宇宙彷徨記   作:山南修

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第七話

 A.D.3501/8/10/2332(UTC) 

 Pele星系第四惑星トロヤ群のなか 

 

「敵の戦闘艦の接近を確認。帝国製巡航艦1、旧式の高速巡航艦1、SC社製の汎用駆逐艦3。通常航行かつ、分散して接近してきます」

 

 やり方が掃討戦や洋上の対潜水戦術そのものだな。単縦陣や密集陣形で突入してくれればすごい楽なんだが、敵さんも馬鹿ではないから仕方ないか。

 〈エタニティートレッカー〉は今、安定した巨大な小惑星の陰にアンカーで固定されている。機関は停止し、バッテリーの電力のみで動いている。小惑星帯に入った際にいつか偵察衛星を落とし、捉えた情報をいくつもの通信衛星で経由し見ている。小惑星帯と言ってもここのような同じ軌道を通るの惑星のトロヤ群でさえ小惑星同士はかなり離れている。アニメや映画などでよくある密集した小惑星帯なんて原始惑星系円盤の中前後でしか無い。重力の関係で小惑星帯ではFTL航法こそ使えないが、回避すればなんの問題もない。通常航行でも意図的に近づかなければ小惑星を見れることはそうそうない。だから敵さんは私が小惑星の裏にいると想定しているのだろう。小惑星が陽電子砲の射程に入る粉砕するまで射撃している。

 

「宙雷の状況は?」

「もっとも遠いいくつかの小惑星に向かうもの以外、目標の小惑星に到達しました。一分以内に到達予定です」

 

 ならいいか。小惑星帯での一対複数ならこちらの得意技だ。敵はせいぜい楽しむがいい。

 

「アマリア、巡航艦に近い宙雷を二本づつ爆破、駆逐艦‪α‬に近いデコイを始動させろ」

「了解、宙雷を爆破、デコイ1始動」

 

 ホログラムに四つの爆発とデコイが表示される。爆発の衝撃で小惑星は木っ端微塵に飛び散り、いくつかの破片が巡航艦に向かう進路を進む。もっともこの程度の破片じゃあシールドを突き抜けることなど不可能だ。

 

「デコイ1に敵部隊が引き寄せられています。駆逐艦‪α‬がデコイ1に砲撃、デコイ1は回避中」

 

 駆逐艦はかなり急にベクトルを変えもっとも火力の高い艦首をデコイに向けた。驚いたのは高速巡航艦の動きで、それなりに離れていたにも関わらず巡航艦がバラバラになる一歩手前の旋回を行ったことだ。元々あの巡航艦は旧式とはいえ通商破壊用に機動性が高いがあの動きを実戦でするやつは見たことがない。高速巡航艦はミサイルを発射しデコイを狙うが先に駆逐艦の陽電子砲が命中しデコイは弾けた。詰まった撹乱物質がレーダー障害を引き起こして奴らはようやくデコイであることを気付く。さっきのように高速巡航艦が荒々しくベクトルを変え駆逐艦は手短な小惑星を調査する。この間、巡航艦は少し近づくだけで動かなかった。旗艦なのと艦長がかなり慎重、悪くいえば臆病なのかもしれない。……これは使えるかもしれないな。

 

「アマリア、デコイ2を……30分後にデコイ2、3を42分後に使い各艦の動きを見て分析してくれ」

 

 読書と紅茶を嗜んで30分経過、デコイ2は丁度巡航艦のそばで起動し、巡航艦から全力で離れる進路を取らせる。巡航艦は即座に反応するかと思いきや動きが鈍く、射撃開始が遅れた。その間にまた高速巡航艦がミサイルを発射、あの等級にはそこまでミサイルを積めないはずなのに躊躇いがない。駆逐艦は連邦軍での掃討戦のセオリー通りに纏まって行動し、接近する。

 

「傭兵か私兵かは知らんが、知識はあっても練度が追いついていないか艦長に振り回されているっぽいな」

 

 高速巡航艦の動きは対高速船や輸送船では有効だが火器を備えている相手と戦う場合は相対速度の低さでミサイルを迎撃されやすい。幸いなことにデコイは一切火器を搭載していないからその事実に高速巡航艦の艦長が気付くのは早くてこっちと戦闘した時だ。デコイが巡航艦の陽電子砲射程ギリギリで撃破される。巡航艦の陽電子砲の量を考えれば遅いとしか言えない。推測は案外正しいのかもしれない。

 さらに5分後、デコイ2とは逆方向でデコイ3、4が起動する。二個の目標が生じたからか迷いが見える。駆逐艦がデコイ3を迎撃に、さっきより荒々しく高速巡航艦がデコイ4をミサイルの射程に捉えるまで全速で接近している。巡航艦は高速巡航艦の後ろをノロノロとついていた。

 

「高速巡航艦の艦長は熱血馬鹿じゃなくて猪だな。巡航艦の艦長は亀、駆逐艦は……新米か無能の集まりだな、知識しかない飾りだ」

 

 駆逐艦の評価をしようと目を向けた時にデコイが進路を急に変更、システムが駆逐艦群を移動させようとするが手動操縦に戻したらしい。進路と隊列が乱れている。通常航行では高速になるにつれ人間では速度を捉えきれず自動操縦を信用できなく、自艦がどう動いているか把握できなくなることが新兵に多い。駆逐艦の動きはまさにそれだ。

 

「熱血バカと猪の違いはどのようなものでしょうか」

「どちらも知能が足りず、理性があまりないのは似ているが猪は沸点が低いのが特徴だ」

 

 あの高速巡航艦の艦長はどう考えても猪だ。闘牛では無いがこの戦術で行けるだろう。

 

「これなら……よし、使い古した手だがこれを使おう。アマリア、戦闘用意。発射艦には通常魚雷と閃光弾を詰めてくれ」

「了解、機関はどうしますか?」

「探知されないギリギリまでエネルギーを注入、こちらの合図で即座に全力運転をしてくれ」

 

 さて、面倒な仕事をさっさと終わらせて彷徨に戻ろうじゃないか。

 

ステラ・ソリチュードは憎しみを込めつつ戦闘準備のために紅茶を嗜むのであった。

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