パルムからタイタス門へ行くバスは閃の軌跡Ⅲ~Ⅳの間に運行を開始し、
それまではパルム間道をひたすら歩いていたようです……。
やはり軌跡世界の一般人は逞しいですよね。
ミュゼと別れた後、運行が再開されたセントアーク方面の列車に乗ることができたがセントアークを経由しパルムに着いた頃には夜中になってしまっていた。
そのため、それ以上の移動は諦めて宿酒場《白の小道亭》に一泊することにしたのだった。
「さてと、まずはパルム間道に向かわないとな」
朝を迎え、宿酒場から出る。
宿酒場の主人からタイタス門への行き方を聞いたおかげで迷わず行けそうだ。
昨日の夜中には良く見えなかった風景を見る。
「昨日は気付かなかったけど、綺麗な町だな……」
パルムの町中に引かれた水路には何台もの水車が連なっていて、更に染色された布が様々な場所に掛けられていて町を彩っていた。
紡績の町と呼ばれている理由を実感しながら川に架かっている橋を渡る。
「せいっ、はあああああああああ!」
「……? 何かの道場か?」
建物の中から気合のこもった声が聞こえてくる。
何かの武術をやっているようだ。
掲げられている看板を見ようと目線を上げる。
「ヴァンダール流……、帝国の二大流派のひとつか」
帝国には様々な武術や剣術の流派があるがその中でもヴァンダール流とアルゼイド流は歴史が深く、帝国の武の双璧とも言われている。
特に剣の世界に生きている者ならば聞かないものは居ないだろう。
「たしか帝都に本部があったはず……、パルムにも練武場があったのか」
「とりゃあああああああ!」
気合のこもった稽古をしているのか絶え間なく声が聞こえてくる。
(訪ねてみたいが……、稽古中のようだし迷惑になるな。今回はやめておこう)
後ろ髪を引かれる思いだったが建物を背にして歩くと、程なくしてパルム間道に出た。
タイタス門はここから道を歩いた先にあるようだ。
(一時間ほど歩くらしいな……。もしかしたら魔獣との戦闘になるかもしれない)
昨日の早朝に振るってから太刀の状態を見ていなかった。
念のため抜刀し確認する。
「……刃こぼれもしていないな、目釘も大丈夫だ」
用心深く見ていくが問題は無さそうだ。
「よし、行こう」
太刀を鞘に収め、歩き始める。
目指すのはエレボニア帝国最南端<タイタス門>。
リベールとの国境だ。
―――――――――――――――――――――――――――
パルム間道を歩く途中、魔獣に遭遇した。
だが気当たりを放つと逃げていってしまうので戦闘の機会は無く、ひたすら歩くだけで問題なくタイタス門へとたどり着いた。
「これがタイタス門か……」
<砦>とでもいうべき建物を見上げながら呟いてしまう。
想像よりも規模が大きくて驚いてしまった。
(9年前はここを大軍を通ったらしいが……)
<百日戦役>とも呼ばれている戦争の歴史を感じながら砦の中に入る。
やはり国境というだけあって帝国正規軍により厳重な警備体制が敷かれているようだ。
少しでも不審な行動を見せればすぐに拘束されてしまうだろう。
(これは……、少し緊張するな)
その緊張感のある空気に圧されてしまいながら国境検問所に向かう。
出国の審査をするための列がそこには出来ていた。
最後尾に並びながら通行書の準備をする。
「不備はないと思うんだが……」
父が用意してくれた通行書をチェックしながら順番を待つ。
幸い前列の中で問題がある人は居なかったらしい。
すぐに自分の順番が来た。
「次! 来ても良いぞ」
「……はい!」
検問所の兵士に通行書を渡し、荷物も差し出すよう指示を受ける。
同時に手荷物検査も行われるようだ。
太刀も腰から外し、荷物と一緒に他の兵士に渡した。
「よし、問題は無いようだな……。荷物にも特に気にするべきものはない」
細かく検査をしていたようだが問題は無かったようだ。
検問所の兵士に通行書に判子を押され、太刀を含めた荷物を返される。
(ふぅ……、なんとかなったか)
再び太刀を腰に携えつつ兵士の言葉を聞く。
「ここより先はエレボニア帝国の領土ではない。緩衝地である山岳地帯を抜けるとリベール王国となる。彼の国で貴殿が問題を起こした場合、国際問題に発展する恐れがある。自分の行動には注意することだ」
「はい、肝に銘じておきます」
「よろしい。ならば行ってよし」
兵士に道を開けられて砦を抜けると山に囲まれた一本の道があった。
今は良く見えないが道の先にまた砦がある。
リベール王国の入り口、<ハーケン門>だろう。
「それにしてもここはもうエレボニアじゃないんだな……」
兵士に言われた言葉を思い返しながら歩く。
先ほどまで歩いていた大地と感触は変わらないはずだが気分が高揚していた。
初めての外国の地に浮かれているのかもしれない。
「っと、駄目だな。まだ入国できたわけじゃないんだし」
そこまで距離は無かったのかハーケン門が段々と大きくなっているのがわかる。
規模はタイタス門に劣らないほどに大きく、その中心には<シロハヤブサ>が掲げられていた。
「リベール王国の国章……」
エレボニア帝国の<黄金の軍馬>とは違うそれを見て、ますます外国に来た実感が湧いてくる。
だがまずは入国審査を通らなければ。
ハーケン門の中に入るとタイタス門と同じように、リベール王国軍の兵士が厳重に警備をしているようだった。
(空気の緊張感はあちら以上のようだが……。侵略された側にとっては当たり前のことだろう)
再び検問所の列に並びながら順番を待つ。
リベール全体の地図を見ながら不審な行動をしないように注意していると
「次! こちらが空いたから来たまえ」
どうやら順番が来たようだ、タイタス門で行った手順を再び行う。
「君……、エレボニアの貴族出身のようだけどリベールに来た目的は?」
審査のため入国の目的を聞かれるだろうと思っていた。
あらかじめ用意していた答えを返す。
「えっと……、観光と武者修行になりますね」
「貴族の観光は珍しくないが、武者修行とは……。ちなみに得物はこれか?」
審査をしている兵士も武術や剣術を身に着けているはずだ。
純粋に興味が湧いたらしく、荷物検査から帰ってきた太刀を指差す。
「ええ、東方由来の太刀になります」
あまりエレボニアでは知られていないがリベールではどうだろうか。
「太刀か、ふむ……」
「……どうかしましたか?」
取り出した太刀を見せると兵士は考え込んだ顔をしていた。
それを疑問に思いながら質問をする。
「いや、王国軍の中にも太刀を扱う人が一人いてね。……いや、退役した<あの人>もそうだったな」
そう呟きながら兵士はもう一度通行許可証を見て、判子を押す。
どうやら入国審査にも問題は無かったようだ。
荷物と許可証を受け取りながら兵士の言葉を聞く。
「書類や持ち物に問題はないが、早くハーケン門を出ると良い。なるべくその太刀を隠してな。ある人に見られると少し面倒なことになるかもしれない」
「……? はい、かしこまりました」
「途中のアイゼンロードには、フレスベルグと呼ばれる獰猛な大型の鳥型魔獣が出没する。火属性のアーツが有効だが、その幼鳥のリメーラは不思議な殻を被っていてアーツが効かない。充分に注意をするように」
道を通るように促され、兵士の言ったとおりに太刀を隠しながらハーケン門の中を通り外に出た。
リベールの地図を再び出そうと、荷物を開けながら考える。
(さっきの言葉……、面倒なことになると言っていたな)
いったいどういうことなんだろうか。
しかし、これでリベールに入国することができた。
地図で現在地と目的地を確認し、歩き出そうとした瞬間――
「貴様! なんだ、その及び腰は!」
「!?」
隣の訓練所と思わしきところから凄まじい怒声が響き渡る。
そのあまりの勢いに思わず身を竦めてしまった。
「
「俺、あの怒声にはいつまで経っても慣れそうにないぜ……」
ハーケン門の警備をしている兵士たちも、その声を聞きながら世間話をしているようだ。
(あの声を出しているのはモルガン将軍という人なのか……、声だけで凄まじい威圧感だな)
絶え間なく聞こえてくる怒声を背にハーケン門を後にする。
このあとアイゼンロードという道を進むと東ボース街道に出るらしい。
そこを右に進めば商業都市<ボース>に着くはずだ。
「よし、目的地までもうすぐだな。焦らずゆっくり行こう」
アイゼンロードは曲がりくねっているが殆ど一本道だった。
舗装された道なりに進めば迷うことはないだろう。
「ボースへ行ったらまずは遊撃士協会を探して、アネラスさんに会わないと」
建物自体は<支える篭手>をシンボルとして掲げているためわかりやすそうだ。
ただ遊撃士は本当に忙しいらしく、もしかしたらかなりの時間待つかもしれない。
「会って手紙を渡した後、どうするかも決めないとな」
そのまま暫くボースに滞在するのか、またはカシウス師兄を訪ねるのか、など選択肢は無数にあるように思えてきた。
老師はアネラスさんを頼ると良いと言っていたが……。
一体どれが自分にとって最良の選択肢だろうかと頭を悩ませていると
―――頭上から殺気を感じた。
「……っ!」
急いで後方に跳躍する。
その瞬間、先ほどまで自分が居たところに大型の鳥型魔獣が前方に回転しながら足の爪を振り下ろしていた。
「なるほど、兵士の方が言っていた……。っ!!」
気当たりを放つ。
だが興奮しているためか効果がないようだ。
これは退治するしかないかもしれない、さらに距離を取り荷物を道の端に置く。
「リベールの魔獣を知る良い機会かもしれないな……」
魔獣を目で牽制しつつ太刀に手を伸ばし、
―――後ろに振り返りながら抜刀する。
そこには何かが居て、手には何かを寸断した僅かな手応えだけが残る。
自分が切り捨てたモノを見ると卵の殻を被った小型の鳥型魔獣だった。
「親と子供で狩りをしているのか」
たしか親がフレスベルグでその幼鳥がリメーラと言っていた筈だ。
フレスベルグは子供が殺されたことに激昂しているのか、けたたましい鳴き声を上げる。
そしてその声に導かれるかのように、リメーラがフレスベルグの周りに集まってきた。
「数は親と幼鳥合わせて四匹。……大丈夫、いけるな」
魔獣の数を確認する。
剣を右手に構えて左足を踏み出し、前傾姿勢を取った。
これから放つ
「二の型、疾風!」
左足に全力を込めて身体を押し出し、高速で魔獣に向かう。
「おおおおおっ!」
三匹の幼鳥を高速で切り捨てていく。
リメーラは疾風の動きに気付く間もなく、身体を分断されて消滅した。
それを見てフレスベルグは上空に逃げようと翼を広げるが―――
「させるか!」
翼を羽ばたかせる隙も与えずにその身体を切り捨て、消滅させた。
疾風の勢いを足で止め、刀に着いた血を振り払って落とす。
「……他に気配はない。終わったみたいだな」
念のため気配を探りながら辺りを見渡す。
問題が無さそうなので残心を解き、太刀を鞘に収めた。
「……ふぅ」
リベールでの初戦闘だったがうまく身体が動いてくれて良かった。
今の戦闘を思い返しながら道の端に置いた荷物を取る。
思わぬトラブルがあったが地図を見ると東ボース街道まではもうすぐのようだ。
―――――――――――――――――――――――――――
アイゼンロードを抜け、東ボース街道に出た。
少し進むと分かれ道になっていて、右の方向を見ると大きな都市が見える。
あれが目的地のボースで間違い無さそうだ。
「ようやく着いたな。今度はボースの地図を見ないと」
リベール全体の地図をしまい込み、今度は老師から頂いた地図を取り出した。
地図を見ると遊撃士協会は町の入り口近くにあるらしい。
その他の調べていると――
(……? この音は……)
少し遠くからだろうか、戦闘音のようなものが聞こえてくる。
誰かが魔獣と戦っているのか、もしかしたら襲われているのかもしれない。
「襲われていたら大変だ。見に行こう!」
戦闘音がする方向へ全力で走る。
音は近づく度にどんどんと大きくなり、やがてその場所にたどり着く。
(見えた!)
そこには羽の生えたサソリ型の魔獣と、
(太刀……!? もしかして――)
「本当に硬いなぁ、この魔獣……。でも他の依頼もあるし、そろそろ決めさせて貰うよ!」
女性は一度構えを解くと闘気を練りだす。
その勢いのせいか少しの風が巻き起こり、女性自身の髪の毛を揺らしていた。
やがて練り終えたのか、その闘気を解放しながら走り出す。
「剣技! 八葉滅殺!」
掛け声と共に魔獣に向かって何度も太刀を振るう。
魔獣はその猛烈な攻撃に為す術がないようだ。
(全身の力を使った滅多切り……、凄い剣の鋭さだ)
やがて魔獣の外殻に裂け目が生じ始める。
それに気がついたのだろう、女性は更に攻撃を強める。
「まだまだまだまだまだぁ!」
魔獣の方は息も絶え絶えになっていく、もう終わりが近そうだ。
最後に女性は大きく跳躍し
「とどめ!」
降下する勢いで太刀を振り下ろした。
魔獣の身体は見事に分断され消滅したようだ。
(終わったか……。太刀の使いこなし方に
女性は太刀を収めようと鞘に手を掛けている。
その様子を見て声をかけようと動き出し――
(! この気配は!)
かなりの速さで複数の気配がこちらに飛んできていることに気付く。
気が抜けてしまっているのだろうか、女性は気付かない。
「駄目です! まだ残心を解かないで!」
「……え?」
女性がこちらに振り返った直後、上空から先ほどの魔獣の群れが襲来した。
そのうちの一匹が女性に襲い掛かる。
「弧影斬!」
弧状の斬撃を一直線に放ち、魔獣を吹き飛ばす。
だがそれだけでは倒しきれなかったのか体制を整えて再び飛び始めた。
魔獣の動きを見ながら女性に駆け寄る。
「た、太刀……? それに君は……?」
「話は後です! 今はこの魔獣たちを倒しましょう!」
「……うん! わかった!」
二人で背中合わせになり、死角を無くす。
それを見た魔獣たちが襲い掛かってきた。
―――――――――――――――――――――――――――
見習いである準遊撃士を卒業して正遊撃士となり、一ヶ月が経とうとしている。
まだまだ先輩達の背中は遠く、自分なりの剣の道を模索しながら忙しい日々を過ごしていた。
今日も頑張ろうと気合を入れてギルドの扉を開く。
「おはようございまーす! ……? あれ?」
普段は掲示板の前で先輩達が依頼を見ながら賑わっているのだが、その姿が見当たらない。
今日は依頼が少ないのかと近寄って確認するが、何時もと変わらない量の依頼が貼りだされているようだった。
「先輩達、まだ来てないのかなぁ」
そう呟きながら依頼を詳細に確認しようと目を凝らすと。
「おお、アネラス。来ておったのか」
「あ、ルグランじいさん!」
二階からこのギルドの受付であるルグランじいさんが降りてきたようだ。
自分が準遊撃士だった頃からお世話になっている人である。
「ルグランじいさん、先輩達はまだですか? 普段ならこの時間には大体の人が来てるはずですけど……」
「あー、それなんじゃが」
「……?」
ルグランじいさんがなんだか言いづらそうにしている。
なにか事件でもあったのだろうか。
「グラッツ達は別の支部の救援やら依頼に出払ってしまってな……」
「……え?」
「しばらくお前さん一人でボース支部の依頼を片付けて貰うことになる」
先ほど確認した依頼の数を思い返す。
とてもでは無いが一人ではこなすには大変な量だった。
「……そ、そんなぁ」
「まぁ、お前さんも正遊撃士になったことだじゃし、これぐらいは一日に片付けて貰わんとの」
「……ううう、は~い」
やるしかないと自分に言い聞かせる。
まずは依頼の数と内容を確認しないといけない。
「薬草の調達に東と西ボース街道の手配魔獣の討伐……、失くし物の捜索……」
「どれを優先的にやるかはお前さん次第じゃな」
詳細を注意深く見て優先順位をつける。
薬草はラヴェンヌ山道に群生しているらしく、西ボース街道の手配魔獣を倒した帰りに向かった方が効率は良さそうだ。
失くし物の捜索は依頼者が待ち合わせの時間を午後に指定している。
「東ボース街道の魔獣を倒して、そのあとにまた西ボース街道で魔獣討伐と薬草の調達……。それが終わり次第、失くし物の捜索って感じかな」
口に出して今日の予定を記憶する。
整理してみたら思いのほか余裕をもって行動できるかもしれない。
「午後になったら依頼が追加されるかもしれんから、市内に戻ってきたときに報告は忘れんようにの」
「はい、まかせてください!」
ルグランじいさんに返事をして勢いよくギルドを飛び出す。
まずは東ボース街道に向かってキングスコルプという手配魔獣を倒そう。
「よーし、頑張ろう!」
……と意気込んで街道に出たのは良いが、街道は広く手配魔獣が見つからない。
道を右往左往し、気配を探っても森が近くにあるためか魔獣の気配が多くわかりにくい。
そしてやっとの思いで魔獣を見つけたものの
「か、かったーい! 普通に振るっても太刀が通らない……」
キングスコルプの外殻は硬く、倒すのに手間取っていた。
ならばアーツを使おうとするが一対一のため駆動する時間が無い。
(時間もかなり経ってるし……)
飛んでくるキングスコルプを太刀でいなしながら影の位置を見る。
太陽が真上近くに来ていることがわかった。
もうすぐ正午に差し掛かる時間だろう。
「本当に硬いなぁ、この魔獣……。でも他の依頼もあるし、そろそろ決めさせて貰うよ!」
キングスコルプは太刀でいなしたためか体勢が崩れているようだ。
この隙に闘気を練るため構えを解く。
(………………)
全身に力が漲るのがわかる。
これならば問題なく剣技を放てるだろう。
「剣技! 八葉滅殺!」
走りながら魔獣に向かって太刀を振り下ろし、そこから反撃の隙を与えず全身の力を使って滅多切りにする。
段々と外殻に裂け目が生じ始めていた。
「まだまだまだまだまだぁ!」
それを見て更に攻撃を激しくする。
そして外殻が完全に裂けた瞬間、思い切り空へと飛び
「とどめ!」
降下する勢いを利用して、太刀を裂けた部分へと振り下ろす。
先ほどまでの硬さが嘘のようにキングスコルプの身体を両断した。
「ふぅ……」
時間がかかったがようやく倒せたようだ。
残心をしながらひとつ息を吐く。
(この後は一回ボースへ戻って、ルグランじいさんに報告してから西ボース街道に行かないと。でも、先に失くし物の捜索をした方が良いのかな? 追加の依頼が来てたらそれも確認しないと)
この後のことを考えると頭が痛くなりそうだ。
身体が自然に太刀を収めようと鞘に手を掛け――
「駄目です! まだ残心を解かないで!」
「……え?」
その声に振り向くと、そこには黒髪の少年が居た。
(……
「弧影斬!」
少年が鞘から太刀を振りぬくと弧状の斬撃を一直線に放つ。
それは頭上を通り過ぎ、何かに当たる音がした。
そこで魔獣にようやく気がつく。
(こんなにたくさん……!)
どうやら依頼のことで頭が一杯で気付けなかったようだ。
斬撃を放った少年が駆け寄ってくるが、その持っている太刀を目を奪われてしまう。
それに先ほどの技は確か八葉一刀流の技だったはず。
「た、太刀……? それに君は……?」
「話は後です! 今はこの魔獣たちを倒しましょう!」
話しかけようとするが少年は冷静な様子で止めてきた。
確かに周りを囲んでいる魔獣を倒すのが先決だろう。
「……うん! わかった!」
気を取り直し男の子と背中合わせになりながら死角を無くす。
襲い掛かってくる魔獣を二人で迎え撃った。
―――――――――――――――――――――――――――
魔獣の数はどうやら八体ほど。
そして厳密には先ほどの魔獣と似てはいるが別の魔獣らしい。
外殻が先ほどの魔獣よりも柔らかく、少し硬いが戦技を放てば問題なく倒せる。
「「剣風閃!/紅葉切り!」」
それに同じ
連携をするのは始めてだったがうまく合わせることが出来ていた。
八体居た魔獣も残り一体ほどに数が減り
「弧影斬!」
上空に飛んでいた最後の一体を地面に叩き落し、それを地上で待ち構えていた女性が戦技を放つ。
「剣技! 八葉滅殺!」
魔獣は滅多切りにされ消滅したようだ。
辺りを見渡しながら気配を探る。
「どうやら居ないみたいだね……」
「ええ、もう大丈夫かと」
女性も同じように気配を探っていたのだろう。
太刀を鞘に収めながら改めて二人で向き直る。
「ありがとう! 凄く助かったよ!」
「いえ、偶然戦闘音が聞こえたので……」
女性は明るい笑顔を向けながら話しかけてくる。
老師から話を聞いていた人となりと同じだ。
確信を持ってその名前を言う。
「アネラス・エルフィードさんですね?」
「う、うん。そうだけど……、どうして私の名前を? もしかしておじいちゃんの知り合い?」
「はい。その通りです」
俺が八葉一刀流の使い手だとわかっていたのだろう、自然と老師の名前が出たようだ。
荷物から手紙を取り出し、アネラスさんへ見せる。
「俺の名前はリィン・シュバルツァー、貴方の弟弟子に当たる者です。ユン老師から手紙を預かって参りました」
アネラスさんは驚いたような顔をして手紙と俺の顔を見る。
――こうして俺たち二人は出会ったのだった。
遊撃士たちは超人の集まりだと思います。
特務支援課やⅦ組の人たちも同様に超人集団でしょう。
あれだけの依頼を一日で達成できるのですから。