「一夏vs織斑」、「雪広vs織斑」です
ちょっと長いですが、どうぞよろしくお願いします
p.s. 誤字報告ありがとうございます。作者はゴリゴリの理系なので国語が苦手です。ご了承ください
「よお、出来損ない。俺様を待たせるとはずいぶん偉くなったなあ」
俺がピットから出ると憎きクズ、織斑一春がいた。昔を思い出す。こいつにいじめられていたこと、天才だったことで俺の居場所を失くしていったこと。思い出したらキリがない。嫌なことしかなかった。・・・いや、束さんや弾、アイツとの生活は楽しかったな。
「何も言えないか。そうに決まってるよなあ。何せ俺様は天才なのだから」
・・・確かに俺に才能はなかった。それは覆せない事実だ。
だが、その差を埋めるために努力はしてきた。幸い、中学校ではいい仲間と切磋琢磨してきた。もちろん兄さんとも、共に努力した。
「凡人は俺様の踏み台になれ、それしかお前は生きている価値はないんだよ」
「うるせえなあ、クズが、お前の弟ではないと何度も言っているだろう。バカか?」
「なっ!?」
感傷に浸っていたがあまりにもウザかったので俺も言い返す。さっきから自身を天才と言っていたが、本物の天才はそんなことを言わない。
兄さんのいた中学に何度か入ったことがあるが、あそこには天才と言えるような人がたくさんいた。だが、誰もがそれに見合う、いや、見合わないほどの努力を重ねていた。そして、みんなが口をそろえてこう言っていた。『まだ上がいる』と。束さんも天才だったが、宇宙に行く夢をつかむため、努力を積み重ねていった。あの
そんなクズに負けられない、負けたくない!!
「それに今、集中しているのに気づかないのか?そうか、天才様は自己中で人をけなすしか能がないんでしたね。失敬失敬」
「この、俺様を馬鹿にしやがって!あの時みたいに逆らえないようにしてやる!!」
だから、もうお前の弟じゃねえっての。ホント、融通が利かないというか、自己中だから・・・これだから天才様は困る。
そうこうしている間に試合開始のブザーが鳴る
「死ねええええ!」
いきなりの特攻。確かに初撃を入れる一つの手ではある。が、相手のことを知らずに突っ込むとは・・・天才とは程遠いな。
直線的に突っ込むので最小限に体をそらして剣を呼び出し、そのまま剣道の返し技のようにカウンターを叩き込む
「グギャッ!て、てめえ!よくも!」
見事に顔にクリーンヒットし変な声を上げる。初撃をかわされた上にきれいにカウンターを食らったのが癪らしく、激昂して攻撃してくる。だが、クズは馬鹿正直に剣道の型で攻撃しているうえに、怒りによって動きが単調になっている。でも、それをふまえて俺は思った。
『弱い』と。
俺は小学生の頃こんな奴に負けていたのか・・・あまつさえ、コイツを追い越そうという目標にしていたのか・・・
このクズを目標にしていたのを思い出し、俺は情けなくなる。
「おいおい、攻撃してこないじゃないか。俺様のラッシュに手も足も出ないってかあ!」
自責の念に浸っていたので、攻撃するのを忘れていた。クズは何やら誤解して都合のいい解釈をしているが、これ以上付け上がらないように、こちらから攻めてやろうじゃねえか。
まずは、ヤツの上段からの振り下ろしを躱して右から切り上げる
「グエッ!!」
そこから流れを止めずに『袈裟切り』。一回転して右から水平に切る『右薙ぎ』。そして、タックルをしてクズを吹き飛ばした後に『突き』をお見舞いした後に『唐竹割り』で脳天にたたきつける。クズはそのまま地面に激突する。が、まだ終わってないようだ。しぶとさは一人前のようだ。
「クソがああ!!!殺してやる!!」
と、雪片弐型が光りだす。あれが白式の単一能力の・・・
「この零落白夜で!千冬姉の使っていた剣で!!お前を潰してやるよ!!」
零落白夜。かつて織斑千冬が使っていた単一能力で、自身のSEを消費することでエネルギーシールドを無効化し、相手のSEに直接ダメージを与えるもの。下手をすると一撃受けただけでSEをごっそり削られる。場合によっては相手を殺すことだってできる。
はっきり言ってこのクズに最も渡しちゃいけないものじゃねえか。倉持技研の連中は何を考えているんだか。ま、その情報は知っているし、対策は十分に立てたし。
「くたばれえええ!!!」
再度突撃。突撃しか能がないのか。それで勝てるだなんて脳みそお花畑だろう。
俺はそのままの剣でクズの上段からの切りを
「な!?なんでだ!?千冬姉から受け継いだ最強の攻撃のはずなのに!!」
当たり前だ。零落白夜はエネルギーシールドを無効化する
「出来損ないのくせに!俺様の最強の攻撃を受け止めやがって!!」
もういいや、こんな奴にこれ以上時間をかけても仕方がない。俺は受け止めていたクズの剣をはじき、剣道の小手のようにクズの手を切りつける。切られた痛みでクズは雪片弐型を落とす。これでヤツの武器はもう無い。
「ま、待て!俺はもう武器がない!」
そんな命乞い、知るか。だったら落とさないようにしろ。それか殴る、蹴るの肉弾戦でもできるようにすればいいだろう。まあ、こいつは弱い者いじめで殴る蹴るはしていたが、殴り合いはしたことがないだろう。どうせ、一方的なことしかやらないくせに、いざ殴られると文句を言うやつだ。
俺はとどめを刺しに剣を振りかぶる
「は、話し合おうじゃないか!俺たち兄弟だろう!?」
「何言っている、俺の兄さんは雪兄さん、ただ一人だ」
今更このクズと和解するつもりもないし、どうせその場しのぎの嘘だろう。俺は聞く耳持たずに袈裟切りを決める。
『試合終了。勝者、遠藤一夏』
勝利アナウンスが流れ、歓声が沸く。結局俺は剣一本で勝つことができた。
ただ、あまりにも一春が弱すぎて勝った気がしないな・・・兄さんは褒めてくれるかな?
なんて心配していた時期が俺にもありました
「お゛め゛で゛と゛う゛う゛う゛!!!」
ピットに戻って早々、兄さんはめっちゃ泣きながら俺が勝ったことを祝福してくれた。てっきり俺がやったのと同じように「やったな!」と言ってハイタッチするかなと思っていたが、あまりのことでびっくりした。
横にいる楯無さんはげんなりしている。
「一夏君聞いてよ。君が勝ったら『勝った!一夏が勝った!!』って私の肩を揺さぶるのよ」
「だっで・・・グズッ、一夏が勝ったのを見るとうれじぐで・・・グズッ」
こんなに喜んでくれると俺も嬉しくなる。改めて勝った実感が沸き起こる。
ああ、俺は勝てたんだ。今までの努力が報われたんだな・・・
「おめでどう、おめでどう!!」
「ほら、兄さん、泣き止んで。まだ終わってないだろう」
さすがにもう泣き止んでほしい。一応楯無さんのいる手前しっかりしないと。でも、たぶん俺は勝った余韻でにやけているだろうな。
「・・・うらやましい」
「?何か言いました?楯無さん」
「う、ううん。何でもないわ」
なにか小声で言ってた気がしたが・・・まあ、詳しく聞くのは止そう。
ほら、兄さん。泣き止んで。次も俺が出るんだから
「いやー、泣いた泣いた。1年分は泣いたかな?」
「ホントだよ、マジ泣きすると思わなかった」
一夏の勝利に感極まって泣いてしまったが、もう大丈夫だ。自分も戦闘モードに入る
本来、次の試合は一夏と
「にしても一夏だったらあのクズを気絶させることくらいできたんじゃないか?」
「確かにできたけど、兄さんもクズをボコりたいかなーって」
確かに、オルコットをボコすのが目的だったが、アイツもなんだかんだむかつくからな。一夏のことを馬鹿にしやがって
なんかイライラしてきたぞ
「よーし、この怒りをぶつけるか」
「ほどほどにしなさいよ」
楯無さんから注意が入る。ま、形態変化して暴走するなってことだろうな。その点は大丈夫。さっきの試合を見る限り、形態変化するまでもない
そろそろ試合開始の時間のようだ
「じゃ、いってくる」
「兄さん、大丈夫だろうけど頑張って」
「ほどほどにしなさいね」
これ、戦闘前の掛け声じゃないな。まあ、負けないようにするだけだ
ピットから出ると一夏にボコされた白の機体がいた
「やっと来たか。全く、俺様を待たせるとは、分かってないねえ」
「勝手に待っていたのはお前だろう。文句言っている暇あったら自分の対策でも練ってろよ」
「フン!天才である俺様はそんなことしなくても勝つんだよ!!」
呆れた。さっき一夏に惨敗したのはどこのどいつだか。こんな奴が天才って言ってたやつら馬鹿なんじゃないか?裸の王だろう、どうみても。
「さっき一夏に惨敗したのによく自身満々だねえ?」
「うるせえ!さっきのはたまたま負けただけだ!」
でた、『たまたま負けた』という言葉。たまたま判断を間違えた、たまたまミスした、でそのままにするやつはマジで成長しない。敗戦こそ何がいけなかったかを調べるいい機会なのに、それを無駄にするようじゃ救いはないな。
試合開始のブザーが鳴る。
「今度こそ俺が最強だと示してやる!くたばれえええ!!!」
何の変哲もない特攻。直線的だし、その割には遅い。一夏がやったのと同じようにカウンターで右ストレートを放つ
「ぷぎゃ!!ってめえ!」
「ただ突っ込むだなんて、お前は馬なの?鹿なの?・・・ああ、両方か」
「!ふざけんじゃねええええ!!!」
どうやら自分の言いたいことはわかったようだ。顔真っ赤にしている。煽り耐性なさすぎるだろう。どれだけ温室育ちなんだ、このクズは。
その後も突っ込んでは斬るをただ繰り返すので、こっちもそれに合わせてカウンターをする。どれもこちらが驚くほどきれいに決まる。これでよく自身が天才で最強だと思っていられるのか、不思議でならない。
「くそがあ!零落白夜!!これでお前は負けだあああ!!」
いや、切り札的に言っても意味ねえよ。もうバレてるし。切り札を叫んで勝つのは漫画や二次小説の主人公だけだ。お前が主人公であってはならない。
ただ、こっちも確認したいことがあったので好都合だ。
「くらえええ!」
何度も見てきた特攻からの振り下ろし。本来ならさっきと同じように顔面にカウンターを叩き込むがあえてせず、ヤツの振り下ろした剣に2本の指でつまむように触れる。
「!」
すぐに手を放し、距離をとる。1秒も触れていなかったがSEが2%近く減っていた。
自分が疑問に思ったのは、『零落白夜は刀身に触れることも危険なのか』というものだ。触れたもののエネルギーシールドを無効にすることは分かっていたが、どれほどのダメージを負うのかまでは分からなかった。行動した結果、予想以上のダメージが入り、生身が刀身に触れること自体が危険だった。真剣白羽取りをしようものなら相当のダメージになっていただろう。危なかった。
とにかく、これでヤツは用済みだ
「遠くまで逃げるとはな、俺様の最強の剣におじけづいたかあ?」
・・・見下すことを生きがいにしているのか?コイツは。格下に煽られても痛くもかゆくもない。ま、そこまで言うならこちらから行きますか。
「そうだよなあ!なんたって俺様は天さ、ゴブッ!!」
油断してしゃべっている間に瞬間加速してみぞおちに一発。そのまま頭をつかみ、膝蹴りを顔面に叩き込む。大きくのけぞったところに回し蹴りを決める。ヤツは吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「この、卑怯だぞ!しゃべっている間に攻撃してくるなんて!」
「何言っているんだ。戦闘中に無駄口叩いてるほうが悪い。それすらもわからないのか?」
「うるせえええ!俺様が正しいんだああ!零落白夜ァ!!」
激昂して再度零落白夜を使ってこちらに来る。ていうか、零落白夜を連発していいのかよ。自分はヤツの攻撃をただ避け続ける
「ひゃははは!ほらほら、俺様を攻撃してみろよ!!」
そろそろか。そう思うと同時に零落白夜が切れる
「なっ!?」
「お前、零落白夜の弱点を知らずに使っていたのかよ」
零落白夜の弱点は『自身のSEを消費し続ける』ことだ。つまり、零落白夜を使い続けていてくれれば、こちらから攻撃しなくても勝つことができるのだ。自身の機体の特性すらも知ろうとせずによくここにいられるな。過信とか愚者ってレベルじゃないぞ、これ。
ま、これでヤツの剣も脅威ではなくなった。ヤツのいつも通りの切り下ろしに対し、自分は片手で剣をつかむ。SEは削られるがまだまだ余裕だ。そこから蹴りをいれ、ひるんだ隙に剣を奪い取る
「か、返せ!俺様の最強の剣を!!」
誰が返すかよ。そもそも最強じゃないし、その零落白夜が切れた今、それはただの剣のはずだが?
自分はそのまま離れたところに剣を投げ捨てる
「そういやお前さ、俺の弟を馬鹿にしていたよな?兄として黙っちゃいられないんだけど」
「あ、アイツは出来損ないだ!生きてること自体が罪なんだ!俺様がたd」
言い終わる前に顔面を殴り飛ばす。やっぱこいつも社会のゴミだ。もう慈悲なく潰してやる
左手で頭をつかみ顔面を殴り、蹴りを何度も入れる。手を離した後はボクシングのインファイトみたく、顔面、体にラッシュを入れ、アッパーをかます。最後に縦に一回転して、ヤツの頭にかかと落としを決める。そのままヤツは地面に激突しSEが尽きる。そのまま意識を失ったようで白目をむいている。
『試合終了。勝者、遠藤雪広』
あまりにも弱すぎた。これじゃあ手ごたえがなさすぎる。歓声が上がるが、自分自身がなんか盛り上がらない。これでよく天才だと思える精神を知りたい。
何とも言えない思いの中、自分はピットに戻った
そういえば、自分何も武器呼び出してないじゃん
雪兄さんの試合が終わる少し前、
「貴様の機体を寄越せ」
俺たちがいるピット内に織斑千冬と篠ノ之箒が来やがった。そして、開口一番に俺の専用機を差し出せと言ってきた。ちょっと何言ってるかわからない。
「何言ってるのですか。言っている意味が分かりません」
「貴様に拒否権はない。貴様の機体は明らかに第三世代の性能を超えている。ゆえにこちらで検査を行う」
どこをどう見たら第三世代の性能を超えているってわかるんだよ。要するにただのいちゃもんに過ぎない。・・・そうか、
正当な理由を並べておくか
「この機体は学園の検査を経て使用許可をもらっています。仮に検査をする場合は企業から許可をとる必要があると思いますが」
「私が法だ。そんなものは関係ない。それに、機体性能を超えているという証言者もいるからな」
「誰です?」
「私だ」
篠ノ之箒ことクソモップが名乗り出てきた。
馬鹿じゃないのか?お前みたいなど素人が機体のスペックを見ただけでわかるはずがない。それにその意見をあたかも正しいとする織斑千冬もふざけている。
「お前の機体は明らかに強すぎる!天才である一春が出来損ないに負けるはずがない!!」
モップはクズの狂信者で、クズに惚れているんだった。俺は小さいころ、一春とともにコイツにも暴力を振るわれていた。特にモップは竹刀で俺のことを殴っていたから余計たちが悪かった。
束さんの妹とは似ても似つかない。どうして姉妹でこんなにも差が出たのだろうか?
と、考えていると楯無さんが助け舟を出してくれた
「織斑先生、それはあまりにも横暴です。しかも一生徒の意見だけで機体の没収は聞いたことがありませんよ」
「うるさい!私は篠ノ之束の妹だぞ!!一生徒ではない!!」
そう。モップは普段束さんのことを嫌うくせに、自分の都合が悪くなると篠ノ之束の妹と言って自分の都合がいいように物事を持っていきやがっていた。まだ、そんな言い訳をいうとはな。中身は全然成長してないようだ。
「そういうことだ、つべこべ言わずに寄越せ!」
横暴すぎる。こいつらに正論言って通じる奴らじゃなかった。どうするか悩んでいると
「それは聞き捨てなりませんね、織斑先生」
「誰だ!」
否定されたことに激昂するクズ教師。俺たちもその声のほうを向くとそこには一人の老紳士がいた。というか、その人を俺は知っている
「り、理事長!?こ、これは・・・」
そう、俺と雪兄さんが挨拶しに行った時の本当の学園長の轡木十蔵さんがいた。これはナイスタイミングすぎる
「織斑先生、IS学園が干渉されないのは事実ですが、いったいいつからあなたのルールが適用されるようになったのですか。一夏君の機体はこちらで使用許可を出しています。それをあなたの独断で没収するのはあまりにも見当違いではありませんか?」
「グッ・・・」
クズ教師も理事長には逆らえないようだ。だが・・・
「何を言っている!こいつは明らかに反則の機体を使っている!!」
モップはそれでも理事長に噛みつく
「君の意見は一意見だ。一意見だけでISを没収することはしない」
「黙れ!私は篠ノ之束の妹だぞ!!」
「だからなんです?確かに君のお姉さんは有名人だがそれだけでしょう?」
「!?」
「それに、君はお姉さんと関係ないと言っていたのでは?だったら今の発言も関係ないでしょう?」
噛みついてきたモップにも正論で黙らせた。今まで篠ノ之束の妹と言って周囲を味方にしていたが、それが利かないことに動揺を隠せないようだ
『試合終了。勝者、遠藤雪広』
と、試合終了のアナウンスが流れる。兄さんが順当に勝ったようだが、奴らは驚いて兄さんのいるアリーナの画面を見る。そこには白目を剥いて気絶しているクズがいた。
「ほら、織斑が心配でしょう?早く慰めの言葉をかけに行ったらどうです?」
「・・・チッ」
俺の皮肉にしたうちで返すクズ教師と睨みつけているモップ。いやー、兄さん、いいタイミングですばらしい勝利だよ。しかもクズを気絶させるあたり完璧だ。
覚えていろよ、と捨て台詞とともにピットから去るクズたち。今まで見下されていたこともあり、この状況はとても気持ちいいものだ。
「すみません、わざわざ呼び出して」
「いえいえ、生徒を守るためならお安い御用ですよ、更識君」
楯無さんが呼んでくれたのか。この人たちを味方につけてよかった。二人がいなければ、今頃ヤツの意見が通ってしまうところだった
兄さんがピットに戻ってくる
「お疲れ、兄さん」
「お疲れさま」
「お疲れ様です」
「ありがとう。一夏、楯無さん、と・・・理事長!?どうしてこちらに?」
戻ってきたら理事長がいることに驚く雪兄さん。俺はこれまでの経緯を話す
「そういうことか。楯無さん、理事長、ありがとうございます」
「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」
「そうよ、おねーさんに頼りなさい」
「・・・なら一つお願いをしてもよろしいですか?」
「?兄さんは何を頼むんだ?」
「いや、これから自分と一夏が戦うのに同じピットから出るのは変でしょ。だからどちらかが向こうのピットに行くときに
確かに、これから戦うのに同じピットから出てくるのはおかしいな。でも向こうのピットはクズたちが使っていたから、一人で行くと確実に面倒なことが起きる。その対策として楯無さんか理事長を同伴させるわけだな。クズが気絶したから保健室にその取り巻きたちが付いているため、向こうのピットは無人だが、念には念を入れるってわけだな。
話し合いってほどでもないが、話し合った結果、雪兄さんと理事長が向こうのピットに行くことになった。
「じゃあ、またあとで」
そう言って兄さんと理事長は向こうのピットに行く。
最終試合まであと20分。俺は機体の最終調整をする。フェアにするため、楯無さんの助言はしないようにしてほしいと伝えているため、楯無さんは何も言ってこない。
先ほどとは比べ物にならない戦いとなる。大まかなデータは分かっているが、それを踏まえても勝てるかわからない。
でも、それでも俺は兄さんに、公式戦で勝ちたい。
「負けないぞ、兄さん」
そう呟いて俺は最終戦に向け、ピットから出る。
次回、クラス代表決定戦、決着
一話の長さを一定にするのは難しいです
一夏の機体説明 簡易版
・月詠(ツクヨミ)
表向きは日本に突如現れたラビットファクトリーが製作した一夏専用IS。実際は束お手製のIS。本来なら第四世代以上のものにする予定だったが、一夏の要望を聞き入れ、初期では特殊能力のない第三世代モデルに落ち着いた。装備格納数は10とこちらも多め。初期装備として剣、大剣が付いており、残りは自由に組み替えることができる。特殊武装がないため、その分をエネルギー効率と機動力に与えているため、第二・五世代が正しい表現かもしれない。今のところは。
一夏も格闘スタイルで戦うことがあるため、それを考慮してスクーロ・ソーレと同じく末端部分のエネルギーシールドが厚い。ただし、スクーロ・ソーレよりも装甲は厚くなっている。