白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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あとがきに文章の添削について書いてます。
ちょっと長めに書いてるので注意しておいてください。


鎮圧戦

 テトラが竜となり、保管庫を後にしていたちょうどその時、グレン達は彼女が先ほどまで通っていた通路を通っていた。

 ソティルにテトラと同じ気配を感じていたのか、道中で合成魔獣(キメラ)が襲ってくることもなく、彼らは順調に歩を進めていく。

 が、ある部屋に入った瞬間にグレンが足を止めて、狼狽したように声を絞り出した。

 

「なんだよ、これ………ッ!」

「………」

 

 薄暗い部屋にちらつく炎、先ほどまで戦闘が行われていたと一目でわかる破壊痕、そして───辺り一面に転がるヒトの脳髄。

 グレンは吐き気を抑えながら拳闘の姿勢をとって辺りを警戒し、アルベルトも表情をいつも以上に険しくしている。

 ただ一人、意識ここにあらずという状態だったソティルだったが、しばらくして夢から覚めたような表情をするとぼそりと呟いた。

 

「………やっぱりお前達はここで待ってろ」

「………は?」

 

 ソティルの突然の言葉にグレンが素っ頓狂な声を上げた。

 

「弱体化した状態で調べられることは調べたが、姉さんは既に暴走を始めている。しかも厄介な能力をまた新しく手に入れたらしい。想定内の範囲ではあるがな」

「………能力?」

「ああ、この世界の魔術理論で説明できるから一応は魔術とも呼べるのだろうが………マナや万能素(オリジン)に干渉して、周りで起きる変化を歪めてしまうらしい。物理攻撃は今のところ対象外だが、魔術師(お前達)にとってはまさに天敵のような存在だろうな………誰かさんの【愚者の世界】と同じように」

「………」

 

 ───俺はまたアイツを救えなかったのか。

 グレンの堅く握られた拳がギリギリと音を立てる。

 

「ここからすぐ先の部屋に姉さんは向かっている。魔術も使えない状態で竜に挑むのは無謀だ。私一人でリィエルとルミア、そして姉さんのことを何とかして───」

「不可能だ。お前もわかっているだろう?」

 

 ソティルの言葉をアルベルトが冷たく切り捨てた。

 

「俺は先ほど天の智慧研究会のアジトからお前についての資料を押収したと伝えたな。そこにはお前の燃費の悪さ、そして弱体化(デバフ)の効果についても記載されていた」

「………やっぱりこのジャミングは研究会かそのお仲間の仕業というわけだ。だが、私のエネルギーはまだ有り余って───」

「ほざけ、弱体化(デバフ)の影響をモロに受けている今のお前では、能力を数回使っただけで機能停止だろうが」

 

 アルベルトから咎めるような視線を向けられ、ソティルが気まずそうに視線を逸らした。

 完全に図星である。

 ソティルならセリカのようにどんな状況もなんとか出来るだろうと考えていたグレンだったが、この事実を聞いて黙っているほど楽天家ではなかった。

 

「おい、ソティル。今のアルベルトの言葉が本当なら、流石にお前だけでこの状況をなんとかするのは無理だと思うぜ。ここは俺達大人の力を借りてみないか?」

「………確かに見てくれは少女だが、私は眠ってた期間も含めればお前達よりもずっと年上………じゃなくて、さっきも言ったように姉さんの周りで魔術を使ったら何が起こるかわからないんだ。お前達でも魔術を使えない状態じゃ姉さんにすぐ殺されるぞ」

 

 ソティルがきっぱりと拒絶の意志を示したが、グレンはため息をつきながら反論する。

 

「じゃあその能力の範囲内じゃない場所で強化魔術使ってから戦えばいいじゃねえか。【ウェポン・エンチャント】とか、【フィジカル・ブースト】とか」

「それはそうだが効果が切れた時には何も出来なくなるのでは───」

「いや、切れる前に短期決戦でテトラを寝かしてやりゃいいだけだろ」

「もしもの事を考えるべきではないのか………?」

 

 それからもソティルはグレンを説得しようと試みたが、グレンはどうしても引くつもりはないようだ。

 話が平行線になっていることにイラついているソティルとは違い、彼はニヤニヤと不敵に笑っている。

 

「これは俺なりのアドバイスだがな、勝ちってものには大なり小なり、リスクがつくものだ。確かに『最悪のケース』を考えるってのは大事なことだな。けど、いつまでもそんなモン考えて戦ってたら、拾える勝ちも拾えなくなるぜ?」

「………リスク、か」

 

 しばらく腕を組みながら唸っていたソティルだったが、突然諦めたように肩をがっくりと落とすとグレン達を紅い瞳で見据えた。

 

「………わかった、強化魔術はここで使っていけ。今の私じゃ能力の範囲がどれくらいかいまいち掴めなくてな。ここが範囲の中じゃないことしかわからないんだ」

「悪いなソティル。だが、俺はこれ以上誰かを失いたくないんだよ。もちろん、お前もな」

「………再度言っておくが、俺の目的はあくまで女王の奪還だ。テトラ=マーティンの鎮圧やリィエルの説得が不可能だった場合、それなりの覚悟はしてもらうぞ」

 

 大まかな作戦を立てた後、グレンとアルベルトが自らに様々な呪文を付呪(エンチャント)し始める。

 ちょうど二人が最後の強化呪文を詠唱し始めたその時。

 これは聞き流して貰ってもいいんだがな、と前置きして、ソティルが二人にテトラが暴走するまでの経緯を語り始めた。

 

「ここはバークスが異能者を実験していた部屋だ。そこらに転がってる脳髄も彼らのもの。姉さんもこれを見て相当ショックを受けていた。だが、あの人は生存者を見つけたらしい………結局、その希望もあのバークスとかいう屑によって打ち砕かれてしまったが」

 

 ソティルの視線は、床に転がる脳髄とは明らかに別物の肉塊へと向けられていた。

 肉塊のところどころから覗いている服の切れ端はバークスが着ていたものだ。

 

「自分の作った合成魔獣(キメラ)をあっけなく撃退した姉さんを恨んだバークスによって、姉さんが見つけた生存者はあっけなく殺されてしまった。異能者を人とすら思っていないバークスからすれば、姉さんに嫌がらせしてやろう程度の考えだったようだ」

「………」

「だが、バークスに標本にされた人間は姉さんのようにある日突然平穏を奪われたような者ばかりだ。だから姉さんは自分と同じ………いや、もっと酷い境遇にいたその子を救いたいと本気で思っていたんだろうし、救えたであろう人を目の前で殺された時には本気でバークスを憎んだんだろう………そうじゃなければ、バークスはあんな姿になってない。」

 

 ソティルは肉塊から視線を外すと、舌打ちをした。

 その表情には並々ならぬ後悔が滲んでいる。

 

「………畜生」

 

 彼女が怒りを向けているのは自分自身。

 破格の力を持っていながら、それを満足に扱えない自分の技量不足に対するものだった。

 

「私の想定が甘かった。この施設で何が行われているか綿密に調べていれば、もっと早く動いていれば、その生存者を救えたかもしれない。姉さんの心に深い傷を負わせずに済んだかもしれない………もう少女の蘇生は不可能。こんなことを考えても意味などないんだがな」

「………」

「ああ、クソ。ホントに私は(ぬる)くなったようだ。名前も知らない少女の死で心を痛める日が来るとは思いもよらなかった。誰のせいかと言われれば、何人でも候補は上がってくるんだが」

 

 自らの本音を吐露できたことで多少は頭が冷えたのか。

 ソティルはふぅと大きく息を吐くと、ある通路を指さした。

 よく見ると、そこには奥へと続いている巨大な足跡が残されている。

 

「この先にルミアもリィエルも、そして姉さんもいる………今は助けられる者の事を考えるべき、だよな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、ひぃ………ッ!」

 

 壁に映し出された映像を凝視して震え上がる青髪の青年。

 そこには血に濡れた黒竜が狭い通路を破壊しながら闊歩していた。

 目的地は青年がいる場所。

 

「ま、マズい………アイツ、真っ直ぐこっちに向かってきてる………」

 

 青年の脳裏にバークスの悲惨な結末がよぎる。

 次にあの姿になるのは恐らく自分達だ。

 

「嫌だ………死にたくない………死にたくない………ッ!」

 

 頭を抱え、うわ言のように同じことを呟き続ける青年。

 

「兄さん」

 

 と、彼の後ろから()の声が聞こえた。

 振り返ってみると大剣を錬成した少女が幽鬼のようにフラフラとした足取りで扉の方へと向かっている。

 

「私がテトラを食い止める。兄さんは儀式を続けて」

「あ、ああ!流石は僕の妹だな!例の素体が完成すればすぐに加勢させる!それまでよろしく頼むぞ!」

 

 そうして青年が儀式方陣で作業を開始した数十秒後、入口から鈍い音がすると同時に鉄製の扉が吹き飛ばされ、奥の壁へと激突した。

 幸い青年や儀式用の器具は無事なようだが、彼にとって最大の試練はここからである。

 案の定と言うべきか、ドアの先の暗闇から現れたのは先ほどバークスを一蹴した黒竜だった。

 

「───ッ」

 

 儀式の一部として組み込まれ、鎖付きの手枷で吊られていたルミアが小さく息を飲む。

 そこにはもう友の面影はない。

 彼女が変身した竜の瞳からは、溢れんばかりの負の感情がはっきりと感じとれてしまった。

 無論、ルミアはテトラの暴走を甘く見てなどいなかった。だが、あの心優しいテトラの中にここまで狂暴な存在が閉じ込められていたとは彼女と言えども想像できていなかったのだ。

 

『…………』

 

 そんな黒竜の双眸に映った最初の人間はリィエルの兄と名乗るあの青年だった。

 竜が獲物(ターゲット)を定めた瞬間、さっそく魔法陣へと異変が起きる。

 

「………ッ!」

 

 青年の触っていた方陣がぐにゃりと歪み、その周りを結界のように紫電が踊り始めた。

 黒竜が纏う歪みの空間は既に儀式方陣へと干渉していたのだ。

 方陣へと近づけないのならば、儀式は中断せざるを得ない。

 だが、青年の注意は既に方陣から別のモノへ向いていた。

 無論、その対象は彼を睨みつけている黒竜である。

 そして───

 

『ア、アァァァァァァァ………!』

 

 黒竜は悍ましい唸り声を上げ、青年へと猛進していく。

 魔術師とはいえ、ただの人間である青年が突然自分を襲ってくる竜へと対処する方法など知っているはずもなく、彼は恐ろしい速さで後ずさりを始めた。

 しかし、彼らがいる場所は狭い部屋の中。彼もまた、先ほどのバークスと同じようにすぐに壁の端へと追いやられる。

 そのまま青年は鋭い爪の餌食となる───そう思われていた。

 ところが、竜の進行は青い旋風によって遮られる事となる。

 

「いいいやぁあああ───ッ!!」

 

 リィエルは竜の頭上へと飛び上がり、その左目へと重力の許すがままに大剣を振り下ろす。

 いかに竜といえども目玉を潰されてはひとたまりもない。

 

『ガァアアアアアアア────ッ!?』

 

 竜は左目から鮮血を流しながら自分を傷つけた存在へと目標を変えた。

 残った右目で大剣を構える少女を視認した竜は前脚で彼女を押しつぶそうとする。

 だが、そんな単調な攻撃を易々と受けるほど特務分室のエースは甘くない。

 リィエルは床を蹴って竜から距離を取ると、血に濡れた大剣を竜の右目めがけて投擲した。

 竜はその剣を尾を器用に使って叩き落としてしまったが。

 

「くっ………!」

 

 リィエルはもう一度新しく大剣を錬成するために右手を床に───

 

「やめとけ」

「───ッ!?」

 

 リィエルの視界の端で踊る白い髪。

 それと同時にリィエルは何者からか首筋に手刀を入れられ、その意識を刈り取られていた。

 リィエルの戦闘勘は新たな敵の存在など感知していなかったが───。

 

「お前なら大剣を錬成したらマズいって勘でわかると思ってたんだが………余計なことを考えすぎていたみたいだな」

「ソティル!先生!」

 

 リィエルを見下ろすソティル。ルミアの声にも気づいているようだが、今は彼女と話をする余裕すら持っていないようだ。

 そして、それはソティルの後ろにいる二人も同じだった。

 グレンは自分達を睥睨する竜に脂汗を流し、アルベルトは戦闘態勢へと入っている。

 

「どんな姿をしていても受け入れる覚悟はしてたが………想像以上にヤバい目してんな。冗談抜きであのテトラとは思えねぇ」

「………俺はあの目から《正義》を語っていた()()()の目と同じモノを感じるがな」

 

 二人が苦い顔をする隣でソティルが背中に生えた羽をバサバサとはためかせた。

 

「さっき説明したあの能力は任意発動らしくてな。姉さんが意識を失えば自然と解除されるらしい。能力が解除されたら私が無理矢理にでも元の姿に戻してやる………グレン、お前はリィエルを安全な場所に運んでほしい。後は作戦通りだ」

「わかった!トドメは任せるぜ?」

 

 グレンがリィエルを背負ったことを確認すると、アルベルトは懐からナイフを取り出していた。

 彼は任務に赴く際は何十本ものナイフを常備している。

 それらがただのナイフならば竜の鱗に通るはずがない。しかし、肉体強化が何倍も為された状態で、しかも魔術的強化を受けているナイフを投擲するのならば話は別だ。

 アルベルトが音速にも劣らぬ速さで投げたナイフは、竜の鱗へといとも容易く突き刺さった。

 痛覚を倍加させる呪詛により、精神に直接響く痛みを与えられた竜は耳をつんざくほどの咆哮を上げながらのたうち回る。 

 だが、そんな怨嗟の咆哮に臆することもなく、アルベルトが新しいナイフを構えた。

 

「………奴に逆鱗はあるのか?」

 

 アルベルトの問いにソティルがふるふると首を振る。

 

「私は竜の姿こそしているが、構造が根本的に異なる。それは私のパーツの影響であんな姿になっている姉さんも同じ………狙うなら目玉だな。リィエルが既に片目は潰しているから、もう一方を潰せば無力化できる」

「………奴は既に俺のナイフを脅威と見なしている。それに加え、お前も充分に警戒されているようだ」

 

 竜は自分に対して攻撃を仕掛けたアルベルトに殺意の籠った瞳を向けているが、同時にソティルにも意識を割いているようだ。

 

「どうやって私の力を悟ったのかはわからないが、ここまで警戒されていては目玉を攻撃するなど夢のまた夢か………」

「………ふん、グレンは戻るのを待つぞ」

 

 アルベルトが新たなナイフを投げ、ソティルが翼を羽ばたかせ竜へと突貫する。

 ナイフは再度竜の鱗へと突き刺さり、竜が激痛に唸り声を上げる。

 しかし、その痛みに対してはある程度耐性が出来ていたのか。

 竜はソティルを目にすると、鞭のようにしならせた尻尾をソティルの横腹へと叩きつけた。

 思いきり吹き飛ばされたソティルは受け身をとって衝撃を抑えたが、それでも甚大なダメージは免れることは出来なかった。

 

「ちぃ………ここまで厄介になるとは思わなかった。だが………」

 

 ───それは一瞬の事だった。

 乾いた音と共に竜の瞳から血しぶきが噴き出す。

 ナイフで傷をつけられた時以上の叫びをあげる竜に、一部始終を部屋の端で見ていた青髪の青年は気絶寸前だ。

 

「………悪いな。闇討ちってのは俺の専門分野なんだ」

 

 いつの間にやら現れていたグレンの右手にはいつの間にか筒先から硝煙が揺らめく《ペネトレイター》が構えられていた。

 相手に自らを警戒させる間もなく、その銃弾を正確無比に急所へと打ち込む。

 ───彼を外道魔術師から恐れられる《愚者》たらしめた絶技の一つだった。

 

「助かった!後は私がやる!」

 

 竜の頭上へと飛び上がるソティル。

 狂乱のままに盲目となった竜が暴れるが、ソティルはその無差別攻撃を(かわ)し続けて───

 

「───寝てろッ!」

 

 無防備となった竜の脳天へとかかと落としを炸裂させる。

 恐ろしい膂力で繰り出されたソレは竜をそのまま頭を地面へと叩きつけ、意識を刈り取るには充分すぎる威力である。

 竜は小さく唸り声を上げると、ピクリとも動かなくなった。

 

「………ふぅ、後は元の姿に戻すだけだな。弱体化してる今の状態でもこれくらいはできるはずだ」

 

 ソティルが座り込み、竜の頭へと手を触れる。

 すると、彼女の竜化した部分が蒼く輝き、その光が接触している部分を通して竜へと吸い込まれていく。

 竜の身体は蒼い粒子となって溶けていったかと思うと、そこには傷だらけのテトラが倒れていた。

 苦し気な表情こそしているものの、気絶しているだけのようだ。

 安堵のため息をつきながら立ち上がったソティル。

 ───そんな彼女を風切り音と共に猛回転した大剣が襲い掛かった。

 不意打ちには完璧すぎるタイミング。

 しかし自身の首筋へと肉薄する大剣を彼女はあっけなく弾き落とし、その大剣の主を睨みつけた。

 

「………随分と速いお目覚めだな、リィエル」

「ちぃ、《マジック・ロープ》で縛っといたのに、脱出するの速すぎだろ………」

「引き千切った」

 

 グレンから零れた愚痴に、リィエルが普通の魔術師では考えられないような答えを返す。

 リィエルとグレンのどちらに対してかは定かではないが、アルベルトが少し呆れたような顔をしていた。

 

「リィエル、私に攻撃を加えたってことはまだ戦う気なんだな?」

「………兄さんの邪魔をする貴方達も、テトラも、敵」

「ほう?じゃあ相手してやる───と、言いたいところなんだが」

 

 ソティルがパチンと指を鳴らす。

 瞬間、リィエルの身体が()()()()()

 身動き一つとれないリィエルが苦悶の表情を浮かべていると、グレンがリィエルの前へと進み出る。

 

「安心しろ、お前の神経情報をちょっといじっただけだ。グレン大先生がお前に話したいことがあるそうだからな。お前をどう料理するかはその後に考えるさ」

「お、お前達!僕の妹に何をする気だ!?」

 

 リィエルの不利を悟ったのか、青年が金切り声を上げる。

 

「何が妹だ!お前はその『妹』に危険を全部押し付けて、部屋の隅でガタガタ縮こまってたんだろうがッ!」

 

 だが、グレンに憤怒の籠った視線を向けられた青年は言い返すことも出来ず、完全に及び腰になってしまった。

 それに対してグレンはその憤怒が許すまま、更にまくし立てる。

 

「お前達が今から行おうとしてた儀式は『Project:Revive Life』───『Re=L』計画だろ!そもそも、こいつの事を『リィエル』って呼んでる時点でお前はもう兄貴じゃねえんだよ!」

 

 『Re=L(リィエル)』計画。

 恐ろしい真実の予感に、動けないはずのリィエルの身体がガタガタと震え始めた。

 

「ぎ、儀式………?なんで………私の名前が………」

「おいグレン、アルベルト。こいつの記憶をこじ開けてもいいか?ちょっと無理すれば弱体化した今の状態でも出来る」

「………俺は構わんが」

「………」

 

 アルベルトと違い、決めあぐねている様子のグレン。

 

「いや、お前が持ってる『例のキーワード』から記憶の封印を解いてもいいんだ。だが、リィエルが自分の立場を把握するためには、私の能力で細かい情報まで開示した方が手っ取り早いと思ってな」

 

 グレンが無表情のソティルと不安げな表情のリィエルを交互に見て───

 

「………すまん、頼む」

「わかった。リィエル、多少の覚悟はしておけ」

「え………」

 

 ソティルがリィエルの頭をすっと撫でると、リィエルを激しい頭痛が襲った。

 

「………()()()()()()、リィエル」

 

 ソティルの悲しげな謝罪と共に、リィエルの脳内に様々な情景がフラッシュバックしていく───。




一話から十一話まで文章を添削しておきました。
いや、うん、文が途中で終わってたりとか誤字とかだいぶ酷かったですね。
今後はしっかりと確認してから投稿するようにします。申し訳ありませんでした。
十二話から先の文章も添削したいのですが時間が許してくれず………。
新しい話から先に投稿するという決断をするに至りました。
次からは二十六話の制作と並行しながら添削することになるかな。
次話の投稿にもだいぶ時間がかかると思いますが、気長にお待ちくださいませ。

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