白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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深夜テンションで書いて深夜テンションで投稿
おそらく明日の朝にはめちゃくちゃ後悔してると思う。


獣の憤怒

「………それで、あのチンピラはお前らが倒したと」

「はいっ。私が顔面をぶん殴ってやりました!」

 

 いたずらっ子のように笑うテトラ。やったことはかなりえげつないのだが。

 

「お前ら何者なんだ………テトラのその姿といい、怪しいところしかないんだが………」

「最小限のことだけ説明しておきます。残りはルミアを救出したあとで」

「わかった」

 

 テトラの攻撃によって頭から血を流しているソティルの提案にグレンが頷くと、ソティルはその背中に翼を顕現させる。

 テトラの背中に生えている竜のような翼とうり二つだが、ソティルの翼にはあちらこちらにチューブが通っていたり、鉄で出来た部分があったりと、機械的な要素がテトラよりも強い。

 

「私は人間ではありません。別世界から来た生物兵器といったところでしょうかね」

「………は?」

「で、テトラはある事件で死んだところを私が生き返らせた人間です。その時に私の身体の一部を使用したため、竜化の力を得ました。私はテトラの姿を借りて生活しているだけで本来の双子ではありません」

 

 ソティルの言葉にシスティーナとグレンは目を瞬かせる。文字通り、次元が違う話だ。

 

「以上が私達の境遇です。質問は受け付けません。事態は急を要する状態なので」

「………とりあえずお前らの正体だのなんだのはいい。お前の言う通り、ルミアを早く助けにいかないと何されるかわかったもんじゃねえからな」

「ええ、それにそろそろあなたの知り合い………セリカ=アルフォネアでしたっけ?その人が貴方からの通信記録に気がついて連絡してくる頃───」

 

その時、部屋に甲高く金属音が響き渡る。システィーナとテトラが身を固くしていると、グレンが苦い顔をしながら半割りの宝石を取り出し、耳元に当てた。ソティルが言ったことは全て本当だったようだ。

テトラは安堵するようにため息をつくと、システィーナに近づく。

 

「システィーナ大丈夫?そんな酷いことされて………」

「大丈夫。大丈夫、だから・・・」

 

しかし、テトラが近づくとシスティーナはじりじりと後ずさりをする。その手は少しだけ、本当にほんの少しだけだが………確実に震えている。

 

「………姉さんのことが怖いのですか?」

「………」

 

ソティルの質問にシスティーナがうつむく。図星だったようだ。

 

「ふん、まぁ人間が取るに足らぬ存在というのはもう知っています。せいぜい私達の邪魔をしないようにい゛っ!?」

 

 ソティルが喋っている途中でテトラが我慢できなくなったように頭に拳骨を入れた。竜並の筋力で繰り出された拳骨は生半可な痛みではないはずだが、ソティルは失神することもなく、頭をさするだけに留まっている。

 

「何するんですか姉さん!?私相手じゃなかったら死んでましたよ!?」

「ソティルが変なこと言うからでしょ!もう、あなたって人は本当に・・・」

「私は人間ではないんですが」

「変なとこで揚げ足取らなくていいの!」

 

 テトラはひとしきりソティルにお小言を言ったあと、システィーナに向き直る。

 

「システィ。私のことは怖がってくれて大丈夫。こんな姿、ぶっちゃけ私自身もこの姿は怖いしさ」

「えっ………?」

「でもね───」

「おい、そこら辺で一旦やめてもらっていいか?」

 

 テトラの話をグレンが遮る。どうやらセリカとの通信が終わったようだ。

 

「グレン=レーダス。助けは呼べそうですか?」

「無理だ。セキュリティをハッキングされてる上に宮廷魔道士団もしばらくは到着出来ないらしい」

「そ、そんな………」

 

 システィーナが消沈したように肩を落とす。

 

「………私達でなんとかするしかないってことですね」

 

 一方、テトラは覚悟を決めたように拳をポキポキと鳴らしていた。ヤケクソのなせる技だったが、今のこの状況では頼もしいことこの上ない。

 その時、システィーナが何かを決心したように顔を上げると部屋を出ていこうと(きびす)を返すがとっさにグレンがその腕を掴んで引き止める。

 

「離してください。ルミアを助けに行きます」

「よせ、無駄死にするだけだ」

「だって………ルミアは………私を庇って………」

「味方とわかっている人間すらも怖がるあなたごときがテロリストに勝てるとでも?そんなこと、あなた自身が1番わかってると思うんですがね」

「ちょっとソティル!?」

「でも………でも………ッ!」

「私は止めはしません。勝手にしなさい」

「いや、んなこと俺が許さねえ。大人しくしてろ」

「でも………私、悔しくて………だって………うぅ………ひっく………」

 

 有無を言わさないグレンの言葉。一時の安堵も引き金となり、今までこらえていたあらゆる感情が暴発したシスティーナは泣き出してしまう。

 

「先生の言う通りだった!魔術なんて、ロクなものじゃなかった!こんなものが、こんなものがあるからルミアは───」

「それ以上言うな。お前が辛くなるだけだぜ?」

 

 システィーナの頭に軽く手を置きながら穏やかな声でグレンが言った。

 

「それに、ルミアはこういう事件が起こらないように将来魔術を導いていけるような立場になりたいらしい。アホだろ?でも立派だ」

「あの子が………そんなことを………」

「………絶対に助ける」

「あぁ、死なせてたまるかよ」

 

 テトラが拳をぐっと握り、グレンは決意を瞳に宿す。そしてソティルは───

 

「敵対する者を暗殺。これが一番ルミアをいち早く救出できる方法です」

「あぁ………」

 

 グレンが力なく頷く。テトラも何も言えずに目を伏せていた。

 

「ケケケ………講師………お前も゛ッ!?」

 

いつの間にか起きたジンが喋ろうとするが、ソティルが鳩尾に拳を入れ再度昏倒させる。

 

「こいつと喋っている暇なんてありません。こいつは上司の命令にだいぶ背いているようですし、いつその上司がこいつを消しに来てもおかしくはありません」

「な、なんでそんなことわかるんだ?」

「私の司るものが情報と変化だからです。あなたの【愚者の世界】も、【イクスティンクション・レイ】も、全て知っています」

 

 瞬間、グレンの目がキッと細くなる。それを察したのかソティルは気まずそうに目をそらし、咳払いをした。

 

「とにかく、ここを早く出ますよ。留まるのは一番悪手です」

「………わかった」

「気をつけてねシスティ。ここからは相手がどんな方法を使ってくるか、本当にわからないから」

「………うん」

 

 グレン達と双子の間には、確実に大きな溝が出来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩いていると、廊下の向こう側からダークコートの男と無数の骸骨が歩いてきた。骸骨達は剣や盾などで武装しており、その数も尋常ではない。

 

「そんなに大人数で四人をリンチしようなんて、いい性格してますね」

「貴様らを少しでも足止めするために最善だと判断したまでだ。非常勤講師含め、貴様らはあまりにも強すぎる。封印さえ解ければ一人は殺れただろうが、ないものねだりをするほど私は愚かではないのでな。我らが大導師様のためにも、私の命を代償にしてでも目的を達成してみせる」

「………そいつは熱心なことで」

 

 グレンが皮肉げに呟く。その額には脂汗が浮かんでいた。

 

「お前ら下がってろ。ここは俺がやる」

「いえ、ここであなたに死なれては面倒です。私がやりましょう。三人とも下がっていてください」

 

 ソティルが前に出る。ダークコートの男───レイクは自らの魔導器である五本の剣の切っ先をソティルへと向ける。

そして───

 

「………ッ!?白猫!避けろおぉぉぉぉぉぉーーーーッ!」

 

 剣はシスティーナに向けて真っ直ぐ飛来していた。当然、温室育ちで戦闘経験のない者がそれを避けられるはずもなく、システィーナは恐怖から目を瞑る。

 

 ぐしゃり、と肉が抉れる音が廊下に響いた。

 だが、いくら時が経とうとも、システィーナを剣が襲うことはなかった。

 恐る恐る目を開けるとそこにはシスティーナをレイクから庇うように立つテトラがいた。その背に五本の剣を突き刺されたテトラが。

 地面にじわじわと広がる血だまりにシスティーナは気を動転させる。

 

「シス………ィ………だ………ぅぶ?」

「テトラ・・・ッ!テトラッ!」

 

角や翼、鱗は空気に溶けるように消えていき、システィーナに寄りかかるようにしてテトラが倒れる。

 

「喋らせんな!今はとりあえず【ライフ・アップ】を………」

「させると思うか?」

 

レイクが冷たく言い放つ。

 

「ふん、他人を庇って致命傷を負うとは随分と甘い。さて、これで一人だけでも殺すことができ──」

 

レイクの言葉は途中で止まる。圧倒的な威圧感に襲われたからである。

 

「な、なんだこれは・・・!」

「………殺す。お前は許さない」

 

異常なほどの殺気と威圧感が、レイクを打ちのめす。それを出しているのは・・・他でもないソティルだ。

ソティルはいつの間にか紫色の宝玉が埋め込まれた杖を携えていた。

本来の持ち主は空の世界のリッチ───『不死の王』と呼ばれる、挑んできた者を腐らせ、亡者にするという星晶獣だ。

 

「《腐海に沈み、渇きに飢えよ》」

 

 ソティルがそう叫ぶと、杖の宝玉から禍々しい瘴気で作られた無数の腕が飛び出し、骸骨達を包む。

 骸骨達は『ボーン・ゴーレム』と呼ばれるゴーレムのため、死という概念はないはずだ。だが、手に触れた骸骨達は次々と瘴気に沈み、腐り果てていく。

 何十体といた骸骨達はなすすべもなく灰となり、残されたのはレイクただ一人となった。

 

「おのれぇッ!」

 

 レイクはテトラの身体から剣を引き抜く、テトラから力が抜け、さらに血だまりが広がっていくのを見てソティルは瞳に宿る憎悪をより一層深いものにした。

 レイクは五本の剣の切っ先をソティルに改めて向け、今度こそ、それはソティルに真っ直ぐ向かってくる。

 ソティルは全く動かない。それを見てレイクは大きな違和感を感じたが、剣はもう戻せるような速度ではない。そして、五本の剣は、ソティルの身体を貫こうと襲いかかった。

 しかし───

 

「な、なんだと………」

 

 ソティルの身体に触れた剣はその肉を切り裂くことなく錆びつき、ついには朽ちた。

 リッチは生物だけでなく、物質すらも劣化させるほどに強力な星晶獣だったのだ。

 

「では死ね。それが逃れ得ぬ運命(さだめ)だ」

 

 そう言ってソティルが杖をレイクに向け、思い切り振り上げる。するとレイクの心臓から白く光る球体が出てくる。そしてそれは天井をすり抜け、遥か上空へと飛び去っていった。

 

「ぁ………が………」

 

 その直後、レイクはみるみるうちに老けていき、ついには老人となる。

 

「お前の寿命を奪った。自分が朽ちていく感覚に恐怖しながら死ね」

「………ふん、貴様は人間ではないな。だが、見事だった」

 

 自分の肉体の腐敗が現在進行形で進んでいるにも関わらず、レイクはしわがれた声でソティルに称賛の言葉を送る。だが、ソティルは目の奥の憎悪の感情を絶やさない。

 

「黙れ外道如きが。今のは勝負ですらない。ただの蹂躙だ」

「全くだ。私も相手を間違えたな………グレン=レーダスに気をつけろ。奴は───」

「【愚者】なのだろう?お前がキャレルとかいう男とグレンの戦いを見て気づく前からとっくに知っておるわ」

「………ちっ。貴様、本当に規格外だな」

 

 そう言い残して、レイクは灰となった。

 全てを終わらせたソティルが杖を手から離すと、その杖は蒼い光に包まれて何処かに消える。

 グレンとシスティーナは、そばでソティルとレイクの戦闘を見てこそはいたが、それに対して質問をしようとするほどの心の余裕はなかった。レイクの剣によって胸を貫かれたテトラが死に瀕していたからだ。

 特に、グレンはテトラに自分を庇って死んだセラを重ね合わせているのか、その顔は死人のように青ざめ、手は大きく震えていた。

 

「ダメだ………死神の鎌に捕まってやがる。俺は【リヴァイヴァー】なんて出来る魔力も技量もないし………クソッ!」

「そんな………テトラ………」

 

 二人は血だらけのテトラを見下ろしながら表情を悲痛なものに歪める。

 

「どいて下さい。姉さんはまだ助けられます」

 

 しかし、ボソリと言ったソティルが二人をテトラからどけてすぐさま作業に入る。

 ソティルがシスティーナ達の知らない言語でブツブツと何かを呟くと、その足元に時計を象ったような魔法陣が浮かびあがる。

 

「一年前のようなヘマはしません………!」

 

 テトラの傷にソティルが手をあてると、魔法陣の時計が逆向きに進んでいく。それが進めば進むほどにテトラの傷は浅くなっていき、命に関わるほどに深い傷は全て塞がった。

 

「………残りエネルギー残量3パーセント………グレン=レーダス。私はエネルギー補給のため、食堂の食料庫に行きます。その間にテトラを保健室にまで連れて行って、ある程度の治療をして貰えませんか?私の力不足………というか、エネルギー不足で、まだ怪我は完全には治っていないんです」

 

 エネルギーがあまりにも少ないからか、肩で息をするソティル。そんな状況でも、律儀にソティルはグレンに頭を下げる。

 

「おいおい、こいつは俺の生徒だぜ?俺が守らなくてどうするんだよ。それとも、やっぱり姉ちゃんのことが心配なのか?」

「ええ、この人はさっきみたいに、他人のためなら無茶しやすいんですよ。だから、システィーナも気にしないで下さい。私としては気に食わないですが、あなたが今回のことをひきずるのは、私にも姉さんにも、そしてシスティーナにとっても得がないので」

 

 ソティルはいつものように気だるげだが穏やかな笑みを浮かべると、フラフラとしたら足取りで食堂へと向かっていった。




ソティルの能力
空間の在り方を変化させ、空の世界に存在する星晶獣やそれが使う武器、人が使う武器などを取り出し、さらにそれを扱う人物に似た性格や姿へと自分を変化させる。
武器を持ったり、その姿に変化した時点で根本的な性格は変化した対象に付随したものになる。力が強いものであれば強いものであるほど、表面的な性格も同じものになる。
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