Inferior Stratos 作:ユキ (旧 rain time)
今回も難航しました。日常ほど難しいものはないです
第26話 それぞれ
7月の頭。梅雨が明け、うだるような暑さになる時期。だがそれ以上に俺たちのクラスメイト達は浮足立っていた。来週には二泊三日の臨海学校があるからだ。
臨海学校はISの稼働訓練と名目上言われているが、それがあるのは2日目のみ。初日は完全にフリーで、1年生たちの小旅行とされている。俺はその準備として駅前のショッピングモールに鈴と行くことにした。
デートらしく駅前で集合という事にしたのだが、集合時間の30分前についてしまう。楽しみにしていたとはいえあまりにも早すぎるだろ、と反省していたが
「あれ、一夏?待った?」
「いや、全然!鈴こそ早かったな」
「そ、そりゃ楽しみにしていたもん」
鈴も集合時間の前に到着。鈴も楽しみにしていたのか早く着いたようだ。それはさておき
「服、凄く似合っているよ」
「そう?良かった」
鈴の私服姿は小学校以来でISの制服とは違う良さを感じる。言葉ではうまく言い表すことができず、ありきたりのことしか言えなかったけど、鈴も嬉しそうでこっちも嬉しくなる
「じゃあ、行こうか」
「なら、手繋いで?」
「あ、ああ!」
3年前だったら迷子にならないように程度しか考えなかっただろうが、今は違う。こんなにもドキドキするものなんだな。そんな舞い上がった気持ちで俺たちはショッピングモールに向かった。
さて、そのショッピングモールでまずは水着を買わなければ。いったん鈴と別れてそれぞれ水着を見る。さすがに中学の水着では味気ないから新調したいものだ。男物の水着は店の一画にしかなかったが、逆に多すぎてもそんなに選ばないだろう。むしろ、女性のほうがいろんな種類のを選びたがるだろうし、これについては女尊男卑でも何でもないはずだ
無難なハーフパンツ型のを買って鈴のところに行く
「どう?いいもの見つかった?」
「ええ、これはどうよ?」
見せてきた水着はオレンジ基調のセパレートタイプの水着だった。それを着ている鈴を想像する・・・え、可愛すぎないか?
「・・・ニヤけてるわよ?」
「ハッ!に、似合うぞ!とても!!」
変なことを想像したのをごまかすように、思わず食い入るように言う。ってこれじゃあ変な想像をしてました、って言っているようなものじゃないか!
鈴は少しほほを赤らめる
「ま、まあ、私の目に狂いはなかったというか・・・一夏が似合うっていうなら文句ないわね」
「そ、そうだな」
「じゃあ買ってくるから待ってて」
鈴は小走りにレジのほうに向かう。そんな後ろ姿もかわいらしいと見惚れていた
だから後ろにいた女に気づかなかった
「そこのアンタ、これを買いなさい」
「は?」
「聞こえなかったの?アンタがこれらを買えって命令しているのよ。ISを使える女の命令を聞くのは当然でしょう」
そう言って、見知らぬ女は服の入ったカゴを俺に押し付けてくる。これは典型的な女尊男卑の輩か。東京ではそんなやつはいなかったが、これが普通なのか。少し落胆しながらも、こいつに反論をかましていく
「ではあなたは当然ISを動かすことができるんですよね」
「え?いや、私は・・・」
「動かすことができないのですか?あなたの言い分は『ISを動かせられる人が偉い』ですよね?ならあなたはISを使うことができないのに男よりも偉いというのは矛盾していませんか?」
「う、うるさい!ISを起動できない劣等種の存在で!!」
私は悪くないかのようにヒステリックに喚き散らす女。こんなのが社会にいることに驚きつつ、切り札を切る
「そうですか、数少ない男性IS操縦者である俺が劣等種ですか。ああ、これがIS学園の学生証です」
「え、遠藤一夏ですって!?」
「あなたはISを動かせられない。対して俺は動かせられる。どちらが偉いかは一目瞭然ですが、いかがでしょう?」
やや煽りながら問い詰めていく。これほど言えばそそくさと逃げるだろう。こっちは貴重な男性IS操縦者。女の言い分はいくら何でも通ることはない。相手もわかっているはず
だが俺の予想は甘かった
「男の分際で・・・私を侮辱して・・・ふざけるな!!」
マジか、殴りかかってきやがった。ここまで立場を理解してないなんて、低能な女もいたものだ。だが殴ってくるとは言え、ド素人の拳なんぞ避けるのは容易。避けようとしたのだが
「おいおい、ガキに手を出すなんてみっともないにも程があるぜ」
別の女が低能の拳をつかむ。なんだ?助けてくれたとはいえ、茶髪ロングで切れ目のOL風な女は知らないのだが
「何よ!そのガキの味方になるつもり!?」
「その通りだが?てめえみたいな社会のゴミから守るために、な!」
「がっ!」
茶髪の女が低能の背後を取り、頭をつかんで地面にたたきつける。断末魔を少し上げた後、低能は気絶。その直後に警備員の人たちが来て事情を説明した後、低能は連行されていった。
警備員たちを見届けた後、鈴が慌てて戻ってきた
「一夏、どうしたの!何かあったの!?」
俺はこれまでのことを話す。女尊男卑の女に絡まれたこと、それをこの女性が助けたこと
「そうだったの、一夏を助けてくれてありがとうございました!」
「お礼を言うのが遅れましたが、助けてくれてありがとうございました」
「いいって、俺が勝手にやったもんだから。にしても災難だったな、デート中に」
「え、ええ。まあ・・・」
第三者にデートと言われるとなんか恥ずかしいな・・・
「かーっ、青春だねえ!じゃあ俺は退散しますか!またな!」
そう言って、その人は離れていく。結局名前も聞けなかった。一体誰だったのだろうか?それとも人を助けずにはいられない性格の人なのだろうか?そもそもあんなにスムーズに背後を取って人を無力化できるのだろうか?
考えていると袖をクイクイと引っ張られる
「どうした?」
「ううん、何でもないよ。デート続けよ?」
まあいいか。悪い人じゃないなら問題ないし、それに鈴とのデートの途中だし
鈴は俺の手を先ほどよりも強く握る
「今日のデート中はもう離れないからね!また変なのが絡んできたら今度はあたしが追っ払うから!」
「絡んでこないことがベストだけど、頼りにしてる」
「まっかせなさい!」
男として守られるのはどうかと思う反面、鈴の勇敢な姿も見てみたいとも思う。そんな思いの中デートを再開した。
結局何事も問題なく終わったんだけどな。鈴のかわいい姿を見れたので文句ないけど
助けたガキと離れた後、俺は相方と待ち合わせていた場所に急ぐ。結構時間を食っちまったから、アイツはもういるだろう
「おーい、スコール!」
「あら、遅かったじゃない、オータム」
「悪い、いろいろあったんだ」
さっきまでのことを手短に話す。スコールも俺と同じく女尊男卑の女が死ぬほど嫌いだし遅れた理由として納得してくれるだろ。
実際にスコールも納得してくれたが、不快そうに顔をしかめる
「本当に増えているわね、
「マジで反吐が出る。特にこの国は酷いな」
「私たちが紛争地域の人々を助けているのに・・・といっても女尊男卑の要因となったISを使っている私たちが言えたことじゃないわね」
二人そろってため息をつく。
俺たちは
とまあ、こんな団体だから女尊男卑に染まる奴なんていないはず。そう思っていたんだが
「最近俺たちにもそういう輩が増え始めたよな」
「ええ。全く、バカな思想に染まるなんて・・・最近だと内部でクループを作っているとか」
「『過激派』だろ?一回灸をすえたほうがいいんじゃねえか?」
「まだ小さいし、分裂やクーデターできるほどの規模じゃあないわ。トップも何も言ってないし」
「そうか・・・でも気を付けないと。マドカもそんな思想に染まらせないようにしないとな」
「大丈夫よ。あの子は賢いわ」
そうだな、俺よりも賢いもんなあいつは。
・・・あいつの顔で思い出した
「なあ、スコール。今日助けた男なんだけどな」
「何、あなたの好みのタイプ?」
「違えよ!」
「ごめんごめん。で、その男がどうしたの?」
「ああ、それなんだけどな・・・
織斑計画の奴かもしれない」
『姉さん!電話に出ないなんてどういうことですか!!いいですか私は姉さんの作った専用機が欲しいんです。逆らうやつらを屈服させる力が欲しいんです!あなたなら作れますよね!あなたのせいで私たちは家族がバラバラになったんだからその責任をとってもらいm』
バキバキッ!!
デュノア社の手伝いをし、いっくんの送られてきたデータを確認し、ゆーくんの欲しがっていた武器の調整も終わって久々のラボに届いていた一件の留守電。番号を確認せずに聞いたのがいけなかった。最後まで聞くことなく電話機を破壊する。
「・・・何が家族だ」
家族だから。愚妹が言っていたが、私にとっては免罪符にしか聞こえない
私はほかの人と比べ、ずば抜けて優秀だった。勉強も運動も。周りは何でもできるって言って気味悪がられてもいた。ただ当時の私には全くできなかったことが一つ、『剣道』だけは才能が全くなかった。試合とかでは負けないのだが、剣道の『形』を体に覚えさせることができず、当然私の父親が経営する篠ノ之道場で教えられる篠ノ之流を覚えることがどうしてもできなかった。だから私ができるほかのことで数多くの賞を掻っ攫っていた。認められるために。
でも家族は何も見てくれなかった。そればかりか剣道の才能があった妹を溺愛するようになり、私はただいるだけの存在に。そのころには私も家族に興味がなくなり、周りもほとんど話しかけてこなくなった。だから私は自分の夢を追いかけてきた。
それなのに、それなのに・・・
「今更家族面なんて・・・」
家族とは縁を切った、と私は日本政府にはっきり言いきった。戸籍も外し、赤の他人になったのに、政府の
「ふざけんな!!!」
ガシャン!!
壊れた電話を再度殴りつける。電話だったものがバラバラになる。それでも怒りが収まらない。壊したい、つぶしたい。そして、憎い。今度はテーブルに向かって鬱憤を晴らそうと右手を強く握ろうとする。
それと同時にパタパタと足音が近づき、扉が開く
「どうしましたか!?」
「・・・何でもないよ、くーちゃん。ちょっと不快な留守電が入っていただけ」
「ですが、血が!止めないと!」
部屋に備えていた救急箱を持ってきてくれる銀髪の少女。名はくーちゃんことクロエ・クロニクル。以前ゆーくん達に危害を与えようとしたクソガキを作った研究施設で拾った子だ。彼女は失敗作だったらしく処分される運命だったのだが私が拾い、研究員を逆に処分してやった。以降、私のラボに住んで家事とか仕事の手伝いをしてもらっている
「大丈夫だって、束さんの体は丈夫だから」
「だめです!そこからバイ菌が入って炎症を起こすかもしれないのですよ!」
「でも」
「いいから!」
やや強引に止血される。本当に必要ないんだけどね。私は異常なほど丈夫だったし
するとくーちゃんはぽつりぽつりと言葉を吐き出す
「束様、どうかご自身を労わってください。私は不安なのです。何でも平気だという束様が・・・壊れてしまいそうで」
「!」
「束様がいなくなったら、私はまた・・・一人ぼっちに・・・」
かき消える声。肉体だけではない、精神的に傷ついているのをくーちゃんは見越している。私はくーちゃんをここまで心配させていたのか。ケガしていない左手でくーちゃんの頭を撫でる
「ごめんね。気を付けるから」
「・・・はい。ではそろそろ夕飯ができるのでもう少し待っていてくださいね」
そういって部屋から出ていくのを見届ける。さっきまでの怒りはほとんどなくなっていた。くーちゃんと話しただけで気持ちがこんなに落ち着く。くーちゃんは自己評価が低いから謙遜するけど、そんなことはない。仕事も家事もしてくれるし、何より私と話してくれる。それだけで心にゆとりができる。
多分だけど、私が欲しかった・・・家族のつながりみたいなものがここにある気がする。
たとえそれが偽りであっても、このつながりが欲しかった。
「ありがとうね、くーちゃん」
そんな
原作の束さんがあそこまでイかれているのって、教育にも問題がある気がするんです。実際両親すら認知してないですし、ネグレクトに近いことをされたんじゃないかと