白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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元からイタかった文章がさらにイタくなってます。タイトルもてきとーに考えてる割にめっちゃイタくなってます。
最近フロムゲーの考察ばかり見てたのでその影響かも………
こっちのほうが書いてて楽しいので続けられたらこっちの文章で書きたいなぁ


「兵器」と「人間」

 ───リィエルがグレンを殺した。

 その様子を陰から見ていたソティルは心を落ち着かせようと状況を整理する。

 研究所の見学が終わって宿へと向かう途中、リィエルが何処かへと姿を消した。

 能力を駆使し、リィエルがいるゴーストタウンの港へとたどり着いたソティル。だが、同じくリィエルを探していたグレンは彼女に背後から大剣で貫かれたあげく、そのまま海へと投げ捨られてしまった。

 リィエルの背後には彼女と同じ色の髪を持つ青年がいた。どうやらリィエルはあの男から指示を受けたらしい。

 

「あらあら、何をしているんですか」

「………ソティル」

 

 ソティルはすぐにリィエルの前へと姿を見せる。

 リィエルが寝返る可能性があるのはデータから読み取っていた。そしてその時の対策も既に立てている。

 だが、まずは本当にリィエルが自分達に牙を剥く存在なのかどうかを見定める必要がある………

 

(………そんなもの、能力で彼女の感情を読み取ればすぐに判断できるというのに)

 

 ───わかっている。リィエルが既に自分の敵だということも、今すぐ彼女を殺すべきだということも。

 だが昨日まで自分の友として扱ってきた彼女を切り捨てることを、ソティルはこれ以上ないほどに恐れていた。

 ………兵器たる自分がこんな感情に足を引っ張られることになろうとは。

 ソティルは自嘲気味に口角を上げる。

 一方のリィエルは表情を一切動かずに淡々と事実を口にした。

 

「………グレンを殺した」

「何のために?まさか、貴方の後ろにいる男に惚れたとかですか?うわー、禁断の恋ってやつですかねー」

「………私は兄さんのために生きる。わかったら私に関わらないで。ソティルを殺したくはない」

 

 リィエルのその言葉を聞くと、余裕げだったソティルの表情が死滅していく。

 そして、彼女はぼそりと呟いた。

 

「………()()()()()()()

 

 地獄の底から響いてくるように暗く、だがどこか虚しさを感じさせる声に、リィエルと兄と呼ばれた男の背筋が凍り付いた。

 そんなこともおかまいなしにソティルは言葉を続ける。

 

「リィエル=レイフォード。お前は今、自分の意志で私達を裏切った。経緯がどうあれ敵は敵、私にとっての障害だ。害虫は実際に被害を出す前に駆除するのが基本なんだが………それでも構わないな?裏切者が」

「ソティル………?」

 

 毒を吐きながらもリィエルの世話を焼いてくれる優しい彼女はどこにもいない。

 そこにいるのはリィエルをただの排除対象()としてみる兵器だ。

 リィエルが動揺のあまりに後ずさりをする一方、ソティルが死滅した表情から一転して不敵な笑みを浮かべると、突如として蒼い光がリィエル達の視界を阻む。

 リィエル達が目を開けると、そこには先ほどと同じ場所にソティルがいた。

 爬虫類のような鱗に覆われた四肢を持ち、長く伸びた角を頭に生やした異形の姿となったソティルが。

 リィエルの兄と思われる青年はあまりの衝撃に腰を抜かしたようで、座り込みながらガクガクと身体を震わせていた。

 

「神経情報を操り即死させても構わないのだが………お前の本気は見たことがないからな。お前が死ぬ前にデータが欲しい。私から全力でお前の兄を守って見せろ。私が飽きるまでなら付き合ってやる」

「………兄さんを傷つけるのなら、ソティルが相手でも容赦はしない」

「悪いが、お前の手加減するしないに興味はない。さっさとかかってきてくれ」

 

 挑発するかのように手招きをするソティル。彼女が指を動かすたび、猛禽類のように鋭い爪が月光に照らされて不気味に輝いていた。

 しかし、リィエルは躊躇うそぶりも見せず、虚ろな目をしながら剣を構える。

 

「………兄さんは私が守るッ!いいいいいいいやぁあああああああ──────ッ!」

 

 ソティルに向かって突貫するリィエル。しかし、自分に向けて振り下ろされた大剣をソティルは呆気なく片手で受け止めた。

 正面から防がれるとは流石に予想できなかったのか、リィエルは眉をピクリと動かしながらすぐにソティルから距離を取った。

 一方のソティルは期待外れとでも言いたげな軽蔑を含む視線をリィエルに向ける。

 

「………弱いな。そんなものでは兄は守れないぞ?」

「───うるさいッ!」

 

 リィエルは大剣をソティルに投擲すると、新しい大剣を錬成。ソティルは恐ろしいスピードで向かってくる剣を先ほどと同様に片手で弾き飛ばしたが、その一瞬の間にリィエルはソティルに大剣が届く間合いへとたどり着いていた。

 ソティルのある部分を狙って横一文字に振るわれた剣。しかし、リィエルの攻撃は()()()()によって阻まれた。

 ソティルは自分が弾いた大剣を一瞬で拾い上げ、それを使ってリィエルの一閃を防御したのだ。

 

「その剣筋………鱗に覆われていない首を狙っているわけか」

「……………」

 

 答える必要はないと言わんばかりに無言で剣を構え直すリィエル。

 一方のソティルは戦闘中にも関わらず、拾い上げた剣を魅入られたように見つめ、感嘆の声を上げた。

 

「それにしてもこの剣は良い金属で出来ている。砂からここまで強度の高い物質を、しかも連続で作るとは中々の技術だ………さて、では次はこちらから仕掛けさせてもらう、ぞッ!」

「───ッ!?」

 

 ソティルがリィエルの視界から一瞬で消えたかと思うと、リィエルは後ろに誰かが立っていることに気が付いた。

 リィエルの後ろを取ったソティルは大剣を軽々と振り上げると、重力が許すままにリィエルに振り下ろす。 

 その一撃をリィエルは間一髪で防いだが、咄嗟の事で無理に体を動かしたために防御の構えを取れておらず、少しでも力を緩めれば押し切られるような状況だ。

 だが、ソティルが油断すればこの盤面はあっという間にひっくり返される。そんな一触即発の状況でソティルはゆっくりと口を開いた。

 

「………残念だ。本当に残念だよ、リィエル=レイフォード。お前の歪んだ他人への依存はルミアやシスティーナ、姉さんが直してくれると思っていた。私もお前に好感を持っていたし、本当の事を言えばまだお前と平穏な生活を送りたいと心の底から思っているさ」

「ぐ、ぐぅ………ッ!」

 

 ソティルが剣にこめる力は段々と強くなり、リィエルの足が砂へとめり込んでいく。

 

「だがお前は私達の敵となることを望んでいる。心の奥底では戦いたくないと思ってるとしても、危害を加えられる可能性があるのならば対策をしないわけにはいかない。生憎だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。私と敵対する限りはこの島から生きて出られないと思った方が賢明かもな」

 

 言い終わると同時にソティルはリィエルの脇腹へと蹴りを叩き込んだ。

 リィエルは天性の直感を持っている。人間が放つ蹴りならいとも容易く避けられるだろう。しかし、ソティルの蹴りは違う。

 彼女の蹴りはあまりにも速すぎるうえ───

 ───確実に(リィエル)を殺すつもりで放たれていた。

 

「酷く動揺しているように見えるが………私はお前を殺さないとは言っていない。この程度の蹴りで死ぬのならお前がそれまでだったということだ。先に言っておくが、兵器に命乞いなどという興が冷めることはしてくれるなよ?」

 

 地面に叩きつけられたリィエルは体中を走り回る激痛に言葉を返すことすらできない。

 そんなリィエルの様子を見てソティルは失望したようにため息をつく。

 

「………と、言いたいところなんだがな。エネルギーを大量に消費してまでお前のデータを取る必要性も感じられない………興が乗っている今のうちに終わりにすることにしよう」

 

 ソティルがリィエルに向かって大剣を構え、地を蹴る。

 リィエルの命の灯りは数秒後には消えているはずだった。

 しかし───

 

「………」

 

 ソティルは目標の首筋に剣を当てたまま、数秒の間硬直していた。

 普通の生活において数秒とは短いものだが、戦闘においてのソレは途方もないほど長い時間である。

 そして当然、幾多の修羅場を潜り抜けてきたリィエルがこんな大きな隙を見逃すわけはずもない。

 リィエルはすぐさま剣を錬成するとソティルの白い首目掛けて猛スピードで薙いだ。

 鈍い音と共にソティルの首が舞い上がると同時に、鮮血が辺りに飛び散った。

 首はそのまま暗い海へと落ちていき、浮かび上がってくる気配はない。

 残された身体も紅い血で服を染め上げながらゆっくりと倒れこみ、ぴくりと一度だけ痙攣したかと思うとそれきり動かなくなった。

 

「さ、流石は僕の妹だね。でも、アレも君の知り合いだったのかい?ごめんね、辛い思いをさせて」

「………大丈夫、兄さんは早くここから離れて。ソティルは私が食い止めるから」

「いいや、リィエル。君もルミアを連れて僕達の元へ来るんだ。僕達の潜伏しているところは特別でね。今のバケモノでも見つけられるわけないよ」

 

 不安がないと言えば嘘になるが、兄の言う事は絶対だ。リィエルはこくりと頷き、ルミアを誘拐するべく宿へと向かう。

 しかし、彼女の脳裏にはソティルの首が宙を舞う間に、こちらを睨みながら吐いた言葉がこびりついていた。

 

 ────次はお前達の首だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ッ!?」

 

 観光街で夕食を済ませ、他のクラスメイトよりも早めに宿へと戻ったテトラ。

 自室へと戻って早めに就寝しようと考えていた彼女だったが、ルミアやリィエルが泊まっていた部屋の前を通りかかった瞬間、その背筋は一瞬にして凍りつく。

 そのドアの向こうからは本当にかすかに、だが確実に───血の匂いがしていた。

 

「ルミアッ!システィッ!」

 

 慌ててドアを開けると、そこには目を覆いたくなるような惨状が広がっていた。

 大きく穴の空いた外壁、無残に裂かれたカーテン。

 そして辺りに飛び散った血の飛沫。

 

「なに、これ………!」

 

 激しく動揺するテトラだったが、すぐそこで立ち尽くすシスティーナに気がつき、急いで彼女の元へと向かう。

 

「システィ!一体何があったの!?」

 

 テトラの問いかけにシスティーナは蚊の鳴くような声で応えた。

 

「リィエルが………ルミアを連れて行って………先生も殺して、ソティルも首を刎ねたって………」

「………リィエルが?」

 

 テトラに困惑の表情が浮かぶ。ソティルは以前、コアを貫かれでもしない限り死なないと発言していた。『殺した』と言われていない辺り首を刎ねられても死ななかったのだろうが、グレンは恐らく───。

 

「とりあえず、二人は私が追ってみる………!」

 

 訓練によって代償なしで竜の力を使える時間は伸びてこそいるものの、リィエルの後を追いルミアを奪還するにはあまりに短すぎる。それに、テトラは暴走するかもしれないという不安からこの力を使うことを極端に恐れていた。

 だが、驚異の身体能力を持つリィエルを追うことは並みの人間には出来ないし、そもそも血の匂いを辿っていくには竜の嗅覚が必要になるだろう。

 ───竜になる。今の私にはそれしかない。

 そう悟ったテトラは精神を落ち着かせ、竜人となった自分を強烈にイメージする。

 すると腕や脚が炎を纏い、鱗を形作っていく。

 だが、

 

「………なんかいつもと違うな」

 

 テトラが無意識に呟く。

 訓練の時に竜人に変身した時は腕や脚だけに鱗が生えるのに対して、今日は肩や腰まで鱗がびっしりと生えそろっていた。

 

(………今はそんなことを気にしている場合じゃない、よね)

 

 テトラは血の匂いを辿りながらバルコニーへと向かう。

 

「待ってテトラ!」

 

 だが、システィーナが酷く震えた手でテトラの手を掴む。

 

「ダメよ………!いくらテトラでもリィエルには………!」

「システィ………」

 

 泣きそうな表情をするシスティーナに、テトラは優しく微笑みかけた。

 

「大丈夫。この鱗は特別でね、真銀(ミスリル)でも斬れないの。リィエルとルミアを連れ戻すぐらいなら簡単だよ」

「でも………!」

「………まぁ、絶対に勝てるって言ったらウソになるなぁ」

 

 テトラは苦笑しながら言葉を続ける。

 

「でも、もしここで立ち止まったせいでルミアやリィエルに会えなくなったら、多分私は今日のことを一生後悔する。そんなことになるくらいだったら一人で突っ込んで死ぬほうがまだマシかな」

「………ッ!」

「………そろそろ行かなきゃ、本当に間に合わなくなる」

 

 力のこもっていないシスティーナの手をそっと振りほどき、バルコニーへと出ていくテトラ。

 翼を広げ、空へ飛ぼうとした彼女だったが、何かを思い出したようにシスティーナへと振り向いた。

 

「システィはついてきちゃダメだよ。もしも私がリィエルに負けても、その時に貴方まで巻き込みたくない。システィにも出来ることはあるはずだからさ」

 

 テトラは最後にシスティーナに笑いかけると、巨大な羽を広げてバルコニーから勢いよく飛び立ち、暗闇の中へと消えていく。

 システィーナはその後ろ姿を呆然と見送ると、ある事に気が付いてしまった。

 

「私、テトラについていこうなんて少しも思ってなかった………」

 

 ボロボロになったカーテンのなびく音が、部屋に響く。

 

「………仕方ないじゃない」

 

 突然システィーナは誰へともなく、そう呟いていた。

 

「そうよ………私なんかがテトラについていったって足でまといになるだけだし………私は他の人に助けを───」

 

 独白はそこで途切れ、システィーナはその場に膝をついた。

 

「………違う」

 

 涙が翠玉色の瞳から溢れ出す。

 

「私はただ怖かっただけじゃない………!」

 

 ───怖かった。

 あのぎらぎらと光る無骨な大剣がまた自分に向けられたら?

 修羅場を幾度となく潜ってきたリィエルに、多少戦闘訓練を受けただけの素人であるシスティーナが勝つのは絶望的だ。

 高確率で自分は血だまりに沈むことになるだろう。

 だがそれでも、大切な友であり、家族でもあるルミアを守ろうと戦うべきだった。

 少しでもテトラの助けになろうとすべきだった。

 だがシスティーナは恐怖に苛まれ、勇気を出すことが出来なかったのだ。

 訓練のおかげで私は強くなった………嗚呼、なんたる傲慢か。

 結局、自分はずっと誰かから守られていたテロリスト襲撃事件から、何も変わってなどいない。

 その勇気が無謀とほぼ等しいものとも気づかず、システィーナが自己嫌悪の沼へと引きずり込まれた………

 ………その時だ。

 

 ばぁんっ!と部屋の出入り口が乱雑に蹴り開けられ、そこにはずぶぬれの黒い外套に身を包み、血まみれの誰かを背負う青年───アルベルトがいた。

 アルベルトは一言も喋らずにずかずかと無遠慮に部屋の中へと入り、背負っていた誰かをベットに放り投げた。その人物は───

 

「せ、先生ッ!」

 

 アルベルトと同じく、ずぶぬれになっているグレン。その顔は青白く、背中にはぱっくりと大きな傷が開いていた。

 放っておけば死ぬと断言できるほどのその大きな傷を見てパニック寸前のシスティーナを気遣う様子もなく、アルベルトは淡々と述べる。

 

「システィーナ=フィーベル。今のこいつに【治癒魔術】は効かん。だが、お前の類まれな魔力容量(キャパシティ)を利用すればこの男を救えるかもしれない。お前以外には不可能なことだ………力を貸せ」

「………!」

 

 次から次へとシスティーナに襲い掛かる過酷な状況と現実。

 今すぐ理性を手放して楽になりたい。

 そんなことを考える彼女だったが、二つの言葉がそれを実行させまいと必死にシスティーナを現実へと押しとどめていた。

 一つはかつてルミアが天の智慧研究会の策謀により、王国親衛隊に追われていた時にソティルが放った言葉。

 ───脅威とは日常を送っている中で突然に訪れるものですからね。

 もう一つは先ほどテトラがシスティーナに向けて送った言葉。

 ───システィにも出来ることはあるはずだからさ。

 

「───わ、わかりました」

 

 システィーナが手の甲で涙を拭う。

 

「………何を、すれば………いいんですか………?」

 

 こんなことで毎回動揺していたんじゃ、ルミアを守ることなんて絶対できない。

 戦えなくていい。今の私が為すべきことを為すんだ。

 身体は震えているが、彼女の瞳に決意が籠っていることを確認したアルベルトはほんの少しだけ口の端を緩めた。

 

「役に立つ確率は低いと踏んでいたが………成程、温室育ちにしては骨があるな。グレンが目をかけるだけのことはある」

 

 すぐに元の冷徹な表情に戻ったアルベルトは説明を始める。

 

「俺達が今から始めるのは施術者の生命力を被術者へと増幅移植する白魔儀【リヴァイヴァー】だ。並みの治癒魔術ではこの男に現存している生命力が足りないからな。お前は俺と仮サーヴァント契約を結んで───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴーストタウンの近くに位置し、滅多に人が寄り付かないある浜辺。

 そこには首に不自然な結合跡が見られる少女が辛そうに頭を押さえていた。

 

「情報が見えない………クソッ、ジャミングか。天の智慧研究会に魔晶を渡した奴の仕業だな。グレンとアルベルトの場所はだいたい見当がつくが、移動していた姉さんは一体どこに向かったんだ………」




ソティルの一人称が本気モードの時は「我」になるっていう設定、無かったことにしようかと考えてたりします。でもこれは伏線の一部にしたいなぁなんて思ってたりも。
次回の投稿もだいぶ先になるとは思いますがご了承ください。
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