イナズマイレブン〜紅蓮の華〜   作:奇稲田姫

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練習試合編の全編です

おそらく前中後の三部構成になると思われます

では本編のほう、どうぞ


練習試合 VS エゼルフォトン 1

試合開始。

 

 

主審を務める古株さんの長いホイッスルが開戦を告げ、話し込んでいた私と音目矢(ねめや)君もお互いに短く「よろしく」と言い合ってからそれぞれの役割を果たすために走り出した。

 

私たちイナズマジャパンボールから始まった試合は豪炎寺君から吹雪君へと渡り、吹雪君が持ち味のスピードを武器に敵陣内へ切り込んでいく。

その様子を右サイドから確認しつつ先ほど自分とすれ違うように駆け上がってきた音目矢君に一度視線を流し彼の動きを確認。

内に走る進路を変えるのであればボール奪取のサポート、もしくはボールを奪ったMF(ミッドフィールダー)からのパスを受けやすくする等の可能性が考えられる。逆にそのまま外を駆け上がるのであればたとえ吹雪君がボールを奪われたとしても右サイド(こちら側)へのパスが放たれる可能性は低くなるわけだ。進路変更することなく外を走っていっているということはつまり右からの攻撃の可能性は比較的低い。

であるならば、現在右サイドを上がる音目矢君にはDF(ディフェンダー)の木暮君がマークについているし、警戒は音目矢君以外のFW(フォワード)へ向けるほうが得策になるだろうな。

正直に言えばそちらのほうにボールが繋がれた時のほうが私としては絶対に避けなければならない事象だ。

 

グラウンドの逆サイド側ではボールを持った吹雪君がドリブルで上がっていき、双子(そうこ)ちゃんのチェックに若干渋い顔を浮かべながらどうにかキープし続けている。

 

……っと、うまい。

若干後ろに押し戻されながらも今吹雪君がボールを取られそうになるそのぎりぎりのタイミングで後ろを走っていた緑川君へボールを渡すことに成功した。

 

そこからすぐに緑川君から司令塔の鬼道君へとボールが回り、鬼道君からの「上がれ!」の指示を受けて私を含めたFW陣が前線のラインを押し上げていく。

 

攻撃の起点となる鬼道君を抑えるために花王瑠(かおる)が鬼道君のブロックに入りプレッシャーをかけていくがそれを基山君とのワンツーで鬼道君が抜き去り私とは逆サイドを駆け上がる吹雪君へパス。

次いで吹雪君がDFの拓夢のプレスを受けるよりも1テンポ早く中央に走り込む豪炎寺君へセンタリングを上げた。

 

私はサイドから若干内側へ走る進路を変更しこぼれ球に狙いを澄まして攻撃の流れを断ち切らないように努めよう。

 

ただ一つだけ気がかりなことといえば…………花王瑠の奴、やけにあっさりと抜かれていたな。

 

「豪炎寺君!!」

 

「あぁ!!」

 

吹雪君からのセンタリングを受け、マークのいないフリーな状態の豪炎寺君がそのままシュート態勢に入る。

 

パスを受けたタイミングで一瞬だけこちらに視線を投げてきたが私としてはどうにも間に合いそうにないので軽く首を振ってNOのサインを返した。

私の意思をくみ取った豪炎寺君はすぐに視線をゴールへ戻してシュートを放つ。

 

「はぁっ!爆熱、ストーム!!!!」

 

シューターの豪炎寺君から炎のエネルギーがあふれ出し背後に炎を纏う魔神が姿を見せる。

その魔神によって空中へ大きくきりもみ回転しつつ跳躍した豪炎寺君がその回転力と背後の魔神による正拳突きによって爆発させた爆炎のシュートが勢いよく放たれた。

 

よし、あいさつ代わりとしては上々だと思う。

 

さて、アンのほうは。

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふぅ、なるほど。実力的には日本代表に選ばれるだけのことはあるってことね。でも、ま……」

 

 

 

 

 

 

相変わらず腕を組みながら余裕綽々と言ったところだろうか。

 

「足りないわね」

 

それからすっと腕組みを解いて近くにいたDFの二人に素早く指示を飛ばした。

 

亜留太(あるた)桃妃(ももき)、よろしく」

 

「了解キャプテン!」

 

「承りました!」

 

その声に短く返答を返したDFの二人が素早く反応する。

 

「なにっ!?」

 

その光景を目の当たりにした豪炎寺君が思わず呻いた。

なぜか。

それは……。

 

「確かになかなかの威力のシュートを打つじゃない。それに関しては拍手を送ってあげるわ。でもね、世界目指すと豪語するからにはこんな程度で満足されちゃ困るわね」

 

腰に手を当てながらまっすぐに豪炎寺君を見据えるアンの目の前で、今しがた豪炎寺君が放った『爆熱ストーム』がDFの亜留太と桃妃のブロックによって完璧に止められている光景が広がっているのだから。

横から見ていた私も豪炎寺君のシュートに関しては信頼も寄せているしその決定力も高く評価していたからさすがに目を疑った。

アンが相手である以上私を含めて簡単に点を取らせてもらえないだろうとはふんでいたが、正直キーパーにすら届かないとは思っていなかった。

あの豪炎寺君のシュートを………。

 

そこまで考えてふと思考が現実に戻ってくる。

 

今はそんなことを考えている場合じゃない。

よく考えたらまだインプレー中だったことをすっかり忘れていた。

足を止めている場合じゃない、状況としては豪炎寺君の『爆熱ストーム』を亜留太君は左足で桃妃が右足で同時に蹴るような形で受け止めている状態だ。

何か嫌な予感が頭をよぎる。

何の策もなくただただボールの勢いを殺すためだけにこんなことをしたとは考え難い。

 

となると、非常にまずい状況かもしれない!

 

「豪炎寺君!切り替えて下がるわよ!まだインプレー中……」

 

唇をかみながら動きを止めた豪炎寺君に対して切り替えろと叫び、自分はサイドからセンターへ向けて全力で走り出す。

 

「鬼道君!中心に選手を集めて!カウンターが来る!」

 

「あぁ、わかっている!壁山!土方!センターを固めろ!」

 

「はいっス!」

 

「おう!」

 

「あら、さすがは火蓮、と天才ゲームメーカーってところかしら?対応が早いわね。だったらほら、頑張って止めてみなさい」

 

再び腕を組んだアンがにやりと笑みを浮かべる。

その直後。

 

「はぁっ!!いっけぇ!!」

 

「やああぁぁっ!!!!」

 

シュートを受け止めていた亜留太と桃妃が『爆熱ストーム』の威力を上乗せしたボールをこちら陣内へ勢いよく蹴りこんできた。

一応必殺技ではないにしろ『爆熱ストーム』の威力が乗ったボールはほぼほぼ必殺技といっても過言ではない威力となって私たちイナズマジャパンのゴールへ向かって真っすぐにせまってくる。

もう見ただけで私の直感がやばいと警鐘を鳴らしている。

どうにか一度私でカットするか威力を削り取っておきたいところではあるが……あぁもう!だめ!間に合わない!!

 

「鬼道君!!」

 

「わかっている!ふっ……っ!」

 

グラウンドの中心あたりで自陣へ戻るために走っていた体を反転させてシュートのカットを試みるがただの一瞬すらも変化を起こすことなくはじかれてしまった。

 

続けて壁山君の『ザ・ウォール』と土方君の『スーパーしこふみ』によってわずかに威力が削がれたシュートがキーパーの円堂君のほうへ。

さすがに微々たるものではあったが鬼道君のブロック、そして2つのシュートブロック技で威力減衰を起こしたシュートは円堂君の『正義の鉄拳』によってコート外へはじき出すことには成功した。

とはいってもギリギリのところでシュートの軌道をずらし、ゴールバーに当たって跳ね返ったボールがそのままサイドラインを割ったに過ぎない。

『止めた』というよりは『運よくゴールに入らなかった』と表現するほうが正しい状態だ。

 

その衝撃で円堂君もわずかに後方へはじかれて尻餅をついているし、壁山君と土方君も技を破られた衝撃で軽く吹き飛ばされている。

 

まだ始まって数分しか経過していないがイナズマジャパン(こちら側)としては試合開始早々いい感じに出鼻を挫かれた。

 

試合前に円堂君が相手が誰であろうと全力でぶつかるだけだとチームの士気を上げて試合に臨んでいたが、今の1プレーによって不穏な空気が流れ始める。

だとしてもそんなショック受けることかしら。

私としてはそこまで気にしなくてもいいとは思うんだけど……ふとベンチに視線を向けると指を組んだ状態でいつにもまして真剣な表情で相手チームを観察していた不動と一瞬だけ目が合うがすぐにふいっと視線を外された。

というか、この試合の意図は私たちのチームのスキルアップなんだから落ち込む暇があったら次どうすれば止められるのかとか、再発防止に努めたほうがいいと思うんだけど。

 

小さくため息をついていると隣に豪炎寺君が歩み寄ってくる。

 

「火蓮、今のは」

 

「?どうしたのよ豪炎寺君。ただシュートが一本止められただけでしょ?気にしない気にしない」

 

「いや、それはまぁいいんだが…………」

 

「言いたいことは何となくわかる。あの二人、に限らず今私たちが相手しているチームに関してでしょ?正直に告白させてもらうとね……」

 

「……」

 

「今現在で日本一のチーム、といっても過言じゃないかもしれないわ。つまり、私たちが今目指している目標、世界を取るってことはこのチームを超えるってことと同義よ」

 

「…………このチームを超える、か」

 

「怖気づいた?」

 

「……ふ、まさか。この程度のことで気持ちが折れるほど俺は、いや俺たちはやわじゃないさ。だろ?」

 

私の試すような問いに対して豪炎寺君は小さく笑みを浮かべ、私の肩をポンとたたいた。

 

「特に俺たちのキャプテン、円堂ならなおさらな」

 

「そうだよ、いきなりのことで驚いたけど、こんなすごいシュートを受けたらキャプテンは……」

 

「あぁ、円堂ならあのとおりだ」

 

豪炎寺君に続いて吹雪君と鬼道君も加わり、くすりと笑いながら視線をキーパーの円堂君のほうへ向けた。

そこでは若干気持ちが沈みかけていたメンバーの中で一人だけすごいシュートを受けて興奮している円堂君の姿があった。

その姿に呼応するように一人また一人とモチベーションを回復させていく。

 

「あのポジティブさは円堂らしい」

 

「こういうところは頼りになるわね。精神的支柱って感じ」

 

「あぁ、それがあいつなんだ。すぐに慣れる。さて、そろそろプレー再開だ。今のプレーだけではまだ情報が足りない。かといって砥鹿から情報を聞くにも時間がない。とにかくまずは1点が必要だ。先制点を取りに行くぞ」

 

鬼道君が私たちの顔を順番に視線を流す。

それに対して私と豪炎寺君、吹雪君が無言のままうなずきそれぞれのポジションへ戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイドラインを割ったことでコーナーキックは免れたがそれでもエゼルフォトン側のスローインから試合再開の時点でピンチであることには変わりない。

 

天秤(あまはかり)君からのスローイン。

ボールは綱海君のマークを一瞬にして振り切ったスピカから真ん中のほうへ走りこむ花王瑠に渡された。

 

く、容赦ないな。

このままじゃ前線でボールを受けるどころの話じゃなくなる。

攻められっぱなしはちょっといただけないし。

前線で待機する豪炎寺君と吹雪君にアイコンタクトを送り、私の意図を汲んだ二人は一つ頷いてすぐにディフェンスのために自陣のほうへ走り出した。

 

私も急いで戻らないと。

取り返しがつかなくなる前に…………って。

 

そう簡単に下がらせてくれない、か。

 

「悪いな火蓮、お前だけは自由にさせるわけにはいかない」

 

「恭平……」

 

「行きたきゃ俺を振り切っていくんだな」

 

「このっ、アンの作戦ね」

 

「正解」

 

自陣に向けて走り出そうとした私の前に立ちふさがるように進路を妨害してくる恭平に渋い顔を向けながら舌打ちを1つ。

私もドリブル突破やマークを振り切るのには自信があるほうではあるが、こいつは別だ。

私の癖や特徴を知り尽くしている上に恭平と逆サイドにいる拓夢は1on1のマークではほぼ負けなしなのだ。

現に今まで恭平のマークを真正面から振り切れたという記憶が見つからない。

 

「火蓮!!」

 

「私は大丈夫!豪炎寺君と吹雪君は急いで戻って!それから右サイドのスピカには絶対にボールを渡しちゃだめ!!あの子にシュートを打たれたら今の円堂君だと確実に止められない!」

 

「わかった。右サイドのFWだな!」

 

今の現状において最も最悪な一手だけを豪炎寺君に伝えると自陣で容赦ない攻撃を受け続けている味方に心の中でごめんと一言言ってもう一度恭平に向き直る。

 

「助言送ってたところ悪いけどさ、あの感じじゃスピカじゃなくったって止められないと思うぞ?」

 

「わかってるってば、でも全部伝える暇なんてなかったじゃない」

 

「それもそうか。ま、救援には………………っと、行かせないって今言おうとしたのに」

 

「なーーーーんなのよもう!」

 

自分もどうにか恭平(コイツ)を振り切って助けに行こうと思い、恭平がしゃべってる隙に突破を試みるがそれすらも対応されてしまっては叫びたくもなる。

 

この状況はまずすぎる。

私がここに釘付けにされていたら現状花王瑠やスピカに対応できる人員が減る。

 

今は前線から舞い戻った豪炎寺君をはじめ吹雪君や基山くん、鬼道君がかろうじてついていけている状況だ。

それもいつまで持つか……。

合間を縫ってはシュートが放たれているが必殺技を使っていないあたり相手には余裕を感じられる。

しかしそれでも円堂君のほうははじくのでいっぱいいっぱいになってしまっている。

どうにかエンドラインは超えないように全員が必死になっているが、相手側に隙ができない以上攻撃に転じることができない。

 

私もマークを振り切るために右に左に小刻みに動いたりフェイントを入れたりするが、その努力もむなしくぴったりとしたマークは全く崩れない。

 

「何やっても無駄よ火蓮。その特等席から自分のチームを眺めてなさい」

 

「冗談じゃないわよ。見てるだけなんて性に合わない」

 

「あんたの性なんか知らないわよ。でも一つだけ言えることは」

 

「は?」

 

「これがあんたに課せられた試練……の一つってことよ」

 

「何それ、意味わかんないわ」

 

「あっきれた」

 

やれやれと言いながらゴール前でアンがため息をつく。

 

「この調子じゃ今日のあんたは大した脅威にもならなそうね」

 

「?どういう意味?」

 

「それくらいそのでっかい頭で考えなさいよ」

 

「どーーー言う意味かしら?」

 

「ほらそろそろ試合が動くからあっちに注目」

 

「くっ、あんたは後で絶対シバく」

 

ナチュラルに言われた悪口に頭のてっぺんが熱くなる感覚を感じながらアンに言われたように自陣のほうへ視線を向けると、ちょうどトリックプレーで鬼道君を躱した花王瑠がドフリー状態になっていたスピカへパスを通した瞬間だった。

あぁ、もう!

さっきあの子にはボール渡すなって……。

 

ボールを受けたスピカが一瞬私に視線を向けてくすりと笑った。

 

その直後。

スピカがシュート態勢に入る。

それは今までのようなノーマルなシュートではなく、必殺技だ。

 

始動とともに天高くボールを蹴り上げるスピカ。

く、あそこまで高く蹴り上げられたらジャンプなんかじゃ届くわけない。

つまり妨害も絶望的。

 

来る。

 

上空高くに浮いたボールのさらに上から1度目の踵落とし(左足)でボールに回転を加えながら膨大な量のエネルギーを充填し、そのまま1回転して二度目の踵落とし(右足)で充填させたエネルギーを爆発させることでボールを燃え盛る巨大な隕石のように変化させて放つスピカの必殺技。

 

 

 

 

 

 

メテオライト!!」

 

 

 

 

 

 

「円堂君!」

 

エゼルフォトン陣内に釘付けにされた状態でどうにか自陣の円堂君へ声を飛ばす。

 

それを見ているしかできない自分に腹立たしさを覚えながら同時に焦りもこみあげてくる。

今の状態じゃ一点を入れるどころの騒ぎじゃない、一刻も早く自陣に戻らなければ。

しかし、焦れば焦るほど……

 

「っと、へへ、どうした火蓮。動きが雑になってるぞ?」

 

「大きなお世話よ。あぁ、もうどきなさいよ」

 

「断る」

 

自分の単調になった動きは恭平によって悉くシャットアウトされ身動きが取れないまま時間が過ぎていく。

 

自陣のほうではスピカから放たれた『メテオライト』によってブロックに入った綱海君と木暮君が吹っ飛ばされ、先ほど同様に壁山君と土方君のダブルシュートブロック技が炸裂している。

が、両者ともにあっさりと破られて吹き飛ばされた。

 

そして最後の砦である円堂君の必殺技『正義の鉄拳』すらも簡単に打ち崩し驚愕の表情を浮かべる円堂君のすぐ横を通ってゴールネットを大きく揺らした。

 

 

 

 

ゴール。

 

 

 

 

先制点はエゼルフォトンとなってしまった。

 

 

 

 

 

A - J

1 - 0

 

 

 

 

 

あれに関してはさすがスピカであると言わざるを得ないが、何度も言うが容赦ないな。

 

しかしまだ戦況はわからない、何せ1点入れられただけだから。

まぁ、その1点を取り返すのがかなり骨の折れる作業になりかねないのではあるが。

それから点が入ったことでプレーの中断となるのだが、それに関してはすべてが悪いわけでもなくなる。

今まで釘付けになていた私もプレー再開に伴って自陣に戻る必要があるわけで、つまりルールのおかげで強制的に自分のマークを外すことができるわけだ。

それに、アン(むこう)がそういう作戦をとってくるというのであればこちらとしても策を講じやすい。

 

同じ作戦には引っかからないんだからね。

 

自陣に戻り、大きく息をついて考え込んでいる鬼道君の元へ。

ほかの面々のほとんどは円堂君の周りに集まっており、再びネガティブ志向が蔓延しそうなチームを円堂君が鼓舞している光景が広がっている。

それを横目に私は鬼道君の隣に並んだ。

 

「ごめんなさい鬼道君。私も戻って守りを固められたらよかったんだけど……」

 

「気にするな、俺も見ていたがあれほどお前がぴったりとくっつかれて身動きを封じてられいては仕方ないさ。どうやら、相手はお前を警戒しているようだな。あそこまで露骨に自由を奪っているところを見ると」

 

「みたいね」

 

「そうなるとかなり厳しいな。今現状奴らのスピードについていけているのは俺と豪炎寺、吹雪、ヒロトの4人。プラスお前だ」

 

腕を組みながら眉間に眉を寄せる鬼道君。

 

「先のプレーを見ると攻守の両方でお前は絡むことができない状況だ。少なくとも守備には参加できない、と考えておくのが妥当だと思う」

 

「私も同意見。もどかしいけど」

 

「あぁ、厄介極まりない」

 

そんなことを話していると、ちょうどこちらのゴール前から自分の陣地へ帰ってくるスピカが隣をすれ違った。

すれ違いざまににこやかな笑顔で軽く会釈をしたスピカにこちらはむすっと肩を落とすしぐさをして見せた。

 

そしてそのままゆっくりと通り過ぎ、彼女と私たちが背中合わせになったタイミングで背後からスピカがふと声を出した。

 

「もし、世界の頂点にいくというのでしたらこの程度のシュートくらいは止めていただきませんと」

 

「……円堂君なら絶対に止めてくれるわ。心配無用よ」

 

「ふふ、そうですか。楽しみにしています。それでは、試合は始まったばかりですのでお互い頑張りましょう」

 

その言葉の直後、足を止めていたスピカが再び歩き出して自陣に戻っていく。

 

「なるほど、アレが【星刻のストライカー】早乙女 スピカか」

 

「鬼道君も知っていたのね」

 

「いや、最近お前のことを調べたときに何度か名前が出ていたから覚えていたんだ」

 

「え、調べたの?私を?」

 

「まぁな。オーストラリア戦とカタール戦のお前の動き、それから同じチームメイトとしてお前の正体については知っておく必要があると思ったからな。……不動とも何らかの関係があるようだ」

 

「いや別に不動とは特別なことは……」

 

「調べた、といっただろう。当然お前たちの関係も知っている」

 

「あ、そう」

 

「それよりも今は追いつくことが先決だ。豪炎寺と吹雪、お前の3人にどうにかしてボールを集める。砥鹿、お前も積極的にゴールを狙ってくれ」

 

「OK」

 

短く返答し自分のポジションへ戻りながらプレー再開のキックオフに向けて作戦を考える私であった。

 

スピカの言う通り、まだまだ試合始まったばかりだ。

私も含めて豪炎寺君も吹雪君も疲れはほとんどない。

……さっきのマークで精神的には若干来るものがったが、まぁ誤差の範囲ではある。

 

次はどうにか1on1の状態にならないように考えなくちゃ。

 

そのタイミングで再びプレー再開のホイッスルがこだまするのであった。




あとがきです


まだまだ試合は始まったばかりのタイミングですが一度切ります
なんか長々としちゃいそうだったので


本当は前編後編の二話で収めたかったんですけど…………無理でした


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