Inferior Stratos   作:ユキ (旧 rain time)

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 お久しぶりです。10月なのに暑いですね〜
 


第56話 そこは掌の上だった

 

 学園祭で専用機持ちの演劇が始まる頃、学園祭の人混みからやや離れた校舎裏。本来は生徒の溜まり場なところに一人の女が紛れ込んでいた。その女はやたらと周りを確認し、人がいないことを確認する。

 それは不審者ですと言っているようなものよ

 

「あらあら、ここは一般客立ち入り禁止よ」

「!?」

 

 そんなに驚いちゃって。でも側から見れば、空間を切り取ったかのように現れたから驚くのも無理ないわね。気配を消して木の影に隠れていただけなんだけど。

 素早くポケットからハンカチを取り出す

 

「そんな貴方には、漫画でよくある状況をプレゼント♩」

「グッ・・・」

 

 更識家独自の催眠薬付きハンカチで女の口を塞ぐ。この催眠薬は相手を眠らせるのが目的ではない。意識を朦朧とさせて判断力を鈍らせる、自白用・諜報用の薬だ。

 目的はただ一つ。今回のテロの目的の再確認。更識の諜報員から全貌は聞いてはいるが、改めて情報の確認と人数の確認を行う

 

(演劇(あっち)の方に私がいると見せかけるよう、ダミーの音声が動いていればいいのだけど)

 

 そんな不安を装いつつ、目の前のテロの一員の目が明後日の方向に向くのを確認する。人気がないことを理由にその場で誘導尋問を開始するわ

 

「さて、貴方の所属は?」

「あ・・・女性・・権利団体、日本支部」

 

 虚になった目で答える女。自白剤は効いているようね。ここから核心をついていくわ

 

「さて、今回の作戦は?」

「・・・IS学園に潜入、門で自爆テロ、後に男性IS操縦者の殺害・・・」

 

 たどたどしくも最悪な発言が飛び出る。けれどこれらは全て想定内。更識の諜報員から仕入れた情報と同じだ。下っ端らしいからこれ以上の情報は出ないだろう。

 

「今回の作戦は?全部吐きなさい」

「イギリスと、ドイツの奴がIS学園を襲撃・・・」

 

 どれも既知の情報で問題なく進んでいる。そう思っていた。

 

 だが

 

「・・・しかし()()()()()()

「・・・は!?」

 

 今までのことが本命ではなかったことに思わず声が出てしまった。更識の諜報員からそんな情報は貰ってないのに!

 けれども次の言葉で私は度肝を抜かれることとなる

 

「専用機の使いも、伝えていない、囮作戦。本命は、我が神の・・・織斑千冬の侵攻」

「な、なんですって!!?」

 

 学園から居なくなっていたが、更識の情報網に触れていなかったことから問題ないと思っていた。それが既に裏切り、そして攻めてくるなんて!

 いや、それよりも何故諜報員から情報が出なかった!?他の家はともかく、更識家は代々暗躍している。よほどのことがない限り更識家に入ってこない情報は無い。()()()()()()()()()()()・・・

 

 その時、私の携帯が振動する。学園関係の人は対応する着メロが流れる。振動のみってことは学園の生徒では無い。

 

 つまりは更識家からということ

 

 嫌な予感とともに電話番号を確認する。間違えようも無い。お父様からだ。自白剤を打ったとはいえ逃げられるのを防ぐために、視界に入れながら急いで電話に出る

 

「お父様!」

「楯無、重大な問題が起きた

 

 権利団体に送った諜報員は入れ替わっていた」

 

 考えうる最悪に、一瞬思考が停止する。お父様も焦って早口になっているとは言え、淡々と今の状況を話す

 

「どうやら女性権利団体に殺された後、顔を剥ぎ取って入れ替わっていた。先ほど本人たちの首・・・体が送られてきた」

「!そんな!?」

 

 諜報員はバレたら殺される。でも顔を剥いで入れ替わるのは正気の沙汰じゃない。それほどまでに奴らは醜く残虐ということか。

 だが、今お父様と繋がっているならばするべきことがある

 

「お父様!至急応援を!場所はIS学園!」

 

 状況を説明するには時間がない。こちらは要件だけ即座に伝える。お父様もそれを察し、分かったとだけ返して電話が途切れる。

 目の前の女の胸ぐらを掴み、怒気を大いに含ませて脅す

 

「他に知っていることは!?吐け!!」

「もう・・・ない・・・ああ、我が神よ・・・」

 

 まだブツブツと口が動くが、コイツは用済みよ。手刀で気絶させた後、()()()を入れる。即座にプライベートチャネルで情報を拡散させようと展開したその時、

 

 緊急のプライベートからの連絡が。連絡先は、スコール先生から

 

「やられた!掌の上だったなんて!!」

 

 ISを展開し、現場の正門前へと急いだ

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「どうした?そんなものか?」

 

 息が上がるセシリアに対し、余裕が滲み出るマドカ。狭い機材室を抜け出し廊下での戦闘になったが、機体の性能差、操縦者の力量、そして初撃でセシリアの身体に傷をつけたことでマドカが圧倒していた

 

「くぅっ、なんて強さなんですの・・・!」

「むしろ貴様が弱すぎるだけだ」

 

 セシリアも亡国企業で技術を学んだが、年季が違う。射撃技術から近接戦、そして実戦経験はどれもマドカが勝っていた

 

「やたらと男を、兄さんたちを貶していたが弱すぎてがっかりだ」

「くっ・・・!」

 

 セシリアの顔は怒りに染まる。だがその感情で動けば無力化されてしまうのが目に見えるため、残った理性で感情を押し留める。

 なんとかしてこの状況を打破する方法を模索していたセシリアだが、彼女のプライベートチャネルから連絡が入る

 

「!」

 

 僅かに変わった表情を察知したマドカは再度臨戦体制に入る。実戦では状況一つで戦況がひっくり返ることもある。外部の要因で実力差がひっくり返ることだってある。

 このセシリアの反応は一体何なのか

 

「なるほど、そういうことですか」

 

 先ほどとうって変わり、セシリアから余裕が垣間見える。何か逆転の手ができたのか、自分が負ける可能性を探しながらマドカは入念に敵の一挙手一投足を凝視する。どこから攻撃が飛んでくるか、どの部位がこちらに向かってくるか。

 この考えによって遅れをとることとなる。

 

「優等人種は優雅に去りますわ!」

 

 なんとセシリアはマドカから逃げ出した。この行動にマドカは一瞬動きが止まる。これまで逃げる選択肢を微塵も出さなかったのに、敵は逃げの手に出た。

 

(追いかける?それともブラフで誘導されてる?)

 

 さっきの反応から、誘導されているのかもしれない。でも見失うのは今後に響く恐れもある。

 瞬時に判断した結果、マドカは追いかけることを選択する。周囲に警戒を張りながら考えを巡らせる

 

(方向的には正門。本当に逃げる?わざわざ正門通って?それとも人質を取る?)

 

 考えうる分岐線を模索する中、ある考えが頭をよぎる

 

(・・・増援か?けど、作戦前の話ではそれはないはず。なのにこの胸騒ぎは一体?)

 

 その答え合わせは2つのプライベートチャネルで無情にもわかってしまった。一つはスコールから専用機持ち全体への緊急のもの。そしてもう一つは、亡国企業の緊急用のもの。スコールやオータムが万が一の時に設定したチャネルで、これまで()()()使()()()()()()()チャネル。

 今緊急事態が二人に起こっていることが嫌でもわかる通知だった

 

「スコール!オータム!」

 

(逃げた敵なんかどうでもいい!はやく正門に向かわないと!!)

 

 余裕が消えたマドカが逃げるセシリアを追っていった

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、俺たちのコンビネーションに耐えるとはね。流石元ドイツ軍人なだけはあるじゃねえか」

「やめてくださいっス先輩。挑発しちゃ」

「何を言う、羽虫風情がよく耐えてる方ではないか」

 

 ところ変わってダリル・フォルテとラウラ。こちらは互角の戦いを繰り広げていた

 

(とはいえ、このチビッ子を生け取りにするのキツいっスね)

(まあな。それに他への被害を出さないよう誘導するのもめんどくせぇ)

 

 実際の実力はダリル・フォルテコンビの方が上ではある。フォルテは普通のIS学園生ではあるが、ダリルは亡国企業に属していたIS乗り。単騎の実力でもラウラ以上のものがある。

 しかし、今回の二人の目的は「学園の防衛」並びに「情報の引き出し」だ。その為にも敵を生かしての無力化が求められる。それ対して、ラウラは全力で二人を殺しにかかっている。達成目標の差が今の戦闘を互角にさせていた

 

「・・・ん?」

 

 ここでラウラの意識が僅かに逸れる。それを見逃さまいとダリルが飛び出して仕留めにかかるも、ラウラはバックステップで一定の距離を保つ。その顔に僅かだが口角が、勝利の笑みが張り付いた

 

「ダリル先輩!加勢するっス!」

「駄目だ!戻れ!」

 

 その僅かの表情を察知したダリルが警告と共に距離をとる。亡国企業に属していた時を含め、あのような表情をしてきた敵たちは勝利を確信したとき。わざと劣勢を装った時によく見たものだが、ダリルの前にいるのは元ドイツ軍人。彼女にとって格下だが三下ではない。

 何かが来る、そう確信したダリルが最大限の警戒をもたらす。ラウラはそれを一瞥して

 

「ここに用はなくなった」

 

 横の壁に突撃するようにして戦線を離脱した。なんの前触れもない逃走と、何の躊躇もなく校舎を破壊する行動に二人は一瞬気を取られてしまう。しかし、いち早く気を戻したダリルが反応した

 

「フォルテ、追うぞ!!」

「わ、わかったっス!」

 

 壊された壁穴に追うようにして飛び込む二人。いち早く逃走者を見つけ、その方向を確認しながら追いかける。向かっているのは、正門。この方向へと向かっていることに二人は嫌な予感を感じる。

 それと同時だった。ダリルのプライベートチャネルの通知と、遅れて二人に届いたプライベートチャネルの通知。一目したフォルテが悲痛な声を上げる

 

「先輩!これって!」

「ああ、思った以上に最悪だな」

 

 軽く返した言葉と裏腹に、ダリルの額から汗がつたっていった

 

 

 

 

 

 そして、正門前

 

「あら、招かれざる客ね」

「今更何のようだぁ?」

 

「ブリュンヒルデが戻って何が悪い」

 

 手下を引き連れた織斑千冬とオータム・スコールが対峙していた




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