さて今回からFFIが正式に始まっていきますね。
では、本編どうぞ←
試合当日。
天気は快晴。
私としては若干暑いくらいの気温の中、このFFIアジア地区予選メインスタジアムは集まった満員の観客によってさらに熱気を帯びていた。
そんなスタジアムの上空に打ち上げられる花火とともにスタジアムのスピーカーから大きな声が流れ始める。
"いよいよこの日がやって参りました!第1回フットボールフロンティアインターナショナルアジア地区予選!フットボールフロンティアスタジアムは超満員!アジア地区予選は全てこのスタジアムで行われます!そして本大会に進めるのは出場した8チームの中でもただ1チーム!果たして、アジア代表の栄誉を勝ち取るのはどのチームになるのか!"
そんな言葉が放送された直後、アナウンスによって紹介された財前総理が言葉を述べた。
私はイナズマジャパンの最後尾で話半分聞き流しながら軽く左右に視線を流した。
顔見知りは………………韓国のあの男だけか。
ある意味良かったというかなんというか。
ため息を漏らした。
開会式が終わるとすぐに第1試合となるため、第1試合出場のイナズマジャパンは開会式後もすぐにグラウンドへ集まり、軽くストレッチを行った。
そしてストレッチも一段落し、ほかの選手も全て退場して行ったタイミングで久遠監督が集合をかける。
「スターティングイレブンを発表する。FW、豪炎寺、吹雪、基山。MF、鬼道、風丸、緑川。DF、壁山、綱海、土方、木暮。そしてGK兼ゲームキャプテンは円堂」
なるほど、私は初戦はベンチスタートか。
軽く息をついて不動に視線を向けると呼ばれなかったのがそれほど意外だったのか、不満そうに舌打ちをしていた。
「へっ、分かってねぇなぁ」
「っ!」
不動の嫌味に鬼道くんが反応する。
鬼道くんも真面目に反応しなくてもいいと思うんだけどな。
私は別に監督を信用してないわけじゃないからそれに従うだけだし。
「呪われた監督」とまで言われている久遠監督の実力、見せてもらわねばならないから。
本当に呪われているのかそうでないのか……。
私はそんなことを考えながら不動に小さく耳打ちした。
「お互いスタメン落ちしちゃったわね」
「うるせぇ!大きなお世話だ!」
「あら怖い」
「へっ、俺を使わなかったこと後悔するぜ。ククク」
「私にはなにか考えがあるように思うけど?」
「どうだかな」
そう吐き捨てるようにいうと不動は相変わらず無愛想にポケットに手を入れたまま誰よりも早くベンチにドカッと腰を下ろした。
そんな様子の不動に半ば呆れながらスタメンとなったメンバー達の輪の中へ。
「豪炎寺くん、鬼道くん、初戦頑張ってね」
「あぁ、任せておけ」
「まずは1勝。これで流れをつかみたいところだな。それに、FWを封じる鉄壁のディフェンス…………」
「そうね。気をつけるべきはそこね」
「火蓮はなにか分かったのか?」
「確証が無いから何も言えないけどね」
「なるほどな」
「なんにせよ。いつでも出られるようにはしておいてくれ。砥鹿」
「分かってるわよ。鬼道くんも…………油断はしないでね」
「ふ、お前に言われなくてもそのつもりだ。そろそろ時間だな。みんな行くぞ!」
鬼道くんらしく小さく口元だけで笑みを作ってからほかのスタメンを連れてグラウンドへ向かっていった。
確証がない…………と言うより、彼らが自分達で久遠監督の意図を理解しなければ話したところで無駄になってしまいかねない。
それだけは絶対に避けなければならないのだ。
私は未だに不動とほかのメンバーとの間に空いたスペースを埋めるようにベンチに座る。
同時にお互いの選手がグラウンドへ散り、実況の高らかな音声に導かれながら試合開始のホイッスルが高々と鳴り響いた。
FFI第1試合 VSビックウェイブス
キックオフ。
ホイッスルと同時にイナズマジャパンボールで始まった試合は、豪炎寺くんから吹雪くんへ渡されさらにバックパスで鬼道くんへ。
司令塔である鬼道くんはそのままドリブルで敵陣内へ攻め込んでいく。
…………なるほど、たまにはベンチ内から試合を見るのも面白いのかもしれない。
フィールド内に居る時よりも、試合全体が見渡せる。
そんな呑気なことを考えていられるのも束の間だった。
一瞬、ほんの一瞬の出来事。
刹那と表現するにふさわしい時間の中で、ビッグウェイブスの陣形が流れるように変わった。
鬼道くんを中心に4人の選手が四方を取り囲むようにプレッシング。
私は当の本人ではないので今の鬼道くんがどのように感じているのかまでは分からないが、前に後ろにキョロキョロしているところを見るとパスコースもバックパスも防がれているのだろう。
これがあの戦術か。
名前は確か…………「ボックスロックディフェンス」。
あの鬼道くんが苦戦しているとなると相当なのだろう……。
そう考えているうちにボールは鬼道くんから瞬く間に奪われてボックスの外へ。
しかし、それを追う綱海くんと土方くんがクラッシュ。
ポジショニングってやっぱり大事なのね…………。
零れたボールはすぐさま相手に拾われてFWに繋がれてしまった。
こちらのDF陣のプレッシングも難なくかわされ、ペナルティエリア内まで切り込まれる。
そして、ついにビッグウェイブスのFWによる必殺技、「メガロドン」が円堂くんの「正義の鉄拳」を粉砕した。
A-J
1-0
先制点を許したイナズマジャパン。
ボールを奪って果敢に攻めるもビッグウェイブスのボックスロックディフェンスによって阻まれ、ゴール前まで持ち込むことすら出来ないまま時間が過ぎていく。
私はベンチの中からこの状況の打開案を必死に探っていた。
どうすればこの状況をひっくり返せる。
まず頭に浮かぶのは「私ならこうする」というものだった。
私ならこうする………………そうすればあのボックスロックディフェンスの攻略は可能だ。
恐らく不動も。
でも、監督が私達を使わないのには必ず理由があるはずだ。
と、言っても今はそんなことを考えている場合ではないが。
それでも久遠監督の意図はだんだん読めてきた。
ベンチの中からフィールドの選手達に向けて放った一言、「箱の鍵は、お前達の中にある!」。
その一言は、ボックスロックディフェンスを攻略するためのヒントにしては最高の一言だった。
そのヒントにいち早く気づいたのは、やはり鬼道くんだった。
再びパスを受けた鬼道くんがドリブルで上がっていく。
しかし、そのドリブルもすぐにボックスロックディフェンスによって封じられてしまった。
これでは今までの二の舞。
さぁ、鬼道くんはどうする?
そんな私の期待に応えるかのようにビッグウェイブスが作り上げた狭いボックスの中で、次々と迫ってくる足から器用にかわしながらボールをキープし続けはじめた。
狭いボックス、それがどういう事だったのかようやく気づいたのだろう。
久遠監督による「練習禁止」というのも含めて。
そして、それほどボールをキープし続けることが出来るならば当然焦るのは…………相手の方だ。
ここまでプレッシングしても一向にボールを奪えないのだ。
当然激しさも増していくことになるが、その焦りが命取りなことに気付かない。
その焦りが最高潮に達したその瞬間。
選手同士の肩が接触して陣形が崩れた。
「今だ!!」
その一瞬を見逃す鬼道くんではない。
瞬時にボールを浮かせ、接触した選手同士の間を綺麗に通して見事にボールをボックスの外へ繋げることに成功した。
つまり、ボックスロックディフェンスを破った。
ベンチ内でそれを見ていた私もふっと小さく笑みを零したのだった。
それも束の間。
フィールド内ではボックスロックディフェンスを破って押せ押せムードのイナズマジャパンだが、久遠監督だけはそうではなかった。
私たちに向かってアップの指示を出してきた。
あぁ、なるほど。
たしかに久遠監督の考えは正しい。
日本のチームはどうなのか分からないが、世界を相手にしていた私ならこの指示の意味は痛いほど理解出来た。
隣に座っていた立向居くんは不思議そうな顔をしていたが。
まぁ、経験だろう。
正直私としてはこの選択を出来るだけでも、この久遠監督という人物を信じるに足りる要素を持っていた。
ビッグウェイブスはその直後、クリアでボールを外に出したと思えば、フィールドプレーヤーを2人も交代してきたのだ。
……やはり切り替えが早いわね。
先の1プレーによってボックスロックディフェンスを攻略し、勢いに乗るイナズマジャパンは再び鬼道くんを起点に攻め込んでいく。
「緑川!」
「おう!」
鬼道くんからパスを受けた緑川くんがサイドからドリブルで駆け上がるが、プッシングに来たのはたったの1人。
それを好機と見たのか緑川くんがボールを持ったまま加速した。
「(……やられたわね)」
私の嫌な予感が的中し、今度は個人技によるディフェンスに切り替えてきたビッグウェイブス。
この切り替えの速さはやはり世界ならでは。
一瞬でも対処が遅れるとそのまま畳み込まれてしまうこともある程だ。
だから、
そんな中、ドリブルをする鬼道くんからボールを奪おうと2人のディフェンダーからの強烈な2連続スライディングタックルが鬼道くんの右足に直撃した。
偶然か?
もしくはボックスロックディフェンスを破られた腹いせか?
どちらにせよこれは…………。
「っ!」
思わず私は立ち上がるが、今ここで抗議の声を上げてもどうすることも出来ない。
私にペナルティが課せられるだけだ。
「そう熱くなんなよ」
「不動」
「黙って見てな」
不動の一言で我に返った私は、もう一度その場にストンと腰を下ろした。
それと同時にフィールド内に前半終了のホイッスルが高らかと鳴り響く。
前半終了。
フィールドにいたメンバーがベンチに戻ってくる。
先程のスライディングタックルで足を負傷した鬼道くんは円堂くんの肩を借りて、右足を引き摺りながら引き上げてきた。
思わず駆け寄って声をかける。
「大丈夫?鬼道くん」
「あぁ、大丈夫だ…………っ!」
「無理をするな鬼道」
鬼道くんをベンチに座らせながら円堂くんも心配そうに声を掛けた。
ベンチに座って応急処置を受ける鬼道くん。
その様子を誰もが心配そうに見守っていた。
それも当然か。
なにせチームの司令塔が怪我をしてしまったのだ。
不安にもなるだろう。
「うぐっ!?」
「っ……。この試合は無理です」
彼の足の応急処置をしていたマネージャーの木野さんが監督に判断を求める。
「これくらい大丈夫だ!」
「鬼道、交代だ」
そこに監督から交代の指示がおりる。
脛をスパイクでモロに蹴られているのにも関わらず、まだ戦う意思を曲げない鬼道くん。
「その足じゃ無理よ鬼道くん!」
「砥鹿……」
「あぁ、火蓮の言う通りだ。鬼道!気持ちはわかる。でも、さっきも言ったけど無理はするなよ」
「円堂…………。分かりました」
そう悔しそうにグッと拳を握る鬼道くんの答えに久遠監督は1度小さく頷いてから控えの選手を指名する。
「後半、頭から行くぞ!虎丸!砥鹿!」
またしても意外そうな顔をした不動の横で名前を呼ばれると思っていなかったのか、虎丸くんがビクンと肩を震わせた。
ん?…………わ、私も!?
「は、はい!」
「私も、ですか?」
「不満か?」
「あ、いえ」
「なら問題ないな」
なんとなく複雑な心境になりながらも、私は一つ息をついた。
「後半の指示を伝える。吹雪、お前は中盤の底に下がって攻撃の芽を摘め。そして、緑川は砥鹿と交代。1度下がって体勢を整えておけ。砥鹿はそのまま前線に、基山は中盤まで下がれ。虎丸はそのまま鬼道のポジションに入れ。前にボールを繋げろ」
「っ!…………はい!」
「そ、そんな大事なポジション、俺でいいんですか?」
「お前がやるんだ」
「……はい!」
そんな少しオドオドとしたような虎丸くんとは対照的に、悔しそうに唇を噛む緑川くんの代わりに私が入るのか。
でも、ここで私が出る意味がイマイチ理解出来ない。
今のままの方が流れはできていると思ったんだけど。
続けて練習禁止という指示が出ていたにもかかわらずそれを無視して特訓を続けていたらしい綱海くんに課題を課して後半の指示は終わった。
「砥鹿」
そう思っていた矢先。
緑川くんが私に声をかけてくれる。
「緑川くん」
「……後半、頼んだぞ」
「分かってるわ。あなたの分まで、ね」
「…………」
分かってるわよ、緑川くん。
あなたの思いは私が引き継ぐから。
それから、ショックを受けてるのが全部顔に出てるわよ。
そう考えながら緑川くんの肩をぽんと叩いた。
「ほら、そんな怖い顔してないで、試合は終わってないのよ。落ち込む暇があったらちゃんと試合を見てなさい」
「……あぁ、任せたぜ!」
私の言葉でいくらか表情が和らいだ緑川くんの肩をもう一度叩いて、私は後半戦に望むため、メンバーとともにベンチを出た。
その途中でちらりと久遠監督に目を向けた。
すると、私の視線に気づいたのか久遠監督も小さく頷いてみせた。
………………もしかして。
虎丸くんのサポートもしろってことなのかしら。
私にそんな器用なことが出来るか分からないが…………久遠監督の指示だ、やるしかないか。
私はため息をついてスリートップの右サイドのポジションに着くと深呼吸を一回し、ぴょんぴょんと飛び跳ねることで体を解した。
…………よし!
気合を入れ直すのと同時に、後半開始のホイッスルが鳴り響いた。
あとがき
さて、第1試合の前半戦が終了しましたね〜。
原作に沿いながらもどうやって火蓮を混ぜていこうかめちゃくちゃあーでもないこーでもない言いながら書きました←(笑)
ごめんよ緑川くん〜。
これも二次創作の性だと思って許してケロ←
そんなこんなでこれからも地味に書いていきます奇稲田姫ですw
読んでくれた方に感謝しつつあとがきにしようと思いま〜す♪
それではまた次回♪