「よし!これで1点だ!」
そんな声が私の耳にも響いてくる。
誰が発した声なのかまで判別はつかないが。
悪い流れを断ち切り、私たちイナズマジャパンへ流れを引き込むためには私のこのシュートでまず1点を返さなければならない。
今の現状ではアンから一点を奪い取ることのできるのは私以外にいないだろう。
先ほどの豪炎寺君の一撃を考えると彼女もレベルアップはしているのは明白であったがそれは当然私も同じ、いつも通り全力で打てばゴールをこじ開けられる…………
…………そう、思っていた。
ゴール前で私のシュートを真正面から対峙する
「ふん、あたしも嘗められたものね。火蓮、さっき言ったこともう忘れたのかしら?」
「は?どういうこ……」
「こういうことよ!!!」
アンの言葉に対して反論しようとした私の言葉をさえぎり、アンが右手のこぶしをパシンと打ち鳴らした。
それと同時に打ち付けた彼女の右拳に紫色の禍々しいオーラがまとわりついていく。
右拳のオーラはそのまま一瞬にして濃度が上昇しアンの全身を包み込んだ。
「守護星アンタレスにかけて、このゴールは絶対に割らせない!」
力強い叫びとともに紫色のオーラが両拳でまるで蠍の鋏の形状へと変化していく。
その鋏を私の放った炎塊と化したシュートへ左右から思い切りたたきつけた。
「ヴェノムスマッシュ!!!!」
鋏状のエネルギーオーラをのせた拳によって左右から衝撃をぶち当てられたことによって
「なぁっ!?うそ!」
そんな私の呻きをよそに失速したボールはすでにエネルギーが霧散する寸前。
最後はトドメの一撃と言わんばかりにアンの背後から延びるエネルギーで形成された蠍の尻尾がボールの真上から針を突き刺すように地面に向けてたたきつけたことで完全にボールの威力が消え去った。
いろいろな策を講じてディフェンス陣を突破、そんなイケイケムードだったイナズマジャパンの面々は今のワンプレーによって言葉を失ってぴたりと静まり返ってしまう。
今までシューターとしての実力、プレーヤーとしてのフィールディング、その両面においてレベルの高さを見せていた
全員信じられないとでもいうように絶句しているが、それは
私の渾身のシュートがあっさりと……。
そんなはずない!
私はいつもと同じ感覚で彼女に向かい合ったはずだ。
であれば、結果は変わらないはず。
アンがたとえレベルアップしていたとしても、それは私も同じなのだから止められるなんてありえない!!
「なん……で」
「は?なんで?」
ゆったりとした動作でボールを持ち上げながら立ち上がったアンの鋭い視線が私の視線を射抜き、思わずビクリと体を震えさせてしまう。
「決まってんでしょうがこんなもん。あんたは…………」
ゆっくりとボールを持ち上げながらアンは吐き捨てるような言葉で淡々と言い放った。
「内心ではチームメイトのことを完全に信用しきれていない、それ以外ないでしょうが」
「っ!!」
まっすぐに私の目を見据えながらはっきりとアンはそう言い切る。
それを聞いた豪炎寺君も反射的に視線をこちらに向けていた。
私の表情に動揺が走る。
だが、そうは言っても私が自分のチームメイトを信じていないなんてありえない。
これに関してはまごうこと無き本心に変わりはないのだが、おそらく彼女の言いたいことは別の理由…………。
「白虎から聞いたわよ?あんたのこと、無意識で実力をセーブしてるんだってね。はっ!ばかばかしい」
「……そ、それがどうしたって」
「あんたさ、それを聞いてあたしがどう思ったかわからないわけじゃないでしょう?」
「それは……」
「ふん。無意識な傲慢もここまでくると滑稽ね」
「傲……慢……?」
「そうよ傲慢。結局あんたは上っ面では耳障りのいいことを言って内心、いやあんたの深層心理はこのチームのことを全く信用していないうえに見下してるってことよ。だからこそのこの結果。十二天王にいるときと比べると雲泥の差ね」
「そ、そんなことない!勝手なことを言わないで!」
反射的に食い下がる。
しかし、身に覚えがある手前あまり強く言い返せない。
「私はこのチームのメンバーは信頼してるわ。それは揺るがないから!」
「どうだか。こんな程度の雑魚シュートしか打てないことが何よりの証拠だと思うけどね。ま、その癖が治らない限りあんたの成長は見込めないわ。このままじゃただの時間の無駄。はぁ、この私がわざわざ来てやってるってのにこのザマ。火蓮、ここまで無様晒すんならさっさとベンチに引っ込みなさい!」
言葉の語尾を強めながら吐き捨てるように叫ぶと、アンは手に持ったボールを思い切りグラウンドのほうへ蹴りこんだ。
力強く放たれたゴールキックは呆然と立ち尽くす私の顔のすぐ横をかすめるように飛び、イナズマジャパン側のコートのほうへ。
「しまっ!」
咄嗟に自陣のほうへ振り返るが、先ほどのアンから放たれた一言の衝撃が思いのほか強く頭にこびりついてしまっているらしい、我に返るまでに若干の時間がかかってしまう。
それでも、そのわずかな時間が命取りだった。
アンから放たれたゴールキックを受けて流れるようにエゼルフォトンの陣形が切り替わり、涼しい顔をしながら鬼道君を抜き去った花王瑠が流れるようにボールを奪い去る。
「火蓮!」
「わかってるわ、大丈夫よ!」
豪炎寺君の言葉を受けて無理やり気持ちを切り替えて意識を自陣へ戻す。
その間にもボールを持った花王瑠はものすごいスピードで私達イナズマジャパンのディフェンス陣を抜き去っていた。
相変わらずスピードもさることながら無駄の一切ないコース取り、まったく迷いのないドリブルとボール捌きに味方陣営もついていくことすらできていない。
どう考えても流れは最悪の方向へ傾いていることがわかる。
そしてその元凶を作ったのは紛れもない私だ。
な、何とか挽回しなければ!
自陣ディフェンスライン付近では花王瑠から放たれたパスをカットするために綱海君が思い切り足を伸ばしながら飛び込む、が、それもわずかに届くことなくボールは右サイドを走るスピカの元へ。
しかしもうこれ以上自由に打たせまいとスピカがボールを受けると同時に体の大きい壁山君と土方君が進行方向をふさぐように立ちふさがる。
それでも穏やかな笑みを崩さないまま即座に視線を周囲へめぐらしたスピカはスッと一歩後ろに下がりながらそのまま後方の確認もせずにヒールで自分の後ろへボールを転がした。
その行動にあっけにとられた
ボールはいつの間にか緑川君を振り切って前線に上がっていた
続けて洋からのシュートに身構える円堂君の警戒をあざ笑うかのようにボールを今度は左サイドを走りこんでいた
これだけのプレーを行っているにもかかわらず、しかも私だって全力でディフェンスに戻っているというのにもかかわらず、間に合わない。
意表を突かれた円堂君が声を漏らすのとほぼ同時のタイミングで
「っ!……はぁ、はぁ…………っはぁ!はぁ!……くっ!」
A - J
3 - 0
エゼルフォトンの追加点によってプレーが再び中断。
全力で走っていた私も速度を緩めて大きく深呼吸をしてから膝に手をついて荒い呼吸を繰り返す。
「はぁ!はぁ!はぁ!」
おかしい。
いくら試合がハードだからって…………ここまで息が上がるなんて。
そもそも私は最初からドギツいマークをかけられていたはずだ、ほかのメンバーに比べて運動量は少ないはずなんだ。
シュートだってアンの『ヴェノムスマッシュ』は今まで打ち崩したことだってある。
なんならあの技との直接対決なら私のほうが勝ち越しているんだ。
あんな簡単に止められるなんて思ってもいなかった。
原因は?
私のシュートの威力が落ちている?
確かに私は無意識に力を…………。
そんな言葉が頭をよぎった瞬間思わず息をのんだ。
ある一つの可能性……
それを思い浮かべた瞬間…………
私の中でかろうじてかみ合っていた歯車が狂ったような気がした。
前半戦終了のホイッスルが無情にも響き渡る。
ようやく前半終了……
ここらでひとつ原作と比較した時のイナズマジャパンの面々の強さを。
登場する原作キャラは全員原作よりも一回り以上強く設定されていると思ってください。
具体的には
だいたい今作初期の段階で原作のダークエンジェル程度と考えていただければいいと思います。
それに伴ってほかのチームも相対的に強化されている感じです。
それから、物語のメインに関わっている不動、虎丸の2人はさらにプラス1段階位の強化が設定されております。
以上です。
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