イナズマイレブン〜紅蓮の華〜   作:奇稲田姫

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よし!

とりあえずカタール戦後半です←




第2試合 VS デザートライオン 後編

「………………ふぅ。暑い……」

 

前半戦が終了し、ベンチへ戻ってきた私はもういの一番にドリンクを口に流し込んだ。

その勢いたるや。

若干口元からこぼれてしまっている気がするが、知らぬ。

 

大きく息を吐いてからタオルで汗を拭う。

 

「火蓮。大丈夫か?」

 

「私は全然大丈夫。豪炎寺くんこそ暑さにやられてたりとかしないわよね?」

 

「あぁ、もちろんだ…………………………と言いたいがいつもよりかなり体力は消費してしまっているな」

 

「全くもうみんな揃って情けないんだから」

 

「?どういう意味だ?」

 

「ほら、あれよあれ」

 

若干眉を寄せる豪炎寺くんからの問いにクイクイっと顎で他のメンバーをさして豪炎寺くんに周りの情報を伝える。

百聞は一見にしかず、ってね。

 

その先では、ゴール前でほとんど動いていない円堂くん以外の選手が各々ドリンクやタオルを使いながら話す余裕すらも無く早い呼吸を繰り返していた。

 

「……これは」

 

「ケッ、単純な話じゃねぇか。攻めてるからって後先なんにも考えずにペース配分を怠った報いだよ報い」

 

「不動」

 

「あんたは言葉を……………………」

 

「ふん、こんな調子で本当に勝てるかねぇ〜。後半が()()()だな。クククク」

 

わざと監督に聞こえるように言いながらベンチ内でふんぞり返っている不動にため息を漏らしつつ、ドリンクを置いてから立ち上がり軽くジャンプでダレた体を戻していく。

 

「よし、そろそろ後半も始まるわ。行きましょ」

 

「あぁ」

 

と、そんな感じで始まった後半戦。

 

私の嫌な違和感がそのまま現実になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッピーーーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半開始のホイッスルが鳴り響く。

 

カタールの陣形は前半よりも攻撃的なスリートップへと変わり、今まで守備に回っていたチームが攻撃に転じたことを意味していた。

 

始まる直前に実況の人が喋っていたが、相手チームの監督の采配に注目が集まっていることだろう。

私からしたら今から攻撃に転じられたらめっちゃめちゃ困る。

 

理由はハーフタイム時のみんなの様子を見ていれば一目瞭然。

この気温の中あれだけ体力を消耗していたら後半なんて確実に戦えない。

意図的なのか偶然か…………………………いや、どう考えても後者に決まっている。

前半戦での相手の動き、守備特化のフォーメーション、ファウルスレスレのラフプレー、そして……………………あそこまで走り続けていてなお息が乱れないあの体力の量。

 

今、私の頭の中で全ての事象が結びつき、最悪な結末が弾き出された。

 

 

 

 

 

 

このままでは2点差などあっという間にひっくり返される!

 

 

 

 

 

 

そんな考え事をしていたのが災いして、たいして相手にプレッシャーを与えられずに突破されてしまう。

 

「チッ!」

 

舌打ちをしてそこでまた迷う。

 

戻るべきかそのまま信じて前で待つか。

 

いや、戻るべきだ!

点を入れられてしまったら元も子も…………

 

「火蓮!!!!」

 

「っ!?ご、豪炎寺くん…………」

 

「俺たちは前だ。円堂を信じろ!」

 

豪炎寺くんの一言で後ろへ戻りかけていた足が止まる。

 

「………………わかったわ」

 

その答えに豪炎寺くんが小さく頷き視線を円堂くん(味方ゴール)へ向ける。

その視線も何となく険しいように感じた。

 

私もゴールへ視線を向けると私の後に緑川くん、それから綱海くんと壁山くんも吹っ飛ばされたようで倒されており、その先ではちょうど相手選手のシュートを円堂くんが止めたところだった。

何やらボールを見つめながら頭の上に疑問符を浮かべている。

 

「円堂!」

 

「あ、あぁ!鬼道!」

 

その疑問が晴れることなくボールは鬼道くんへ渡り、私たちよりも若干下がっていた吹雪くんへ。

 

しかし、相手選手の激しいタックルによって吹雪くんも弾き倒されてしまう。

 

が、そのこぼれ球を鬼道くんがどうにか拾い前線へ持ち込む。

 

 

 

もう一点欲しい。

 

 

 

吹雪くんが倒されたことで私と豪炎寺くんの動きが若干止まるが、フォローに入った鬼道くんのジェスチャーを受けて再び前へ向く。

 

そこに吹雪くんが走り込んでくる。

 

「僕にパスを!!」

 

なっ!?

 

何を言って、そんなに息が上がってたら

 

「無茶よ吹雪くん!そんなに息が上がってて…………」

 

「僕は大丈夫……だから!倒れる前にせめてもう一点…………僕にやらせて!」

 

「吹雪くん………………」

 

「必ず決めてみせるよ。だからそのあとは、任せたよ。火蓮さん、豪炎寺くん」

 

「わかった。頼んだぞ吹雪」

 

「ありがとう、豪炎寺くん!」

 

豪炎寺くんの鼓舞を受け、鬼道くんからのパスを吹雪くんが受ける。

 

ギリギリで相手ディフェンダーをかわしきり、吹雪くんがシュート体勢に入った。

 

右足の蹴りと共にボールが爪による連撃が襲い、吹雪くんの雄叫びと共に3つに分裂してから相手ゴールを抉る吹雪くんの必殺シュート『ウルフレジェンド』が炸裂する。

 

よし!

これが決まれば!

 

しかし……………………

 

 

 

 

「フッ…………………………『ストームライダー』!!!!」

 

 

 

 

っ!!

 

間一髪………………というわけではなさそう。

吹雪くんの放ったシュートは無情にも相手キーパーの必殺技によってがっちりと止められてしまった。

 

あのキーパー、前半じゃあえて必殺技を使わなかったということになるわね。

それも考えてみれば当然か、相手チームに警戒させないように攻めさせて攻めさせて、最後に疲れきった相手から逆転していく。

そんなシナリオだとしたらこうなることは必然だ。

 

この流れは宜しくない。

 

「ふん。この程度か?」

 

「そん………………な…………」

 

キーパーの挑発じみた一言と共に、ついに吹雪くんが体力の限界を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪くんと同じように緑川くんも体力の限界を迎え、あえなく久遠監督から交代が告げられる。

 

私は吹雪くんに肩を貸しながらベンチへ戻っていく。

 

「…………ごめん、火蓮さん。点、取れなかったよ」

 

「気にしないで。今は体を休めることに専念した方がいいわ」

 

「あ、ははは、そうさせてもらうよ」

 

「あとは任せなさい」

 

「うん。頼んだよ」

 

ベンチへ下がった吹雪くんをマネージャーの木野さんに預け、不動に視線を向ける。

 

案の定ニヤニヤしながら出番を確信しているようなので………………と言うか、状況打開には恐らく不動が必要だと思う。

私が予想するに、MFを4人とFW2人に戻してMFに不動と虎丸くんを入れれば問題なく後半戦を戦えるはずだ。

 

不動に向かって軽く顎でフイっとピッチを指して『よろしく』と合図を送る。

 

しかし……………………

 

「選手交代。吹雪に代わって宇都宮、緑川に代わって立向居!」

 

「えっ!?」

 

「何っ!?」

 

予想外の選出に思わず私と不動が同時に声を出してしまった。

 

「なんだ?文句があるのか?」

 

「あ、いえ…………」

 

「ならば砥鹿、お前はピッチに戻れ。フォーメーションは吹雪のポジションに虎丸。それから豪炎寺と場所を入れ替える。いいな」

 

予想外の言葉に呆気を取られた私は『はい』、その2文字がどうしても出てこない。

それは不動も同じだった。

 

確かに立向居くんは才能があるとは言えメインポジションはキーパーのはずだ。

もしかしたらサブポジションみたいな感じなのだろうか。

いずれにしろこの土壇場で………………。

 

ベンチに居たのはFWの虎丸くんにGKの立向居くん、木暮くんと飛鷹くんのDF2人。

それから最後にMFの不動の計5人だ。

MFの緑川くんを替えるなら同じMFの不動を入れる方が合理的のはず。

どうして久遠監督は頑なに不動を使わない?

 

私の事と言い不動のことと言い、この監督は一体何を考えているのだろうか。

というか……………………()()()()()()知っているのだろうか。

 

いや、今は考えるだけ時間の無駄だ。

 

ピッチへ戻れと言われた以上従うしかない。

 

信頼できるけど疑問が残る監督だということは理解した。

 

私は恨めしそうな不動の視線を無視してピッチに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴールキックに備えて虎丸くんを真ん中に右側を私、反対側を豪炎寺くんがポジション取りを行う。

 

直後に試合再開のホイッスル。

 

相手キーパーからボールが蹴り上げられ、MFが受けて即座にFWへ。

流れるようにボールが動き、ふたたび私のプレスが突破される。

 

あぁ、もう!

ディフェンス苦手!

 

こっちサイドにはさっき変わったばかりの立向居くんが入っており、体力的にも余裕があるためどうにかボールを弾いてドリブルだけは阻止するが、すぐに別のFWによって拾われてしまった。

すぐさま相手FWがセンタリング。

 

それをヘディングで止めに入った綱海くん諸共円堂くんまで押し返され、無情にもボールはそのままゴールネットを揺らす羽目になった。

 

………………こちらに体力の消耗があったとはいえ、綱海くんと円堂くんの2人を押し返すなんて。

 

そんなことよりも。

そこそこあっさりと1点返された。

 

その事の方が今は重要………………………………

 

 

 

 

「綱海!!!!」

 

 

 

 

状況打破のために思考を巡らそうとした矢先、円堂くんの一言で我に返る。

 

先程吹っ飛ばされた際に体力を持っていかれたようで、南国育ちっぽい綱海くんですらもう立つことが出来ないようだった。

しかも彼らの周りに何故か相手選手が集まって何やら話し込んでいるようだが………………何してるのかしら。

 

いや、それは後回しだ。

 

1点差。

 

「選手交代。綱海に代わり飛鷹」

 

久遠監督の指示で………………あれ?

ここで飛鷹くん?

漫遊寺出身の木暮くんの方が良いような気がするけど。

 

考えても仕方ないか。

 

私はキックオフを虎丸くんに譲り、右側で大きく息を吸った。

 

実況の言う通り【起爆剤】となるか。

頑張ってもらわないと。

 

さて、試合は虎丸くんのキックオフから始まり、豪炎寺くん、鬼道くんへと渡り自チーム全体のラインが上がる。

 

私も右翼を駆け上がりパスを待つ。

 

その直後、鬼道くんから逆サイドを駆け上がっていた風丸くんへボールが渡った。

そのタイミングで私は足を止め、数歩中へポジションを取る。

 

僅かに前へ出されたパスも持ち前の足でどうにか追いつき追ってきていたDFをフェイントで躱した風丸くんから大きくセンタリングが蹴りあげられた。

対象は鬼道くん。

流石、ボールを拾った時にしっかりと鬼道くんの動きも視界に入れていたらしい。

完璧なセンタリングが上げられた。

 

だが、それ故に相手DF陣もそれに連動してマークに動く。

 

しかし、その次の瞬間!

 

「えっ!!?」

 

 

 

 

 

「っ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

"なんと!宇都宮飛び込んだ!!!!鬼道へのセンタリングをカット!この大胆な作戦にデザートライオンディフェンス陣が崩れた!!!"

 

 

 

 

 

 

虎丸くんがセンタリングをカットした。

 

嘘!?

なんの打ち合わせもなしに!!?

 

い、いやでもこれは追加点のチャンス!

ここで1点入れることはかなり大きい!

 

「今だ!打て!虎丸!!」

 

「虎丸くん!!決めて!!」

 

私と豪炎寺くんがほとんど同時に叫ぶ。

 

しかし………………

 

 

 

 

 

ポン!

 

 

 

 

 

私と豪炎寺くんの叫びも虚しく、ゴール目前で若干表情を曇らせた虎丸くんはわざわざ相手キーパーの目の前にいる豪炎寺くんの方へパスを出した。

 

あの時と全く同じ。

 

選考試合での………………あのバックパスと。

 

「ちっ!火蓮!!」

 

「いや、1人で打つ方が早いわ!頼むわよ!」

 

「わかった!」

 

短いやり取りを交わしたあと、豪炎寺くんが大きく炎のエネルギーを爆発させ【爆熱ストーム】の体勢に入る。

 

「爆熱、ストーム!!!!!」

 

炎を纏う爆炎のシュートがゴールへ迫る。

しかし、そのシュートもキーパーの真正面に飛んでしまったが故がっちりと抑え込まれてしまった。

 

「っ!」

 

「あぁん、惜しい!」

 

追加点ならず、か。

厳しいわねこれは。

 

「惜しかったな!!でも、ナイスアシストだったぞ!虎丸!」

 

ゴール前から円堂くんの声が聞こえるが、今のプレーは正直【ナイスアシスト】とは程遠い。

あんなところでわざわざパスするくらいなら決めた方が確率は高いからだ。

円堂くん、流石にそのフォローはダメよ。

どんまい言うついでに豪炎寺くんの横に並ぶ。

 

「虎丸、何故シュートしなかった?」

 

「何故って………………」

 

「今のは決定的なシュートチャンスのはずよ?どうして?」

 

私も気になって疑問を投げかける。

すると、数秒の沈黙の後静かに虎丸くんが言葉を繋いだ。

 

「…………俺が決めたらダメなんです」

 

その言葉に私と豪炎寺くんが同時に顔を見合わせてしまった。

 

「それ、どういう意味?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺が決めたらダメなんです』、その言葉の意味を聞くまもなく今度は相手キーパーからのゴールキックによって試合が再開してしまう。

 

「話はあとね!戻るわよ2人とも!」

 

「あぁ!」

 

「はい!」

 

ボールはキーパーからFWへ、そして止めに入った立向居くんを蹴散らしながらオーバーラップしてきていたキャプテンの元へ回ってしまう。

 

戻れと鬼道くんの指示も飛んでいるが、後半残り数分のこのタイミング。

体力もかなり落ちてきているこの状況で、速攻の対処は困難を極める。

 

案の定、私達が完全に戻りきる前に相手キャプテンの必殺シュート【ミラージュシュート】が炸裂してしまった。

 

まるで砂漠に立ち昇る陽炎が写し出す幻のごとく、2つに分裂したボールが重なりながらゴールへ迫る。

 

円堂くんも【正義の鉄拳】で応戦するが、完全に弾き返すまでには至らずかろうじて軌道を逸らしてラインから出すことで精一杯らしい。

1度目のピンチは防いだが、まだまだ気は抜けない。

相手側のコーナーキック。

ただし、この時点で既に残り時間もほぼ無し。

もしかしたらロスタイムくらい入っていてもおかしくない時間帯故にここを乗り切ればそのまま逃げ切れる………………可能性が高まる。

 

正直FWの私にはどうすることも出来ずにハーフラインよりも若干後方でカウンターの準備に取り掛かった。

 

まぁ、カウンターを準備しておいてマイナスにはならないだろう。

点は取っておいて損にはならないし。

 

さて、そろそろ相手キャプテンがキッカーを務める勝負コーナーが始まる。

 

3人いるFWのうち誰に渡すか。

 

 

 

 

 

 

しかし、その問いの結果は全て『否』となった。

 

 

 

 

 

 

相手チームの勝負コーナーはペナルティエリア内へ蹴り込む訳では無いミッドフィールダーへの短いパスからプレイがスタートしたのだ。

 

つまりどういうことかと言うと……………………

 

 

 

 

完全に意表を突かれた!!!!

 

 

 

 

 

「コースを切れ!!」

 

そのせいで鬼道くんの指示もワンテンポ遅れてしまい、そのせいでショートコーナーでボールを受けたMFのシュートを許してしまった。

しかしこれは円堂くんの真正面。

運がいいと言うしかない、が…………いや、本当の狙いはそうじゃない。

 

こちらのDF陣の後ろからFWの1人が動いていた。

 

「円堂くん気をつけて!!」

 

私の咄嗟の叫びも虚しく、選手の間をするりと抜けたFWが円堂くんの前に飛び込む。

 

「何!?」

 

「はあぁぁぁああっ!!!」

 

シュートに合わせて飛び込み、そして円堂くんの目の前でヘディングによってボールの軌道を変えた。

 

当然円堂くんを含めたDF陣は1歩も動くことが出来ないままボールは無情にもゴールラインを割った。

 

この1点は………………絶望的な1点だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴール。

 

 

これで同点。

 

 

 

 

 

 

J - Q

2 - 2

 

 

 

 

 

 

 

"うあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!ボールは無情にもゴールへ!!!!イナズマジャパン!なんと後半ロスタイムという土壇場で同点に追いつかれてしまったぁ!!!!!!!!"

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

「くっ……やられたか」

 

走りかけていた私は唇を噛み、豪炎寺くんも拳を握りしめて吐き捨てるように呟いた。

 

これはもう。

私がやるしかなのかしら?

 

私はまだ体力的に余裕がある。

なんせチャージを受けた訳でもないし特段激しく走り回った訳でもないからね。

それにスタミナ管理には自信あるから。

 

視線を久遠監督の方へ向けるが、監督は無言のまま小さく首を横に振った。

 

「………………」

 

若干眉を寄せてから軽く頷き、ポジションへ戻る。

 

虎丸くんからのキックオフで試合再開。

ロスタイムも残り少ない。

 

こちらのボールであるこのプレーでどうにか得点したいところ。

 

右サイドから若干中央に寄りながら走り、いつパスが通ってもいいように準備をする。

 

その時!

 

 

 

 

 

 

虎丸くんからのパスを………………豪炎寺くんが虎丸くんへぶつけ返した。

 

おかげでボールがサイドラインを超えてしまう。

 

 

 

 

「な、ななな……………………」

 

何やってるのよあの2人!

こんな大事な時に!

 

「ちょっと豪炎寺くん!?」

 

「さっきからなんだ!お前のプレーは!!」

 

豪炎寺くんは虎丸くんから視線を外すことなく、止めようと近づく私を片手で制した。

 

「残り時間は残っていないんだぞ!精一杯!ベストと思えるプレーをしろ!」

 

「どうどう、落ち着いて豪炎寺くん。虎丸くんだって………………」

 

「っ!これが俺のベストです!」

 

その言葉に私の方がぴくんと反応してしまった。

 

「俺のアシストでみんなが点を取る!それがベストなんですよ!そうすれば俺がみんなの活躍の場を奪うことも無い!みんなで楽しくサッカーが出来るんです!!」

 

「ふざけるな!!」

「いい加減にしなさい!」

「っ!」

 

それに対する返しの言葉は、偶然なのか必然なのか……………………私と豪炎寺くんの声が被ってしまった。

 

一応虎丸くんを擁護するために割って入ったのだが……………………今のはちょっと、ね。

いくら温厚の私でも流石に癇に障った。

 

まさか庇おうとした矢先に手のひら返す羽目になるとは…………

 

「そんなもの本当の楽しさじゃない!」

 

いきなり声を荒らげた私と豪炎寺くんのおかげで虎丸くんがビクりと体を震わせて縮こまってしまった。

 

「見ろ!ここにいるのは日本全国から集められた最強のメンバー達!そして!」

 

豪炎寺くんが自チームを指さしてから相手チームを指す。

 

「敵は世界だ!俺たちは、世界と戦い勝つためにここにいるんだ。それを忘れるな!」

 

「そうよ。ピッチにいる以上勝ちにこだわらないと」

 

続けて私も一言つけ加え、バトンをいつの間にか集まっていたメンバー達に渡した。

 

「そうだぞ虎丸。みんなが、全力でゴールを目指さなくちゃ!」

 

私のバトンは円堂くんが拾い、それから鬼道くんへ手渡される。

 

「虎丸。ここには、お前のプレーを受け止められないやわなやつは一人もいない」

 

2人の言葉に力強く頷き返す面々。

その顔を順番に見渡した虎丸くんが最後に私の顔を見た。

その視線に対してパチンと軽くウィンクで返してあげる。

 

おかげで表情がパッと明るくなり、ゆっくりと立ち上がった。

そして、

 

「……良いんですか?俺、本気でやっちゃっても!」

 

今はまでにないくらい生き生きとした笑顔を見せる。

 

それを受けて私と豪炎寺くんが互いに顔を見合せ、豪炎寺くんへ最後の言葉を掛けてあげるようにクイッと軽く頭を動かした。

 

「フッ、俺達を驚かせてみろ」

 

「はい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵チームからのスローインで試合が再開。

 

試合開始直前に久遠監督からのアイコンタクトを受けてハーフラインちょっと上あたりまで下がっていた私の真正面。

ドリブルをするMFにプレスをかける。

 

数回のフェイントを混ぜて同時にパスコースも塞ぐ。

その直後、ボールをコントロールする足から僅かにボールが離れた。

その一瞬を見逃すことなくスライディングタックルでボールを奪うとそれを見越して走り込んできていた鬼道くんへパスを通す。

 

ロスタイムも残り少ない。

 

このワンプレーをものに出来なければ事実上の敗北が決定する。

故に私もパスを通したあとすぐに前線へ駆け上がった。

 

ボールは鬼道くんから虎丸くんへ渡り、自分の殻を破った虎丸くんが怒涛の突破劇を披露した。

 

「やるじゃない虎丸くん」

 

「こんなの序の口ですよ!」

 

「ほほう?」

 

「俺もう色々溜まってるんですから!あれもこれももう本当はずっとシュートが打ちたくて打ちたくて!」

 

その言葉に豪炎寺くんが頷く。

 

そして

 

 

 

 

 

 

「行け!虎丸!」

 

「決めてきちゃいなさい!この試合!」

 

「はいっ!!!」

 

 

 

 

 

 

私と豪炎寺くんの両翼からの声援を受けてボールを持った虎丸くんが加速し最後のDFを突破してGKと一対一になる。

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと封印してきた俺のシュート!唸れ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

空手の型のような力強い構えから背後に現れた虎の咆哮で威力を爆発させた必殺シュート。

 

 

 

 

 

 

 

「タイガー、ドライブ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「やらせるか!ストームライダー!!!!」

 

しかしキーパーも同様に必殺技で応戦する。

巻き上げられた砂塵が渦巻く砂嵐。

 

その中心を【タイガードライブ】が撃ち抜いた。

 

「なにっ!!!?」

 

ボールがゴールネットに突き刺さり、同時に会場が一瞬にして歓声の嵐へと巻き込まれる。

 

 

 

 

 

"ゴーーーーーーーーーール!!!!!!"

 

 

 

 

先程以上に興奮した実況の声が会場全体に広がり、さらに歓声の渦が激しくなる。

 

そしてその直後。

 

 

 

 

 

ピッピッピーーーーーーーーーーー!!!

 

 

 

 

 

主審による甲高いホイッスルの音がこの試合の終幕であることを告げた。

 

長かったこの試合にもついに終止符が打たれたわけだ。

 

はぁ、疲れ……………………てはいないな。

私あまり走らなかったしラフスレスレチャージも喰らわなかったからかな?

まぁ、南米の気候に比べたら………………ということかしら。

 

何はともあれ…………………私たちは最後の決勝点を入れた虎丸くんの元へ。

 

「今のがお前の本気のプレーか?俺達に着いてくるにはまだまだ時間がかかりそうだな、虎丸」

 

「……でも俺、まだ本気出してませんから」

 

そんなやり取りを聞きながら輪の外から見ていると、ふと目が合った虎丸くんが親指を立ててくれる。

それを同じジェスチャーで返しベンチへ戻ろうと視線をふとそっち向けると今度はポケットに手を突っ込んだままムスッと脇の柱に背中を預けていた不動と目が合った。

顎で『ちょっとこい』のジェスチャーを受けて、先に歩き出していた不動の後に続いてグラウンドから連絡通路へ入った。

 

「……………………」

 

「何よまたこんなところに呼び出して。特訓の打ち合わせでも…………」

 

「【力を出し惜しんで行ける世界は無い】だとよ」

 

「は?いきなり何?」

 

「さっきあの監督が俺に言ったンだ」

 

「いつ?」

 

「んな事ァどうでもいいだろうが」

 

「まぁ、確かに。それで、私に共感でも得ようとしたわけ?」

 

「当てはまるんじゃねぇのか?俺も、()()()な」

 

「……………………言ってる意味がわかんないわね」

 

声のトーンを落とし僅かに目を細めて答える。

 

そしてその後の言葉を言おうとしたちょうどそんなタイミング。

 

「あ、火蓮さん。こんなところで何してるんですか?あ、不動さんも一緒だったんですか?監督が集合かけてますよ。もうみんな集まってます。あとはお2人だけですよ」

 

通路の角から虎丸くんが現れたことで中断される。

 

「…………あ、あれ?なんか俺変なタイミングで来ちゃいましたか?」

 

私と不動のピリッとした雰囲気を感じ取ったのか虎丸くんがしゅんとしてしまった。

 

「あぁ、いやなんでもないのよ。集合ね、わかったすぐ行くわ」

 

「わ、わかりました」

 

そう言い残して足早に虎丸くんが戻っていく。

 

「ケッ」

 

その後に続いて大袈裟に吐き捨てた不動が相変わらずポケットに手を入れながら私の隣を通り過ぎていく。

 

「………………」

 

私はしばらく立ち尽くしたあと、足早にグラウンドへ戻った。




ようやくカタール戦終わった………………

虎丸覚醒まで終わった………………



とりあえず、次回お楽しみに←(笑)
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