宇宙彷徨記   作:山南修

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第五話 襲撃

 第四話 襲撃

 

 A.D.3501/8/8/0238

    ポーラ宙域辺境部

 

 ビービーという呼び出し音で私の目が覚めた。直後、砲撃、振動という感覚を脳が捉えたがそれはフラッシュバックだ。落ち着け。頭を振って寝起きの感覚とフラッシュバックを追い出しつつ通信にでた。

 

「こんな夜中にどうした? 問題が起こったのか?」

 

 アマリアが起こして来るというのはそれ相当の理由があるからだろう。どこぞの無能どもとは違う。

 

「ソリチュード、救難信号を受信しました」

 

 その言葉でさっきまで感じていた二つの邪魔なものが吹き飛ぶ。

 

「救難信号? こんな所でか」

「はい。国際救難信号です。超高速通信で発信されています。ここから10光年先のテラフォーミングされたPele星系第二惑星から数週間前から発信しているようです」

 

 アマリアが信号内容をこちらのホログラムに飛ばした。

 

『S.O.S こちらは医療船〈パルデン〉。近隣星系にて人道的支援を実施中に機関トラブルでPele星系惑星Brilliant(ブリリアント)に医療船が不時着。早急な支援を必要とする』

 

 ……。

 

「アマリア、近隣に医療船が来るほど人口を抱える惑星なんてあったか?」

「あります。数年前に依頼を受けた大企業が保有する鉱山惑星です。この惑星は希少な鉱石が数多く眠っており今でも時折輸送船が訪れているようです」

 

 となると、航路を間違い機関トラブルで不時着といったところか。まあ、なんであれ

 

「船乗りとしてはこの救難信号に応じない訳には行かないな。進路変更。Pele星系へ急行しよう」

 

 船乗りが船乗りを見捨てる訳にはいかない。戦闘中は別としても救援活動は行うべきだろう。アマリアが〈エタニティートレッカー〉を動かしPele星系へと向かう。私は着いた時にしっかり活動出来るよう、フラッシュバックの記憶を追い出すため睡眠に戻るのであった。

 

 

 

 A.D.3501/8/8/0238

 Pele星系惑星Brilliant上空

 

「随分と鬱蒼としたジャングルだな」

 

 私はポロッと惑星の感想を零した。Pele星系の第二惑星Brilliantは恒星との距離が地球に比べて近いため赤道では4、50度近くなる。当然他の場所でも気温が高く極地と高地以外では氷も全く見られない。氷と若干の海以外は全て緑で覆われている。つまり、ジャングル惑星だ。

 

「テラフォーミング時に植物の種をバランスよくまかなかったり、植林を適当にやった結果かもしれません。通常のテラフォーミングならここまで植生が偏ることはほとんどありません」

 

 この惑星がこうなったシミュレートがホログラムに表示される。ここまで鬱蒼としていると探すのも大変そうだ

 

「救難信号の発信源は絞り込めるか」

「北緯36.65西経105.82です。既に不時着した船を確認しています」

 

 映像がポップし映し出される。直方形の面長な船だったのだろう。それらしい残骸が映し出されている。船は無残に引き裂かれ火災の跡が伺える。ジャングルが直線状になぎ倒され、何ヶ所かポツポツと分離した残骸の落下跡が見える。酷いもんだ。後部のエンジンブロックがまるまるイカれている。救難信号を送信した後にこうなったのか? となるとなぜ今も救難信号を出せているんだ? いくつかの疑問が浮かんだが船があの状態だと事態は急を要するかもしれない。

 

「とりあえず降下準備だ。不時着地点周辺のスキャン情報を教えてくれ」

「人のような反応が20、大型生物の反応300ほど。虫以下の反応は多数。毒性の植物は端末に送信しました。数百年前ですがネコ属の肉食獣やヒル、毒虫の報告が上がっています。武装と各種対策、医療品、食料を内火艇〈フェアトン〉に積み込み降下することを推奨します」

 

 さながらベトナムか? 確かヒルも毒虫も虎もいるはずだ。これでブービートラップでもあればベトナムで確定だ。一位じゃないと満足できない国も真っ青になる様子を想像し気分が良くなる。コミー共々独立した第一帝国時代の領土とともに滅んでしまえ。

 まあ、そんなことはどうでもいい。さっさと内火艇に荷物と物資を乗せて降下しよう。

 

「アマリア、降下するぞ。20名想定で医療品と数日分の食料を積み込んでくれ」

 

 さて、一仕事だ。さっさと終わらせて彷徨に戻ろう。

 

 

 

 惑星Brilliant上空20km

 

 四日ぶりに内火艇が〈エタニティートレッカー〉から離れる。艇首を船尾に向けているため、四角い船尾が視界上半分に空が少し、残りはジャングルの緑が広がる。カタパルトで発進し、少し離れた救難信号発進地点に向かう。調査車を積んだ時程ではないが舵が重く、医療品を積んだお陰で慎重な操縦になる。

 

「こちらは民間探査船〈エタニティートレッカー〉。救難信号を受信し救援に来た。詳しい状況を教えてくれ。ステラ・ソリチュードより以上」

 

 応答を記録し繰り返し発信するよう設定する。

 

「人の反応に動きがあります。動きや外部カメラの観測からすると地下にいるようです。通信波を確認。暗号化されています」

「暗号化? そはいったいどういうことだ」

 

 レーダに反応が写る。下方65と80の方角に二つの反応だ。何か嫌な予感がする。

 

「アマリア、〈エタニティートレッカー〉は何か捉えて……」

 

 けたたましいアラームが鳴り響く。戦闘時にさんざん聞いて聞き飽きた(ロックオン)警報だ。私は咄嗟に操縦桿を倒し〈フェアトン〉を旋回させた。戦闘用じゃない分、操縦が重い。

 

「ちぃ、どうなっているんだ」

「チャフ、フレア展開。ECM起動。〈エタニティートレッカー〉武装展開」

 

 アマリアが妨害を行いつつ船の方にある本体が〈エタニティートレッカー〉の収納式武装を展開させる。あの管制官が言っていた海賊どもか?。そうでなくても敵なのは確かだ。

 

「前方の飛行体は第三世界製の戦闘機です。型番は──」

「わかってる! さんざん相手したから諸元も知ってる。〈エタニティートレッカー〉の方を優先しろ」

 

 ミサイル警報がなる。敵機から各8発、人がいるところから4発、これは船に向けてだ。畜生が、偽装か。

 

「迎撃します」

 

 〈エタニティートレッカー〉からビームがミサイルに対して発射される。船体側面を下に向けて最大火力が出るようにしている。それでも単装六基六門の陽電子砲だが。速射して次々と戦闘機が放ったミサイルを撃墜するが、〈エタニティートレッカー〉に向かっていたミサイルの一発がこちらに進路を変えて向かって来る。

 舌打ちしつつ、内火艇の速度と向きを変え時間を稼ぐ。あのミサイルは地上誘導式だ、落とさないかぎり非常に危ない。

 

「〈エタニティートレッカー〉が接近しつつある戦闘艦を複数感知。IFF及び、通信反応なし。敵の増援の模様」

「なに」

 

 完全に予想外の報告に一瞬意識が逸れる。しまった。回避機動が乱れミサイルがかなり接近する。直後にビームにより撃墜されるがある衝撃波が〈フェアトン〉を襲う。

 

「っく」

 

 目の前のパネルが一斉に火花を噴く。糞、EMPか。〈フェアトン〉は軍用のを横流しして貰ってEMP対策は万全だと太鼓判されたのに、これだから人間は嫌いなんだ。

 

「アマリア、大丈夫か」

「非常回線のみ生きています。義体のデータリンク機能喪失」

 

 EMPで軒並み機器がやられたため人力という昔ながらの操縦法を取る。こんなことなら大気圏内でもっと操縦しやすい艇を買えばよかった。

 

「なら〈エタニティートレッカー〉は敵機及び地上を攻撃後、早急に惑星を離脱。その後は臨機応変に対応せよ」

 

 操縦を予備の予備である油圧に切り替える。光ファイバーを使った操縦よりかなり操縦しにくいや四の五の言わずにやるしかない。

 

「敵機接近します」

 

 一機はすぐ落ちたがもう一機は手練らしく攻撃を避け接近してくる。さんざん乗り回した艇とはいえ電子機器が故障した状態で大気圏内での機動まではそこまで訓練していない。重い油圧操縦で回避機動を繰り返すが、敵機はそこに機銃を放とうとしてくる。

 面積の小さい敵機の正面がこちらに向き、射撃してくると感じた私はスピン覚悟で咄嗟に操縦桿を右に倒す。刹那、機銃であるプラズマ弾が内火艇の左舷を襲う。機体が大きく揺れ、後部で大きな爆発が起きた。エンジンと左舷推進器がやられたか。

 

「エンジン、燃料タンクパージ! アマリア、射撃を……」

 

 スピンしかけた〈フェアトン〉を必死に安定させつつ左にある補助席を見ると、顔面と胴体に大きな穴が空いた彼女の動かない義体が見えた。顔面は頭部を貫き、さながら羽のない扇風機ようで見るに堪えない姿だ。

 

「ちくしょう」

 

 私は何度目かわからない悪態をつきつつエンジンと燃料タンクをタイミングよくパージさせ少しでも安定させようとする。右のエンジンと燃料タンクは落とせたが、左エンジンはパージ機構が破損したようだ。そこに、左で爆発音と光が見えた。一瞬身構えたが、位置的に残っていた敵機だろう。落ち着け、アマリアは死んでいない。地上にもビームと機銃弾が雨あられと降り注ぐ。スピン自体は避けているが艇の左右の揺れを防ぎきることは不可能で機銃を受けたコックピットの左側が徐々に剥がれつつある。右に大きく揺れた時、メリメリとコックピットの一部が床ごと剥離し、落ちていく。突風が体に当たり衝撃を受ける。必死になって操縦桿を引くが、コックピットの剥離で空気抵抗が増大した〈フェアトン〉は落下していく他、道はない。

 これまで以上に浮遊感を味わいつつ視界いっぱいに大地が広がる。死んでたまるか。地上に激突する寸前でパージできなかった上部のエンジンを意図的に爆破する。反動で艇首が上を向き墜落から不時着に変わる。木々を薙ぎ倒しながら落ちていく。葉や枝がコックピットに入り込み、大木が艇を叩きさらに不安定な姿勢になった。右舷下部後方が地面に叩きつけられ艇が一度跳ね上がる。強い衝撃に見舞われ顔を顰めるが、再度着地した衝撃で私は頭を強く打ち気を失ってしまった。

 

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