Inferior Stratos   作:rain time

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 いや本当ありがたいです、というよりも意外と見ている人が多くてびっくりです
 これからの展開で減りそうですが



第21話 相手探し

 火曜日。約一週間ぶりの登校だ。みんなも久しぶりとか声をかけてくれる。いつも通りの日常が始まる。ただ一つ、シャルロットがいないことを除いて

 SHRの時間となって、山田先生が教室に入ってくる

 

「皆さん、おはようございます。今日はですね、転校生・・・というべきなのでしょうか?と、とにかく入ってきてください」

「失礼します」

 

 入ってきたのはシャルロットだった。今までと異なるのは男子の制服ではなく、女子の制服を着ていることだ。もう性別を偽らなくてもいいからな

 

「シャルル・デュノア改めシャルロット・デュノアです。諸事情により性別を偽って入学していましたが、問題が解消したので本当の姿でこれからこの学園の生徒になります。改めてよろしくお願いします」

 

 一礼するシャルロット。それにより、教室はざわつく。まだ日本ではデュノア社のニュースは報道してないようでシャルロットの事情を知らない人がほとんどだ。男と思っていたからか、狙っていた女子からは落胆の声が大きかった。中にはカップリングが消えたと嘆く人もちらほら。そんな中、クズ(織斑一春)はじろじろとシャルロットを見ている

 山田先生はざわつきを鎮めるようにSHRを続ける

 

「皆さん、まだSHRは終わっていませんよ!もう一つ重大なことがあるので聞いてください!!」

 

 なんだ?重大なことって。みんなもさっきまでの騒ぎが嘘のように静まる

 

「今月末のトーナメントですが、今年はタッグマッチになりました!」

 

 タッグマッチだと?いきなりのルール変更に再度ざわつく。自分も驚いている。なにせ、今まで個人戦しかやったことがないからな。

 大まかなこととしては大会までにペアを申請すること、それまでにペアが決まってない場合は当日にランダムで決まるとのこと。細かいルールは追って伝えるそうだ。その情報はしっかり取っておかなければ

 と、SHRが終わると同時にクズがシャルロットに近づく

 

「やあ、シャルロット。色々と大変だったんだね」

 

 何だアイツ?シャルロットになれなれしく話して。今までは関わるな的な雰囲気を出していたくせに

 

「俺は君が女の子だったことをうすうす感じていたよ」

「・・・」

「だからさ。今回の学年末トーナメント、一緒に組まないか?俺と」

 

 右手を差し出すクズ。女だと思ってなかっただろ、絶対。言葉だけではいい男に見えなくもないが頭の中は邪なことで埋まっているだろう

 そんな右手をシャルロットは

 

 パァン!

 

 自身の右手を振りかぶって、クズの右手の甲を思い切りはたく。かなりの音でクラスのざわつきもなくなる。クズも予想外のことだったのか呆然としていた

 

「よく言えるね。何にも知らないくせに」

 

 身長の都合上、睨み上げるようにクズを見るシャルロット。それはそうだろう。ヤツはシャルロットのことを何も知らないのだし

 

「男装しているときは関わろうとしてこなかったくせに、今になって関わってくるなんてさ。キモイんだよ」

「なっ!?」

「っていうか、さっきから胸見すぎ。どうせ僕の体が目当て何でしょう?」

「そ、そんなわけあるか!そんな出まかせ!」

「そういう目線って女はわかるんだよ。さっきから僕の体をなめるように見やがって。ゴミクズが」

「貴様!口をわきまえろ!!」

 

 モップが木刀を振りかぶる。なんかこの流れも久々な気がする。前までだったら止めに入っただろう。でも入らない。なぜならば

 

「・・・ラアッ!」

 

 木刀を躱し、そのまま回転して回し蹴りをモップの肝臓あたりに直撃させる。見事なほどのクリーンヒットだ。モップも声を出せずに蹴られたところを抑えてうずくまる

 

「箒!?」

「お前にはそこのゴリラ女が十分だろ。中身はクズだけど体ならそっちの方がお気に入りだろ?」

「てめえ・・・!」

 

 クズがゆがんだ笑いを浮かべる。そして、その奥の女子たちが何かに怯えている。何事かとドアのほうを向くと、クズ教師(織斑千冬)がいた。

 シャルロットに警告をする前にクズ教師はシャルロットに近づき、縦にした出席簿をシャルロットに目掛けて振り下ろす。流石にまずい!

 

「シッ!」

ガァン!

 

 しかし、見越していたように後ろ回し蹴りで出席簿の面をとらえ、それを吹っ飛ばす。今出席簿から出てはいけないような金属音が聞こえたのだが?あれを頭に振り下ろすクズ教師は・・・どうかしてるんだった

 それよりもスカートでやる技ではないな。パンツ見せすぎ

 

「なんですか?なんてものを振り下ろすおつもりですか?暴力教師」

「口をわきまえろよ、小娘。ここは私が法なのだからな」

「ハッ!そんなクソみたいな法があってたまるかよ。terreur(テルール)かよ、ここは」

 

 テルール・・・18世紀にフランスであった恐怖政治か。まさしくその通りだな。独裁的だし、自身の意見に反するヤツをぶっ叩いているし。

 でもこれじゃあ埒が明かないのでシャルロットを止めに入るか

 

「それ以上は止めとけ。何言っても無駄だ。それに授業が始まる」

「・・・はーい」

 

 食らいついてくるかと思ったが、割とすんなり聞いてくれた。タイミングよく一限目開始の時刻となったため全員席に着く。最初はこのクズ教師のIS理論だった。どうせ自分たちにガンガン質問を飛ばしてくるだろう。でも休んでいた分はのほほんさんに頼んでおいたノートを写させてもらったし、授業に置いて行かれることはない

 

 その次の休みにはシャルロットの所にみんなが集まり、性格が変わったとか色々と問い詰められていた。それでもクラスの仲間とは打ち解けられたようでなんか安心した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の休み時間はシャルロットだけでなく、俺たちの周りにも女子が集まった。というのも・・・

 

「私と組んで!一夏君!!」

「ぜひ私と!雪広君!!」

 

 俺たちをタッグマッチのペアになりたい女子が多いようだ。男子だからというのもあるだろうが、俺たちは専用機持ちでもある。つまり仲間にすれば一気に優勝のチャンスが広がるというわけか。でも、いきなり決めるわけにもいかない。なにせ初めてのタッグマッチだし、中には初対面の子もいる。兄さんも慎重になっているようだ。

 その中で聞きなれた声がする

 

「雪広、一夏、久しぶり」

「簪か。久しぶりだな」

「・・・簪も自分とペアになりたい感じか?」

 

 簪は兄さんのことが好きだから、一組に来て立候補するために来た・・・と思ったのだが簪は首を横に振る

 

「ううん、お姉ちゃんから伝言預かっているの」

「伝言?」

「うん、『今日の昼、生徒会室に来て』だって。私も詳しいことは知らない」

 

 何だろう?問題を起こしたというわけじゃなさそうだし、思い当たることが何もない。兄さんとアイコンタクトするも、兄さんも知らないようだ

 

 

 

 

 という事で、何事もなく昼休み。俺たちは生徒会室に来た。ノックして入ると楯無さんが座っていた

 

「来たわね。それじゃあ座って」

 

 適当に俺たちは座る。いつもは冗談を一つや二つは言う楯無さんがいきなり本題に入るなんて・・・一体何があったのだろうか?

 

「実はね、今回のトーナメントでタッグマッチにしたのは私の案なの」

「そうなんですか。でもどうしていきなり変えたんです?」

「・・・実はね、昨日ラウラちゃんと織斑千冬が話をしている現場を偶然とらえたのよ」

 

 そこから昨日あった会話を聞いた。織斑千冬が対戦カードを操作して兄さんとボーデヴィッヒを一回戦で当てること。そして、その時に公開処刑をするとのこと

 

「私の予想だと織斑千冬は試合終了の合図をオフにしてラウラちゃんが雪広君を再起不能になる、もしくは殺すまでいたぶらせるつもりよ」

「・・・なるほど。機械の故障だったと言って事故に見せかけようという魂胆か。笑えないな」

「はっきり言うと現時点で一年生最強はラウラちゃんよ。君たちには申し訳ないけど、彼女は軍人でISの稼働時間も長い。一対一ではかなわないわ」

「だからタッグマッチにした、と」

 

 そうよ、と言いつつ「正解」と書かれた扇子を開く。これはかなり深刻なことでは?

 

「で、そのタッグマッチトーナメントで君たち二人には代表候補生とペアになってほしいのよ」

「確かに、そうすれば自分がボーデヴィッヒに勝てる確率が上がる」

「ですが、それだと他の一般生徒から文句言われません?戦力が固まりすぎると」

「それに関しては安心して。専用機持ちは『相手が専用機を持っているとき()()自分の専用機を使うことができる』って補足を出したから」

 

 なるほど、つまり相手が専用機を持っていない二人ならば、こちらも訓練機で戦わなければならないわけか。それなら戦力的に文句を言う人は少なくなるだろう

 

「自分と一夏が組む、というのは無しですか?コンビネーションなら一番良いかと」

「・・・それも考えたけど、君たちはISでのタッグマッチは経験ないでしょ?普段コンビネーションが取れていても、IS戦ではそうとも言えるかわからないし・・・時間的にも厳しいかなと思うの」

「そうですね。失礼しました」

 

 兄さんが頭を下げる。普段が相性良くてもIS戦という普段ではない中ではうまく連携が取れるか分からないからな

 

「という事で、私の話はおしまい。わざわざありがとうね」

「いえ、こちらこそありがとうございます」

「ありがとうございます」

 

 そう言って俺たちは生徒会室を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になった。楯無さんの話から簪かシャルロットと組むことになる。一夏が放課後、速攻で2組に突っ込んでいったから鈴はなしだ。弟の恋路を邪魔しないのがいい兄貴ってもんよ

 と、話がずれた。簪かシャルロット、どちらに頼むか・・・シャルロットは未だに女子たちが集まって話せそうにないし、友達歴の長い簪に頼もう。席を立って、廊下に出る

 簪なら今回の件を分かってくれるはずだ。それに自分のことも言わなければ。なんだかんだで簪の告白から一週間以上も空いてしまった。早く言わないと・・・

 いや待て、自分のことを言うタイミングか?このタイミングで自分のことを暴露したら、コンビネーションに支障が出てしまうんじゃないか?でも早く話さないといけないし・・・

 

「きゃっ!」

「うおっと!」

 

 堂々巡りしていて人とぶつかってしまった、って

 

「簪!?」

「雪広、どうしたの?考え事?」

「あ、ああ。まあな」

 

 即エンカウントするなんて。ツいてるのかツいてないのか

 まずはペアになりたいかだけ聞こう

 

「簪ってさ、タッグマッチのペア決めた?」

「うん。本音と」

 

 え?

 

「ほ、本音・・・のほほんさんと?」

「うん。どうしたの?」

「いや、てっきり自分と組みたいって言うのかと」

「・・・それは自意識過剰なんじゃないの~?」

 

 簪はニヤニヤと笑ってくる。やべ、今の発言はイキった発言だった!そんなつもりじゃなかったのに!

 

「いや、その・・・簪の気持ち的にそうなのかな~って」

「まあ、雪広と組みたい気持ちもあったよ。でも本音のほうがコンビネーションいいと思ったの」

「そういえばのほほんさんは簪の従者だったな。普段そんな感じしないから忘れてた」

「本音とならISで訓練したこともあるし。それに、雪広達と戦いたいし?ペアだと勝負できないからね。雪広達に勝って、簪ちゃんが最強なのを証明するのだ!」

 

 少し前まではこんな発言なんてしないような感じだったのに、すっかり成長(?)しちゃって・・・

 

「だから気にしないで。トーナメントが終わった後に返事を教えてもらうから」

「!」

「それじゃ、またね~」

 

 足早に簪は去っていく

 ・・・気を使ってくれたのだろう。たとえ性格が変わっても根はやさしいことに変わりはないんだな。そんなやさしさに後ろめたくも感謝している。トーナメントが終わったらしっかりと向き合おう。でも、負ける気はさらさらない!

 それじゃ、シャルロットのいる一組に戻ろう

 

 

 

 どこだ?一組に戻ったがシャルロットいなかった。いろんなところ回ったがどこにもいない。みんなに聞いても見失ったとかで有力情報がない。部屋にもいないとすると・・・あとは、屋上か?

 ダメもとで屋上のドアを開く。夕日が空を赤く染めている。だけどここにもいないのか。にしても綺麗だな、この景色。思わず手すりのところまで歩く

 

「雪広?」

「!?」

 

 どこからか声がしたんだか!?左右を見てもいないのに

 

「後ろだよ、雪広」

 

 後ろを振り向くと、入り口の上にシャルロットは座っていた。そこは入り口からは死角になるから、通りで見えなかったわけか

 そこからシャルロットは飛び降り、自分の近くの手すりに体を預ける。

 

「どうしたんだ?こんなところにいてさ」

「今日はいろんな人が押し寄せてきたからね。なんとなく一人になりたくて」

「そっか、災難だったな」

「嫌いじゃないけどね。それにここの景色を見たくなって」

 

 そういうシャルロットは様になっていた。夕日をバックに金髪の娘が黄昏(たそがれ)ている。この姿を見たら一目ぼれするヤツがいてもおかしくなさそうだ

 と、本来の目的を言わなければ

 

「そういえばさ、シャルロットはペア決めた?」

「いや、まだだよ?」

「なら、できれば自分と組んでくれないか?」

「・・・え!?ゆ、雪広と!?」

「嫌か?」

 

 よく考えたらシャルロットが組んでくれる保証はない。でも簪は組んでしまっているからシャルロットは頼みの綱だ。ここは引き下がるわけにはいかない

 

「ううん!全然!むしろこっちからお願いしたかったよ!!」

「本当か!」

「雪広に言おうと思っていたんだけど、皆が集まっちゃったし・・・気づいた時には雪広はいなかったし」

 

 これは助かる。シャルロットとならボーデヴィッヒに対して有効な戦略が立てられるからまずは一つ目の関門突破だ。これからトーナメントまで戦略を詰めていかないと・・・って

 

「シャルロット、顔が赤いようだが・・・大丈夫か?」

「えっ!?ぜ、全然、問題ないよ!大丈夫!!」

 

 そうか、気のせいならいいんだが・・・まさかな

 

「と、ところでさ!」

「何だい?」

「ど、どうして僕を選んでくれたの?」

 

 シャルロットは人差し指を合わせながらおずおずと聞いてくる。理由は・・・このことは言わないといけないよな

 

「ちょっと真面目な話だけど、いいか?」

「う、うん」

 

 シャルロットも雰囲気を察したのか、真面目になる。自分は今日の昼に楯無さんから聞いたことを伝えた

 

「・・・つまり、楯無さんから組むようにっていう理由?」

「最初は簪に頼んだのだけど、簪は本音と組むて言われてさ」

「次に僕のとこに来たっていうわけか・・・ふーん」

 

 なんかまずいこと言ったかな?顔の赤みは引いたようだが、心なしか冷たい気がする

 

「何というか・・・その・・・なんかすまない・・・」

「・・・まあ、雪広にはお父さんを救ってくれたこともあるし、協力するよ・・・それに二人きりになれるのはチャンスじゃないか・・・」

「何がチャンス?」

「いやいや!なんでも!と、とにかくボーデヴィッヒさんに勝てるように、優勝できるように頑張ろー!!」

「お、おおー!」

 

 トーナメントまでにシャルロットと連携を組めるように努力あるのみ。ボーデヴィッヒに殺されないために、クズ教師の思い通りになってたまるか!

 

 

 

 

 ちなみに一夏は鈴とペアに無事なれたそうだ

 




 雪広に恋愛フラグが立っているのですが、後に回収します
 原作の主人公みたいなことはさせません

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