「グラブルの二次創作があまり出回らない理由はグラブルで忙しくて創作する時間がないから」って聞いたことあるんですけどアレって本当だったんですね・・・(違う)
「軍時代の決着をつけたかった、だと!?このお馬鹿!一体何考えてやがる!」
「グレン痛い」
先ほどいた路地裏よりもさらに奥まった場所で、グレンはリィエルの頭をグリグリと拳で抉っている。そんな二人の様子を見ていたルミアは苦笑していた。
「・・・・・えーと、この人達って軍人さんなんだよね?」
「ええ、私が先ほど説明した通りです。グレン先生の同僚だったみたいですね」
と、アルベルトが冷ややかな目をしながら深いため息をついた。
「・・・事態はとても深刻なものなんだがな」
「あ、いや、すまん。こいつの空気に流されちまった・・・だが、俺達もだいたいの状況はわかってるつもりだ」
「そこの白い髪の生徒は確かテロリスト事件解決にも深く関わっていたな。ルミア嬢の正体も知っているのだろうが、この生徒から情報を提供してもらったのか?」
「はい。【セルフ・ポリモルフ】を使ってカラスになり、空から親衛隊の会話を盗み聞きしたりしたんです」
アルベルトの質問に答えたのはソティルだった。
【セルフ・ポリモルフ】とは呪文を唱えた者の肉体構造を変化させ、様々な物体に変身させる魔術だ。変身する対象によって術式を変えなければならないという欠点もあるが、変身した物の能力を得ることができる。
しかし、ソティルにそんな魔術をいちいち唱える必要はない。今のソティルの発言は、アルベルトが自分の変身を遠見の魔術で観測している可能性があると考えたために咄嗟に思いついた証拠ゼロのハッタリだ。(もしもの時は視覚情報などを操作して証拠を作るつもりである)。しかしソティルは汗一つかかずに嘘の説明を続ける。
「たまたまルミアと彼女を抱えて親衛隊から逃げるグレン先生が見えたんです。親衛隊に手を出すのはマズいと思ったんですが、それでも二人を見殺しにしようとは思えませんでした。結局は私の得意な変身魔術で少しでも手助けになればということで今に至ります」
「・・・多少の疑問点は残るがまあいい。今は事態の収拾が最優先だ」
アルベルトがグレンに向き直る。気を取り直したグレンもリィエルを床へと下ろした。
「とにかく、女王陛下に直接面会すればこの状況はなんとかなるらしい。セリカの言葉だからまず間違いないだろうよ。あいつ、意味のないことは絶対言わないしな」
「わかった・・・俺達はどう動けばいい?」
「・・・テトラちゃんの言った通り、実力の差が出てきてるね」
「でも、あの士気の高さだったらもっと順位は高くなるはず。皆のやる気を削ぐような出来事があったとかなんだろうけど・・・どっちにしろ、このままじゃ一位にはなれないよ」
悔しそうに歯を食いしばるテトラだが、ふとその視界の端に見慣れた白髪が入ってくる。
「ただいま戻りました」
「あ!やっと戻ってきた!」
「少し野暮用が出来てしまっていて遅くなったんです。そんなことよりも・・・セラさん、少しこちらへ来てください」
言葉通りセラがソティルに近づくと、ソティルがその耳元で何か囁いた。その言葉を聞いたセラがすぐに笑顔で頷いたが、ソティルの声が小さすぎてテトラは何を話していたのか全く理解していない。純真なセラが笑ったということから、少なくともソティルがよからぬことを考えているわけではないことは想像がついたが。
「えーと、突然で申し訳ないんですが・・・グレン先生が諸事情でいなくなったんです」
「ああ、だからあんなにクラスの雰囲気が悪くなってるんだね・・・って、どうして私にそれを話したの?」
首を傾げるテトラ。ソティルはテトラの問いに答える代わりに、車椅子の取っ手をがっちりと掴んでいた。
「ちょ!?え!?まさか・・・皆のとこ行くつもり!?」
「カンがいいですね。姉さんをあそこに連れていきます。一応はグレン先生の代理がいると本人から聞きましたが、やはり代理ではさっきまでの高い士気を元に戻すのは難しいでしょう。そこで、姉さんの出番というわけです」
「・・・私、何すればいいのか全くわからないんですけど」
不安そうにボソッと呟いたテトラ。それに対してソティルが苦笑まじりの笑みを浮かべた。
「バカみたいに明るく振舞ってればいいんですよ。今でこそ怪我したせいでずっと暗い気持ちになってるんでしょうけど、いつもなら明るいっていう次元通り越してヒャッハーしてるんですから、大丈夫でしょう?」
「バカって何!?ヒャッハーって何!?私ってソティルにそんな感じで映ってるの!?」
励ましたいのかもっと不安にさせたいのかよくわからない言葉に、思わずテトラがツッコミを入れた。ヒャッハーなんて言葉をソティルが使うなんて夢にも思っていなかったため、その驚きと怒りは数倍である。
と、頬を膨らませて怒るテトラを見て、ソティルが声を上げて笑い出した。その顔には嫌味が一切含まれていない純度100%の笑みが浮かんでいる。ソティルが声を上げて笑うところを数回しか見たことがないテトラは、怒りも忘れて呆気にとられていた。
「冗談に決まってるでしょう?でも、姉さんのそういう素直な所は嫌いじゃないですよ」
気分が高揚しているのか、少し声を上擦らせるソティル。ソティルの珍しい言動を見ることができたテトラも、先ほどのような悪い気分ではなかった。
「実をいうと、クラスの皆さんは姉さんが来ていることを知らないんですよね。サプライズで姉さんが応援に来てくれたということを知るだけでも、ある程度は士気向上の効果があると推測します・・・ところで」
ソティルは取っ手を掴んだままセラへと向き直る。
「セラさんはついて来られますか?」
「・・・ううん、大丈夫」
「ふむ、了解しました」
セラは悲しげに微笑む。ソティルはその理由をある程度わかっているようで、理由を追及することもなかった。
「それでは姉さん。さっきよりもちょーーーーーっとだけ飛ばしますから、しっかり掴まっていてくださいよ?」
「・・・え?」
ぐわん、と身体が揺れる感覚とともに、テトラの見ている景色が目まぐるしく変わっていく。言うまでもないが、先ほどとは全く比べ物にならない速さだ。
「ソティルゥゥゥゥゥーーーーーッ!?は、速過ぎだって!?絶対能力使ってるでしょ!?」
「緊急事態なので」
「お願いだからもうちょっと安全運転で・・・ひぃぃぃぃぃぃっ!?今のぶつかってないの!?」
「ああ、このままじゃ『変身』競技が始まるまでに間に合いませんね・・・姉さん。私の言いたいこと、わかりますよね?」
「もうやめてえぇぇぇーーーーーーーっ!?」
この出来事はテトラの脳に深く刻み込まれ、テトラが二度と車椅子に乗らないと誓う決定打となった。
「なんとか間に合いそうですね。姉さんも疲れてるみたいですし、速度落とします」
「・・・死にそう」
ぐったりとしているテトラと、歩きながら乱れた髪を整えるソティル。テトラは少なからず
「この程度で人は死にませんよ。空の世界にあるレース用小型騎空艇なんてもっと速いですし」
「むしろそんなものがあるなら乗ってみたいぐらいなんだけど」
「あ、それなら競技祭が終わった後にでも乗せ───」
「お こ と わ り し ま す・・・!」
ソティルがいる後ろを振り返ったテトラ。
えげつないほどの疲労感によってその顔の表情はほぼ死滅していたが、その瞳の奥には断固たる意志が宿っていた。
「にしても、流石にそんな疲れ切ってる顔を見せても皆を不安にさせるだけですね」
「誰のせいだと思ってるの・・・!」
「はいはい、わかってますから・・・よっと」
ソティルは呆れた表情をしながらテトラの頭に左手をかざした。すると、清涼水を飲んだ時のような爽やかな感覚がテトラの体内を駆け巡り、気が付けば先ほどまで感じていたはず倦怠感が綺麗さっぱりなくなっていた。
「《ヒール・オール》と呼ばれる空の世界の治癒魔術です。本来なら、空気中の元素を利用して恩恵を得る技術なのですが・・・この世界を構成する元素と、空の世界を構成する元素がほぼ一致すると知った時は少し驚きましたね。それに違う歴史を歩んできたはずなのに、言語も一部を除けばほぼ同じですし・・・」
「能力はあんまり使ってほしくないんだけど・・・とりあえず、ありがと」
「え?ああ、はい。どういたしまして」
ブツブツと早口で何かを呟いていたソティルだったが、テトラからお礼を言われると思考の迷路から抜け出し、歯切れの悪い返事をした。
そんなことをしているうちに自分達のクラスメイトの元へと辿り着いた二人。彼女たちに真っ先に気がついたのは大柄な少年、カッシュだった。
「テ、テトラ!?皆!ちょっとこっちに来てくれ!」
カッシュの言葉を聞いて集まって来た生徒達が次々と驚きの声を上げる。その反応を見てテトラは困ったように笑った。
「あはは・・・皆、久しぶりだね」
「『久しぶり』って、一ヵ月ですのよ!それにその足!一体何があったんですの!?」
「大ケガしちゃったからしばらく両手両足動かせなくて・・・って、ソティルから説明されてないんだ」
「ソティルはなんというか、人と話すの苦手なイメージが・・・」
「聞かれたら答えるつもりでしたけど、システィーナとルミア以外には聞かれなかったので」
申し訳なさそうに目を逸らす小柄な少年セシルと反省の色一つ見せずに堂々と言い訳をしたソティル。ソティルが信頼関係を築く目的で誰かと話すことはほとんどない。しかし、やむを得ず誰かと会話するときには優しく穏やかな少女を演じるため、「ソティルは人と話すのが苦手」というイメージが生まれたのだろう。
そのあとにも生徒達から無数に飛んでくる質問に、たどたどしい口調で答えていくテトラ。ある程度質問に答えた後、彼女はその表情を神妙なものへと変える。
「休学してたから当たり前だけどさ。私、皆といた時間はソティルと比べてかなり短いし、競技の練習も一回も見に行ってないの。そんな部外者からこんなこと言われるのはイヤと思うだろうけど───」
テトラの声は真剣で、彼女の意志の強さをひしひしと感じさせる。そのせいか、生徒達には競技場からの喧騒も遥か遠いものとなっていた。そして、テトラの瞳が生徒達をくっきりと映し出すと───
「・・・全っ力で楽しんで!!」
彼女は太陽のような笑みを浮かべた。
「最初は『絶対に負けないでー』とか『私の分も頑張ってー』とか言おうと思ってんだけど、やっぱりみんなが楽しむのが一番って思ったんだ。それに、皆なら優勝なんて簡単じゃない?」
「だ、だけどもう点数差がこんなに開いてるんだし、なによりグレン先生が・・・」
「大丈夫大丈夫!これぐらいだったらすぐに追いつけるよ!うーん・・・グ、グレン先生は・・・」
代理の指揮監督が来たとはいえ、やはりグレン不在の穴は大きい。これに関してはどうにもならないと思ったテトラが別の話題に無理やり切り替えようとしたその時、システィーナが口を開いた。
「確かにグレン先生がどこで何やってるかはわからないけど・・・私達がやることは同じでしょ!せっかくここまで来れたんだから、諦めるにはまだ早いわよ!」
システィーナが堂々と宣言するが、まだクラスメイトは弱気のようだ。そんな彼らにシスティーナはさらに言葉を焚きつける。
「あのさ・・・先生がいない時に私達が負けたら多分アイツ『ごっめ~ん!途中でボクが抜けちゃったせいで~。でもやっぱキミ達、ボクがいないとダメダメなんだな~!ギャハハハハーーーーーーッ!!』とか言ってくるわよ、絶対に・・・」
瞬間、燃え尽きかけていたクラスの生徒達の闘志が一気に燃え上がる。
テトラとソティルがドン引きするぐらい皆熱くなっていた。
「ウザいですわそれはとてつもなくウザいですわ・・・!」
「あのロクでなしにそれを言われることは絶対に避けなきゃならないな・・・!」
「っしゃあ!テトラの仇、俺達がとってやるぜ!」
「いや、私死ぬどころか戦わせてすらもらえてないんだけど・・・」
この光景を見て、ソティルは内心システィーナに舌を巻いていた。テトラというサプライズゲストだけではグレンがいないことに対する生徒たちの不安は拭い去れなかっただろう。それをシスティーナという少女は、いとも簡単に吹き飛ばしてしまった。
「ありがとシスティ!あそこで助け舟を出してくれなかったら今頃どうなってたことか・・・」
「いいのよテトラ。でもね、自分のことを部外者っていうのはどうかと思うわ。誰も貴方をそんな風になんて見てないんだから、ちゃんと自分に自信持ってよね」
「・・・うん!わかった!」
システィーナとテトラが笑いあっていると、ソティルが車椅子の取っ手からその手を離し、システィーナの顔をじっと見つめる。彼女が先ほど自分に向けた冷たい視線を思い出し、システィーナは背筋が凍るような感覚を覚えた。
「何一つ成長していないと思っていましたが、完全に見誤っていましたね。貴方は着実に『魔術師』に近づいているようだ」
しかし、ソティルはほんの少しだけ口角を上げながらそんなことを呟く。システィーナは、はっとしたように顔を上げ、ソティルの深紅の瞳を見つめ返した。
「貴方ぐらいの年齢ではよくあることはいえ、すぐ天狗になる癖は直したほうがいいですがね。じゃ、私は観客席のほうに置いてきた家族がいるのでそちらに帰ります。姉さんはここにいたほうが楽しいと感じるでしょうから、ここに残していきますね」
「ちょ!?待って────」
テトラの願いも聞き届けられず、ソティルは足早に去っていった。それを見送っていたシスティーナは不機嫌そうに、それでいてどこか吹っ切れたような顔をしていた。
「変な奴ね。ソティルって」
「ぐぅ、否定できないなぁ。ソティルは皮肉を言ったり悪ぶったりしても、根っからの悪人ってわけじゃないと思うんだけど・・・」
「大丈夫よ、それはちゃんとわかってるから。でも、ソティルって案外かまってほしくてあんな言動してるんじゃない?」
「あ!それ有り得るね!本人の前で言ったら異空間とかに飛ばされそうだけど・・・」
「照れ隠しにそんなことするの!?」
「流石にそこまではしないけど、私達が編入するちょっと前なんて───」
(─────能力発動させてるから全部聞こえてるんですけど・・・・・・ッ!)
帰ってきてからずっと顔を真っ赤にして不機嫌そうに頬を膨らませるソティルに、セラはずっと首を傾げていた。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ソティルが元居た世界とは根本から違う世界で色々超常現象起こすのっておかしくね?と思い長考したのち、ロクアカの世界で水素(アクアス)って呼ばれる物質とグラブルの世界で水の元素って呼ばれる物質ってほぼ同じモノだといいなーという妄想をするという結論に至りました。
魔術という単語でもロクアカの魔術かグラブルの魔術かによって、不思議現象が起きる原理が違うから難しい・・・
ま、楽しいからいいんですけどね