偉大なる先駆者様たちと被らないよう、頑張っていきたいと思います。
「ありがとう!楽しかった!」
そう言って空高く飛び立つ。
大切な仲間達、教え子達の必死な声を背にしながら。
(すまない……!)
仲間達を置いていく後悔を胸に、更に速度を上げ上昇していく。
隣で運命を共にしてくれる、二人と共に
大気圏外に突入した瞬間――――――――――
視界が白く染まった
――――――――――――――――――――――――――――――
「っ!」
瞬間、ベッドから跳ねるように飛び起きる。
寝巻き用の服は汗に濡れ、湿っていて妙な気持ち悪さが残り、
周りを確かめるように辺りを見渡すと見慣れた自室であることが解った。
(また、あの夢か……。)
ひとつ溜息をつき、時計を確認する。
ユン老師との修行の時間までは少し時間があるようだ。
(それにしても一体なんなんだろうな……)
リィン・シュバルツァーには幼いときから決まって見る夢がある。
いや、正確には決まって見る夢があることを知っているというべきか。
目が覚めたら夢の内容の殆どを忘れてしまっているのだから。
唯一覚えているのは胸の中にある寂寥感のような物だけだ。
まるで、大切な事を忘れているかのような――――――――
「っと、そろそろ用意をしないと」
考え事をしていたせいで時間が思ったよりも経っていたようだ。
急いで服を着替え、刀を取り腰に携える。
鏡で身だしなみをチェックし問題はないか確かめる。
「よし、行くか!」
老師は朝が早いので、もしかしたら待たせてしまっているかもしれない。
他の家族を起こさないよう静かにしつつ急いで家を出た。
外に出ると辺り一面に雪が積もっていたが靴全体が埋まるほどではなかった、
今日の稽古に支障はないだろう。
広場に出ると足湯につかっている人影が見えた。
ユン老師だ。
「老師!おはようございます。申し訳ありません、待たせてしまいましたか?」
急いで駆け寄り挨拶をする。
待たせてしまっていては申し訳ない。
「リィンか、なに、気にするでない。早く起きてしまったので足湯につかりながら風景を楽しんでおったのじゃ」
どうやら大丈夫だったようだ、ひとつ息を吐く。
「そうですか……、良かったです」
「うむ、さて足湯にも満足したし、そろそろいこうかの?」
そう言って老師は足を引き上げ、タオルで拭き、靴に足を通す。
「今日は山を登った先の広い場所に行こう、そこでそれぞれの
「はい! 今日もよろしくお願いいたします!」
そういって歩き出した老師の後を追う。
頭の中は今日の稽古のことで一杯だった。
だからだろうか、老師が思案顔をしながら歩いていることに気づかなかったのは。
――――――――――――――――――――――――――――――
「四の型、紅葉切り!」
目の前でリィンが太刀を振るっている。
(相変わらず、この歳ながら見事なものじゃな……)
その太刀の鋭さはもはや初伝レベルではなかった。
リィンを最後の直弟子と定め、稽古をつけ始めて早四年。
自分の中にある
弟子入りを願い出てきた時の目を見て才能はあると感じていた。
それゆえに、型の中で最も会得難易度の高い七の型を授けたのだ。
しかし、実際に稽古をつけ始めて驚かされることになる。
型を教え実際にやらせて見ると、すぐにその型を会得するのだ。
――――まるで以前習得したことを思い出すかのように。
(じゃが……)
そんなリィンだが順風満帆とはいかない。
リィンが恐れている<鬼の力>をうまく御することが出来ないのだ。
本人もその力を恐れる余り、剣士にとって大切な後一歩が踏み出せない。
(天然自然……、本人も理解しているようじゃが……)
なぜ<鬼の力>を御することができないと思うかを一度リィンにも確かめた。
「自分の<力>を否定をする気はありません……。まずは自分自身を認めなければ前に進めないと思いますから」
だが、それでもとリィンは言う。
「この力を制するためには、何かが足りないと思うんです。その何かが今の俺にはわかりませんが……」
その姿は自分が力を御せない理由がわからないというより、
(初伝を授けて半年、何も変化は無しか)
この問題は自分の力ではどうにもならない。
あくまでリィン自身が解決しなければいけないのだろうと結論に至った。
(以前から考えておったが、まあリィンにも良い経験になるじゃろう。可愛い子には旅をさせよとも言うしの)
用件を告げるのは本日の修行が終わった後にしよう。
「七の型!無想覇斬!」
丁度良く型の反復も終わったようだ。
「よし、そこまでじゃ。身体が温まったじゃろう。次は滝行をして体を冷やすぞ」
「っ!了解です!」
息を切らせながらリィンが後ろについて来る。
驚くじゃろうなぁと少し悪戯めいた顔しながら、一緒に滝へと歩いて行く。
(しかしまぁ、大きくなりおって……)
弟子を想う親心も胸にして。
――――――――――――――――――――――――――――――
滝行を終え屋敷に戻ってルシア母さんが作ってくれた昼食を食べながら談笑し、
午後には実戦形式での稽古をつけて貰ったが老師は強くその背中の影すら見えない。
実際、稽古が終わった今も老師は息ひとつ切らしていないようだ。
自分は地面に倒れこみ激しく息を切らしているにも関わらず。
(老師はすごいな……、あのお年で衰えを知らない。それに比べて俺は足踏みを続けている……。)
自分の無力感に苛まれながら息を整えようと必死に息をする。
そうした時間が幾ばくか過ぎ、呼吸が整ってきたところで。
「リィン、もうそろそろ大丈夫かの?」
老師から声がかかる。
「はい、大丈夫です。申し訳ありません、時間を取らせてしまって」
そう言って、起き上がり立ち上がる。
「気にするでない、今日の稽古は特別厳しくしたからの。時間がかかるのも当然じゃ」
「そ、そうだったんですか(確かに今日はいつもより攻めが激しかったような?)」
でも、何故今日は特別厳しかったのだろうか。
「リィン、少し真面目な話をしよう」
「……はい」
老師の雰囲気が変わる。
いつもの温和な雰囲気から緊張感に満ちた雰囲気へと。
「おぬしに稽古をつけ始めて四年ほどが立つ。この間、おぬしは凄まじい速度で成長を続けていった……ワシがこれまでに取ったどんな弟子たちよりも早く」
目を閉じながら老師は話す。
記憶を思い返しているのだろう。
老師の話しを聞き自分の脳裏にも様々な記憶がよぎる。
『刀は腕だけで振るうものではないリィン。身体全体で振るうのじゃ』
『っ……やってみます!』
―――――――初めて剣を握ったあの日、剣が想像よりも重く碌に振るえなかったこと。
『滝行は心を洗い流し、鍛えることができる。無心になりなさい』
(……寒すぎて死にそうだ……!)
―――――――老師と共に行う滝行は身体が凍え、死にそうな思いをしたこと。
「おぬしには才能がある。刀を振るう者にとって大事な心構えも持ち合わせているじゃろう」
「だがおぬしも感じているとおり、おぬしの中で
『おぬしに授ける七の型は<無>……無明の闇に刹那の閃きをもたらす剣じゃ』
『無明の闇に刹那の閃きを……ですか?』
―――――――自分が授かる型に妙な懐かしさを覚えたこと。
「リィン、
「よって……」
老師が一息をつき、目を開く。
「おぬしに稽古をつけるのは今日で最後とする。そこから先は自分で進むのじゃ。」
「あ……」
それは老師からの修行の打ち切りといっても良い言葉だった。
身体から血の気が引いていき冷たくなっていく。
現実を理解したくないかのように。
「じゃがリィン。おぬしに<道>を示そう」
その言葉に少し遅れて反応する。
「道……?ですか?」
「うむ、すこし待て」
そう言って老師は懐に手を入れる。
何かを取り出そうとしているようだ。
「これじゃ」
懐から出したのは白い封筒に包まれた手紙だった。
「……手紙?」
「以前おぬしにも話したことがある孫娘宛てでな。この度めでたく正遊撃士になったらしいのでな、その祝いの手紙じゃ。」
そう言われて思い出す。
確かユン老師には孫娘がおり、直弟子ではないが剣士としても中々の素質が持つと仰っていた。
だが、その手紙が自分と何か関係があるのだろうか?
「これを届けて欲しいのじゃ」
老師が手紙を差し出し受け取るように促してくる。
「それは構いませんが……、これが……<道>ですか?」
「そうじゃ。おぬしはあまりユミルから出たことがないじゃろう。元来、旅は人を成長させるという」
手紙を受け取りながらそこまで言われてようやく気がつく。
「老師は……その<旅>で俺に何かを掴んでこいと仰るのですね?」
「うむ、少々遠いじゃろうがおぬしにも良い経験になるじゃろう」
色々と不安なことはあるが老師の言うことに間違いはないだろう。
なによりも今はその言葉に藁にも縋りたい気持ちだった。
「わかりました……。この手紙は必ず届けさせて頂きます」
「うむ、よろしく頼んだぞ。」
手紙を無くさないようにしまい込む。
そこで目的地を聞いていないことに気がついた。
旅というからにはかなり遠い筈だ。
「ところで老師、少し遠いと仰ってましたがお孫さんはどこに住んでいらっしゃるのでしょうか?」
ここから遠いとなると遊撃士支部があると聞くレグラムか大都市の海都オルディスあたりだろうか?
「ん?ああ、言い忘れていたの。これに地図が書いてあるから見ると良い。」
そういって老師から一枚の地図を渡され、
その地図を見ると<ボース市内>という名前が書かれていた。
(ボース……?それに<市>って……。)
エレボニア帝国に<市>はないはずだが……。
まさかと思い視線を地図の左上に移動させると――――
「……」
「リベールは良い国でな、おぬしも気に入ると思うぞ。」
「え。」
頭が混乱して整理がつかない、まるで夢を見ているようだ。
帝都にすら殆ど行ったことがないのに、いきなり外国に行くことになるとは。
「ちなみに昼にテオとルシア殿に事情を話して二人とも快く了解してくれてな。すぐに準備を整えてくれるそうじゃ。」
「そう……ですか。」
七曜暦 1201年 <秋>
リィン・シュバルツァー(15)、初の海外旅行が決定した瞬間であった。
――――その海外旅行が一年以上に及ぶことになるとは誰も思わなかったが。
執筆理由は閃の軌跡Ⅳでアネラスとリィンの絡みが無く残念に思ったからです。
小説の書き方を勉強しながら投稿するので投稿頻度は激遅になってしまいますので申し訳ありませんがよろしくおねがいいたします。
ある程度ストックをしてから一気に投稿していきます。
アネラスはエステルとヨシュアが準遊撃士になる半年前に正遊撃士になっているようです。
エステルとヨシュアは3.4ヶ月で準遊撃士から正遊撃士になっていますが、条件の難しさを考えると超エリートですよね。
※リベールで正遊撃士になるためには準遊撃士1級(8級からスタート)になり、これに加え5つの地方にある遊撃士協会支部の正遊撃士資格の推薦状を貰う必要がある。