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そしてこの試合なんかいろいろやりたいことが多すぎて前中後の3部じゃおさまらない事実が浮上してしまいました
まぁ、大事な試合なんで許してください
点差は1対0のままイナズマジャパンボールのキックオフで試合が再開。
豪炎寺君から吹雪君に渡されたボールはすぐに司令塔の鬼道君へ渡され、FWの私たちはいっせいに敵陣内へ上がっていく。
一応その中でも私は
理由としては私単騎で切り込んでしまった場合、先ほどのように恭平に1on1のマークをぴったりつけられて身動きが取れなくなっていしまうためだ。
できるだけ後ろを走る基山君と距離が離れすぎないように調整しつつ恭平のところで1人対2人の状況を作ることができればベスト。
さすがの
DFさえ突破してしまえばあとはキーパーのアンと対峙するだけなのでそれがまずは第一段階となるだろう。
あくまで私は。
豪炎寺君と吹雪君のほうに関しては私ほどきついマークになるとは思えないが…………いや、私とは反対側の吹雪君のほうはそうでもないのか。
あっち側には恭平同様1on1ではかなりの猛者である
アンのことだ、私以外の選手を眼中に入れていないなんてことはしないだろう。
危険因子は徹底的に排除する主義の彼女なら拓夢にも恭平と同じく1on1で選手の動きをシャットアウトしろとかなんとか指示は出してそうだし。
つまり孤立してしまえば相手の思うつぼ、逆に彼らに対して複数人で対峙することができれば突破口は開ける。
後はゴール前のDF2人、亜留太君と
それもそれで厄介だが……。
と、ある程度の理想論としてはこんな感じだがそう簡単に進まないのがこのチームである。
私が後ろの基山君との距離を測っていることを察知したMFの
やっぱりばれるか。
これだからゾディアックスのメンツは厄介なのよね。
キャプテンのアンを中心に敵が最も嫌う場所をとことん突いてくる戦術。
しかもそれのすべてがアンからの指示ではなく各選手一人ひとりがそれぞれの役割を理解し、一つの作戦から10の行動を導き出すことができる。
今の私が突かれてもっとも嫌なことは基山君をマークによって足止めされて私自身が敵陣内で孤立してしまうこと。
豪炎寺君を頼る手もあるにはあるが豪炎寺君は
私の助けに入るためにはゴールへ向かう縦の移動からコートを横切る横の移動をしなくてはならなくなってしまう。
そうなってくると中盤の司令塔である鬼道君からパスを出せる相手がいなくなってしまい、攻め手が消えてしまう可能性が出てきてしまうわけだ。
正直この試合中どれだけのシュートチャンスが巡ってくるかはわからない。
少しでもチャンスにつながる確率を上げていくにはできるだけFWの私たちは横の移動よりも縦の移動を優先させていきたいところ。
ゆえに豪炎寺君に頼る案はあまりよろしくない。
となると、私が恭平を突破するか基山君に天秤さんをどうにか振り切ってもらうしかない。
つまりどうなるかと言うと……
「おっと、待ってたぞ火蓮。ここからは通行止めだ」
「あぁもうやっぱり!」
さっきと同じ状況になったということ。
二度も同じ罠にはまって少しイラっとした私は思わず後ろの基山君のほうに視線を向けてしまう。
「(…………いや、基山君のせいじゃない。私も警戒が足りなかった。少し考えればわかることだったのに)」
後方で天秤さんのマークに苦しそうな表情を浮かべている基山君を見た瞬間我に返った。
試合はボールをキープしながら敵陣へ上がる鬼道君から私との逆サイドを走る緑川君のほうへパスが通り、そのまま緑川君がドリブルでボールを持ち込んでいく。
対して
チェックのタイミングをずらされた双子ちゃんをしっかりと抜き去った緑川君からセンターを走る鬼道君へボールが戻される。
花王瑠のマークの一瞬のスキをついて緑川君からのボールを奪取した鬼道君が
それをくみ取った鬼道君が今度は視線を基山君のほうへ向けた。
しかし、残念ながら基山君のほうも天秤さんがマークについており容易に抜け出せる状況じゃない。
基山君のほうも厳しいと判断した鬼道君はそのままドリブルでエゼルフォトン陣内へ切り込んでいく。
その前では豪炎寺君もゴールへ向けて走りこんでいるのだがこのまま安易に豪炎寺君へボールを渡してしまえば最悪の場合最初の1プレーの二の舞になりかねないという可能性が出てきてしまうのがめちゃくちゃ厄介なところである。
それは鬼道君も豪炎寺君も理解はしているだろう。
そんな鬼道君に対して今度はこの試合
恭平のマークによって思うように動けない私はあきらめて自陣の選手のほうへ焦点を合わせる。
ボールを持った鬼道君は花王瑠のブロックからどうにかボールをキープしながら周囲の状況に視線を巡らしていた。
とはいえ、涼しい顔で鬼道君の動きを邪魔していく花王瑠に対して鬼道君のほうは取られないようにキープすることも一苦労だという表情をしている。
同じMFの基山君には天秤さんがマークについていて思うように動けないが、その逆側の緑川君には1on1のマークはついていなかった。
それを視界の端に収めた鬼道君が緑川君へ向けてパスを放ったその直後。
鬼道君からのフェイントを難なくかいくぐった花王瑠が一瞬でそのパスをカットし、
それに対してわずかに眉を動かした鬼道君もすぐに全員へ「戻れ」の指示を出して花王瑠の後を追って走り出す。
その指示を受けて豪炎寺君、吹雪君も前線から後退し天秤さんのマークで動けないでいた基山君からもマークが外れて基山君も自陣へ向けて走り出した。
いや、厳密に言うならマークが外れたというより花王瑠がボールをカットした瞬間両翼で控えていた天秤さん、双子ちゃん、それからFW陣の三人が一気に攻撃に転じたため自動的にマークがいなくなっただけだ。
鬼道君の指示によって右サイドを走るスピカには綱海君と壁山君の二人体制でマークを付け、残りの二人、
そんな状態であるならばスピカはおろか洋のほうにもパスを通すのは難しいだろう。
パイレーツハットのおかげで若干身長が高く見える洋だが実際のところは私よりも少し小柄な体形をしているゆえ、ガタイがよく身長もある土方君が壁となってさえぎっていることが要因としてあげられる。
ついでに音目矢君のほうだがこちらは単純にボールから遠い。
中に向かって移動させないように木暮君も動いているためこちらのパスもほぼないとみていいだろう。
だが、油断は禁物。
あぁ、もうこうまで何もできないとほんとに嫌になってくるな。
どうにかしてさっさと恭平を振り切って守備に参加しないと。
私はちょくちょく動きながら横目で恭平を見てからもう一度自陣のほうへ視線を戻す。
何か手はないか……。
そんなことを考えていると再び自陣のほうから強烈な力の奔流が流れた。
「(あ!花王瑠の奴!パスができないからって自分で打ちに行ったわね!)」
後ろを走る鬼道君を置き去りにしつつゴールを見据えてドリブルを止める花王瑠。
そのボールにのせられた右足にまばゆいほどの光が収束していく。
それから軽くボールを胸の高さにまで浮かせ、その場でくるりと1回転して回転蹴りの要領でボールを薙ぎ払うようにしながら放つ花王瑠の必殺技。
『残光一閃』。
蹴りこまれたボールはまるで剣や薙刀の水平切りのような斬撃波とともにまっすぐにゴールへ向かって突き進んでいく。
「(『残光一閃』。まだ
マークにつくことに固執しすぎてしまっていた土方君と壁山君の反応も遅れてしまいシュートブロックは間に合わない。
洋もスピカもこれを見越していたのかマークについたDF陣に悟られないように細かく動きながら3人をサイドへ誘導しつつゴール前から少しずつ引き離していたし、それにはあの鬼道君ですらもグラウンドのあっちこっちでいろいろなことが起きすぎてしまっているせいで
放たれたシュートに対して円堂君が再び『正義の鉄拳G3』で応戦する。
回転するこぶしが勢いよくシュートにぶつかり衝撃波が広がった。
しかし、それでも拮抗することはなく先ほどのスピカの時と同様に一瞬で崩された。
ボールは若干勢いを殺されはしたもののまだ十分な威力をのせたままゴールへ向かう。
絶体絶命かと思いきや、FWの位置から驚異のスピードで自陣に返ってきた吹雪君のブロックによってどうにかシュートの軌道をそらすことに成功しボールはゴールバーに激突してエンドラインを割っていった。
前線からの景色にしてはめちゃくちゃもどかしい状況が続いている。
ゴールにはならなかったもののまだまだ円堂君が止めたというには無理があるこの状況。
相変わらず花王瑠は円堂君に対して何か言葉をかけているようだが前線にいる私には全く聞こえてこない。
それでも円堂君の表情を見ているとそこまで変なことは言われていない様子ではあった。
花王瑠の話を聞きながら何かに気づいたような表情を浮かべたり自分の両手に視線を落として開いたり閉じたりしている。
試合は進行し、またしてもエゼルフォトンのコーナーキックから試合が再開された。
双子ちゃんから放たれたコーナーはゴールエリア内で待機していたスピカの元へ。
それに呼応して彼女にマークでついていた綱海君と壁山君がジャンプで競り合いにいくが、混戦する中ボールを奪取したスピカは着地とともにすぐさま体を切り返してゴールを狙う。
放たれたシュートは間一髪のところで円堂君のパンチングが間に合ってはじかれ、ゴールならず。
こぼれ球を抑えた綱海君はすぐに前線へ向けて大きくクリアしようとするが、ボールは放物線の頂点まで上ることなく途中の段階で大きく跳躍した洋の体によって進行をさえぎられてしまっていた。
今度は洋が綱海君に対して何かしゃべりかけたと思えばすぐにシュート態勢へ移行した。
洋を中心に激しい水流が渦を巻き始め、それが爆発するように周囲へ拡散しつつ海のようになったフィールド上に巨大な波が無数に現れた。
その波へ向けて洋がボールを蹴りこむとボールは波の内側をすべるようにしながら波から波へ連続でぶつかり続け、波のエネルギーを充填していく。
あぁ、
私も戻らないと!
「おっと、いかせないぜ」
「くぁwせdrftgyふじこlp~~!!!!!」
前線に釘付けにされていた私もさすがにまずいと思って自陣に戻ろうとするが恭平によってそれすらも阻害され、思わず変な声が出てしまった。
「(『タイダルウェイブ』はまずすぎる!!)みんな止めて!!」
止めてとは言ったものの正直なことを言っていいのであれば、今のこのチーム状況で洋の『タイダルウェイブ』を止めるにはあまりにも酷すぎる。
あの技はそれこそ世界のトップレベルの技だ、今の彼らではまだ届かない。
スピカと花王瑠に関しては今の現状においてイナズマジャパンのレベルアップに最適な威力に抑えつつ打っていることは遠目からでもわかったが、そういう繊細なことはてんで苦手な洋にそんな芸当などできるはずもなく……。
「大海に沈め!『タイダルウェイブ』!!!」
気持ちいいくらい全力で打ちやがりました。
大海のエネルギーを充填したボールは巨大な津波を巻き上げながら空中に滞空しゆっくりとした回転に合わせて海を纏う。
そのボールに向かって荒波を足場にして跳躍した洋がオーバーヘッドでゴールに向かって打ち込むシュート技。
ボールは特大の津波となってゴールを襲う。
さすがのスピカと花王瑠も驚きを隠せないでいる様子……。
そうこうしてるうちにも津波と化したボールはDF陣を飲み込みながらゴールへ向かい、円堂君の『正義の鉄拳』との一騎打ちとなる。
が、結果は『タイダルウェイブ』が『正義の鉄拳』ごと円堂君を飲み込んだことで『正義の鉄拳』をはじき返し、そのままボールはゴールネットを思い切り揺らした。
ゴール。
これで2点目。
A - J
2 - 0
とまだ前半にもかかわらず相手に2点の得点を許してしまったわけで、ここからの逆転の難易度がさらに爆上がりしてしまった。
ただ、結果としては2点目を決められてしまったことに変わりはないのだが、その2点目に関しては思いのほか悪くはない感じではあったと思う。
なぜなら、洋の『タイダルウェイブ』と正面からぶつかった円堂君の『正義の鉄拳』だが、今までの技と比較してもいい変化の兆しを見せてくれたからだ。
今までのようにあっさりと破られるのではなく、洋の『タイダルウェイブ』をわずかではあるにしろ押し返す兆候を見せたのだ。
それはつまり、さっきまでの『正義の鉄拳』よりも大幅にパワーが上昇したことを意味する。
今現状の力でこの結果はかなり良い傾向だ。
技のレベルアップも近いかもしれない。
「ふぅ……」
私は相変わらずこのプレー中も何もできずにため息を漏らす。
これじゃレベルアップどころじゃないわ。
何もさせてもらえないし、誰の助けも借りることができない。
完全に孤立状態となってしまっている。
本当に何も手はないのか……。
自陣に戻りながら頭の中で必死に考える。
このままじゃ私は孤立させられただけで、この試合中何も得るものがないまま終わってしまいかねない。
「火蓮」
ふと声をかけられたことでパッと我に返る。
「?どうしたの?豪炎寺く……ん?」
声の主の豪炎寺君へ返答するために視線を上げた私は「……まじか」と声を漏らしてしまった。
「考え事か?それはいいんだが……ポジション、通り過ぎているぞ」
「~~~~」
考え事をしながら自陣に戻ってきたせいで、それに集中しすぎて自分のポジションをすっかり通り過ぎてしまうという失態を犯してしまっていた。
思わず声にならない叫びがこぼれて、顔が熱くなるのを感じる。
もーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
考え事に夢中になりすぎてポジション通り過ぎちゃうなんて……恥ずかし!
顔から火が出そう!
「すまない、配慮が少し欠けていた。そこまで気にするとは思っていなくてな」
「いや、気にしないで、周りが見えていなかった私に非がある」
真っ赤に紅潮した顔を片手で押さえながらもう片方の手で豪炎寺君を制しながら答える。
「あ~恥ずかし。っと、そんなことよりも今の状況を何とかするのが最優先よ。そう最優先なのよ」
私はとりあえず恥ずかしさを紛らわすために話題転換を試みる。
それでなくても現状押されっぱなしの状況ゆえに打開策を見つけることは何よりも優先すべき相談であった。
「あぁ、それもそうだな。であれば……吹雪!」
プレーが中断されたこのタイミングで軽く腕を組んでいた豪炎寺君が私とは逆側のポジションについている吹雪君を呼ぶ。
「どうしたんだい?豪炎寺君……と、火蓮さん?」
「どうしたもこうしたもない作戦会議よ」
「あ、なるほど」
「率直に聞きたい、吹雪。お前のほうのマークはどんな感じだ?やはり火蓮同様徹底したマークがついているのか?」
「そうだね。かなりしつこいマークが僕のほうにもついたよ」
「やっぱり。そっちには拓夢が。はぁ、徹底してるわね」
「あのマークを振り切るのはちょっとやそっとじゃできないかも」
「そうか、となるとサイドからの攻撃はあまり有効にはなりそうにないか」
「そうなるわね。かといってセンターから打とうもんなら最初みたいに威力上乗せで打ち返されっるリスクが伴ってしまう。いくらうちのエースとはいえ一度打ち返されていることを顧みると豪炎寺君も単騎でシュートを打つのは現実的な作戦とはいいがたいわね」
「俺も同意見だ。そうなるとどうにか合体技を打つ必要があるわけだが……」
「僕と火蓮さんが両サイドに釘付けにされているのが痛いね」
「それなのよ」
「火蓮、あいつらの情報を教えてくれないか?」
豪炎寺君が腕組みをしながら視線を向けてくる。
「この中であのチームのことを知っているのはお前だけだ。何かヒントになるかもしれない」
「確かに。一理あるね。お願いできないかな、火蓮さん」
「そうはいっても……ね、うーん。……わかった。豪炎寺君の言う通りこのままじゃ埒が明かないわ」
「その話、俺も聞いていいか?」
そこに遅れて眉間にしわを寄せつつ厳しい表情をした鬼道君が話に加わってきた。
いつもよりも険しい表情をしていた鬼道君はそのことを豪炎寺君に軽く突っ込まれて、「なんでもない。それよりも」と言って話題を戻した。
「今のこの状況は砥鹿と吹雪に1on1のマーク、それから同じくヒロトにもMFがマークについている。これによって
鬼道君の言葉に吹雪君と豪炎寺君が小さくうなずく。
「そうね、今のまま真正面からぶつかるだけじゃ分が悪いのは仕方がないと思うわ。それを念頭に置いた状態で聞いて。糸口になるかわからないけど、少なくともヒントにはなるかもしれない」
そんな私の言葉に三人の視線が私に集まった。
――――
ピーーーーー!!!!
試合再開のホイッスルとともに私はさっきよりも若干内側に向けて進路を取りながら走り出す。
作戦はさっきと同じどうにかして恭平の場所で基山君と一緒に2対1の状況を作って突破すること。
その前段階として、音目矢君の右腕側を走り抜けた私は、MFの天秤さんの前で一度足を止めた。
「おや?今度は私を無視していかないのですか?火蓮さん」
「さっきそれでまんまと孤立させられたからね」
「さすが、もう気づかれてしまいましたか」
「当然。だから今度は確実に抜かせてもらうために、ね。鬼道君!基山君!」
キックオフによって豪炎寺君から吹雪君、そしてボールはすぐに鬼道君のほうへ下げられており、鬼道君に続いて左の緑川君とこちら側の基山君もそれに呼応するように一気にラインを押し上げていた。
私は後ろを走る基山君にアイコンタクトを送り、基山君からの返答を受け取ったのとほぼ同じタイミングで鬼道君から基山君へパスがつながる。
そこから若干下がって天秤さんから距離を取った私にボールが渡りドリブルの突破を試みる、のだが。
「来ましたね。しかしここは通しませんよ!!『裁きの天秤』!!」
必殺技の宣言とともに一瞬にして私と天秤さんの体が巨大な天秤の皿の上に乗り、私が乗っている皿のほうだけがガクンと下がり天秤全体のバランスが崩れた。
それによってシーソーのように皿の位置が高く上がった場所で天秤さんが思い切り自身の乗る皿を殴りつける。
直後、天秤がさながらてこのように勢いよく私の体ごと皿を空高くへ打ち上げた。
打ち上げられた拍子に思わずボールから体を離してしまったことでボールはそのまま天秤さんの足元へ。
「っち……」
「残念でしたな火蓮さん。ドリブルで突破しようとするのはいい作戦だと思いますよ」
「そうね、ついでにそれが上手くいけばもっと良かったかもね」
「おっしゃる通りで」
「でも……」
打ち上げられることは予想済みだ。
どうにか空中でできうる限りの受け身を取って着地時にバランスを崩さないようにだけは気を付けた。
おかげで着地による硬直もなくすぐに行動に移ることができる。
作戦通り。
「?」
「今回は私ひとりじゃないのよ」
「それはどういう……」
「はああぁぁぁぁっ!!!!」
私からボールを奪取して油断していた天秤さんへ後ろから走りこんでいた基山君のスライディングタックルが炸裂し、一瞬にして天秤さんの足元からボールをお奪い返した。
「なっ!?」
「火蓮さん!!」
基山君のスライディングタックルとほぼ同時に前線へ走り出していた私の元へ再びボールが回される。
そのままドリブルで中央寄りの右サイドを駆け上がっていく。
そこでふと足を止める。
「……来たわね」
「まあな」
「ここから先にはいかせません」
案の定ディフェンスに来た恭平と桃妃の前でドリブルを止めてボールに足をのせた。
「悪いけど、いかせてもらうわ……よっ!」
そういって私は再び前方に、具体的には恭平と桃妃の間に向かって走り出す。
しかしその足元にあったボールは……。
「!?」
「え!?ボールが!?」
走り出した私の足元にはすでにボールはない。
カラクリを言えば走り出す勢いとボールをまたぐようにしながら踵を使って軽く後ろにボールを転がしただけにすぎないが、一瞬の出来事ゆえに二人からしたらボールが消えたように見えたかもしれない。
驚きのあまり一瞬だけ二人の動きが止まる。
そして後ろに転がされたボールはというと……
「ふ、作戦通りだな」
2人に感づかれないように接近していた鬼道君が抑え、私が2人の間を抜けたタイミングで中央の豪炎寺君を介してボールを私の足元へ。
豪炎寺君からボールを受け取り最後の砦、キーパーのアンに向かい合った。
相変わらず腕を組みながらこちらに視線を向けていたアンも、さすがに腕組みを解いて臨戦態勢をとった。
「あら、案外早く攻略されちゃった感じかしら?」
「そういうことね、まずは1点返させてもらうわよ」
「はぁ、そういうことはちゃんと決めてから言いなさい」
「言われなくても!」
含み笑いを浮かべながら構えるアンの挑発を受けて炎のエネルギーを爆発させる。
「スカーレットバーナー!!!!」
力強く振り上げた足で思い切りボールを踏みつけると衝撃を受けたグラウンドが円形に割れ、さらに周囲一帯を爆炎が支配した。
べコリとひび割れた地面からはごぼごぼと灼熱が吹き上がりプロミネンスのごとく燃え盛る。
その炎は中心のボールへと収束していきドクンと脈を打つ。
続けて大きく空へ蹴り上げられたボールは上空高い位置で充填されたエネルギーを周囲へ放出させながら太陽のように膨大な量の熱エネルギーを放出した。
それに向けて大きく跳躍した私がくるんと空中で一回転。
赤く炎を纏わせた右足を限界ぎりぎりまで体に引き付けてから最後にインサイドキックによって打ち出す私の必殺技。
蹴りだされたボールは真っ赤な炎を纏いながらゴールへ向かって巨大な熱線のような軌道で突き進む。
この試合、私が点を取らないと勝機はない!
あとがき
まずはここまでのご読了ありがとうございます。
よかったら感想とか頂けると嬉しいです。
それはともあれ、今回の試合はちょっと長くなりそうです。
温かい目で見ていただけると幸いです
では、また次回