Inferior Stratos   作:ユキ (旧 rain time)

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 サイドストーリー、sideシャルロット


第50話 仏の地で

 

 連日30度を超えるような真夏の日本と異なり、夏とはいえ比較的過ごしやすいと言われる欧州。その中で観光地としても有名なパリ。シャルル・ド・ゴール国際空港に一人の少女が降り立つ

 

「まさか、またここに戻れるなんてね・・・」

 

 フランス代表候補生のシャルロットがポツリと漏らす。

 絶望と諦めの中でフランスを後にし、一週間もたたないうちに不安の中での帰国。心身ともに充実した中で、再び祖国の大地を踏みしめることができるとは数か月前の彼女には想像もつかなかった

 

「おーい、シャルロット~!」

 

 ロビーに着くとシャルロットは自身の名を呼ぶアルベールを見つけた

 

「来てくれたんだ、って仕事は?」

「シャルロットが帰ってくるから仕事は全て部下に丸投げした」

「権力の乱用ォ~!」

 

 自分の仕事を完全に放棄したであろう父にツッコミを入れるシャルロット。そんな言葉のキャッチボールをした後、二人はしみじみとした表情になる。こんな普通の親子の会話ができることにえもしれぬ感情が沸き立つ。

 

「・・・ただいま、お父さん」

「おかえり、シャルロット」

 

 はたから見ればただのあいさつ。しかし二人にとっては感慨深いものであった

 

 

 

 

 

 

「そうか、いろんなことが起こったのだな」

 

 デュノア社に向かう中でこれまでの出来事をひとしきり話し終えお父さんが感想を述べる。思えば本当にいろんなことがあった。

 僕たち家族の事、タッグマッチや臨海学校での暴走、そして雪広のトラウマと覚醒。3か月で3年分のイベントを体験した感覚だ

 

「映像で見たが、雪広君はまた強くなっているな。とんでもない成長だ」

「そうだね、形態変化で唯一2段階目になれるし。希少価値が高まったんじゃない?」

 

 とてつもなく高い、とお父さんが手放しに褒める。惚れた人が褒められるというのはなんか悪くないし、誇らしさがある

 

「だが、彼に勝てるのだろう?シャルロットは」

「そりゃあね。だって代表候補生だよ?」

 

 いくら強くなったとはいえ、数か月の操縦者に負け越すのは代表候補生としてあってはならない。それに手の内が分かる以上はある程度対策が立てられる。それに

 

「それに、僕はデュノア社の代表でもあるんだから。恥ずかしくないようにしないとね」

「シャルロット・・・」

「なに、泣きそう?」

「泣きそう」

 

 信号での停車中にお父さんは目頭を押さえる。こんな涙もろいのかと新たな一面が垣間見れてなんか楽しい。

 そんなこんなでデュノア社についた。車から降りて会社のエントランスに入る前に()()()()()のことを聞く

 

「で、()()の方はどうなのさ?」

 

 この言葉にお父さんの表情がピシッとなり、社長の風格を打漂わせるようになった。そしてニッと左口角を上げて不敵な笑みを浮かべる。ってことは・・・

 

「ああ、ほぼ完成だ。試作段階も完了している」

「じゃあ、間に合ったんだね。イグニッションプランに」

 

 ギリギリだったけどな、とお父さんが付け足す。次回のイグニッションプランに絶望的と言われていたのに試作機が完成するなんて、お父さんの凄さを再認識する

 

「そして今日呼んだのは他でもない。模擬戦をしてもらいたい」

「・・・なるほどぉ」

 

 思わず声が弾む。

 

「今回の試作機()()はシャルロットの形態変化を模倣して作ってきた」

「たち、ってことは複数で戦闘するってことだね」

「ああ、代表候補生3人との戦闘だ。シャルロットの模擬戦にも、彼女たちの実戦経験にも大いに役立つだろう」

 

 だが、とお父さんが一息つく

 

「お前が候補生たちに力を示してほしいと思っている」

「結構煽るじゃ~ん」

「だが負けるつもりはないだろう?」

「最初から負けるつもりで行くバカがいるとでも?」

 

 それはそうだ、とお父さんが頷く。そんな会話をしてると模擬戦会場の控室にたどり着く。

会場はIS学園ほど大きくなく入り口が一つのため、中で3人の代表候補生とあいさつを交わす。皆僕より一つ年下でかなり礼儀正しかった。

 出撃のため、3人がISを展開し出撃する。僕の機体をベースとしているため、僕のラファールと似た印象を抱く。違いは背中にあるバックパック。アレに・・・

 

「では、シャルロットさん、出撃してください」

 

 アナウンスと共にISを展開し、出撃する。少しばかりのウォームアップをして、先の3人と相対する位置にまで動く

 

「それでは、模擬戦始めてください」

 

 開始と共に、3人はバックパックを展開する。すると各パックから黒い物体が噴き出し、だんだんと形になっていく。

それぞれの黒いコピーが形成され、一瞬で1対6になる。これが僕の機体から考えられたデュノア社第三世代IS。僕の形態変化による単一能力を誰でも使える機体だ。

 とはいえ、欠点もある。搭乗者の力量がコピー体にももろに出ることだ。少なくとも今日の相手は僕よりもIS歴が短い

 

 たとえ多人数でも追い込まれるにはいかないなあ!!

 

 

 

 

 

 

 と思ってました。正直舐めてました。

 普通にコピー体同士の連携が予想以上で、デュノア社の技術がすごかったです。おかげでSEが3割まで削れてしまうわ、代表候補生の3人も勝てるんじゃないかと思わせてしまうわ

 

「なら、本家を見せるしかないねえ」

 

 これ以上SEが減るのはキツイが仕方ない。ハンドガンで頭を撃ちぬく。生の形態変化で3人が警戒心を増す。

 

「さて、背に腹は代えられないけど仕方ねえなあ!!」

 

 大鎌を取り出して、影のエネルギー体を作り出す。それも3体分。これまでの限界を超えた数に彼女たちは驚きを隠せないでいる。

 それを見逃さない。影を飛ばし各エネルギー体と1対1に持ち込む。これなら連携を取らない、取らせない。3人の連携自体は高くないから、1対3でもどうとでもなる

 

「さあ、反撃開始だ」

 

 瞬間加速(イグニッション・ブースト)で一番後ろにいる子を狙う。前に二人いるからと警戒心が薄かったようで、対応が遅れる。その大きな隙を見逃さない。

 下からの逆袈裟。後ろに吹き飛ばしたダメ押しに4,5個のグレネードで追撃を図る。あっという間にSEを削り切った

 

「残りは二人」

 

 構えを取る二人にあえて大鎌一本で突撃する。候補生たちは左右から攻撃をするも、連携がまだまだ甘く、隙が大きい。

 

「接近戦の大鎌はこう持つ!!」

 

 大鎌の根元を持ち、鎌と柄で二人の攻撃を受け止め、力で押し返す。同時に受け止められると思ってなかったようで体制が大きく崩れた

 そこに振り抜く大振りの一撃。遠心力を最大限入れたこの一撃で二人のSEを0にする

 

「模擬戦終了、お疲れさまでした」

 

 アナウンスで模擬戦が終了。3人にお疲れと声をかけて一足先に戻る。今の模擬戦で試作機たちの欠点も見つかったらしく、製作スタッフがあわただしく動いている。

3人の連携もまだ拙いが光るものがあるし、これからも負けるわけにはいかないな

 

 

 

 

 

 

 

 次期代表候補生との模擬戦から翌日の夜、デュノア社も参加するパーティーに参加することとなった。本来はお父さんだけの参加の予定だったが、参加しておいた方がいいと言われたので僕も参加することになった

 

「どうだ、シャルロット?ドレスは合うか?」

「もう少し~」

 

 お付きの人に背中のファスナーを閉めてもらい、カーテンを開けてお父さんに姿を見せる

 

「どう?似合ってる?」

「・・・ああ、クラリスにそっくりだ」

 

 目頭を押さえながらお父さんは言葉を漏らす。お母さんが着ていたドレスのようで、何か感慨深い

 

「ほーら、感動するのを抑えて、今から会場に連れてってよ」

「グズッ、ああ、今から案内する」

 

 

 で、今はパーティー会にいる。一通りマナーや仕草を頭に叩き入れておいたので、有名どこの人たちへの挨拶は問題なく済んだ。

 とはいえ、初めてのこういった出来事や慣れないあいさつ回りで少し疲れた。今は会場の外にあるベンチで少し休憩中。休憩中とはいえ人の目がある以上、完全なオフの姿は見せるわけにはいかない。グッと伸びをしてなんとなしに辺りを見回す

 

「うん?」

 

 何か端っこで変な動きが目に入った。気のせい、といつもなら思うのだけどここは重要な人たちが集まる会場。無視すると良くないと第六感が騒ぐ

 

「気のせいならそれでいいし、勘が当たったなら・・・」

 

 先ほどの人を見つけ、気配を消して後を追う。後を追っている二人はパーティー用のドレスで着飾ってはいるもののどこか不自然な上、化粧があまりにも厚い。下品そうな女がこの場にいることが不自然で、余計に怪しさが目立つ。

 警戒心を高め、ワイングラスが並ぶテーブルの近くで奴らをじっと見つめている。が、ただただその女たちは話をしているだけ。遠くにいるお父さんを見ているようだけど何もしないから、ただ化粧が濃いだけの人なのかと、僕の間違いなのだろうかと思い始めてきた。

そんな中で二人はドレスの中に手を突っ込み

 

 

 黒いモノを取り出した

 その黒いモノが拳銃だとすぐに分かった

 

 考えるより早くにISを手だけ一部展開し、上にあったワイングラスやワインボトルを床にすべて落とすことは申し訳ないと思いつつ、ワイングラスがあるテーブルを掴み奴らに投げ飛ばす。

 

「死ねぇ!アルベール・デュぐえっ!!」

「!?」

 

 引き金を引く前に片割れの方にテーブルが直撃する。もう片割れが驚き後ろを向く前に僕は奴に向かってスタートを切る。最速で無力化を図る。が、

 

「このアマ!!」

 

 僕が犯人と悟ったのか僕に向けて拳銃を向ける。後ろに人が居るから躱すわけにはいかない。

 

 引き金が引かれる。

たまたまではあるだろうが、奴のはなった弾丸が僕の頭に吸い込まれる

 

「ガ゙ッ!」

 

 昔を思い出すような頭への衝撃。しかしISを展開した今、拳銃程度ではどうということはない

奴の拳銃を強引に奪い去り、流れるように組み伏せる

 

「この、放せ!私を誰だと思ってる!女性権利団体の一員だぞ!!」

「なら、もっと無力化しないとな!!」

 

 組み伏せた状態から力をかけ、右肩を脱臼させる。骨を折ることも考えたが、流石にやりすぎと思いとどまったための妥協案だ

 

「シャルロット!大丈夫か!?」

「僕は平気だよ。それより警備員!」

 

 女の悲鳴がこだまするが手は緩めない。警備員が来るまで押さえつけていた。警備員達が駆け付け、机の下敷きになって伸びている女共々、テロ未遂犯達が引き連れられるのを眺めていた

 

「・・・」

「どうした、シャルロット?」

「いや、なんでも」

 

 なんとなく嫌な予感がしたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 いろいろあったが、日本に出国する前日となった。そんな中で僕とお父さんはゆかりのある地方に来ていた。僕の後ろを歩くお父さんはコスモスの植木鉢を抱えている

 

「お母さん、コスモス好きだったもんね」

「ああ」

 

 今、お母さんの墓参りに来ている。本来墓参りは11月1日が通例だけど、こうして二人で来れる機会は無かったからこうして来ている。花も菊が主流だが、お母さんはコスモスが好きだったし好きなものを送ることにした

 

「お父さんもお母さんの場所分かるんだね」

「ああ、毎年数回来ていたからな・・・。去年までは懺悔に近かったが」

 

 もう大丈夫だよ、と声をかける。申し訳なさそうな表情だったが、僕の言葉で表情が柔らかくなった。思えばそうか、僕への申し訳なさでいっぱいだったからね

 僕も僕で当時は余裕がなかったけど

 

「お母さん、ただいま」

「クラリス、今年は早めに来た」

 

 お母さんの墓石の前に着き、言葉をかける。こうして二人でお母さんの墓石にいるなんて二人とも想像できなかっただろう。墓石周りは直近でお父さんが掃除をしているため綺麗だった。少し生えている雑草を引き抜き、周りをきれいにした後にコスモスの鉢を墓石の前に置く

 

 そして、合掌

 

(お母さん、僕は元気になったよ。お父さんとも仲良くなったし、今幸せです。だから、これからも見守っててね)

 

 多くのことがあったが、思いつく言葉が少なかった。ただ、今言葉が出てこなくても次があると考えるととても気が楽だ。だからこそ少ない言葉でお母さんに思いを伝える。

 合掌を解きお父さんの方に振り向くと、お父さんも同じタイミングで僕に向いた

 

「もう大丈夫か?」

「うん・・・お父さんはお母さんに何言ったの?」

「これからも見守っててくれ、とな」

「僕も同じこと思った」

 

 ふふっ、と僕らは笑みがこぼれる。なんだかんだ親子だなぁと再認識した

 

「それじゃ、帰るか」

「・・・うん」

 

 またね、お母さん

 頑張ってくるから

 

 




 GW中に書けて良かったです
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