白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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ペースは完全に不定期です
1日2本はまずないですけど筆が乗ったら2日連続投稿ぐらいはあるかも
1ヶ月投稿なしはありえる()


少女と死体と生き残り

「神を超える種族………?」

「ちなみに私は(マスター)からソティルと呼ばれていましたのでそう呼んでください。ちなみにソティルはどこかの世界の言語で救世主という意味らしいです。全く、(マスター)のセンスは私にはよくわかりません」

 

 やれやれと、華奢な首を横に動かしながら肩をすくめる紅眼の少女、『ソティル』

 

「そもそも私は、創世神バハムートをイメージして創られた生体兵器、『星晶獣』です。創世神と言っても、私は別世界から来たわけですし、この世界の神とは別物でしょうが。ちなみに本来の姿はさっきの竜の姿です」

「………あなたの目的はなんなの?」

「極端に言えばデータの収集です」

「でーた?」

 

 ぽかんとするテトラにソティルは抑揚の一切ない声で淡々と説明を進めていく。

 簡潔にまとめると、ソティルは何故かこの世界に来てしまい、空の世界に帰ろうとしたがこの世界のデータに興味を持ち、ここにしばらく滞在することにしたらしい(帰ろうと思えばいつでも帰れるとのこと)。

 データを集めるにはある程度発達した文明の中で長期間過ごし、様々な情報を手に入れなければならないが、竜の姿でそれを行うのはあまりにも非効率。そこでソティルは、テトラを蘇生する代わりに、その戸籍や姿などを借りるつもりでいるということだった。

 

「貸してほしいって、一体どうやって・・・」

「私が貴方の姿をコピーして、貴方と一緒に生活します。まぁ噛み砕いて言ったら私が貴方の双子の妹になるということですね」

 

 姉でもいいですよ、と無表情のまま冗談めかした口調で話すソティルにテトラは首を横に振る。

 

「………私は生き返らない。私なんかよりも生き返らせるべき人はたくさんいるはずだし」

「いえ、残念ながらもう生き返ることが出来るのは貴方1人しかいません」

 

 いちいち説明させるなと言いたげにため息をついたソティルはテトラに歩み寄り、胸──心臓辺りの部分を指でつつく。

 

「様々な能力や情報を手に入れた私ですが完全に死亡した生物の蘇生というのは難しい作業で、対象の魂がその身体の中に宿っていなければ、流石の私でも蘇生なんて無理です。あなたはあなたで身体の損傷が大きすぎるのですが・・・それはこちらでなんとかします」

「身体の損傷………?私、一体あいつに何されたの………?」

「教えてもこちらに利益がないのでその質問への回答は拒否します。さて、話を戻しますが、生物には死んでからその身体の魂が出ていくまでの時間に個体差があるのです。私が見つけた死体の中で魂が身体に残っていたのはあなた1人。他の人は魂が身体から離れているので蘇生は不可能、もう諦めてください。まぁ、私としてはあなたの家庭事情を覚えている人間が全員死んでいるのは記憶を偽装する手間が省けるので得なのですが」

 

 ソティルは憐れみのかけらもなく、ただ事実を淡々と話していく。この時の彼女(厳密に言えばこの存在に性別というものはないが)にとって人間が死ぬというのは道端で虫が死んでいるような感覚でしかなかったのだ。

 

「あ、そうだ。では、貴方とその家族に惨劇を与えた男に復讐と行きますか?その姿を貸してくれるのならその男を1時間以内に抹殺してあげます。ほら、悪い話ではないでしょう.?」

「そんなことは私も私の家族も望んでないよ。絶対そんなことはしないで」

 

 怒りを交えた目をソティルに向けながらその提案を切って捨てたテトラと、切って捨てられたソティル。だが、テトラの目を覗き込んでいるその顔は、不機嫌な時のそれではなく、いかにもテトラの言葉が以外だったという驚愕に似た表情だった。

 

「ふむ、人間とは全ての個体が欲望に忠実であるとデータベースには記録されていましたが………これはデータの修正が必要みたいです。まぁそれはまた後でもいいでしょう」

 

 驚愕の表情をもとの無表情に戻したソティルの言葉に怒気は含まれていなかった。

今のソティルの性格はあくまで「自分の正体を知る人の子とコミュニケーションをとるため」という目的に基づいて作られているため、交渉に不必要な「怒り」という感情はソティルから排除されていたのだ。

 

「さて、話を戻しますが、あなたの記憶を少し覗きました。あなたの家族は優しかったのですね。確かに我が子に復讐なんて望んではいないでしょう。ですが、あなたに『自分たちと一緒に死んでほしい』とも思ってはいないと推測します。これはデータに基づいた予想であり、異なる可能性もありますが」

「………確かにそうかもしれないね。私だって家族と同じ立場だったら生き返って欲しいもの」

「ならば蘇生を開始します。よろしいですね?」

「………うん。私、家族の分まで生きる」

「了承しました。蘇生を開始します」

 

 ソティルがパチンと指を鳴らすと同時に、周り一面に広がって蒼い空はその身を暗い闇へと変貌させる。テトラは自分の意識がその闇に溶けるような感覚を覚えた。

 

「安心してください。現実世界にあなたの意識を戻すだけです。これからよろしくお願いしますよ?()()()

 

 ソティルの茶化すような声を最後に、テトラの意識は闇に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚まして起き上がったテトラの目に最初に入ったのは小さい頃から慣れ親しんだ広場に、あるはずのないもの───あちこちに転がっている血まみれの死体だった。眼を完全に潰されていたり、足が無かったり、様々なモノがあった。中には頭があらぬ方向に曲がり、穴の空いた額から未だにドス黒い血が流れているモノもあった。

 

「ぅ………ッ!?」

 

 込み上げてくる吐き気を抑えるため口を押さえ、凄絶な光景から目をそらすと、そこには心象世界で見た「ソティル」と名乗る少女の姿があった。ソティルはこの光景を見てもなんとも思っていない様子だ。

 

「はぁ、脆弱な………いえ、戦いを知らない人の子だと思えば当然の反応ですか。ほら、手伝いますから立ってください姉さん」

 

 差し出されたソティルの手をなんとか取ってフラフラと立ち上がったテトラは頭を抑え、悔しそうに呟く。

 

「本当に生き残りは私だけ、だったんだね」

「いいえ、まだわかりません。検死をしたのはこの広場だけです。生き残り、または蘇生可能な死体が他の場所にあるかもしれません。借りを作ってこき使える人間はある程度欲しいですし、探しに行きましょう。あ、何か身体に違和感があったら言ってください。姉さんを蘇生させる際に私の身体の一部を使ったので」

「だ、大丈夫なのそれ!?」

「損傷率は8パーセント………私は自己修復が可能ですから問題ありません。むしろ姉さんが心配すべきは自分です。少しでも身体に違和感があったら絶対に言ってくださいね?」

 

 死体の中をなんの躊躇もなく歩いていくソティルと壁に手をつきながらおぼつかない足取りで進むテトラ。しばらくして、テトラの様子を見かねたソティルがテトラを背負うことを提案した。

 

「あ、ありがとう。やっぱり私、この中を歩くのは・・・」

「やはり無理ですか。この状況では精神状態も不安定になるのは人間にとっては当たり前でしょうし、仕方ないです。ところで、私もあなたの姿を借りるにあたって人間の感情は全てコピーしてプログラムに組み込んでいるのですが・・・データ不足でしょうか?ここは私も怖がった方がいいのでしょうか?」

「………いや、あなたも怖がったら進めなくなるでしょ」

「おっと、盲点でした。とにかく生き残りを探さねば」

 

 狭い路地をしばらく歩くと少し広い通りに出てきた。そこには広場以上の数の死体が積み上がっていた。辺りに充満した血の匂いに、テトラは苦い顔をする。

 

「うぅ………ッ!」

「これだけ死体があれば1つは蘇生出来るものもあるはず………ふむ、あの死体はまだ魂が残ってるようですね」

 

ソティルはテトラよりも少し大人びた少女の死体の前にたどり着く。

 

「対象、セラ=シルヴァース。軍所属の魔術師みたいですね。これなら良質なデータも得られそうです………ってッ!?」

 

 ソティルは急にその場に膝をつく。しだいにその顔は青ざめ、辺りに転がっている死体と同じような顔色にまでなってしまった。

 

「だ、大丈夫!?」

「全然大丈夫じゃありません。エネルギー残量が底を尽きそうです。ただでさえ燃費悪いのに能力酷使しすぎました。もうセラ=シルヴァースの魂との交渉はすっとばして蘇生に入ります」

 

 テトラの返答も待たずにソティルは少女の死体の胸に手をあて何かをブツブツと唱えると、ソティルの足元に時計の形を象ったような魔法陣が浮かび上がり、緑の美しい光を発する。すると、その死体の胸にぱっくりと開いていた傷はみるみるうちに塞がっていった。

ところが

 

「くっ、マズいですね………!」

「えっ─────!?」

 

 ソティルが危機を察知したかのように低い声で呟く。それにテトラが驚くと同時に、魔法陣は炎のように赤い輝きを増していき───────




テトラ=マーティン
まともな方の主人公。労働階級で貧困層の家庭で幸せな日々を過ごしていた普通『だった』少女。怠け者で能天気だが、根が真面目なため仕事はきっちりとするし、困っている人がいたらつい助けようとしてしまう。
美人だが服を買うお金もなかったためファッションにはかなり疎い。家事は完璧に出来るうえ、家計の管理などもしっかり出来る超人。
本人は認めようとしないがソティルから「言葉よりも先に手が出るタイプ」と指摘されている。
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