白と黒のワイルドカード   作:オイラの眷属

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多分どっかで1週間で1回投稿になると思います


異常な日常の始まり 前編

 セラ=シルヴァースが目を覚ましたのはある一室のベッドだった。隅から隅まで掃除が行き届いており、居心地のよい場所ではあった。しかし、セラにこの部屋の見覚えなどない。ならば誰かが自分をここまで運んできたということになる。

 意識を失うまで自分が何をしていたかよく思い出せないが、外道魔術師達が自分を人質として扱う可能性もある。

 

 起きたばかりでまだ朦朧としている意識を無理やり鼓舞し、この部屋から出ようとドアノブに手をかけたその時。

 ギィ、という音とともに少女が部屋の中に欠伸をしながら入ってきた。

 鮮血のように紅い瞳を持ち、セラの髪とは比べ物にならないほどにくすんでいるその白色の髪もその瞳の美しさをより一層に際立たせていた。

 

「姉さん、今起きたので何か軽い食事を………あれ?」

 

 今起きたという言葉の通り少女の髪は乱れきり、その紅眼は眠たげに細められていた。少女はセラに気がつくと困ったように頭をかく。

 

「起きられたんですかセラさん。ところで私と同じ顔をしている女の子を見ませんでした?テトラっていう名前なんですけど」

「あ、え?い、いや、見てないよ」

「そうですか………わかりました。なら少し待っていてください。あなたの生き返った経緯やその身体になった理由はあの子と一緒に説明させてもらいますから」

「生き返っ────」

 

 その瞬間、自分が意識を失う───否、死ぬまでの光景がセラの脳内に瞬時に思い浮かんでくる。

 そしてその瞬間気づけば白髪の少女の肩を掴み、ある人の名前を口に出していた。

 

「グレンくんは!?グレンくんは生きてるの!?」

「グ、グレン?ああ、いましたねそんな名前の青年。深い傷を負って気絶こそしてましたが、命に別状はなかったようでしたよ」

「そ、そうなんだぁ。よかった………」

 

 ほっと肩を撫で下ろすセラ。そんな様子を見ていた少女は首を傾げながら、なんのためらいもなくある禁断の質問をセラにする。

 

「彼、気絶しているのにも関わらずあなたの名前を何度も口にしてましたけど、あなたの想い人か何かですか?いや、少なくともあなたが彼をそういう対象として見てるのは解析済みなのですが」

「………ふぇっ!?」

 

 いきなりグレンに対する想いをすっぱりと当てられ、トマトのように顔を赤くして手をブンブンと振り回して否定するセラ。

 

「ち、違うのっ!グレンくんとは別にそういういかがわしい関係じゃなくて─────」

「ソティルー?ここにいるの………ってセラさん起きてんじゃん!?ご飯作ってあげないとダメでしょ!3日も飲まず食わずだったんだから!」

 

 扉を開けた黒髪の少女はセラが起きているのに気がつくとドタドタと扉を開けたままにしてどこかに行ってしまう。

 

「はぁ………相も変わらず騒がしい人だ。あれがさっき話してた私の一応の姉、テトラです。基本的な家事ならなんでも出来るので仲良くしてやってください」

「2人で?両親の方は何をしてるの?」

「彼女の両親は先の天使の塵(エンジェル・ダスト)事件に巻き込まれて亡くなりました」

「えっ───」

「ああ、あまり気負わないで下さいね。姉さんはあなた方のことを少しも恨んでは………いえ、訂正します。少しはあなた方のせいもあると思ってます。ですが本当に少しだけなので気負わないでください」

「ソティル!?そんなセリフで気負わないでくださいって言っても逆にストレスだよ!?」

 

 ソティルの重苦しい発言に鋭いツッコミを入れながらも今度はおかゆを持ちながらゆっくりと部屋に入ってきたテトラ。おかゆをベッドの近くのテーブルに置くとセラにベッドに腰掛けるように促す。

 

「とりあえずおかゆを作ってきました。熱いので気をつけて食べて下さいね」

「あ、ありがとう………」

 

 そんな様子を見ていたソティルが拗ねたように白髪を弄り出す。

 

「なんでテトラとセラさんの方が私よりも姉妹感出してるのでしょうか………なんか負けた気がします」

「『姉妹』って、私とソティルはまだ会ってから3日しか経ってないでしょ?ほら、早くご飯食べてきてよ」

 

 テトラに急かされてしぶしぶ部屋をあとにしようとするソティルだったがああその前に、と言ってテトラに尋ねる。

 

「その前にセラさんに身体の状態とか私の正体について説明してしまいたいのですが………いいですか?」

「身体………?正体………?」

 

 さっきからこの姉妹の会話は自分と妙に噛み合っておらず、違和感しか感じられない。

 

 怪しすぎる。

 

 そう思ったセラは魔術を使い2人を拘束しようとする。

 ところが────

 

(─────ッ!?)

 

 魔力が全く足りない。

 セラの魔力容量(キャパシティ)は、得意とする風の魔術を使うことすら出来ないほどに減少していた。戸惑うセラの様子に何かを察したソティルは鏡をセラの前に持ってくる。

 

「まぁ、あなたの身体の状況を伝えるにはちょうどいいですか。見てください。これがあなたの魔力容量(キャパシティ)が極端に減少している原因です」

 

 セラが鏡を覗くと・・・そこにいたのは十数年前のかつての自分の姿だった。

 あっけにとられるセラに、ソティルは自分が別の世界から来たということ、テトラは自分が生き返らせたということなど、この世界の誰一人として想像が出来ないであろう話を淡々と説明していった。ちなみにソティルの説明はあまりにも端的すぎたため、ある程度はテトラが補足した。

 

「私が取った蘇生方法は、『対象の身体の時間のみを巻き戻して傷がない状態にしてから、その魂を無理やりに身体に浸透させる』というものだったのですが、能力が暴走してあなたの身体を子供の状態にまで戻してしまったんです。ですが、その姿は都合がいいのですよ。私達にとっても、あなたにとっても」

 

 ソティルは綺麗に畳まれてベッドの脇に置かれているセラの宮廷魔道士団のローブをちらりと見る。

 

「テトラはともかく、あなたは軍人として名が知れています。『死んでいるはずの人間が生きている』と他の人間が知れば合法非合法問わず、様々な組織があなたを実験動物(モルモット)として欲しがるでしょう。そうなるとこちらはとても面倒なのです。私の正体はあまり人間に知られたくないですし、私の周りで騒動が起きるのは避けたいのですが………ああ、やっぱり生き返らせる人間を間違えましたね。今からでも殺し─────い゛ッ!?」

 

 ソティルは少女の姿をしたセラをどこまでも冷めた目で見下ろしながらブツブツと物騒なことを呟いていたが、いつのまにか後ろに立っていたテトラから拳骨を食らわされた。

 少女がとても出せるようなものではない声を発しながら痛みに悶えるソティル。

 戦闘に突入することを覚悟していたセラは完全に毒気を抜かれ、唖然とすることしか出来なかった。




セラ=シルヴァース(幼少期の身体)
ソティルが身体の複製に失敗し、幼少期の姿になってしまった原作では故人の人。
幼少期の頃は魔力容量が少なく、魔術を使えなかった。今の状態はそれと全く同じなので戦力とは呼べない。
しかし、ソティルが元に戻そうと思えば元の姿に戻せるため、ソティルは緊急事態が起こった場合は戦力とするために元の姿に戻すことも視野には入れている。
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