白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

10 / 26
戦闘描写難しすぎ問題
次の話少し遅くなるかもしれません、ご了承ください


襲来、テロリスト

 グレンが覚醒してからしばらく経ったある日。その日は魔術学会が帝都で行われることにより教授が全員出張する関係で、学院は休校日だった。し

 かし、前任であるヒューイが長い間不在だったため、授業が大幅に遅れていたシスティーナ達のクラスは、いつも通りグレンによって授業が行われる予定だ。

 予定なのだが───

 

「………遅い!」

 

 システィーナが痺れを切らしたように唸る。授業開始時間から二十分以上経過しても、グレンは教室に入ってこない。つまるところ、グレンは大遅刻をかましていた。

 

「………ちっ」

 

 システィーナが苛立っているその頃、ソティルも苛立ち交じりに舌打ちをした。その様子を見たテトラも困ったように肩をすくめる。

 

「最近いい授業するようになったなーって思ったらこれだからね………まぁ、本当だったら今日は休校日だったんだし気持ちはわか───」

「違います。マズいことになりました」

 

 珍しく焦燥したように話すソティルの顔には脂汗が浮かんでいる。

 こんなソティルは久しぶりだ。そう思ったテトラは事態の深刻さを悟り、真剣な眼差しでソティルを見つめた。

 

「………何があったの?」

「さきほど、結界の様子がおかしくなっていたので情報を集めてみました。結果として見えたのは見知らぬ男二人と・・・守衛をしていたはずの人間の死体です」

「………ッ!?」

「恐らく………というか絶対、ルミアを狙って行われている犯行です。ですが、あの人間達はここの教室の生徒を生きて返すつもりは全くありません………ま、殺させる気はありませんけど。とりあえず、姉さんも戦闘するくらいの覚悟はしておいてください」

 

 言葉を無くすテトラ。その心境を理解したのかしていないのか。ソティルが冷たく言い放つ。

 

「貴方にその望まぬ力を与えた私が言えることじゃないのかもしれませんが………実戦無くして、制御は出来ませんよ?」

「………わかってるよ。わかってるけどさ」

「強くなりたいのでしょう?」

「………」

「とりあえず、一度捕まって相手の出方を見ましょう。恐らく一目見れば情報は揃いますが、生徒を人質に取られては私としても面倒ですし、相手の油断を誘うことも考えなければならないので」

「………了解」

 

 テトラが拳を強く握ってぷるぷると震わせる───まるで何かに恐怖しているかのように。

 その時、二人の男が教室のドアを無造作に開ける。

 

「あー、ここか。いやー、みんな勉強熱心だねー。頑張れ、若人!」

「ちょっと………あなた達、一体何者なんですか!?」

「んー、俺たちの正体?テロリストってところかナ?」

 

システィーナに対するチンピラ風の男の答えに教室がどよめき始める。システィーナも動揺こそしたものの、すぐに肩を怒らせて叫ぶ。

 

「ふ、ふざけないで下さい!」

「え~、ボク達大真面目なんだけどな~」

「………わかりました。これ以上ふざけた態度をとるなら、あなた達を気絶させて警官に引き渡します。それが嫌ならはやく出てい───」

「≪ズドン≫」

 

 業を煮やしたシスティーナは覚悟を決め、魔力を練ろうとしていた。しかし、チンピラ風の男のふざけた呪文がそれを遮る。すると、その男の指から鋭い雷閃が迸りシスティーナの髪を掠めていく。

 

「………これでも出ていけとか言えンの?ええ?」

 

 蛇のように嫌らしく笑う男が発動した呪文は【ライトニング・ピアス】

殺傷性が高い軍用魔術で、その威力は普通の人間なら触れただけでも感電死するほどである。

 

 軍用魔術を使える者には軍用魔術を使える者しか勝てない。しかし、この教室に軍用魔術を使える生徒などいない。この男に勝てる()()など、この教室にはいないのだ。

 

「あ、騒いだら殺すから、気を付けてね」

 

 パニック寸前だった生徒たちは抜き身の刃のように冷たい男の一言によって硬直した。男はそんな生徒達を見て、にへらにへらと陽気に笑う。

 

「じゃあ本題ね。オレ達さ、ルミアちゃんって子を探してるんだけど・・・いい子のみんなは知らない?」

 

 何人かの生徒の視線がルミアに向き、それに目ざとく気づいた男がルミアが座る一角に近づいてくる。

 そこでルミアと視線と首振りだけで会話をしていたシスティーナが立ち上がった。

 

「あ、あなた達!ルミアって子をどうする気なの!あなた達の目的は一体───」

「チッ、なんだよ、いきなり出しゃばってきやがって。いいや、お前からにする」

「え………?」

 

 男がシスティーナの頭に指を向けようとしたその時

 

「私がルミアです」

 

 ルミアが席を立った。

 

「おっ、やっと名乗り出てくれたかー………まっ、知ってたけどね」

「………」

「ルミアちゃんが名乗り出るか、誰かがルミアちゃんのこと教えてくれるまで関係ない奴をズドンするゲームしようとしてたんだけど………あーあ、興ざめだなぁ~」

「この………外道………ッ!」

 

 結局、ルミアはもう一人の男に連れていかれ、他の生徒は【スペル・シール】と【マジック・ロープ】で拘束された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとは、拘束されている私達がそこにいるかのように五感情報を書き換えて………よし、行きましょう、姉さん」

「急いで!システィがあのチンピラに連れていかれてからもう五分も経ってる………あいつなら、システィに何してもおかしくない!」

「わかってるから一度落ち着いてください」

「こんな状況で落ち着いていられる!?いきなりテロリストが教室に入ってきて───」

()()()()()()()()()()()()()

 

口調を変えたソティルの声はその場の温度を氷点下にまで下げそうなほどに冷たく、恐ろしいものだった。テトラは思わず身をすくませる。

 

「………システィーナを一刻も早く救わねばならないんでしょう?それなら頭冷やして、とっとと行きますよ。私も隠蔽が効く程度には暴れてやりますから」

 

 政府やらなんやらに嗅ぎつかれない程度にですが、と不機嫌そうに言ったソティル。

 

 

「………あの人達はどれくらい強いの?もしかして、今まで習った魔術で───」

「やめといた方がいいですよ。システィーナを連れてったあの男は()()()()の三流ですが、もう一人はかなりのやり手みたいです。姉さんのあの『力』は恐らく使うことになるでしょう。さっきも言いましたが、覚悟はしておくように」

「………」

 

 ソティルがドアにかけられた魔術を能力で解呪(ディスペル)し、二人は閑散とした廊下を走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他の生徒と同じように拘束されたシスティーナ。ところが、何を思ったのかチンピラ風の男───ジンは生徒の拘束が終わると、抵抗できない彼女を魔術実験室まで連れ出したのだ。

 

「こんなとこに連れてきて………私をどうする気?」

「ん?決まってんだろ?お前で一発抜いとこうと思ってな?」

「な………ッ!」

 

 絶句するシスティーナに対し、ジンはどこまでも愉快そうに笑う。

 

「でも、お前くらいの年に欲情すんのってロリコンなのかな?一応、結婚できる年なんだろ?」

「ふ、ふざけないで!私はフィーベル家の娘よ!」

「え?なにそれ?偉いの?」

 

 ジンは全く動じず、システィーナを組み伏せる。システィーナは一瞬泣きそうな顔をしたがすぐにジンをにらみ上げた。

 

「………好きにすればいいわ。だけど、覚えていなさい。あなただけは・・・必ず私が殺してやる。今は無理でも………いずれ地の果てまであなたを追いかけてや───」

「はいはいわかったわかった。じゃ、どこまで()つかなー?」

 

 ジンの手がシスティーナの制服に伸び、なんの躊躇もなく引き裂く。システィーナの顔が目に見えて引きつり、かすれた声が喉奥から絞り出される。

 

「お前は必死に仮面つけて隠しちゃいるが本当は脆いんだよ。そして俺はそんな女を壊すのが大好きでな。お前の強がりの言葉なんてすっこしも怖くないんだよね」

「ええ、システィーナ=フィーベルの言葉にはこちらへの恐怖しか感じられません。これでは恐怖しろという方が酷です」

「だよな………って、はぁッ!?なんだテメェ!?」

 

 入口のドアは閉まっているのに、いつのまにかジンの後ろには白髪の少女がたたずんでいた。その少女は無表情でジンとシスティーナのことを見下し、嘲るように言う。

 

「ふふっ………恐怖の植え付け方を、私が教えてあげましょう」

 

 そういったソティルの顔にはいつもの気だるげだが穏やかな微笑みとは全く違う、烈火のように激しい残虐な笑みが浮かんでいた。

 一方、ジンはまだ余裕そうに陽気な笑みを浮かべている。

 

「俺の邪魔したやつはズドンするつもりだったんだけど………お前で一発抜かせてくれるんだったら命だけは助けてやってもいいぜ?お前のクラスメイトも助けてやる」

「お断りですよ、あなたに体を渡すぐらいなら死んだ方がマシです」

 

 ソティルがジンの眼が冷酷なものへと変貌する。もしシスティーナがこの眼で睨まれたら、恐怖でその場を動くことすら叶わないだろうがソティルは平然としていた。

 

「じゃあ言葉通り死ね。【ズ───」

「【ズドン】」

 

 ソティルの澄んだ声が部屋に響く。するとソティルの指が一瞬、光輝くと同時にジンの後ろで壁が削れるような音がした。

 

「ふむ、悪くないですね。三文字のみの発声でここまでの威力………やはりネックになるのは燃費ですかね………?

「テメェ………まさかッ!?」

「ん?あ、はい。あなたの【ライトニング・ピアス】を軽々と一節詠唱かつ連続起動(ラピッド・ファイア)する技巧には目をみはるものがあったのでね・・・コピーさせてもらいました」

「技術をコピーだと!?なんだそのデタラメな固有魔術(オリジナル)はッ!?」

「………まだ私との根本的な違いを理解してないようだな」

「………ッ!?」

 

 その言葉でジンははっきりと目の前の少女の得体の知れなさを理解した。こいつとはまともに戦ってはいけないと純粋な恐怖から考えた。

 それゆえに………

 

「う、動くんじゃねえ。もし俺を殺そうってんならこいつも道連れにすんぞ」

「ひっ・・・・・」

 

 ジンはシスティーナの首に手を回し、もう片方の手を頭に当てる。ソティルが少しでも不審な動きをしたら、システィーナは即『ズドン』だ。

 短絡的で無鉄砲な方法だが、人間の感性を持っている今のソティルにはそれなりに有効のはずだ。そうだというのに、ソティルはその残虐な笑みを全く崩すことはない。

 

「な、なんだよ………何が可笑しいんだ!?ガキを殺していいっていうのかッ!?」

「それに関してはノーコメントです。ただ───

 

 

 

 

 

───事が上手く運ぶっていうのがこんなに愉快なものとは知らなかったので」

 

 バリン、と

 ジンとシスティーナの近くの窓ガラスが割れ

 

「くらえッ!」

 

 そこから飛ぶように現れたテトラがジンの顔面に右ストレートを直撃させた。

 

「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────っ!?」

 

 速度をつけて叩き込まれた一撃により、ジンは壁に叩きつけられる。

 

「はぁ………はぁ………ソティル………ちょっと私に………無茶、させ過ぎじゃない?」

「訓練の一環です。それに、あいつには痛い目見せたかったでしょう?」

「そりゃそうだけど………制御難しいから使うの怖いし………疲れるし………」

「その割には恐怖の感情が表に出てませんね。訓練の成果でしょうか?」

「もう………ヤケクソだよ………」

 

 肩で息をしながらぼやくテトラ。その身体は明らかに人間のものではなかった。

黒光りする鱗を纏った腕。長く鋭利な爪。太く長い尾。人一人ならすっぽり覆えそうなほどに広げられた翼。頭に生えた歪に曲がった角。

 その全ては竜が持つソレだ。

 

「及第点ってとこですかね。私の一部を使っている身体と考えればまだまだですが。とにかく、ヤケクソになるのはいいですけど暴走だけはしないでくださいよ」

 

 ソティルは軽い声色で呟きながら、パチンと指を鳴らす。すると、空間に歪な穴が空き、そこからロープが出現した。ロープを手にしたソティルはジンに【スペル・シール】を付呪(エンチャント)したあと、手際よく拘束していく。

 

「ぐぅ………これ以上出したら絶対暴走しちゃうよ………」

「ま、星の力は本来なら普通の人間に扱える代物ではありませんし、それで充分です。今のあなたなら、あのコートを着た男には勝てるでしょう」

「わ、わかった………ソティルはどうするの?」

「ルミアを助けに行く予定です。姉さんが行くべきなのかもしれませんが、暴走した時が怖いので私が行きます。エネルギー残量に大きな不安がありますが」

「………あとどのくらい?」

「最大量の十分の一ほどですね」

「それって残り10パーセントってことじゃない!?」

 

 恐る恐る聞いたテトラ。ソティルはあっけらかんと答えるが、テトラは卒倒寸前になった。

 

「エネルギーは眠れば補充できるんでしょ!?一体、昨日の夜何してたの!?」

「長編小説シリーズ全巻読み切ろうとして徹夜しました。めちゃくちゃ後悔してます」

「な、な───!」

 

十秒後───

 

「おい!こっちで変な叫び声したけど大丈夫………か………?」

 

魔術実験室に到着し、勢いよくドアを開けたグレンが最初に見たのは、こめかみに筋を浮かべながら両手についた石を払う半人半竜の姿のテトラ。そして、頭を壁にめり込ませた無惨な姿のソティルだった。拘束された男とシスティーナは、目の前のあまりの異様な状況に放心している。

 

「えーと………大丈夫、みたい………だな?」

「この状況のどこが大丈夫に見えるのよ!?」

 

 システィーナの疲れたような叫びが、部屋の中に響いた。




ソティルの出番を潰してしまったので予定変更して今回活躍したテトラの説明をさせていただきます・・・
次回は多分ソティル活躍させます・・・チートさせたいなぁ。

テトラ(半竜)
ソティルがテトラを蘇生するときに自らの一部分を使った影響で、テトラはソティルの本来の姿である竜の姿に変身ができる。しかし、変身した時の破壊衝動が大きいため始めて変身した時は暴走した(いつか前日譚書きたいと思ってます)
その時からソティルによって毎日早朝にその力を使いこなす訓練を受けているが、何ヵ月か経過した今でも使うことを恐れている。
竜ができることならなんでも出来るが竜言語魔術は竜が後天的に手に入れるもののため使えない。
ちなみにテトラは剣術や格闘の訓練もソティルによって受けているのでグレンには及ばないものの、かなりのやり手。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。