でもまぁ、いいでしょう。
一応火蓮が入ったことによって若干原作とは異なる試合展開になってしまってますけど、ご了承ください←
では、どうぞ
選考試合当日。
集合場所の雷門中では選抜メンバーからも観客からもざわめきが起こるほどの異様な光景があった。
その視線は相当激しい特訓でもしてきたのかと思うほど全身傷だらけで現れた二人の選抜メンバーに全て集まっていた。
選抜メンバーの中で唯一の女子である砥鹿 火蓮と、唯一の異端児不動 明王の2人。
両者はムスッと腕組をしてお互いから顔を背けながら集合場所に現れたのだ。
そんなふたりの様子を見ながら豪炎寺はため息をつくのだった。
選考試合。
基本的には試合の勝ち負けよりは個人のレベルを測る試合。
故に連携技は禁止となっている。
そして、この試合の結果と日本代表を束ねる監督の目によって選手が選ばれ、2チーム合わせて22人の代表候補生の中から16人に絞り込んでいくのだ。
試合前の説明では誰が落ちてもおかしくはないと言っていた。
このフィールドに立てば誰もがすべて同じラインに立つことになる。
という響木による簡単な試合の説明の後、グラウンド内の両ベンチに集まったお互いのチームは軽くミーティングと円陣を済ませた。
「あれはどう考えても俺の勝ちだ!」
「何言ってるのかしら!私の勝ちに決まってるじゃない!」
「バカ言ってんじゃねぇ!てめぇの目は節穴か?」
「節穴?そっちこそ、負けを認めたくないからってペラペラ言い訳並べてるなんてかっこ悪いわよ!」
「なんだとこのアマァ!」
「調子に乗るなこの二流が!」
鬼道のチームも円陣を済ませたあと各々が軽くストレッチをしている最中、やはりこの2人はワーワーギャーギャーと騒ぎ立てていた。
再度大きくため息をついた豪炎寺に鬼道が小さく耳打ちをする。
「……豪炎寺、何があったか知っているか?」
その問いに対して、豪炎寺は無言のまま首を縦に1度振ることで応えた。
「どうしてこんな状態になってるんだ」
「いや、まぁ、実はな…………」
半分呆れ気味とでも言わんばかりの表情をする豪炎寺に鬼道は僅かに眉を寄せ、続けて豪炎寺から事の顛末を聞かされた彼はやはりため息をつくのだった。
「そんなことで口喧嘩しているのか」
「2人にとってこれがそんなことで片付けられるのか疑問ではあるがな」
「まぁいい。砥鹿にはチームの輪を乱したくないとは言ったんだが」
「そうなのか?」
「あぁ。砥鹿に対してじゃなくて不動に対しての言葉だったんだが、あの調子じゃ同じようなもんだ」
「ふ、だな。だが、ある意味良い緩衝材になってると思うが?」
「緩衝材?」
「不動とほかのメンバーとのな」
「…………否定はしない」
鬼道が僅かに声のトーンを落とした。
「まぁ、それはあとで考えようぜ。今はこの選考試合に集中だ。みんな待ってる。行くぞ!」
「ふ、あぁ!」
そう思い切り鬼道の肩を叩いてからニヤリと笑みを浮かべてグラウンドに走る豪炎寺の背中を見ながら、鬼道もその口角を僅かに上げてマントをなびかせながらグラウンドに向けて1歩を踏み出した。
────────────────────
Aチーム
FW:吹雪 染岡 基山
MF:佐久間 武方 松野
DF:飛鷹 土方 壁山 綱海
GK:円堂
────────────────────
Bチーム
FW:豪炎寺 砥鹿 宇都宮
MF:鬼道 緑川 不動 闇野
DF:風丸 目金 木暮
GK:立向居
────────────────────
そして、運命の選考試合が幕を開けた。
全国から集まった代表候補生の通う学校のチームメイト達の応援の中で、よく晴れ渡った青空を突き抜けるかのごとく甲高いホイッスルの音によって。
「みんな!特訓の成果を見せるんだ!」
ピーーーーーーーーーーー!!!!!
試合開始。
キックオフとともに先に仕掛けたのは円堂くん率いるAチーム。
FWの基山くんがドリブルで上がってくる。
緑川くん同様元エイリア学園出身の彼は聞くところによるとエイリア学園の最高ランクチーム所属でしかもキャプテンだったとか。
そんな経歴を持つ相手に私の好奇心が掻き立てられた。
前線に向かって走り出した足を無理やり切り返して基山くんのプレスに入った。
「早速来たね」
「元エイリア学園ジェネシスの力、見たかったのよ」
「なるほど。でも……」
そう言った基山くんが僅かに口角を上げる。
刹那、視界の端に走り込んでくる青いユニフォームが見えた。
「試合は始まったばかり。焦らず行こうよ。染岡くん!」
「おう!」
「っ!?」
完全にドリブル突破を狙ってくるかと思っていた私は完全に意表を突かれ、反応が遅れてしまう。
低くするどい弾道を描いたパスは寸分狂わず走り込んできた強面のFW、染岡くんの右足に収まった。
「やるじゃない」
「それはどうも」
短くやり取りを交わし、同時にお互いの横を駆け抜けた。
そのまま私は前線に向かい、豪炎寺くんと同じラインに到達した所でくるりと体を反転させた。
慣れ親しんだこのポジションは攻撃の要。
味方の選手が繋げてくれたボールをなにがなんでもゴールに叩き込む、それが私達FWの役目だ。
後方で行われた激しいボールの奪い合いの末、染岡くんからボールをカットした風丸くんから鬼道くんへ、そして今回は豪炎寺くんのもとへ。
そのままドリブルで上がる豪炎寺くんに今度はAチームのDF、土方くんがプレスに入る。
器用にボールをキープさせながら一瞬、ちらりとこちらに視線を向けた。
あぁ、そういう事ね。
その一瞬で次の行動の意図を察した私は豪炎寺くんの影に隠れるように走り込む、そして、まさに完璧のタイミングで豪炎寺くんからノールックのパス。
それを後方から走り込んできた私がカットしてそのまま土方くんの右サイド、豪炎寺くんは左サイドから同時に抜き去った。
「なにィ!」
「豪炎寺くん!」
「あぁ!」
そのままボールを戻し、受け取った豪炎寺くんが加速する。
キーパーと一対一。
両者の必殺技がぶつかり合い、会場がさらに熱を帯び始めた。
残念ながら止められてしまったがまだまだ先は長い。
「さぁ!反撃だ!」
そして円堂くんのゴールキックからボールは前線に、松野くん、吹雪くんと渡り、そのまま吹雪くんがBチーム陣内に切り込んでいく。
その様子をAチーム陣内から眺めながら私は1つ息を吐いた。
「やっぱり個人の能力はみんな結構高め、か」
軽く息を吐いて既に下がり始めていた宇都宮くんを見ながら豪炎寺くんに目配せをする。
味方DF陣に向かって素早く指示を送る鬼道くんに対して不動は相変わらず、相手チームの選手を観察していた。
共有してあげればいいのに、強情なやつ。
そしてDF2人のプレスを掻い潜った吹雪くんから再び染岡くんへ、龍を纏ったシュートが立向居くんに迫る。
それをいくつもの手がそのボールに何度も何度も衝突する事でシュートの威力を完全に封殺した。
「あれが立向居くんの必殺技ね。なかなかすごい技じゃない。白虎には及ばずとも、ね」
小さく笑みを浮かべて隣の豪炎寺くんと視線を交わして同時に無言のまま頷いて、センターライン付近でくるりと進行方向を変えるとゴール付近を目指して上がっていく。
ボールは立向居くんのゴールキックから鬼道くんにわたりそれから…………不動へ。
珍しいと思いながらも今は上がることを優先にする。
しかし、そんな不動も帝国学園のストライカー佐久間くんによって阻まれ、そのせいで私と豪炎寺くんは急ブレーキをかける羽目になった。
相変わらず自チームにも相手チームにも嫌味MAXな不動に向かって小さく舌打ちをかまし、再び前線からセンターライン付近までラインを下げていく。
残念ながらそんな不動の失策からなのか分からないが、佐久間くんのカットしたボールはそのままAチームのFW陣に渡り、染岡くん、そして基山くんと繋がってペナルティエリア内、基山くんの必殺シュート「流星ブレード」によってついに均衡が破られた。
A - B
1 - 0
「先制点取られちゃったわ。どうする豪炎寺くん」
「取られたら取り返せばいい。行くぞ!」
そしてBチームからのキックオフ。
隣の豪炎寺くんから渡されたボールをそのままかかとを使ってバックパス。
右サイドから駆け上がる宇都宮くんを視界に入れながら真後ろに陣取っていた鬼道くんにボールを委ねた。
「みんな上がれ!」
鬼道くんからの指示がグラウンドに響き、DF陣を残して緑川くんと闇野くんが両サイドから鬼道くんが真ん中を上がっていく。
しかし、何故か不動だけが自陣に残っていた。
何やらDFの風丸くんと木暮くんに指示を出しているようだけど、勝手に何やってるんだか。
鬼道くんは左サイドを走り込んでいた闇野くんにボールを渡し、不動に注意を促している。
勝手に指示を出すなとかなんとかだと思うが。
あいつがそれを素直に聞くとも到底思えない。
しかし、そんな最中。
左サイドを走っていた闇野くんが松野くんにボールをカットされた。
その直後。
今までMFのポジションにいた武方くんがいきなり前線に向かって走り出した。
「うそっ!?」
驚いて咄嗟にふりかえった瞬間、風丸くんと木暮くんの取っていたポジションを見た瞬間まさかと思った。
いや、本当にこんな罠に引っかかる人なんているわけないだろう…………。
二人のポジショニングが普通よりも前よりになっている。
それに伴ってここが好機とばかりにグングンと駆け上がっていく武方くんを引きつけるように立ち回る不動。
極めつけはそれっぽく見せるために風丸くんと木暮くんにはほかのパスが有り得る選手へのマークへ向かわせた。
そしてペナルティエリア内にまで上がった武方くんに松野くんがパスを出す。
しかし…………
ピピーーー!!
「オ、オフサイド!?そんな馬鹿な!みたいな!!」
「オフサイドトラップ……。なんて大胆なことするのよあのバカは」
オフサイドトラップ。
敵選手にあたかもゴール前ががら空きだと思わせて駆け上がってきたところ、放たれたパスが通る直前に対象よ選手よりも自分が前に出ることによって意図的にオフサイドを取らせる戦術。
私はセンターライン付近でそれを見ていて若干口元がぴくぴくするのを感じていた。
それ、ここでやる必要ないんじゃない?
手段は選ばないと言ったような不動の奇策。
当の本人はポケットに手を入れながら私と目が合うやいなやふんと鼻で笑った。
「だから嫌われるのよ。まぁ、本人がいいならいいけど」
「どうした火蓮」
「いや別に。さて、不動の奇策のおかげでピンチは脱したわ。今度はこっちの番よ。豪炎寺くん!」
「分かっている!」
木暮くんからのセットプレーがスタートする。
大きく蹴りあげられたボールは緑川くんに、そして司令塔である鬼道くんに渡り、そして……。
「行け!砥鹿!!」
ボールは私の元へ。
「やっと私のアピールタイムなのね!」
「決めろ火蓮!」
「当然よ!」
豪炎寺くんの後押しを受けて一気に加速した。
そこにAチームの壁山くんと飛鷹くんが立ち塞がる。
「ここは通さないっス!!ザ・ウォール!!!!!」
なるほどこれが壁山くんのディフェンス技ってわけ。
でも、
「この程度の壁じゃ簡単に乗り越えられちゃうわよ!」
「えぇ!?」
目の前に現れた巨大な壁を三角跳びの要領で軽く飛び越え、キーパーの円堂くんと真正面から向かい合った。
「さぁこい!絶対止めてやる!」
「じゃあ、私は必ずゴールをこじ開ける!」
ふっと小さく笑みを浮かべてから、地面に置いたボールを思い切り踏んだ。
「なっ!」
ボールを中心に波紋状に砕けた地面からゴボゴボと湧き上がる真っ赤な炎。
地熱の熱風によってボールは地上から空中へはじき出され、高速回転をしながら周りの炎を纏っていく。
そして炎をまとって一回りほど大きくなったボールに向かって自分も大きく跳躍し、空中でくるんと一回転。
最後にボール同様火炎を纏った右足をこれでもかと言うほど体の内側にまで引き付け、思い切りボールに右足を叩きつけた。
「スカーレットバーナー!!!!!」
エネルギーの留め金が外れたボールは熱線となり、円堂くんへと突き進む。
「へへ、すげぇシュートだ!だけど、必ず止める!」
そう心底嬉しそうに笑った円堂くんは一瞬にして左足を真上に掲げる。そして、その完璧な体重移動と体のひねりを使って大きく右手の拳を突き出した。
「正義の鉄拳!!!」
自身の全体重が上乗せされたパンチングに私のバーナーが真っ向からぶつかり合う。
凄まじい衝撃が巻き起こる。
しかし、下から迎え撃つより上から叩きつけた方が有利なのには変わりはない。
徐々に私のバーナーが正義の鉄拳を押し始め、最後にはその拳ごとゴールネットを焼き尽くした。
ゴール。
これで同点。
A-B
1-1
「ふぅ、まあ、しっかりアピールできたかしらね」
「…………凄いシュートじゃないか火蓮!あんなシュート見たことないぜ!今でも右手が痺れてるよ」
「ふふ、ありがと」
「へへ♪でも、次は止めてみせるからな」
「期待してるわ」
そう円堂くんとやり取りを交わして私は自陣に戻っていく。
すれ違い際に豪炎寺くんとハイタッチを交わした。
「ナイスシュートだ、火蓮」
「ありがと。次は豪炎寺くんの番よ」
「あぁ、任せておけ」
しかし、チャンスの後のピンチとはお決まりのパターンだ。
Aチームのキックオフから再開した試合は、一気に劣勢に早変わりした。
吹雪くんからパスを受けた基山くんがドリブルで駆け上がり、逆サイドの吹雪くんへ、チームの中でもずば抜けたスピードの吹雪くんがディフェンス陣を突破し再び染岡くんへセンタリング。
そこから染岡くんの必殺技、「ワイバーンクラッシュV2」が炸裂しまたもや1点突き放された。
A-B
2-1
「やるわねAチームも」
「だな」
短くやり取りを行い、キックオフによって豪炎寺くんから渡されたボールをかかとで鬼道くんに向けてバックパスを出してそのまま前線へ。
先程のシュートを見たからなのか気持ち私と豪炎寺くんのマークがきつくなった気がする。
「上がれ!シャドウ!」
「おう!」
鬼道くんから左サイドを駆け上がる闇野くんへボールが渡るが、その直後、正面から迫っていた松野くんの「クイックドロウ」によって奪い返される。
私は二人体制のマークによって思うように身動きが取れないまま小さく舌打ちをした。
それでも味方陣内に切り込まれたボールは目金くんのパスカットによって流れが引き戻される。
そのまま宇都宮くんにボールが回り、宇都宮くんが敵陣内に切り込んできた。
しかし、
「豪炎寺さん!」
「こっちは無理だ!」
プレスをかけてきた土方くんをトリックプレーで抜き去った宇都宮くんはゴールがすぐ目の前なのにも関わらず豪炎寺くんへパスを出そうとする。
「砥鹿さん!」
「こっちも無理よ!自分で行きなさい!」
豪炎寺くんが無理だとわかると今度はこっちに。
当然のようにマークが2人も付かれていては身動きなど取れる訳もなく、パスは受けられない。
それがわかったのか、一瞬だけ俯いたかと思うとすぐさまボールを止めてなぜかバックパスを出した。
「嘘っ!?」
「っ……!?」
つい反射的に私と豪炎寺くんは顔を見合わせてしまった。
その直後。
ピッピーー!!!
無常にも前半終了のホイッスルが鳴り響いた。
ちゃんと火蓮目線で試合の流れを書けているだろうか……。
次回後半戦になります。