Inferior Stratos 作:ユキ (旧 rain time)
学年別トーナメント当日。自分とシャルロットは第三アリーナの控え室にいる。この大会には各国政府の関係者などの重役が来賓として見に来るようで、その様子をモニターから見ている
だが、はっきり言って興味ない。自分の試合に集中しないと。というのも
「対戦相手がボーデヴィッヒはともかく、一回戦の第一試合なんてね」
「最初なら機械トラブルでごまかしが効くだろうからな。ったく、せこい手を使いやがって」
前日のトーナメントの組み合わせの発表で、やはりボーデヴィッヒとの対戦となった。しかもご丁寧に初戦ときた。途中の試合で機材トラブルが起こるのはおかしいからな。その辺は知恵が回るのかよ
ちなみに一夏・鈴ペアは一回戦の後半、簪・本音ペアは一回戦の最後の為、今は観客席にいるそうだ。
「うだうだ言っても仕方ないし、そろそろ時間だな」
「そうだね。まずは作戦通りにすればいいね?」
「ああ、その後も基本は作戦通りに。想定外の時は臨機応変に行こう」
できる限りシャルロットとマンツーマンで訓練をして、連携を深めていった。他にもボーデヴィッヒの情報を得意のハッキングで抜き出したり、鈴と簪から聞いたヤツの単一能力を聞いたりして対策を練りに練った。ここまでやったんだ。絶対生き残ってやる
入場のアナウンスが入ってきた。自分たちはISを展開して戦場へ向かった
観客が凄い。ほぼ満員で歓声が凄い・・・ってシャルロットはどこに手を振っているんだ?その方向を見るとアルベールさんがいた。隣は誰かわからないが多分フランス政府の人だろう。自分も見つけたから頭を下げる。向こうも手を振り返してくれた
それが気に入らなかったのか、ボーデヴィッヒが挑発してくる
「貴様ら
おいおい、堂々と殺害予告をしてきたよ、この銀髪チビ。ISって録画機能があるはずだから、これはもう手遅れではないか?
そんなことを考えながら煽り返そうとしたが、シャルロットに先を越されてしまった
「はっ!生産性の目処が立ってないガラクタに乗っているのはどこの指示待ち軍人だったか。ああ!隣国にそんな国の代表候補生がいたなあ!」
「なんだと貴様!!我が祖国を侮辱するな!!」
シャルロット、お前めっちゃ煽るようになったな。自分の言う言葉が無くなってしまったよ。言う事がないからボーデヴィッヒのペアを見る。確かこいつは・・・3組のクラス代表だったか?
「ふふん!あんたたちは私に負けるのよ!だってこっちには一年最強のボーデヴィッヒさんがいるんだから!!」
簪に煽っただけのことはあるようで自分たちにも煽ってきた。ちょっと女尊男卑思考があるが今回は気にしない。だってこいつは即退場してもらう予定だから
そう思っているうちに試合開始のカウントダウンが始まり・・・
試合開始のブザーが鳴る
と、同時に自分たちはスモークグレネードのピンを抜き、自分は相手に投げて、シャルロットはその場で即起爆させる。狙いは銀髪チビのペアだ。
「!!」
もともと戦力にはならないだろうが、万が一のことを考えて試合開始後、すぐに倒すのが第一段階の作戦だ。銀髪チビは軍人だから視界を奪われても対処されてしまうが、もう一方は民間人。それに専用機持ちではないから戦闘経験もほぼ無い。視界を奪われたらパニックになって何もできない。そして、銀髪チビの性格上、味方を助けようとはしないはずだ
作戦通りとなって、3組の奴は悲鳴も上げられないまま自分たちに叩きのめされ、すぐに戦闘不能となった
「先に片方を潰す作戦か、無意味だな」
「そりゃあ仲間を仲間と思っていないヤツにとっては無意味だな」
「私に仲間など不要だ。弱者と戯れる暇はない」
さすが、あのクズ教師の信者だな。他人には興味ないような発言。だったら自分たちでその引導を渡してやろう
「だったら見せてやる。お前が見下しているアンティークの連携を」
「フン!まとめてひねり潰してやる!祖国と教官を侮辱した奴らは消えろ!!」
ここからが本番だ!頼んだぞ、シャルロット!!
「上手な立ち回りね」
「うまい具合に
俺たちは試合がまだ先なので観客席で兄さんとシャルロットを応援している。試合開始してすぐ
「それにしても、2週間とは思えない仕上がりね。阿吽の呼吸じゃないの?」
「どっちかというと、兄さんが合わせている感じだな。もともと兄さんは人に合わせるのが得意だし」
でも兄さんとの連携なら俺が一番だけどな!
「む~~・・・」
簪はどこか不満げだ。大方、兄さんとシャルロットがうまく行き過ぎていることだろう
「簪、今回に関しては雪広の命がかかわっているんだし、それにアンタは雪広の申し出を断っているんだから」
「分かってはいるけどさ・・・雪広が取られそうで」
口をとがらせて拗ねる簪。恋する乙女にとっては死活問題なのだろう。俺は唐変木ではないが、女ではないから完全な女心は知らん。だからフォローで何を言ったら良いかはわからない
こういう時はそっとするか、簪の言う事に対して頷くのがいいだろう
なんて思っていたら試合が動き出した
「兄さんが突っ込んでいった!!」
「「!!」」
死ぬなよ・・・兄さん!
思ったよりも相手を追い込めていないな。二対一に持ち込んだはいいものの、こちらの攻撃をうまくいなしている。自分たちも攻撃を躱しているから、一向に試合が進まない、がこれでいい。そろそろ第二段階だ
「この!目障りな!」
相手はイラついてきたようだ。意表を突くような奇襲は今しかない!剣を呼び出し、チビのワイヤーブレードをかいくぐる。そして瞬間加速をして
ピタッ、と剣が止まってしまう
「愚かだな。私の
無力だ、と言いたかったチビの顔が驚愕する。そうだろう。
チビのAICはその網にかかったものを停止させる。このとき、それに触れているものすべてに対して効果があると分かった。ならばチビが剣にその網を当てる前に
もちろんそれは簡単なことではない。AICの網は不可視であるし、チビは剣ではなく体にAICを当てるかもしれない。さらにAICに引っかかったように見せるのも大変だ。
だからこそ、二対一にしてからは一定の距離を保ちながら遠距離武装で攻め続けることで、チビのAICの網を張るおおよその位置を出した。剣を前に出すことで剣をAICの網にかけようと誘導した。AICに引っかかったように見せるためにシャルロットにその演技を見てもらい、相手が苛立った状態なら騙せるくらいにした。
そして今、大きなチャンスが出来た。勢いに任せ、チビの腹部に右ストレートを叩き込む。手ごたえ・・・
「カハッ・・・」
「・・・浅いか」
くそ、完璧だったんだがな。チビは右ストレートを当てられるのと同じ時に、後ろに引いたのだ。それだと威力が減ってしまう。腐っても軍人というわけか
「貴様・・・ただで済むと思うなよ!!」
「ああそうだな。だが一つ忘れていないか?これはタッグマッチだという事に」
自分の攻撃は不発だったが、時間は稼げた。第二段階完了だ
「これで準備完了さ」
「それがどうした!アンティークの火力で、このシュヴァルツェア・レーゲンを堕とすことなど」
不可だ、と言うことをやめるチビ。そうだろう、シャルロットは右手に持ったハンドガンを自身のこめかみあたりに銃口を向けている。まるでロシアンルーレットをするかのように。異様な光景にチビも、周りも、アリーナ全体が静かになる
「アンティークの真価、見せてやるよ」
乾いた銃声が響いた
異様だった。雪広がボーデヴィッヒに有効打を与えたと思ったら、シャルロットは自分自身の頭に銃口を向けていた。そして自殺をするかのように躊躇なく引き金を引いた光景に誰も声を出せずにいた
「な、なにやってるのよ・・・」
声を絞り出すように今の思いを口に出す。アイツの行動は分からない・・・と思ったその時、シャルロットの体と機体が黒に染まる
「なっ!?」
「もしかして・・・」
あまりの変化に目を疑った。一体何がおきたのよ!?簪は何かに気づいたようだけど・・・
「アハハハハハハハハッ!!!」
シャルロットらしき黒の物体が高笑いした後、足元から黒が消えていく。そこにはさっきと色が異なるラファール・リヴァイブがいた。これって一夏が言っていた・・・
「・・・形態変化だね」
「あんなふうにシャルロットが変身するとは思わなかったけどな」
形態変化だったのか。それならさっきのはそのトリガーってわけね。それなら納得した。会場はシャルロットの変化にざわついている
「さーて、シャルロットの形態変化をしっかり見ておかないとね。改めて対策を練り直す必要があるかもだし」
簪はすぐに対策を練っている。あたしもそうしようとしたのだが・・・
なぜか心がちくりと痛んだ
「それがルーティーンになったのか」
「まーね。あの時の怒りも思い出せるし、これが手っ取り早いっていうか?」
なかなかな光景だよな。頭を撃ちぬいて変身するなんて。ダークヒーローでもいないよな、そんな変身するヤツ
「それが噂の形態変化か、だが貴様がアンティークであることに変わりはない!!」
「・・・ならこれでどうよ」
シャルロットは大鎌を呼び出してすぐ、地面に突き刺し、それを引きぬく。そこから影のようなエネルギー体が現れ、人の形になる。シャルロットの単一能力『マレディクション』だ。この影は『マニュエル』モードだな。第三段階もうまくいっている
「それが形態変化の単一能力か、所詮は烏合の衆。どれほど弱者が束になったところで私にかなうはずが無い!」
「それはどうかな!!」
シャルロットとその影はボーデヴィッヒに接近戦を畳みかける。チビもシャルロットの動きを封じようとAICを発動させようとする。そうはさせない
自分はライフルを持ち、チビに撃ちまくる。当てなくてもいい。とにかくチビの気を逸らすことが重要だ。そうすれば高い集中力を必要とするAICは使えなくなる
「ちっ・・・小癪な!」
「うらああっ!!」
シャルロットと影はボーデヴィッヒを追い込んでいく。先ほどよりもパワーが増し、かつ手数が倍となり、さらにAICは自分が遠距離からの攻撃で集中できないように阻害している。いくら一年生最強であろうと、この攻撃に防戦一方となり、押され始めてきた。
そして、影が放った一撃でチビの態勢が崩れた。好機とばかりにシャルロットは懐に入り、第二世代最強のデュノア社傑作装備のパイルバンカー、通称『
「!!!」
「くたばれ、ゴミカス」
チビの腹部にパイルバンカーを計三発叩き込む。これでチビのSEはかなり削ったはずだ。ここから一気に自分も加勢してとどめを刺す。最終段階に入っ・・・
ゾクッ!!
強烈な悪寒を感じた。理論ではない。自分の中にある第六感が警告を出している!
「離れろ!シャルロット!!」
「え!?わ、わかった!!」
シャルロットも攻撃を止め、自分の所に下がる。影はシャルロットを守るようにシャルロットが操作している。対してチビは何か苦しんでいるような動きをしているかのよう
刹那、
「あああああああっ!!!!」
チビの機体が激しく放電し、ISが変形していった
こんなところで負けるのか、私は・・・!
ラウラ・ボーデヴィッヒ。それが私の識別上の記号。人工合成からつくられた、ただ戦いのためだけに作られた人間。私は優秀だった。常に最高レベルを保ち続けていた。
だが、それはISが出てくるまでの話。超高速戦闘における胴体反射の強化をするために肉眼にナノマシンを移植処理されたことで、すべてが変わった
不適合が起こらないはずだったその手術で、私の左目は金色に変色。思うように体が動かせなくなってしまった。結果、IS訓練でも後れを取ることとなり、いつしかその目が落ちこぼれの烙印となってしまった。
そんな私を救ってくれたのが織斑教官だった。彼女の訓練により、私は再度部隊最強の座に返り咲いた。そして思った。彼女の考えは正しいのだと。他者を蹴り落してでも最強であればよいという事も。私にとって、織斑教官は絶対なのだから。
それなのに、それなのに!織斑教官に歯向かう輩がいる!!許していい訳がない!!教官からも反逆者を抹殺するように頼まれたのだ!負けるわけにはいかない!!
そのための・・・力が欲しい!!
『願うか・・・?汝、強大な力を欲するか・・・?』
どこかで、しかしはっきりと聞こえた声。言うまでもない。力があれば、目の前の敵も、教官に歯向かう者もすべてひねり潰してやる!!!
教官の為なら、私のすべてをくれてやる!!
「その力・・・唯一無二の力を・・・私に寄越せ!!!」
Walküre Verfolgen System……starte
最後の一文はドイツ語で「ヴァルキリー・トレース・システム 起動」を意味しているはずです
Google先生に翻訳させたのでそこのミスはご了承ください