Inferior Stratos   作:ユキ (旧 rain time)

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 説明回が続きます


第44話 surface

 

「亡国企業が壊滅したわ」

 

 スコールの言葉に俺たち全員があっけにとられる。捕まえたテロリストがそんな言葉を言うと誰が予想できようか。

 

「正確に言うと、私たちの所属している亡国企業が壊滅したのよ」

 

 この言いかえに何の意味があるのかと内心疑問に思う。それは他のみんなも感じたようで全員が首をかしげる。

 ただ一人、ダリル先輩を除いて

 

「嘘、だろ・・・」

 

 彼女が立ち上がって、よろよろとスコールさんに近づく。これに兄さんは先輩を警戒するが、先輩はそれに気づくことがないようだ

 

「嘘だよな?じょ、冗談はやめてくれよ」

「・・・嘘をこの場で言うと思う?」

「嘘だと・・・嘘だと言ってくれよ!!」

 

 そう叫ぶとダリル先輩はスコールさんにすがりつく。懇願するかのように。だがスコールさん達は何も言わず、彼女から申し訳ないというように目線を逸らす。沈黙が肯定であるように、先ほどの発言が嘘ではないということを俺たちは理解し・・・先輩は崩れ落ちた。

 

「先輩!」

 

 フォルテ先輩が駆け寄ってダリル先輩に寄り添う。よほどショックだったのだろうが顔を伏せており、どんな思いなのか分からない

 

「いや、すまない・・・取り乱した」

「先輩、立てるッスか?」

「肩、貸してくれ」

 

 ダリル先輩はフォルテ先輩の肩を借り、よろめきながらも自席に戻る。この反応、もしかして・・・

 と考えていた時、パンと楯無さんが手を叩いて空気をリセットする

 

「さて、説明してもらおうかしら?あなたたちのことを全て吐いてもらうわよ」

「ええ、それじゃあ続けさせてもらうわ。私たち亡国企業(ファントム・タスク)はいわば裏の世界の傭兵集団、テロリストと言われているのは分かっているわよね?」

「ええ、何の目的かさっぱり分からないこともね。もっぱら戦争の火種を作って儲けようとしているんでしょう?もしくは世界征服だったり?」

「半分正解よ」

 

 その言葉に兄さん達三人が一斉に銃口をスコールさん達に向けるも、当人たちは全く動じない。そうされるのを知っているかのように構えている

 

「俺たちは世界征服なんて思ってねえよ。むしろ逆だ」

「逆?」

「ええ、私たちは戦争を止めるために日夜動いているんだもの」

「あなたたち、矛盾したことを言っているのに気づかない?」

 

 俺もそう思う。戦争するように仕掛けているのに、それを止めようとしているなんておかしい。でもスコールさんが嘘をついているようにも思えない

 そもそも『半分』正解って・・・?

 

「内部分裂?」

 

 簪のなんとない一言。それにオータムさんが頷く

 

「そうだ。亡国企業は内部できっちり二つに分かれていたんだ。無駄な戦争を止めるように働く俺たち『穏健派』と、世界を混乱させ、牛耳ろうとする『過激派』にな」

「もともと亡国企業は世界中の戦争・紛争を止めるために作られた非正規の団体だったのよ。それに巻き込まれてしまった孤児を保護もしているわ。でもISが公表されたあたりから『過激派』と呼ばれる連中が増えたのよ。私たちこそ世界の中心だと思う連中がね」

 

 どんな団体でも馬鹿な奴は現れてしまうのか。それが人間の性なのか

 質問いいかしら?と楯無さんが言う

 

「そんな分かれ方ならもっと早くに分裂してるんじゃないの?明らかに一つの組織の中で上手くいくとは思えないわ」

「もともと『過激派』が極少数だったからよ。そんな馬鹿な奴が少しいるってくらいだったし、ここ最近は『過激派』の度が過ぎる行為が度々あったけど、組織として共存できるくらいだったのよ。仮に反乱があったとしても鎮圧できるし、その連中は夢想程度で征服しようと実行する度胸もない連中、そう思っていたのよ」

 

 あの日までは・・・とスコールさんが悔いるように呟く。その後の言葉をオータムさんが引き継ぐ

 

「クーデターが起きやがったんだ。俺たち『穏健派』が少なくなった時を見計らって。各々のグループがそれぞれの紛争止めに勤しんでいる間によ。何も知らずに戻ったら『穏健派』はもう壊滅していた。通信は確認したんだが、俺たち以外の反応は無かった・・・」

「で、あなた達だけ逃げきれたと」

「ああ、自害したかのように自爆したと見せかけてな。追手も来ねえから俺たちが死んだと偽装できているはずだ」

「でもそれからは大変だったわ。身分証明の類は無いから仕事を雇ってもらえる所も限られて・・・何とか生きてきたけど、そんな矢先にあの子が倒れてね。これまでそんなことが無かった子だったし私たちも切羽詰まっていてね」

「それでここ(IS学園)に来たわけ、と」

「それしかなくてね、病院に行っても怪しまれるかもしれないし、金もないからどうしようもなくてね」

 

 壮大すぎるし、情報量が多い。亡国企業の目的やスコールさん達がいたメンバーの最期を考えると、言葉が出てこない

 すると銃を既に下ろした兄さんが口を開く

 

「なるほどな。アンタの情報が正しければ色々と納得する。戦争している所に突っ込んでは早くに終結させたかと思いきや、ISの強盗事件を引き起こすとか。何が目的か分からなかったが、二つに分かれていたとなれば色々と説明がつく。アンタらの情報が正しければな」

 

 以前亡国企業の目的が分からないって言っていたな。ここで嘘は言わないだろうし、この疑問は解決できただろう。兄さんがスコールさん達を信じれば

 ふう、とスコールさんは一息つく

 

「細かいことはお偉いさんに全て話すとして・・・ほかに何か聞きたいことはある?答えられる範囲なら全て答えるわ」

 

 その質問に真っ先に反応したのはフォルテ先輩だ

 

「あの、質問いいッスか?」

「ええ、ダリルのこと?」

「はい・・・ダリル先輩は亡国企業の一員なんッスか?」

 

 多分否定してほしい質問だろう。だけど、これまでの反応から察するに・・・

 

「ええ、そうよ」

 

 スコールさんの答えに静かに首を縦に振るダリル先輩。やはりそうだったのか

 

「ど、どうしてダリル先輩がそこに所属しているんッスか?」

「本人の意思と・・・私と血縁関係だからよ」

「す、スコールさんのッスか!?」

「ええ、私とレ・・・ダリルは叔母と姪の関係よ」

「え!?」

 

 叔母と姪の関係に女子たちが驚く。かく言う俺も驚いている。ダリル先輩が17か18だから・・・

 

「君たち、何を考えているのかしら?」

 

 やめよう。女性の年齢を考えるのは。束さんの時みたいに未遂で終わろう

 思わず場の空気がスコールさんに持ってかれたが、楯無さんが手を叩いて空気を引き締める

 

「で、どうしてダリル先輩は亡国企業に入り、IS学園にも入学することになったのかしら?」

「亡国企業に入ったのは、俺の意思だな。物心つく前に親が死んで、スコール叔母さんに引き取られて・・・11くらいの時にたまたま叔母さんの仕事を知ったんだ。叔母さんや、面識のあったオータムさんが裏で頑張っているのを知って・・・俺もその意志を継ぎたいって思ったからだな」

 

 さらっと言っているが、何気にこの人も壮絶人生歩んでいるな。誰かの人生に似ているような?誰だっけ?

 今度はスコールさんが楯無さんの質問に答える

 

「後者の理由としてIS学園にこの子を入れたのは、一種の保険ね」

「保険?」

「IS学園は世界中で一番ISのコアを有する場所。さっき言った『過激派』がIS学園に襲撃してコアを強奪する可能性があると踏んでいるのよ。だからもしもに備えて私たちの誰かが潜入しておこうって決めていたのよ」

「それで俺が立候補した。IS適性もあったし、生徒として詐称なく入学できたしな」

 

 そうなると、これまでも穏健派の人たちがIS学園に侵入していたのか?そう思っていると鈴も同じ疑問を持っていたようで、スコールさんに質問していた

 

「ってことはこれまでも穏健派の人たちはIS学園にいたんですか?」

「ええ。IS適性のある子は基本潜入していたわ。今はダリルしかいなかったけど、代表候補生になれるほどの力もあるし・・・なによりロシア代表やギリシャ代表候補の貴方たちもいたからね。心配はしてなかったわ」

「あら、私たちを信用していたなんてね」

「IS学園の侵入者が来たら撃退するでしょう?IS学園を守るという点では利害が一致しているはずよ」

 

 確かに。テロリストとはいえ、目的がIS学園の防衛なら敵対する必要もない。敵の敵は味方という感じか。楯無さんも腑に落ちてないが納得はしたようで引き下がる

 

「で、ほかに聞きたいことはある?」

「なら、自分が」

 

 兄さんが挙手をして二人に質問をする。何を質問するのだろうか?

 

「自分が聞きたいのは、アンタらが連れていたガキについてだ。織斑千冬に似ている、いや、瓜二つと言っていいほど過言じゃない」

「・・・」

「たまたまにしては似すぎやしないか?それとも本当に偶然似ているだけなのか?」

 

 保護したあの子は織斑千冬に似ていた。一応アイツと血がつながっているのは俺と双子のクズ以外いないはずだが・・・?

 

「君がそれを知ってどうするつもり?」

「自分は一夏に危害が及ぶのを防ぐだけだ。これで奴がクズどもと同じように一夏に危害を与えるなら、相応の対応をさせてもらうだけだがな」

「・・・」

「何でも答えるんじゃないのか?」

 

 まだ信用してないようで、圧をかけに行く兄さん。ただ、スコールさんたちは何か悩んでいるようで・・・ん?

 今俺の方を見たような?

 

「一夏君」

「はい!?」

 

 突然スコールさんが俺に語りかけてきた。予想外だったので返答が上ずってしまう

 

「あなたは自分の出生を知る覚悟はある?」

 

 ど、どういうことだ?

 

「おい、一夏は関係無いだろ。話逸らすんじゃねえよ!」

「関係あるのよ。あの子のことを語るには、切っても切り離せないのよ」

「何言って・・・」

「私たちは知っているのよ。あの子が織斑千冬に似ているわけを。そして、君の出生も」

 

 何が何だか分からない。なぜ見知らぬ少女と俺の出生が関係しているのか。そして、なぜスコールさんが俺の出生を知っているのか。しかし・・・気にならないというと嘘になる。

 もしかしたらわかるかもしれない。物心ついた時から奴らしか身内がいなかったことも。俺が迫害されていた理由(ワケ)も。納得のいくものを得られるかもしれない

 

「スコールさん、教えてください。あの子のことも・・・俺の出生も」

「一夏!?」

 

 兄さんは驚いて心配そうな目で俺の方を見る。だけど、俺の考えは変わらない。知る権利は俺にあるし、ここは相手が兄さんでも引くつもりはない。

 それを察したのか兄さんは分かった、と言って引き下がってくれた。それを見て、スコールさんが話し始める

 

「あの子、マドカは・・・織斑計画(プロジェクト・モザイカ)の実験体、究極の人類を作る実験体だったのよ」

 

 そして、とスコールさんは俺の方を見て、確かに俺を見据えて

 

「一夏君、君もね」

 

 はっきりと言いきった

 




 お久しぶりです。私情と言いますか・・・
 第一志望の大学院が書類で落とされ、モチベが無くなってました。院試はまだまだ続きますが、こっちも日常に支障がない程度に続けます
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