宇宙彷徨記   作:山南修

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第九話

宇宙空間は広く、超光速航法を持っていても一日そこらじゃあ目的に付かない。そんな空間を通常航行で光の速度の半分にも満たない速度で動いていれば全てがゆっくりに見える。尤も、今は地球を一秒間に二、三周はする速度であるが。

「まもなく、敵ミサイルの射程に入ります。スラスターの応急修理完了。メイン推進器は95%、下部スラスターは90%の稼働率です。下部発射管修理完了まで残り三分」

三分かかるのはミサイルがこっちに来るまで一分であることを考えれば、大変よろしくない。

「可能な限り早急にしてくれ」

現状、駆逐艦は優速でこっちは加速ができないように見せかけている。艦尾側の火力が半減していることを考えれば勝ったも同然と駆逐艦共は考えてると見る。それを利用するだけの簡単な作業だ。まあ、さっきと比較してだが……。

「敵ミサイルの射程まで3、2、1、敵ミサイル発射確認。数十六」

スロットルを全開まで押し込み一気に加速する。発射されたばかりのミサイルはこの動きに対応しようと推進器を激しく噴かす。今までの速度に合わせた速度で発射するのはマニュアル通りで確実性が高いが今回はそうじゃない。この戦術の真骨頂はここからだ。

「ミサイルが射程に入った。後部主砲及び機銃群、射撃開始」

生き残った主砲一門と六基の機銃がミサイルに向けて射撃する。機銃弾は届く頃にはひょろひょろ弾になっているが数を揃えれば効果がある。

「後部主砲加熱確認」

「メイン推進器停止、船首反転」

加速をやめベクトルを維持したまま、船首を後方に向けた。

「前部主砲及び機銃群射撃開始」

主砲は上部の二基、下部の一基、機銃は上部下部合わせて四基が射撃を行う。この一連の射撃でミサイル八発を迎撃したがまだ半分残っている。

「メイン推進器全力噴射」

スロットルをまた押し込むと強く椅子に押し付けられる。ミサイルはこちらが急速に減速したお陰であっという間に距離を詰めたが……。

「ミサイル通過、反転しようとしています」

こちらに追い付こうとしたため加速したミサイルは〈エタニティートレッカー〉の急激な動きに合わせられず、近くを通り越して行った。挙句の果てに、無理にベクトルを変更し反転したため殆どがバラバラになった。残った数発も相対速度が遅いため楽に落とせる。

「発射管修理及び魚雷装填完了。ですが四番発射管は損傷が酷く断念しました」

「三発撃てれば充分だ。一番から三番発射管、魚雷発射」

下部から重々しく魚雷が発射される。ミサイルと違いステルス性を保持している最新型の魚雷を迎撃するのはさぞ辛かろう。私は〈エタニティートレッカー〉を再度反転させ減速した分、加速を始めた。駆逐艦は発射された魚雷を一度見失ったようでミサイルや陽電子砲射程に入っても行動を起こさなかった。もう少しで機銃の射程という所で気づいたのか彼らが出せる全力で、つまりかなり弱々しい弾幕で迎撃した。腐っても軍艦、命中直前に一発が迎撃されるが残りの二発は寸分違わず各一隻の駆逐艦に突入。二つの火球に姿を変え消えていった。

「残存敵駆逐艦、進路を変更。逃走するものと考えます」

「ふん、丁度いい。伝言を頼もうじゃないか」

若干、身だしなみを整え伝言用の映像を撮る。

「傭兵の雇い主の皆様、素晴らしい贈り物を貰って非常に感謝しています。かなり歯ごたえがありましたが、味はイマイチでした。今度はもっと美味しい物を頂けると嬉しいです。お返しですが数十年後にこの宇宙のどこかに取りに来てください。貴方達が欲していたものがありますよ。ステラ・ソリチュードより以上、もう会うことはないでしょう(Hasta La Vista)

物思いにふけていた様な感じだったアマリアが映像を駆逐艦に送った途端、質問をしてきた。

「その別れ文句は少々古すぎませんか? 若干でも意味を知っていても16世紀以上前の旧時代の映画を知ってるとは思えません」

「私の充実感が得られるからそれでいいんだよ、今はそれで充分だ」

アマリアは納得したのか前を向いた。

「オリオン腕の銀河衝撃波面に向かうぞ、そろそろTタウリ型やHa/Hb型、FUor型のデータが欲しい」

「了解しました。コースを設定します」

彼女がコース設定をしている間、逃走者に目をやった。駆逐艦は盛大に推進器を動かして逃走している。

 

その後ろ姿を見てステラ・ソリチュードはあれが最後に出会う人類であることを心から願った。

 

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