの第三世代型兵器がどんなのかは分かったわ

 

 『慣性停止能力(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)

 

 読んで字のごとく、動いている物体を止める能力だ。はっきり言って強すぎる能力だ。だって一対一ならそれに捕まった時点でタコ殴りにされて詰むもの

 その分欠点もあるはず。簪とプライベートチャネルでその能力の効果範囲について話し合う

 

『どう思う?あの能力の範囲』

『一点・・・ではなさそう。流石にそれだと扱いづらいから、多分一本の線に触れると発動する感じかな』

『一本の線・・・面じゃなくて?』

『面かもしれない。でも見た感じあの能力はすごく集中しないと出来なさそうだし、面だとそれだけで手いっぱいになりそう』

 

 なるほど。確かにあの能力を使っているときは周りを気にするそぶりがなかった。つまり周りを警戒していなかったのではなく、できなかったほうが正しいのか。それならまだ攻略できそうね

 

『ところでなんかあのクズ、いたぶられてない?』

『いいじゃん。ざまあって気分だし』

『でもこれで再起不能になるまであたしたちは放っておいたら、あの教師がうるさいんじゃない?』

『・・・確かに』

 

 どうせ『なぜ助けなかった!!代表候補生としての自覚はあるのか!?』とかいう未来が見える

 

『あたしだって助けたくないわよ。でも後々面倒だし』

『はぁ~~~・・・仕方ない。止めさせるか』

 

 プライベートチャネルを切って、こちらも動きだす。ああ、ああ、完膚なきまでに潰されているわね。ボーデヴィッヒは無傷に対して、クズどものほうはISアーマーも一部失われているし、もうSEは残ってなさそうね

 とどめに一発撃とうとした大型カノンに向けて衝撃砲を放つ。ヤツもそれに気づいたようでクズどもから離れる

 

「ほう、やっと貴様らが来たか」

「何言っているの、コイツを回収しに来たのよ」

「おい!邪魔をするな!!こいつを叩き潰して・・・」

「無理だろ。ここから逆転なんて奇跡を重ねないとできないのに、馬鹿なんじゃないの?」

「なんだと!?テメエ!!」

「いいのよ。あたしたちはアンタらがここで殺されようとも」

 

 命の危機を感じ取ったのか、さすがにクズどもも黙った。本当にめんどくさいんだから

 

「逃げるのか?ずいぶんと腰抜けた代表候補生だな」

「別にアンタとやる理由なんてないもの」

「アンチと接触したくないしね」

「なら、戦わざるを得ない状態にしてやる!!」

 

 あたしたちに照準を合わせる。あたしたちはクズどもをその場に残して二手に分かれてその砲撃をクズどもから逸らすように誘導する。あたしの方を狙ってきたか

 とにかく躱すことに専念する。一定の距離を取りつつも、こちらからは手出ししない

 

「貴様!なめているのか!!」

「だから、あたしたちは戦うつもりなんてないのよ」

 

 こちらの手の内を晒すつもりはないし、アンタの考えに乗るほどお人よしじゃないのよ

 ある程度逃げ回るとアイツも頭に血が上ったのか、あたしに見切りをつけ簪に砲撃をする

 

「なら貴様から倒してやる!!」

 

 なんか簪が悪い顔になっている。何か企んで・・・あっ

 

「くらえ!!」

 

 ボーデヴィッヒの砲撃に対して難なく躱す簪。その後ろには

 

「「は?」」

 

 クズどもがいた。事故と見せるためにわざとやったわね。

 

「う、うわあああ!!」

 

 悲鳴を上げるクズ。あたしから離れているからかばえないけど、みっともなくて笑ったわ。まあ、この程度なら死にはしないだろう

 とその時、クズをかばうように影が入り込んできた。そして、その砲撃をはじく

 

「ち、千冬姉!!」

 

 ピンチの時に颯爽と登場しているが、はっきり言って遅すぎる。ISを纏ってないのにブレードを持って砲弾をはじくのは恐ろしいが、こちらにとっては害悪でしかない

 

「おい、更識妹。今のはどういうことだ」

「どうとは?」

「お前が避けたせいで一春たちが危険な目にあったという事だ。どう責任を取ってもらおうか」

 

 どうせ専用機を取り上げようとするんだろう。何かにつけて専用機を寄越せとしか言わないな、コイツ。でも簪も黙ってはいない

 

「そもそもここでドンパチしているときに止めに入るのが普通では?一体あなたは何をしていたのでしょうか?職務怠慢ですよ」

「クッ・・・」

「あなたが入ればそこのアンチも矛を収めていたはずなのに、私たちがそこのアンチに潰されるのを待っていたのではありませんか?」

「・・・」

 

 沈黙は肯定と見なせる。こいつの本性を世界中に発信させてやりたい。こんな教育者として最低な奴がブリュンヒルデでIS学園の教師をしているのだと

 

「でも結局は愛しの雑魚が壊されそうになったから止めに入った。違いますか」

「・・・!」

 

 殺気。軽蔑していた簪はすぐさまバックステップで距離を取る。数瞬後、簪のいたところにブレードが振り下ろされた

 

「言葉をわきまえろよ、小娘」

「尊敬できる人にはわきまえますよ。アンタには微塵もその気持ちがわかないのでね」

「「・・・」」

 

 にらみ合いが続く。どうしようかと考えていると、ボーデヴィッヒが口を開く

 

「教官、私はどうしたら良いのでしょうか!」

「・・・この戦いは学年別トーナメントでつけてもらおう。それまで一切の私闘を禁ずる!」

 

 なるほど、そう来たか。これならボーデヴィッヒはクズに対して危害を加えられないからね。本来ならあたしたちが潰れればという算段だったのだろう。クズ教師は渋い顔で言っていたから。

 クズ教師はゴミどもを連れてピットから、ボーデヴィッヒも別のピットから出ていく。ここにはあたしと簪しかいない。でも訓練する気じゃなくなった

 

「どうしようか?」

「なんか疲れちゃったから終わりにしない?」

「そうね。今日はもう切り上げね」

 

 本来なら簪の形態変化突破の鍵を見つけようと思ったけど・・・ま、ボーデヴィッヒがどんな奴で実際に触れたから良かったとしよう

 

 あとクズたちは機体が大破したとはいえ、トーナメントには間に合うとのこと。もう少し助けるのを遅らせてよかったわね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は夕方、夏が近いこともあり18時半でも夕日がきらめいている

 

「あー、右手痛い。」

 

 私はたまりに溜まった生徒会の仕事をかなり終わらすことに成功した。本当ならもう少し溜めても大丈夫だと思ったが、簪ちゃん(愛しの妹)に喝を入れられちゃったからやらざるを得ないわ。仕事の後、虚ちゃんと別れ、私はなんとなく散歩をしてから部屋に戻ろうと思った。運よく簪ちゃんとすれ違えればな~なんて。ぐへへ

 

「・・・ん?」

 

 そんなことを考えていると曲がり角の先で言い争う声が聞こえた。だが声の片方の正体が分かったため、息を殺して近づく。そばの植木に超小型の盗聴器を仕掛けておいてそこから離れる。

 

『何故こんなところで教師など!』

『やれやれ』

 

 どうやら織斑千冬と直近で転校してきたばかりのラウラ・ボーデヴィッヒのようだ

 

『何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ』

『このような極東の地で、何の役目があるのですか!?』

 

そういえばラウラちゃんは昔織斑千冬に教えられていたわね。あんな奴を尊敬するなんて・・・見る目が無いわね

 

『お願いです。ドイツで再びご指導をしてください!ここではあなたの能力は半分も生かされません』

『何故言い切れる?』

『この学園の生徒のほとんどは意識が低く、ISをファッションと勘違いしているからです。なにより、教官に反発する輩もいる始末!』

『ほう』

 

 その後もラウラちゃんは危機感がないだの、教える価値がないなどひとしきりの言葉を吐き出す。確かにISは兵器だしその意見は間違ってはいない。だけど皆があなたのような軍人ではないのよ。その意識を在学中に持つための学校でもあるんだから

 って、本人に言っても聞かないだろうけど

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒ』

『はっ!』

『お前は私に歯向かう人間をどう思う?』

『万死に値します!』

『そうか・・・』

 

 何を企んでいるというの?

 

『今月末の学年末トーナメントがあるだろ?』

『はい!十分承知しております!』

『お前はその反逆者と早く当たりたいか、決勝で当たりたいか、どちらだ?』

『私は真っ先にこの手で潰したいです!』

『そうか・・・ならそうなるように手配してやる』

 

 は?トーナメントはランダムにしているのに・・・まさか勝手に変えようというの!?

 

『で、だ。私からボーデヴィッヒに命令を与える』

『はい!何なりとおっしゃってください!』

『一回戦で遠藤雪広をお前に当てる。その時に・・・完膚なきまで叩き潰せ。()()()()()()

「!!!」

『了解しました!教官の期待に応えて見せます!!』

 

 たったったっ、と歩き去る音が聞こえる。ラウラちゃんが去ったようだ。私も盗聴をやめようとした時

 

『ふふ、使える()は使わないとな』

「!?」

 

 すたすた、と織斑千冬も去ったようだ。だが今の言葉は不快すぎる。あんなに慕っていた部下を駒呼ばわりするのは人として間違っている。一春以外はどうなってもいいという事か

 でも、今のままだと遠藤兄弟、特に雪広君が危ない。いくら彼らが強くても一対一では間違いなくラウラちゃんが最強だ。これでは試合で事故として殺されてしまうかもしれない。どうしたら・・・

 

「そうだ!だから・・・今すぐに学園長室に行かないと!」

 

 まずはこのことを十蔵さんに伝えないと。そして私の案を通してもらおう。私は足早に学園長室に向かった。

 

 ・・・っとその前に盗聴器を回収しないと

 

 




 出番ありません!
 何気に初めてのことです

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