白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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バカみたいに伏線を張った結果、この話で全て回収することになりバカみたいに文字数が増えました。
なんか説明不足のところもあるし、あとで原作読破推奨とオリジナル設定のタグ追加しときます。


事件の終結

「う・・・・・ここは・・・・」

「やっと起きたな。痛みはひいたか?」

「先生・・・・?」

 

グレンの声が聞こえた瞬間、テトラのぼやけていた意識は一気に覚醒し、ベッドから跳ね起きた。

 

「先生ッ!システィは!?」

「そこに寝てる」

 

そっけなく呟いたグレンの視線のほうを見ると、疲労困憊と言った様子でシスティーナがテトラの寝ていたベッドにもたれかかって眠っていた。

 

「お前に治癒限界ギリギリまでずっと【ライフ・アップ】かけ続けてたんだ。マナ欠乏症になりかかってたから途中で止めようとしたんだが、聞かなくてな」

 

これじゃ教師失格だな、と苦い顔で呟くグレン。

 

「そんなに無理してたんだ・・・」

「最初に無理したのはお前だ。ったく、まさか白猫を庇って剣を全部身体で受け止めるとは思ってもみなかったぜ」

「・・・余計なお世話、でしたよね。私が傷さえ負っていなかったら、グレン先生だけでもあのレイクとかいう魔術師も倒せてたでしょうし」

「・・・買いかぶりすぎだ。俺はただの非常勤講師───」

「『天使の塵(エンジェル・ダスト)』」

 

グレンの飄々(ひょうひょう)とした雰囲気が消え、研ぎ澄まされた刃物のように鋭い目でテトラを睨む。テトラはそんなグレンを見て悲しげに笑った。

 

「私はあの事件で一度死にました。ソティルによると、天使の塵(エンジェル・ダスト)の副作用で身体が自壊しているところを銃殺されたそうです」

「・・・()()()()()

 

グレンが絞り出すように声を出す。その声色には明らかに消沈や後悔の感情が含まれていた。

 

「はい。私はどうやら、一年前のグレン先生に殺されたみたいです」

「はぁ・・・俺は殺した奴のことは誰一人忘れちゃいねえよ。忘れられるわけがねえ。他人の空似だと自分に言い聞かせてたんだが・・・まさか本人だったとはな」

「私とソティルはグレン先生の実力を知っています。この状況だってグレン先生とソティルがいれば・・・ってあれ?ソティルはどこに・・・」

「エネルギー補給とか言って食料庫に行った。こんな時に呑気な奴だよな。あいつが人間じゃないからこそ持てる余裕なのかもしれんが」

 

グレンが肩をすくめる。だが、それを聞いたテトラは何かを後悔しているかのようにその顔を両手で覆っていた。

 

「どうした?」

「・・・・・気にしないでください。多分、知らない方がいいことです」

 

グレンが首を傾げていると、部屋のドアがギィ、と音を立てて開きそこからソティルが入ってくる。

 

「やはり有機物のエネルギー変換効率は悪いですね。あのコートの男も、もっと痛めつけてやりたかったんですけど・・・」

 

入ってくるなり、いつも通りの気だるげな口調で毒づくソティル。

 

「まぁ、いいです。テロリストとルミアのいる場所、探知しておきました。術式を改変した転送方陣を使って、ルミアを連れて逃走するつもりのようです。他にもなにか妙な方陣が準備されてるようですが、どのような魔術かは不明です。千里眼から入ってくる情報の解析は不可能なので」

「転送方陣ってことは転送塔だな。しかし、妙な方陣か。絶対ロクなもんじゃねえな」

 

張り詰めた空気が部屋を支配する。しかし、グレンの口調は先ほどよりも幾ばくか緩んだものになっていた。

 

「転送方陣の起動はおそらく17時過ぎ・・・今は14時ですから、充分に時間はあります。テトラの回復を待ってから、私達三人でテロリストを叩くのが一番勝率の高い方法です」

 

ソティルとシスティーナの尽力で致命傷は完治したテトラ。しかし、その身体にはまだ痛々しい傷が残っている。そのため、ソティルはテトラの治療をしてから全員でテロリストを拘束すべきだと主張した。

しかし、ソティルの言葉を聞いたグレンは椅子から立ち上がり、すぐさま保健室から出ていこうとする。

 

「起動時間なんて関係ねえよ。ルミアが怖い思いしてるんだ。俺だけでも今すぐ助けにいく」

「・・・あなただけでいけば、勝率は格段に下がります。それでもですか?」

「それでもだよ。そもそも教師が生徒を戦わせるってこと自体おかしいしな」

 

ドアノブに手をかけ、部屋から出ていこうとするグレン。

 

「待って下さい」

「・・・姉さん」

 

テトラがベッドから飛び降りてそれを引き止める。

 

「私も行きます。竜の力を使えば絶対に戦力になります」

「ダメだ。魔術実験室でお前自身が説明してくれただろ?竜の力は制御が難しいって。そんな傷だらけの状態で使ってみろ。制御出来なくなって、むしろ足でまといになる」

「・・・いえ、行かせてあげて下さい。私も暴走しないようについて行きますから」

「えっ!?ソティル!?」

 

絶対に引き止めるだろうと思っていたソティルが行くべきだと言ったことに驚きを隠せないテトラ。だがグレンは断固として連れていこうとしない。

 

「もし暴走したらどうする?お前の力で止められたとしても転送塔がその戦いの余波で崩れるかもしれないんだぞ?」

「そんなヘマ、私はしません。それに、姉さんはあなたにここに留まるように言われても、絶対に隠れてあなたについていくでしょうし」

「・・・ま、他人を庇って大怪我するくらいだ。ぶっちゃけ、やりかねないな」

「あ、あはは・・・」

 

テトラは眼を逸らしながら苦笑する。そんな様子を見てグレンは大きなため息をついていた。

 

「仕方ねえ。ついてくるなら勝手にしな。ただ、絶対に死ぬんじゃねえぞ」

「はい!ありがとうございます!」

 

ぱぁっ、と明るい表情で言ったテトラはそのままグレンからソティルへと向き直る。

 

「ありがとうね、ソティル。グレン先生を説得してくれて」

「勝率を少しでも高めたいだけです・・・それに、姉さんがルミア=ティンジェルの身を案じる気持ちはわかりますし」

「え?どうしたのソティル?」

「別に」

 

ソティルは不機嫌そうに呟き、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

 

(・・・そういえば、ソティルは何度も「面倒事には巻き込まれたくない」って言ってたのに、なんでシスティーナやルミアを率先して助けに行こうとしたんだろう?)

 

テトラの頭に一つの疑問が浮かび上がってきたが、そんなことを考える暇もなくグレンとソティルが部屋から飛び出していく。テトラもそれに続こうとするが

 

「私も連れて行って」

 

いつのまにか目を覚ましていたシスティーナがその腕を掴んでいた。

 

「・・・システィ」

「お願い。ルミアが心配なの」

 

システィーナの腕は恐怖で小刻みに震えている。しかし、その瞳には確かに決意と覚悟が宿っているのはテトラは感じた。

 

「・・・部屋に一人でいるのは危険だから連れてきたって先生には言っとく。ついてきて」

「わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───バカかお前っ!?部屋よりここのほうが圧倒的に危険だろうが!」

「・・・ソティルが先に言ってれば連れてこなかったのに」

「姉さん、全部聞こえてますからね」

 

転送塔に続く並木道の直前。歩を止めた四人の目前には、巨大なゴーレムが何匹も闊歩していた。転送塔に近づかない限りは攻撃してくることはないだろうが、これらをどうにかしなければ転送塔にたどり着くのは不可能だろう。

グレンが【イクスティンクション・レイ】を使うために虚量石(ホローツ)を懐から取り出そうとしたところでソティルがポキポキ指の関節を鳴らしながら歩き出す。

 

「仕方ない。さっきのコートの男との戦いが消化不足なところもありますし、ここは私が一肌脱ぎますか」

 

そういうとソティルは虚空から弦楽器を取り出す。

その楽器は民族楽器のように独特な形をしており、ボディが青白く光っている。

 

「並木道には絶対に近づかないでください。シビれますよ」

「シ、シビれる・・・?」

 

首を傾げるシスティーナを意にも介さず、ソティルは並木道にたどり着いた。当然、侵入者に気がついたゴーレム達はソティルへと向かっていき、その拳を振り下ろそうとするのだが

 

「《さぁ・・・今こそ残酷を知るときだッ!!》」

 

ソティルがそう叫び弦楽器を弾き出すと同時に、空がドス黒い雲で覆われ、そこから黄金色の雷が無数に飛来する。雷は矢のようにゴーレム達に直撃し、その巨体をバラバラに引き裂いていった。

 

「魂の奥底より叫ぶがいい!それが我が旋律の一小節となる!」

 

ゴーレムに叫ぶ口などないが、ソティルが軽快に弦を(はじ)く音とその頭上でとめどなく鳴る雷鳴、そして雷によって岩が砕け散る音とがアンサンブルする。

『その旋律からなる雷撃は天を裂き、大地を砕く』

大いなる災いと伝承されてきた星晶獣バアルの力だ。

 

「・・・ふん、お前たちの魂の(うた)はこんなものか。これではただの雑音だな」

 

失望したようにそう呟いたソティルは弦楽器を手放す。すると弦楽器は空気の中に一瞬で掻き消え、空からも黒雲はなくなっていた。

ソティルが悠々と転送塔に向かっていくその頃、グレン達三人はさっきまで展開されていたあまりにも現実離れした光景に言葉を失っていた。

 

「なんだ今の・・・」

「魔力の動きが全然見えなかったけど・・・さっきのは魔術じゃないの?」

「ソティルの力についてはまた後で説明するから、早くルミアの所に行かないと」

「そ、そうだよな。下手人が何を仕掛けてんのか俺にもわからねえが、罠が一つもないってことはまずありえねえ。絶対に警戒を解くなよ?」

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四人は転送塔内の階段をぐんぐんと駆け上がっていく。そしてグレンが最上階のドアを勢いよく開けると・・・

 

「よっしゃビンゴ!」

「先生!?」

 

そこには時限式の転送方陣の中央に座り込むルミアと、手に紫色の宝石を持った青年がいた。

 

「ヒュ、ヒューイ先生!?」

 

システィーナが驚愕の声を上げる。そこにいたのは、三ヶ月前に退職していたはずのヒューイその人だった。

 

「・・・バカですかあなたは」

 

ソティルが忌々しげに呟く。その視線の先は青年ではなく、ルミアを包む方陣の外郭(がいかく)だった。

 

「結界を一層でも解呪(ディスペル)した者の痛覚を数倍にして肉体を自壊させる呪いを結界自体にかけてある・・・これ、空の世界の技術が使われていますね?」

「空の世界?僕はただ、上から支給された素材を使っただけです」

「・・・知らないみたいですね。あなたが手に持っているのは、空の世界のエルステ帝国が開発した魔晶と呼ばれる人工結晶です。魔物を使役したり、魔術の触媒にしたりする時に使用するのですが、その対価は持ち主の生命力です。下手すれば、あなた死にますよ?」

「そうだったんですか・・・いや、どうせここで僕は死ぬんだ。上が支給するのも当然か」

「死ぬ?あなたは私たちが拘束───」

 

ソティルがふとグレンとシスティーナの方を見てみると、二人は青年の足元を見ながら戦慄している。ソティルもそこに視線を移した瞬間に息を呑むこととなった。

青年の足元の方陣の術式が、あまりにも馬鹿げているものだったからだ。

ちなみにその術式というのは白魔儀【サクリファイス】───対象の魂から魔力を錬成し、それを使用してあたり一帯を爆破するという術式だ。

 

「どうやら、本当のバカだったようですね・・・!」

「な、何考えてんだテメェッ!?まさか最初から死ぬつもりで・・・!?」

「ええ。王族、もしくは政府要人の身内が入学した時に、自爆テロを起こして殺害する・・・それが僕に与えられた使命です。ですが上がルミアさんに興味を持っていましてね。急遽、彼女だけは組織の本部に転移させることになりました。ルミアさんの転移と共に、この学院は木っ端微塵になります」

「・・・・・ッ!」

 

悲しげに言うヒューイ。グレンは迷わずに解呪を始めようと結界へと向かう。しかし

 

「させませんよ?まだ転移には時間がかかりますから」

 

ヒューイが魔晶を掲げるとそこから禍々しい光が漏れ、形を成していく。やがて光が収まると、前脚に鋭い刃を生やした三匹の魔狼がグレン達に向かって唸っていた。

 

「ウルフセイバー?空の魔物のはずなのですが・・・」

「ンなこたどうでもいい!ソティル!お前だったらあの結界解呪(ディスペル)出来んのか!?」

「悪いですけど確実に無理です。魔晶というのは星の力を模倣したもので、私が使う星の力では反発して跳ね除けられてしまいます」

「ソティル!?それ私も初耳なんだけど!?」

「この世界に空の世界の技術が持ち込まれることなんて想定していないから当たり前でしょう?とにかく、私には絶対に無理です」

 

グレンの額に脂汗が滲む。そして覚悟を決めたように拳を握る、とシスティーナに耳打ちした。

 

「白猫、魔力はまだ残ってるか?」

「は、はい。まだペンダントに普段から蓄えてる魔力が残ってます」

「じゃあ俺が結界を解呪(ディスペル)する。俺が結界の層を解呪するごとに【ライフ・アップ】をかけてくれ」

「わ、わかりました!」

 

システィーナが頷くと、それに反応するようにソティルがテトラの肩を叩いた。

 

「どうやら私達はグレン達の護衛をしなきゃいけないみたいですね」

「え!?護衛なんて私やったことないし・・・」

()()()()()()()。先生達を積み荷とでもおもっておけば姉さんでもいけます・・・ハッ!」

 

ソティルが床を蹴り、ウルフセイバーを思い切り殴る。首をへし折られたウルフセイバーは、禍々しい煙を立ち登らせながら消えていった。ソティルの腕は、いつの間にか竜と機械が入り交じった気味の悪いものになっている。

 

「まず一匹・・・姉さん!あまり無理はしないでくださいね!」

「わかってるって!」

 

テトラは鱗を纏った腕でウルフセイバーと鍔迫り合いをしていた。だが、テトラは押し負けている。魔晶によって強化されたウルフセイバーの脚力は、竜の腕力と同等か、それ以上だった。

 

「お、重い・・・ッ!」

「グルルァッ!」

 

無防備なテトラに残りの一匹が襲いかかるが、間一髪、ソティルがその横腹に蹴りを入れて壁へと吹き飛ばす。

 

「ギャウンッ!?」

「全く、姉さんも詰めが甘い・・・」

 

テトラと鍔迫り合いをしていたウルフセイバーは壁に叩きつけられた仲間に意識を向ける。そして、それが彼の敗北を決定づけることとなった。

 

「はあぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!!」

 

テトラがウルフセイバーの前脚をかち上げ、その無防備な腹を鋭い爪で引き裂いた。

残り一匹のウルフセイバーは───

 

「《燃やし尽くす》」

「───ッ!?───ッ!?」

 

ソティルが腕から繰り出した紫色の炎に包まれ、叫ぶことも出来ずに炭になってしまった。

 

「終わりだあぁぁぁぁぁーーーーッ!」

 

その時、グレンの叫びが部屋中に響き、それと同時に【イレイズ】───解呪の魔術が発動し、転送方陣が完全に解呪される。

グレンの身体は血だらけになり、息もかなり荒い。しかし流石は元軍魔道士と言うべきか。グレンは痛覚が数倍になろうとも発狂せず、冷静に解呪を成し遂げたのだ。

だが、問題はヒューイの方だった。

ヒューイの身体がぐらりと傾き、床に叩きつけられる。

 

「おいお前!大丈夫か!?」

 

グレンが近寄るが、ヒューイはどこまでも穏やかに笑っている。

 

「ははは・・・強い人だ。あなたは今、身が悶えるような痛みに苛まれているはずなのに」

「俺よりも自分のことを考えろ!クソッ!白猫!こいつに【ライフ・アップ】を──」

「無駄です。この人は魔晶を使用し過ぎた。体内マナが魔晶によってゼロの状態にされています。魔晶に蝕まれた身体では、私の能力も受け付けません」

「ね、ねえソティル。それってまさか・・・」

 

システィーナが恐る恐るソティルに聞く。ソティルはどこか悲しげに言った。

 

「もう・・・・・助かりません」

「そ、そんな・・・ダメですヒューイ先生ッ!」

 

ルミアが駆け寄り、ヒューイの手に触れるが何も変化は起こらない。

 

「ルミアさんは優しいですね・・・ですが、僕の身体にはもう魔力は残されていないのです」

「・・・・・っ」

 

今の時点ではソティルとヒューイ以外は全く知らないことだが、ルミアは感応増幅者であり、相手の魔力や魔術を何十倍にも増幅するという異能を持っている。

しかしゼロをどれだけ倍にしようが、その答えはゼロのままである。

 

「いいんですよ・・・私はそれほどに・・・罪を犯したということです」

 

その声がだんだんと小さいものになっていく。その事に最初に気づいたテトラがヒューイに問うた。

 

「・・・何か、言い遺すことはありますか?」

「そう、ですね・・・・では、一つだけ・・・いい・・・でしょうか・・・」

 

ヒューイはか細い声でその胸の内を語り始める。

 

「私は・・・どうすればよかったのでしょうか?組織の言いなりになって死ぬべきだったのか・・・反抗して死ぬべきだったのか・・・何を選べば良かったのか・・・今でも分からないのです」

「選んでいるではないですか」

 

ソティルが冷淡に言い放った。

 

「あなたは『自分で選ばず、流れに任せる』ということを選んだ。無論、あなただけに責任があるとは言いませんが、それがあなたの選んだ道であり、その結末がこれなのです。責任はあなたにもあります」

「辛辣ですね・・・だけど、本当だ。もっと早く、気がつけなかったのかなぁ・・・」

 

ヒューイの目から光が失われていく。

 

「グレン先生・・・生徒を守ってくれて・・・ありがとう・・・あの子達のことを・・・どうか・・・」

「・・・ああ、あいつらは俺がきっちり見てやるよ」

「・・・・・ありがとう」

 

それが彼の最後の言葉だった。ヒューイはゆっくりと目を閉じ、穏やかな笑みを浮かべてその生命活動を停止させた。

 

「・・・ただ───」

 

冷たくなったヒューイを見下ろすソティルは歯をぎり、と噛みしめ、悔しげに呟いた。

 

「───私がもっと早く気がついていれば、こんな結末にはならなかった」

「・・・ソティル」

 

そんな様子のソティルにテトラが心配そうに声をかけた。

 

「・・・笑って下さい姉さん。私は人間一人も救えないような無力なガラクタなんですよ」

 

その言葉には自嘲の念がありありと浮かんでいる。

ソティルは自覚していないが、彼女は変化の能力を使用した際に、その変化の対象や武器の記憶の持ち主の性格がある程度反映されるようにプログラムされている。

それはテトラからの影響も例外ではない。ソティルは自分を冷徹な兵器のような性格だと思い込んでいるが、その実はテトラと同じで、底なしのお人好しなのだ。

 

「・・・・・」

 

そしてテトラはそのことを薄々とわかっていたが、今回の事件でそれが真実であると確信した。

伝えるなら、今しかない。

そう思ったテトラはソティルにこの事実を教えようとする。

しかし

 

「・・・・・ぁ」

 

テトラの身体の感覚は、指の先からどんどんと無くなってきて、口も思ったように動かせない。

ついにはその視界がぐらりと揺らぎ、視界が暗闇に包まれる。

竜の力の代償。それはテトラが思っていた以上に大きいものだったようだ。

『妹』が自分の名前を必死に呼んでいる声がうっすらと聞こえたが、その『妹』の顔も全く見えない。

そしてその声も完全に聞こえなくなったと同時に、テトラの意識はぷっつりと途絶えた。




長いですね。申し訳ない。
次はちょっとした説明まとめ回みたいになります。
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