白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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色々考えてたらクソ時間かかってその割にクソ短くなりました。


仮面

 昼食も終わり、午後の部が始まろうとしている観覧席。

 ソティルは一旦テトラ達と別れ、二組の生徒達の様子を見に行っていた。その姿にシスティーナが気が付き、ずかずかと歩み寄ってくる。

 

「ソティル!朝からいなかったけど何してたの!?貴方、まさかサボって───」

「ないです。わざわざクラス全員から嫌われるような真似はしません」

 

 真面目一辺倒であるシスティーナからすれば、クラスが一致団結している中ただ一人サボることなど許されざる所業だ。だが、ソティルが少し怒ったような口調でその言葉を遮る。あらぬ疑いをかけられるのはいくらソティルとは言えども不満だったようだ。

 

「一般の観覧席でしっかり見てましたよ。グレン先生には事前に理由を話して許可も取っておいたので、てっきり皆に伝えられているものだと思っていたのですが、あの人のことですし言い忘れていたのでしょうね・・・証拠、出そうと思えば出せますが?」

「・・・ううん、見ていたならいいわよ。でもなんで一般席で見てたの?」

 

 システィーナが首を傾げると、ソティルがにこりと笑みを浮かべる。その笑みは何か裏がある、例えば・・・何かよからぬ隠し事をしている・・・そんな時に浮かぶ、いかにも胡散臭いものだ。

 

「今は秘密です。ですが、競技祭が終わるまでには絶対にわかりますよ。ところで先生とルミアはどこにいるのですか?」

 

 システィーナが弱々しく首を振り、それと同時にソティルが苦い顔をした。

 

「グレン先生はともかく、ルミアは他の人の応援をせずにサボるような人じゃありませんからね。何か理由があるのでしょうが・・・システィーナ、何か心当たりは?」

 

 ソティルの問いにシスティーナは少し躊躇いながらもゆっくりと口を開いた。

 

「・・・・・グレン先生に聞いたんだけどね。ルミア、ついさっきに実の母親と会ったみたいなの。グレン先生がさっき様子を見に行ってくれたんだけどあんまりにも遅いから何かあったんじゃないかって少し心配で・・・」

「ふむ、ルミアと女王陛下との間に相当大きな溝が出来ているというのは推測出来ますね。なぜそんなことになったのか、私は理解しかねますが・・・とりあえず、あの二人は私が探しに行きましょう。非常に低確率ではありますが、天の智慧研究会(例の組織)が出張ってきている可能性もありますし」

「そんなこと───」

 

 システィーナが「ありえない」と言おうとする前に、ソティルがシスティーナの額にデコピンをした。システィーナが抗議をする暇も与えず、ソティルは皮肉気な笑みを浮かべながらも無機質な口調で言い放つ。

 

「ありえない?そんな言葉が口から出るのであれば、貴方はまだまだですね」

「・・・・・ッ」

「確かに今この時にルミアが命の危機に瀕している可能性は限りなく低いです。でも()()()()()()。脅威とは日常を送っている中で突然に訪れるものなのですからね。貴方のその短絡的な思考でルミアは死ぬかもしれないのですよ」

 

 俯いていたシスティーナがビクッと肩を震わせた。それを見たソティルは面食らったような表情をした後に頭をかく。

 

「あ、しまった。言葉はオブラートに包めって姉さんからいつも言われてるのに・・・すみません、言い過ぎました」

「・・・・・」

 

 ソティルは先ほどの刃物のように鋭く冷たい声色から一転、いつものように気だるげな口調で謝罪するが、システィーナは体をわなわなと震わせるだけで返答などできる状態ではなかった。ソティルは申し訳なさそうに一礼すると、熱狂する観客達の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・ダメですね。優しい少女を演じることなど私には容易いことだったはずなのに、何故かあの二人と話すと仮面が剥がれてしまう・・・彼女達は私にとって他の人とは違う何かがあるのか・・・いや、まさか)

 

 システィーナに辛辣な態度を取ったことを反省したのか、ただ単に自分の取った行動が理解出来ないものだったのか。

 能力を使わず、『人間』としての思考でシスティーナやルミアが自分にとってどのような存在かを思考するソティル。

 

(そもそも、なぜ私は姉さんやセラさんを大切と思っているのでしょうか・・・?あの二人だって私とは全く関係のない人間なのですし、殺されても───)

 

 ソティルは胸に針が刺さったような感触を覚えた。その理由は自分でもだいたいわかっている。

 

(・・・くだらない。この感情も能力次第ですぐに消えるものだ。私が彼女達を大切に思っている理由なんてわからなくていい。どうせ、いずれ捨てるものなのだから・・・今はこんなことに思考を割いている場合じゃない)

 

 また歩き出したソティル。その足どりはとても軽いものとは言えない。先ほどまで考えていた内容もこのローテンションの理由と言えば理由ではあるのだが、大きな要因はもっと別のもの───ルミアとグレンが置かれている状況である。

 

(緊急事態の可能性もあったので能力を使ってみましたが、まさか本当に命の危機に瀕しているとは思いませんでしたよ。しかし、相手は王族直属の親衛隊ですか。この程度の相手ならば、グレン先生だけでも捌ききれる可能性は高いですね・・・ふむ、確かに可能性は高い。高いのですが・・・)

 

 グレンが親衛隊の攻撃を防ぎきれず、ルミアが殺されてしまう可能性。これもゼロではない。

 ソティルはシスティーナにあのような言葉をかけてしまったのだ。ここで状況を楽観視した結果、グレンとルミアが殺されてしまったということが起きるとソティルの面目は丸つぶれである。

 無論、ソティルはそんな思考に陥ることなど決してないのだが。

 

(・・・政府に属する人間はさすがに殺すべきではないでしょうし、人間の動きを傷つけずに止める方法をある程度準備しておいたほうが良さそうですね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまでは流石に追って来ないらしいな」

 

 複雑に入り組んだある裏路地の一角で、荒い息を吐きながら壁にもたれかかるグレン。息を整えながら次に取る策を練っていると、ルミアが苦渋に満ちた顔でグレンにある問いを投げかけた。

 

「先生、どうして私のことを・・・?」

 

 グレンはいつも通りの調子でルミアを茶化そうとしたが、その真上からバサバサと黒い羽をまき散らしながらカラスが舞い降りてくる。

 なぜこんな路地裏に・・・?

 グレンが不可解に思っていると。

 

「なっ・・・!」

「きゃっ!?」

 

 カラスの体が(まばゆ)く輝き、辺りが蒼い光に包まれる。光は一瞬で収まり、そこには白髪の少女が呆れた表情をしながら腕組みをしていた。

 

「自分達で逃げ切れたんですね。助け、必要ですか?」

「え・・・カラスがソティルに・・・え!?」

「ソティルか!ちょうど良かった、調べてほしいことがあるんだがいいか?」

「グレン先生は私の変身を一度見ているとはいえ、反応薄すぎだと思うんですけど・・・まぁいいでしょう。調べてほしいことですね。分かりました」

 

 突然のソティル登場にルミアが目を白黒させている横で、グレンとソティルは思索を開始する。

 

「俺はセリカに話をつけてみる。お前は軍の奴らがルミアを殺そうとする理由を調べてみてくれないか?」

「あ、もう終わってます」

「ああ、わか・・・え!?マジで言ってんの!?」

「この騒動に関する情報は既に収集済みです」

 

 あっけらかんとそう言ったソティル。だが、その暗い顔から事態がいい方向に進んでいないことは容易に想像できた。

 

「結論から言いますと、親衛隊が暴走している理由は言えません。言ってもいいのですが、その場合人が死にます。あと、今のセリカ教授はほぼ戦力外です。この理由も先ほどと同様、人が死ぬからですね」

「ッ!?なんだと・・・!?」

 

 グレンの声に動揺が滲む。世界最高峰の魔術師であるセリカが戦力外扱いされるとは思わなかったからだ。

 

(クソ・・・ますます状況が見えなくなってきやがった。セリカが戦力外?人質がいるって辺りだろうが、それなら理由は話せるはずだし・・・ソティルは一体どういう情報を手に入れたんだ?)

「しかし、セリカ教授と連絡を取ることは推奨します。セリカ教授が多少ヒントをくれるはずですから、それを元にして作戦を立てましょう」

「・・・わかった」

 

 グレンがセリカと連絡を取ろうとしている横で、呆然としていたルミアがぼそりと呟いた。

 

「なんで私のためなんかに・・・」

「む、どうかしましたか?」

「・・・わかってるはずでしょ!」

 

 突然ルミアが声を荒らげる。

 

「このままだと二人とも国家反逆罪で殺されちゃうんだよ!なんで・・・なんで私なんか!」

「それ、安っぽい小説でよくあるセリフですよ。できればもうちょっと面白味のある言葉を───」

「ふざけてる場合じゃないよ!」

 

 怒りの形相で睨んでくるルミアをじっと見つめ、ソティルは長いため息をつく。

 

「今更理由なんて聞いてもなんの利益にもならないと思うのですが・・・いいでしょう。少なくとも私はその問いに答えてあげます。ルミアが姉さんの親友と呼ばれる関係性にあるからです」

「・・・・・」

「それだけ?って顔してますね?ええ、それだけです。この程度の厄介事ならそんなくだらない理由ともつり合いがとれるんですよ・・・って、まさかとは思いますけど、私がたかが人間何百人程度に捕まると思ってるんですか?それは随分と嘗められたものですね」

 

 皮肉気に笑うソティル。

 今は能力を使わないため、その本当の力を知る者は少ないが、ソティルが全力を出せば一国を滅亡させることなど容易い。利益がないのでソティルがそんなことをする確率は限りなく低いが。

 

「あとはグレン先生があなたを助けた本当の理由・・・生憎、これは私が勝手に話せるものではありませんね。これを言ったらほぼ答え言ってるようなものなのですが・・・約束、ですかね」

「約束?」

「はい、約束です。貴方は覚えてないようですが、事件解決までには思い出せるんじゃないですか?というか、あなたが思い出せないままグレン先生から話聞いたって、グレン先生が恥ずかしい思いするだけで終わっちゃいそうですね。絶対思い出してくださいよ」

 

 ソティルは首を傾げるルミアを見つめながら少し考えこむような仕草をしたあと、ため息をつく。

 

「・・・これから言うことは蛇足かもしれませんが、ついでに貴方の母親に話したいことも考えておいたらいかがですか?これを機に貴方が仮面を外す気になることを、私は期待しているのですよ。いや、猫を被っている私が言えたことではないのかもしれませんが」

 

 ソティルが言っていることの意味がわからないルミアはソティルをさらに問いただそうとするも、セリカと連絡を取り終わったグレンによって言葉を遮られる。

 

「ダメだ。ソティルが言った通りセリカは動けねぇらしい」

「でしょうね。一応言っておきますが、私は手助け程度しかしませんよ。これ以上、他の人間に私の存在を知られることだけは避けたいので」

「・・・そうか。そんなとこだろうとは思ってたよ。ま、出来る範囲で協力頼むわ」

 

 セリカと話したことによって落ち着いたのか、いつものように飄々とした態度のグレンに対してソティルが優しくほほ笑みかけた。

 

「あと貴方達のどちらかにきっちり対価(報酬金)は請求しますから」

「金取るの!?ボクただでさえ金欠なんですけど!」

 

 グレンの態度が一気に余裕のないものになった。彼の生活は(主にギャンブルが理由で)常にカッツカツであり、野草などで腹を満たす毎日だ。能力を発動させたソティルはもちろんそのことを知っているが、彼女の辞書に『同情』の二文字はない。

 

「そちらの事情なんて興味ありません。追手がこちらまで来ないうちに、さっさと作戦立てますよ」

「うっ・・・ソ、ソウダネ・・・」

 

 グレンは静かに涙を流していた。

 

「セリカは『なんとか女王陛下の前に来い』って言ってたが、そう言われてもな・・・いや、ソティルもいるし方法はないことは───」

 

 ふと、背中を何かが這い登るような感覚がグレンを襲う。それはグレンがかつて慣れ親しんでいた感覚───殺気だった。

 

「ちっ、言ってる傍からまた私の存在知ってる人間が増えましたね。二人ぐらいなら恐喝すれば・・・いや、ここは確実に認識操作で───」

 

 物騒なことをつぶやいているソティルの冷たい視線の先には二人の男女が立っている。

 一人は鷹の目のような鋭い双眸をした黒髪の青年。もう一人は人形のような青髪の少女だ。どちらとも魔術戦用のローブを着込んでおり、とても祭典に来る服装とは思えない。

 グレンが二人を認識した瞬間、青髪の少女は何かをつぶやきながらグレンに突貫してくる。

 

「ッ!グレン先生!ここは私が・・・・・ん?え?」

 

 迎え撃つようにルミアの一歩前あたりに立ったソティルだったが、猛スピードでこちらに向かってくる少女を前に素っ頓狂な声を上げる。

 

「あ、やっぱ先生お願いします」

「どういうことだよ!?」

 

 そして、まるで買い物を代わりに頼むかのような気軽さでグレンにあの少女の相手を押し付けた。

 そんな会話(茶番)をしているうちにも少女はぐんぐんと近づいてくる。その手にはいつのまにか大剣が握られていた。恐らくは彼女お得意の錬金術───高速武器錬成だろう。

 もうソティルの真意を問う時間などない。覚悟を決めたグレンは黒魔【ウェポン・エンチャント】の呪文を唱えた。グレンはこの少女───リィエル=レイフォードの恐ろしさをよく知っている。この少女と素手でやりあうなど論外だ。間違いなく瞬殺されるだろう。

 

「いいやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」

 

 リィエルが剣を振り下ろし、グレンがそれを魔力で強化した拳で受け止める。だがリィエルの膂力は恐ろしく、グレンの踏みしめる床が音をたてて砕けていく。

 

「先生ッ!」

「ふむ、あの子本気でグレン先生を殺しにいってますね」

「当たり前だろッ!?お前もこの脳筋止めるの手伝え!こいつの後ろにもヤバい奴が・・・」

 

 その言葉を話している途中で、グレンは青年が自分に向けて指を構えるのを見てしまった。あの青年───アルベルトは魔術狙撃の名手だ。完全に無防備な今のグレンを撃ち抜くことなど容易いだろう。

 もう終わりだ。【愚者の世界】もアルベルトは効果範囲内にいないので意味をなさない。だが、だからといってそれ以外であれに対処する方法なんて持ち合わせていない。

 

「ソティルッ!このままじゃ先生は本当に・・・ッ!」

「まあまあ落ち着いてください。そもそも先生もルミアも勘違いしてるようですけど、その二人は「きゃんっ!?」・・・普通このタイミングで撃ちますか?」

 

 雷閃が迸り、リィエルの後頭部に突き刺さる。アルベルトはグレンではなく、リィエルを狙っていたというわけだ。

 

「その二人は味方・・・と言いたかったところなんですけど、本当にそうなのか不安になってきましたよ」

 

 ぴくぴくと痙攣するリィエルを見下ろしながらあきれた口調で呟くソティル。

 一方、呆然とするグレンの前にアルベルトが駆け寄ってくる。

 

「ひ、久しぶりだな、アルベルト」

「・・・『ヤバい奴』とは、言ってくれるなグレン」

「あ、あああれは言葉のあやで・・・!」

 

 咎めるように冷淡な声色で話すアルベルト。対してグレンはアルベルトの言葉に明らかに動揺を隠せていない。

 

「・・・場所を変える。ついてこい」

 

 リィエルを引きずりながら路地裏へと進んでいくアルベルト。状況の読めないこの状況では、三人はそれについていくしかなかった。

 ちなみにソティルは目的地に到着するまで物珍しそうにリィエルを見つめていた。まるで()()()()()を見るような目で。




一か月に一話は出せるようにしますが、気が向いたときにしか書かないのでもしかしたらもう少し遅れるかもしれません。ご了承ください。
今回も説明が特にないので少し雑談を。
グラブルの話になるのですが、今回のイベント凄いです。シナリオも曲も細かく作られてて、ホントに劇場版です。グラブルのこと完全に嘗めてましたマジすいませんでしたって感じでした。
ちょっとでもグラブルが気になるなーという方はぜひ初めて見て下さい。五周年が近づいているのでもうなんか凄いたくさんプレゼントが貰えるはずです。
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