イナズマイレブン〜紅蓮の華〜   作:奇稲田姫

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さて、ようやくこうにかデザートライオン前半戦へ入ることが出来ました………………←



サボってただろって?

またまたそんなわけないじゃないですかもう、ちゃんと考えてましたよ〜←(笑)





はい。
茶番はこのくらいにして本編どうぞ←


第2試合 VS デザートライオン 前編

本日は快晴。

気温も高く、スポーツするには熱中症が心配される。

風もない。

まさに猛暑日と呼ぶにふさわしい気候の中、私たちイナズマジャパンは、グラウンドへあがり、久遠監督を中心に円陣を組んでいた。

 

いや、そんなことよりも…………。

 

「(………………あっつ)」

 

相変わらずこの日のお天道様も女の子に容赦してくれないようだ。

 

ユニフォームをパタパタと仰ぎつつ熱中症とかシャレにならんのでまだ運動していないにもかかわらずダラダラと流れてくる汗を拭きながらドリンクを1口口に含む。

 

軽く口元を拭い、ひとつ息をついた私に豪炎寺くんが近づいてくる。

 

「カレン。体調は大丈夫か?」

 

「えぇ、まぁ。これはスタミナのペース配分が鍵になりそうね。はぁ、暑っ…………」

 

「だな。しかし、いきなりここまで気温が上がるものなのか。」

 

「わかんないわよ。天気の変化なんてある意味気まぐれ以外のなにものでもないんだし」

 

と、そんな話をしているとモヒカンの第三者が割り込んでくる。

 

「けっ、気温くらいで情けねぇなぁ天下のカレン様よォ」

 

「あのね不動……喧嘩売ってるの?」

 

「おぉ、怖い怖い、クククク。ま、せいぜい頑張りな。俺は日陰で悠々自適に過ごしてるからよ」

 

不動のこの言葉。

実はそのままの意味で今回もスタメンから外れた不動に対し、私は今回スタメンなんだなこれが。

 

「準備くらいしときなさいよ」

 

「その必要があればな」

 

軽く鼻を鳴らし、前回のオーストラリア戦同様ベンチに深々と腰掛けながら「俺は手を出さねぇ、勝手にやれ」とでも言わんばかりの態度で足を組む不動を横目に私は軽くぴょんぴょん飛び跳ねながらアップを始める。

軽く真上にジャンプしつつ両腕を震わせて力を抜きながら筋肉を解していく。時折腕を大きく上に振りながらジャンプしたり、腰を左右に捻ってストレッチもしておく。

 

…………………………しかし、たったこれだけの動作で汗が出てくるのは如何なものか。

 

確かにいきなりここまで気温が上がるのもなかなか珍しいように感じる。

 

「お、砥鹿も準備万端って感じだな」

 

「ん……そういう風丸くんもね。そういえば元陸上部だっけ」

 

「まぁな。そういえばあの時はまだ部員が円堂とアキの2人だけだったし。なんか必死に走り回る円堂に引かれてサッカー部に来たんだ」

 

「なんというか、すごいカリスマ性」

 

「だよな」

 

近くでストレッチをしていた風丸くんと雑談しながら体全体の筋肉を満遍なく解しつつ最後に手首と足首をぶらぶらさせてジャンプ。

パシンと両手で軽く自分の頬を叩き喝を入れると先に名前を呼ばれた豪炎寺くんに続いてピッチへ向かうのだった。

 

 

 

 

 

フォーメーション

 

Japan

 

FW:--吹雪-豪炎寺-砥鹿--

 

MF:--基山- 鬼道 -緑川--

 

DF:-綱海-壁山-土方-風丸-

 

GK:----- 円堂 -----

 

 

 

Qatar

FW:---マジディ--ザック---

 

MF:-ユスフ-スライ--セイド-メッサー-

 

DF:-ファル-ビヨン--ジャメル-ムサ-

 

GK:------ナセル -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホイッスル直前。

 

「火蓮、お前はどう見る?」

 

「どうって?」

 

「この相手のことだ。音無が言っていたように『無尽蔵のスタミナ』を誇るチーム。本当にそれだけだと思うか?」

 

豪炎寺くんの問いに対して若干返答に困る。

 

「…………さぁ、それだけとは思えないわね。少なくとも初戦は突破してきているわけだから相応の実力はあると見積もるのが普通じゃないかしら」

 

真上に大きく伸びをしながら答え、ちらりと視線を相手のチーム、カタール代表の方へ向けた。

 

「そう、それが【普通】なのよ」

 

「?火蓮?」

 

「いえ、なんでもないわ。先制点取っていきましょう」

 

若干の含みを持たせた私に少しだけ間を置いてから短く返答をくれた豪炎寺くん。

その視線も直ぐに相手ゴールの方へ向けられ、ホイッスルが響き豪炎寺くんから私にボールが渡る。

 

 

 

 

刹那、開戦のホイッスルが同時に観客までも湧きたてた。

 

 

 

 

試合開始。

 

 

 

 

ボールを受け取った私はかかとのバックパスで鬼道くんへ渡し、豪炎寺くんとともに若干左右に広がるように走って前線へ。

中盤の激しい競り合いにも負けずに突破してくれる味方陣に頼もしさを抱きながらテコ入れがてら最前線でパスを待つ。

無論、パスかドリブル突破かどちらが効果的かと言うのを探る目的もある。

そうできるのも中盤以降のメンバーが当たり負けしていないおかげだ。

そうでなければこんなテコ入れなんか初めから出来ないわけだし。

 

話を戻そう。

 

豪炎寺くんとともにオフサイドラインギリギリ………………から少し手前あたりで体を反転させ、味方の位置と敵の位置を視界に収める。

 

絶え間なく飛び交っている鬼道くんの指示を聞きながらボールを持った選手に合わせて位置取りを微調整。

…………ディフェンダーのマークの仕方に何となく違和感を覚えるのは私だけだろうか?

 

いや、今は細かいことはいいからてこてこをちょくちょく入れていかないと。

 

……………………待った『てこてこをちょくちょく』ってw

ついに私の脳は気温のせいで沸騰したらしい。

 

無意識に考えた自分の言葉に軽くツボりながらディフェンダーの動きを見つつ空いている場所へ走り込む。

 

「鬼道くん!」

 

私を視界に入れた鬼道くんが1つ頷いてパスを出した。

 

「よし。いい感じ!繋がった!」

 

相変わらずいいパスを出してくれる鬼道くんに感謝しながらボールをキープしつつ上がっていく。

同時に豪炎寺くんも視界に収めながらディフェンダーを抜き去ると、走り込む勢いにブレーキをかけながらボールを豪炎寺くんの所へ浮かせた。

相手ディフェンダーのマークを振り切ってフリーとなった豪炎寺くんがすかさずシュート体勢へ。

 

「うおぉ!!爆熱、ストーム!!!!!!」

 

背後へ現れた炎魔と共に放つ爆熱の一撃。

 

「させるか!」

 

しかしその射線上にギリギリのタイミングで間に合った相手チームのキャプテンの体を張ったディフェンスにより威力が削がれ、飛んだコースは良かったが流石にキーパーに弾かれてしまった。

しかしゴールラインは割ったのでまだまだ攻めることは出来る。

私たちのコーナーキックだ。

 

小さく舌打ちをした豪炎寺くんの肩に手を乗せて「どんまい」と一言言ってからポジションへ戻る。

 

この流れはどうにか途切れさせたくない。

 

コーナーキックのキッカーは風丸くん。

 

私からは逆サイドのコーナーからの再開なので正直ゴールを狙うと言うよりはこぼれ球をいつでも拾えるように心の準備をしておく方がいいかもしれない。

恐らく私へのパスは距離を考えるとリスクが高い。

であれば豪炎寺くんへ回して連続で打つか、1番近い場所の吹雪くんへ渡すか。

先程のシュートと気持ち豪炎寺くんのマークが増えたことを加味するとここは吹雪くんg……………………………………

 

「ふぅ…………これが俺の、新必殺技だ!!」

 

ちょっ!?

 

 

 

……………………。

 

 

 

…………ふぅ、わかるかしら私のこの心境。

わかってくれるかしら?

 

いや、いいのよ?いいの。

風丸くんの放ったボールはペナルティエリアの外側を大きくカーブさせながらゴールネットの角っこに突き刺さったのだから。

そういいのよ。

何せ先制点だし。

1点入ったのよ1点。

これは大きいわ先制点。

でもね風丸くん…………………………撃つなら撃つって言ってよ。

 

 

 

 

J-Q

1-0

 

 

 

 

はぁ、と息を吐きながらみんなと共に自陣へ戻る。

 

「ナイスシュート、風丸くん」

 

「あぁ、ありがとう砥鹿」

 

「はぁ、先制点は取られちゃったわね。撃つなら撃つって言ってくれたらいいのに」

 

「サプライズだよサプライズ。なんにせよ、あれは1発限りしか通用しないだろうからな。追加点は任せたぜ」

 

「任せなさい」

 

風丸くんはそう言いながらディフェンスのポジションへ戻っていく。

私も少し遅れて豪炎寺くんの隣へ戻った。

 

「してやられたな」

 

「まさか直接狙うなんて……………………なんというか私が言うのもなんだけど、大胆と言うか」

 

「しかし攻めることは出来ているな。あとはこの流れを維持し続けたいところだ」

 

「同感」

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーーー!!

 

 

 

 

 

残り時間はまだまだ20分以上残っている。

相手チームのキックオフから試合が再開。

 

こちら側(左サイド)にはパスが通らなかったため私は逆サイドで行われている攻防を視界の端にお収めながら取り敢えずいつパスが来てもいいように前線で待機することにする。

 

それから割とすぐのタイミングだった。

 

相手選手からボールを奪った緑川くんがドリブルで上がる。

 

そしてボールは同じく駆け上がっていた吹雪くんへパス。

しかし、吹雪くんの機転による咄嗟のスルーによってボールは基山くんの元へ。

 

意表を突かれたデザートライオンディフェンス陣の対応が遅れる。

 

その隙に基山くんの「流星ブレード」が炸裂しイナズマジャパンの追加点となった。

キーパーに反応すらも許さないそのシュートはまさに「流星」の名前にふさわしい。

 

 

 

 

 

 

J-Q

2-0

 

 

 

 

 

よしよしこれで2点勝ち越し、いい感じの滑り出しと言えるでしょう。

 

あれ?

案外いけそう?

私の考えすぎかしら。

 

何はともあれこの調子が続けば勝てる。

 

カタールの選手の強い当たりにも負けずにボールを取った緑川くんも凄いが、あの咄嗟の場面でパスをスルーする吹雪くんも、それにぴったり反応する基山くんも基山くんだ。

よく合わせたな、事前の打ち合わせとかしてたのかしら。

 

でもまぁ深くは追求しないでおこう。

 

まだ前半も半分弱はある。

もう一点取りに行きたいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

再びカタールのキックオフ。

 

 

今度はこちらのサイドへ流れてきたボールを追いかけながら、相手のドリブルに歩幅を合わせる。

数回のフェイントを交えながら……………………

 

「取らせるか!」

 

「っ!…………ふぅ」

 

かっこよくボールを取ろうと思ったのだが、取れませんでした。

とは言え深追いし過ぎるのはあまり良くないのですぐに頭の切り替えを行う。

まぁ、今の彼らなら取り返してくれるだろう。

 

そんなことを考えながら前線へ上がるが………………ん?

 

「……?なんだかすこしみんなの様子が……………………。気の所為であることを祈りたいけど」

 

ふとバックの動きに違和感を感じた。

 

それでも強い当たりで押されながらもどうにかボールを奪い取った綱海くんから鬼道くんへ。

鬼道くんが必殺技、【イリュージョンボール】でMFを抜き去ると………………。

 

「砥鹿!」

 

マークの薄くなった私の方にパスをくれる。

厳密に言うならば私がマークを振り切ったからなのだが、まぁそれはいいとしよう。

 

鬼道くんから受けとったボールをトラップしながら前へ向き直り、豪炎寺くんを呼ぶ。

 

「豪炎寺くん。あれ!やるわよ!」

 

「【轟熱スクリュー】か、わかった!」

 

ずくに私の意図を汲み取り私に合わせるようにしながら僅かに前を走る豪炎寺くん。

そして、私の合図とともに右へ散開した。

 

「行くわよ!!…………はっ!」

 

大きく振り上げた左足でボールを思い切り踏み、その衝撃波で地面を円形上に割った。

その隙間からゴボゴボと溢れる熱波と灼熱のエネルギーを纏うボールを左足を使って空高くへ蹴り飛ばす。

それを炎を纏いながらきりもみ回転でジャンプをした豪炎寺くんが頂点に来たところで思い切り蹴り込む火属性連携技。

その威力は既にオーストラリア戦で実証済みだ。

…………細かいことはとりあえず置いておいて、だが。

 

 

 

 

「「轟熱スクリュー!!!!!」」

 

 

 

 

小さな炎塊と化したボールが緩やかなカーブを描きながら激しい熱波と共にゴールへ向かっていく。

 

「(タイミングはバッチリ!私たちのコンディションも悪くない!でも、昨日白虎に言われたことを反映できていなければ失敗だ!)」

 

 

 

 

 

 

 

そんなことが頭を過り、私はもう一度昨日の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

─【回想】─

 

───

 

 

 

カタール戦前日。

虎ノ屋で虎丸くんの手伝いを終えた私と豪炎寺くんはその帰り道、円堂くんたちと別れて河川敷のグラウンドへ来ていた。

 

そこには既に1人の少年が来ており、グローブをベンチに置いてスパイクの紐を結び直している。

 

当然、その少年は自分が特訓のためにわざわざ呼んだのだ。

なのに自分が遅れてしまうとは………………。

 

「ごめんなさい、秋人。少し遅れちゃったわね」

 

「いや、俺も今来たところだ」

 

「監督何か言ってた?」

 

「いや、特に何も」

 

「そう?それならいいわ」

 

「カオルは『俺が行く』って言ってたけどな。春紀に引きずられてたよ。………………っと、そういえば君は」

 

白虎が私と一緒に来た豪炎寺くんへ視線を向ける。

 

「あぁ、そう言えば紹介がまだだったわね?秋人、こっちが今一緒のチームでやってる豪炎寺くん」

 

「豪炎寺 修也だ。よろしく頼む」

 

「豪炎寺、あぁ、あの木戸川清修のか?」

 

「今は転校して雷門中在籍なんだがな」

 

「?そうなのか。まぁ、深くは詮索しないでおくよ。事情があるんだろうし。にしても、フフ、火蓮の相手は疲れるだろ?」

 

「あぁ、かなり疲れるな」

 

「ちょっと2人とも?それはどういう意味かしら?」

 

2人揃って本人の目の前で失礼なこと。

 

「冗談だ。怒るなよ火蓮」

 

「ふんだ」

 

「あらま、拗ねちゃったな。まぁすぐに治るか。さて、今度は俺だな。俺は白虎(びゃっこ) 秋人(あきと)。チームメイトからは『白虎』だったり『秋人』だったり呼ばれてる。好きに呼んでくれて構わない。よろしくな、豪炎寺」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

ひとしきり自己紹介が終わったところで本題に移っていくことにする。

私は白虎に昼間の出来事を掻い摘んで説明をした。

 

「…………ふむふむ。なるほどな。であれば百聞は一見にしかず、見た方が早いか。火蓮、豪炎寺、打ってきてくれ」

 

「わかった」

 

「頼むわよ秋人」

 

「あぁ」

 

そう言いながらパシンとグローブを叩きながらキーパーのポジションへ向かう白虎の背中を見ながら私は軽くリフティングをしてセンターライン辺りにボールをセットする。

 

「よし、来い!」

 

白虎がこちらに向き直る。

私は豪炎寺くんと小さく頷きあってから軽く前へ蹴りだしドリブルを開始。

豪炎寺くんを前にフォーメーションを組みペナルティエリアに入ったところで技の始動に入った。

 

大きく足を振り上げてボールに向かって叩きつける。

その衝撃で円形上に地面が割れると、その隙間からゴボゴボと熱波とともに炎が吹き上がりボールにエネルギーを注ぎ込んでいく。

そのエネルギーによって空中へ弾き上げられた小炎塊と化したボールをきりもみ回転をしながら近づいた豪炎寺くんが左足で思い切りゴールへ向かって蹴り込む。

灼熱のエネルギーを放出しながら必殺技【轟熱スクリュー】が放たれた。

 

「これが例の技か。フッ!!!」

 

…………しかし、奇しくも秋人によって受け止められてしまう。

とは言え、いくら相手が白虎だからってなんの危なげもなくキャッチされてしまうのはFWのプライドとしてなにか複雑ではある。

 

「…………素手で止めるのか」

 

「わかりきってはいたけど…………実際に間近で見るとショックがでかいわね」

 

「分かりきっていた?」

 

僅かに眉を寄せた豪炎寺くん。

構わず私は続けた。

 

「そうよ。言ってなかったかしら?『白虎 秋人』、うちの正GKは…………………………()()()()()()()()()()()()()()()4()()()()()()?あ、厳密には『現』四天王の一角という方がいいかしら」

 

「四天王?」

 

「あら?知らない?中学サッカー界で『最強』と言われる4人に付いた称号のようなものよ」

 

「最強、か。円堂といい勝負か」

 

「残念だけど、彼と秋人じゃ勝負にならないわ」

 

「それほどか…………」

 

「えぇ、本当に残念だけど」

 

「火蓮、本人を目の前にあまりホイホイ尾ひれをつけるのはやめてくれ。夏彦は気に入ってるっぽいけど俺は恥ずいんだよ」

 

私と豪炎寺くんの会話を聴き、ため息をつきながらボールを投げ返してくる白虎…………苗字呼びは慣れないからいつも通り『秋人』と呼ぶことにする。

 

「だが、そんな選手がどうして代表に選ばれなかったんだ?」

 

「さぁ?秋人達の影が薄いだけじゃないかしら?だって考えても見なさいよ。国外の大会でひっそりと結果を残していたチームと、国内の騒動を収束させたチーム、日本全国で広く認知されているのはどちらのチーム?」

 

「…………なるほど」

 

私の問いかけに納得の表情を浮かべる豪炎寺くんに対して秋人が抗議の声を上げた。

 

「影が薄いとか…………俺は気にしてるんだから勘弁してくれよ。それよりさっきのもう一度撃ってくれ。何となく目星が付いたから確認がてら、な」

 

「了解」

 

秋人に急かされながら受け取ったボールを転がして最初の位置、いわゆるセンターサークルへ戻った。

 

「もう一度行くわよ」

 

「あぁ」

 

短く言葉を交わして再び【轟熱スクリュー】のフォーメーションへ。

それから技発動。

再び灼熱のシュートがゴールへ迫っていく。

 

「ふん!!!」

 

…………しかしこれもがっちりと押さえ込まれてしまった。

 

「……やっぱりな。おそらくこれかな?って言う感じのものはわかった」

 

「なんでそう曖昧な表現使うのよ」

 

「うるさいな。俺だって連携技の指摘は初めてなんだから大目に見てくれよ。まぁとにかくだ、火蓮は知ってるけど………………豪炎寺、君の利き足は?」

 

「利き足?左だが?」

 

「やっぱり」

 

「やっぱり、と言うと?」

 

「火蓮の利き足は右だろ?おそらくそれのせいで威力が相殺されちゃってるんじゃないかと。もっと言えば火蓮は瞬間的な爆発力と言うより徐々に火力を上げていくタイプだし。で、豪炎寺くんは…………俺の予想だとシュートの一瞬の間に爆発的に火力をあげるタイプ。違う?」

 

「……確かにシュートの瞬間だけ思い切り力を込めることが多いな」

 

「予想が外れなくて良かった…………。まぁ、結論から言うと火蓮も豪炎寺も同じ『炎』のシュートを扱うプレイヤーでもその性質が真逆ってことだ。簡単に言えばプラスの電気とマイナスの電気を合わせたら打ち消しあうだろ、ってこと。つまり……………………」

 

脇の下にボールを挟みながら話していた秋人がふと言葉を切り、心底言いずらそうな表情を浮かべた。

 

「つまり?」

 

「つまり……………………相性×」

 

予想外の答えに一気に肩から力が抜けるのを感じた。

 

「え、ほんと?それ」

 

「オーストラリア戦では手応えがあったんだが」

 

「あぁ、見たよ最後のやつだよな?多分、これは俺の予想なんだけど、ある意味『不幸中の幸い』みたいな感じだと思う。シュートの回転がたまたまあの技を破るキーになっていたって感じじゃないか?手応えがあったのはおそらく試合の流れやその場の空気みたいなものに流されたから、と今のシュートを受けた俺はそう結論づけるな」

 

ただ、と秋人が続ける。

 

「ただ、最初にも言ったが俺は連携技のアドバイスなんて初めてやったんだ。間違っているかもしれないし、もしかしたら相殺する時のエネルギーを上手く利用できる方法が何かしらあるかもしれないからな。あくまで俺のは一案。…………と言うくらいしか正直出来そうにない」

 

申し訳なさそうに頬を掻く秋人。

 

「いや、正直に言ってくれてありがと、秋人。でなきゃ対策の立てようがないしね」

 

「そうだな。それより課題が増えたな。俺と火蓮で相殺されてしまっているならばそこにもうひとつ要素を加える必要が出てきたわけだ」

 

「新しい要素ね。単純に考えるなら私が左足で蹴りあげる、とか?」

 

「お前左で蹴れるのか?パス以外で」

 

「そ、それは…………その…………」

 

秋人につっこまれて思わず口ごもる。

 

「れ、練習あるのみ?」

 

「はぁ……そう言うと思ってたよ」

 

「だーってしょうがないじゃない!それしか思いつかないんだもん!」

 

「ふむ、とりあえず可能性がありそうなら試してみよう。判断するのはそれからでも遅くはない」

 

「俺も豪炎寺の意見に賛成。ほら、こんなこと監督に言ってみろ。『頑張りなさい!応援してるから!』の一言で終わる案件だぞ?」

 

「う…………た、確かに……………………」

 

「まぁ、うちの監督の話は置いておいて、とりあえずは火蓮が左足で蹴り上げる方向でいいんじゃないか?俺も正直力にはなりたいが…………連携技はな」

 

「いや。ありがとう、白虎」

 

「そんなこと気にしなくてもいいぞ豪炎寺。俺も君も火蓮に巻き込まれているんだ。そもそも厄介事になるのは百も承知だ」

 

「ふ、違いない」

 

「だーーから本人が目の前にいるんだからそういうこと言わないでってば!」

 

 

 

 

 

 

 

その後拗ねた私は秋人と豪炎寺くんになだめられてからしばらく利き足と逆の足で蹴り上げる【轟熱スクリュー】の特訓をした。

 

結果は………………まだまだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで今日を迎えたわけである。

 

 

 

 

───

 

─【回想終了】─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎塊と化したシュートがカタールゴールへ迫る。

 

「追加点は入れさせるか!」

 

「うおおおぉぉぉ!!!!」

 

…………しかし、カタールサイドの決死のディフェンスでボールの威力は削がれ、横っ飛びに飛び込んだキーパーによってがっちりとキャッチされてしまった。

 

つまり、まだ相殺しきってしまっているということだ。

私が左足で蹴り上げるのに慣れていないのもあるが、まだまだ完成までの道のりは長そうだ。

…………と言うか普通に私も豪炎寺くんも単騎で技を撃った方が強いのでは?と考えたがおそらくこれは禁句だろうな。

もう言わない。

 

 

 

ピッピーーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけでリードしてるにもかかわらず私と豪炎寺くんにとっては微妙に煮え切らない前半戦が終了した。




そう言えば、なんか知らないですけど、不動って料理させたらめちゃくちゃ面白そうじゃないですか?←(笑)

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