一夫多才の|契約者《コネクター》   作:如月ユウ

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今回の話は主人公以外に他の転生者たちと会話します


転生者の会話

事務職や専門職をする人たちと警察のような危険が伴う仕事をする人たちに別れて僕を含めた数人が部屋に残った。

 

「じゃあ、早速だが自己紹介といこう。私はラムダ・カーティ。ようこそ国家機関ルーシェンへ。契約者(コネクター)になる道を選んだ君たちを心から歓迎するよ」

「コネクター? ルーシェン?」

「ルーシェンはさっき言った犯罪者を取り締まる機関で契約者(コネクター)はそこに所属する人たちのことだ。どんな事をするかは実際に見せたほうがいい。準備はいいかい?」

「問題ありません」

 

ラムダさんの隣に居た人に触れると光の粒子となって変化して消えて無くなると手には武器を持っていて、その光景に目を疑った。

 

「て、手品? それともCGなのか?」

「手品でもCGでもない正真正銘の現実だ」

 

金髪の日系人のような男性がまばたきをしながら見ていて、武器は光の粒子となりまた人の形へと戻った。

 

「彼はオプロイドという武器に変わる種族だ。見た目は人間だが身体のどこかに必ず紋章が刻まれている」

 

オプロイドが右腕を捲ると刺繍のような紋章が彫られていた。

 

「オプロイドは私たち人間と契約して武器となって共に戦い、互いに共存しあう存在だ。その力は強大で犯罪に染める人も少なくない。それを防ぎ、人々を守るのが我々ルーシェンの仕事だ」

「警察と軍隊を合わせたような機関と捉えてよろしくて?」

「そうだ。君が想像した通りの機関だと思えばいい」

 

腰まである長い金髪をポニーテールにして碧眼の瞳をした気品のある女性の質問に対して頷いた。

 

「どんな仕事をするかわかったが具体的に身体を鍛えるんだよな?」

 

僕よりも大きくて今いる人たちの中で一番背が高い大柄の男性が詳しい内容を聞いてくる。

 

「身体を鍛えるのはもちろん、武器の扱いや乗り物の操作。犯罪者の拘束術も学んでもらう」

「よっし、ともかく犯罪者がいたらぶっ飛ばして捕まえれば良いってことだよな!」

「ニュアンスが違うがそんな感じかな」

 

黒髪黒目で僕と同じ日本人だが手入れのしていないボサボサの髪で、手の平を拳で叩いて鳴らした。苦笑いをしながらも一度、咳払いをして空気を整える。

 

「ルーシェンについて知ってほしい事はまだまだたくさんあるが今はこのくらいでいいだろう。明日は契約者とオプロイドたちによる歓迎会が始まる。君たちは推薦枠という上の人から選ばれた特別な人たちという事にしておいた。今日は先ほど起きた部屋で休んで欲しい」

 

話が終わり、僕たちは自分が寝ていた部屋まで案内されて戻った。

 

「なんか色々あって疲れたな……」

 

工事現場の前を歩いていたら倒れて意識が失い、気付いたら死んだと言われて成り行きだけど犯罪者を取り締まる機関に入ることになって……頭の中を整理する時間の余裕すらなかった。

 

「僕と同じ日本人は少なかったな。それに外国の人の言葉も分かったし、日本語を勉強したのかな?」

 

日本の文化も海外には人気だし、言葉も覚えていればより深く知れるから勉強したのだろう。

 

「携帯電話は……県外か」

 

電気やテレビはあるようで電波も届いているはずだが、無線LANやデータ通信も反応がない。機種の造りが全く違うのが原因か?

 

「あーやめやめ、素人には分からないから。寝るしかないな」

 

ゲームもアプリも通信出来ないなら寝るしかない。

ベッドに入って横になり、目を閉じると非現実的な体験に限界がきていたようで直ぐに眠りについた。

 

 

 

 

ベッドに眠りついて時間が経ち、部屋から出て建物の入り口前まで連れて行かれると病院だったようで、大人数用の大型バスが駐車していたので乗せられて発進する。

病院から離れて数分経つが誰も話そうせず長い沈黙が続き、暇潰しに風景を眺めていると僕たちがいた場所とほとんど変わらず、本当に転生したのか疑問に思えるように感じた。

 

「ちょっと、そこの貴方」

「はい?」

「えぇ、貴方ですわ」

 

座っている位置から反対側に座った金髪碧眼のポニーテール女性が僕に声をかけていた。

 

「貴方、出身地はどこかしら?」

「日本ですけど……」

「英会話は得意かしら?」

「全然駄目でして赤点ギリギリなんですよ」

「そう……嘘を言ってるようには見えないし、言葉を翻訳するように調整されたという可能性も……」

「あの……」

「何でもありませんわ、独り言ですので。気に障るようでしたら謝罪しますわ」

「平気です。えっと……」

「ファーン・ヘイルダルト。ヨーロッパ出身ですわ」

「宮本大和です。あぁ、その……」

 

ゲームに登場するお姫様が現実に飛び出したかのようにとても綺麗な人で会話をするにも緊張してしまう。

 

「何かしまして?」

「ファーンさんはお金持ちの人のお嬢様か何かですか?」

「……いえ、私はただのファーン・ヘルダイト。それだけですわ」

 

お嬢様という単語に眉をひそめて怪訝そうにしてしまう。没落貴族とかそういうのもあり得そうだから変に触れないほうがいいかも。

 

「ごめんなさい。あまり思い出したくないことでしたか」

「お気になさらず。もう過去のことでして、これからは私がやりたい事をやれば良いのですわ」

 

貴族ってお金があるから好きに生きられると思ったけど自由がなくて縛られた人生だからそんな生活が嫌だったのだろう。

 

「過去に浸るのはもうおしまい。今はこの世界に馴染むのが優先するべきでは?」

「それはありますね。死んだと言われてもこうして生きてる訳だし」

「不快にならなければ良いのですが死因をお聞きしてもよろしくて?」

「工事現場の前を歩いてら背中に重い物が乗っかってそのまま地面に倒れて」

「外壁に捲き込まれての圧死……工事現場での死亡例も少なくはありませんし」

「そちらはどんな事をして亡くなったのですか?」

「詳細は省きますが銃弾による出血死ですわ」

 

やっぱり海外だから銃による死亡も多いんだね。日本は銃規制が厳しいからそんな死に方をすると大きく報道される。

お金に関するいざこざで殺されたのかもしれない。

 

「よう、そっちのあんたは日本人か?」

「は、はい」

 

前の座席から顔を出したのは腕っぷしが強そうなボサボサの黒髪黒目の日本人だった。

 

「俺は朝倉武(あさくらたけし)ってもんだ。お宅は?」

「宮本大和です。日本人です」

「ファーン・ヘルダイトですわ。ヨーロッパ出身」

「おぉ、良かった同じ日本人だったか。何かの縁だし、これから仲良くしようや。そっちの姉ちゃんは良い乳してんな。やっぱりパツキン美女はみんなエロい身体してんのか?」

「ノーコメントで。野蛮な人と話はしませんので」

「カッカッカッ!いいね、いいねぇ!良いとこ育ちのお嬢さんみたいだ」

 

朝倉さんは不良みたいな雰囲気だが竹を割ったような性格で悪い人ではなさそう。

 

「会話の途中だけど入ってよろしいかな?」

 

朝倉さんと同じ座席から金髪の青い瞳をした日系人のが声をかけてきた。

 

「俺はリョウヘイ・トリスタン・ツペェリだ。出身はイタリア、よろしくお願いします」

「俺は朝倉武でこっちは宮本大和。そっちの姉ちゃんは──」

「ファーン・ヘルダイトと申します。ヨーロッパ出身でありますわ」

「なんと美しいお方なのでしょう。病弱で満足に外を歩けず亡くなった俺に絶世の美女とお会い出来る機会を与えてくれるとは。神に感謝を」

 

走っているバスなのにファーンさんの前に膝をつき跪いて、僕と朝倉さんは完全に置いてきぼりにされていた。

 

「頭をあげなさい。私はそれほど大した人ではありませんわ」

「いえいえ、俺には分かります。芸術品よりも美しいその容姿に秘めた朽ちることのない信念を持ち、まるで聖女のような」

「聖女ですか、私には似合わない言葉ですわ」

「そんな事ありません。むしろ貴女のような美女に相応しい言葉です」

「おーい、俺らを忘れるな」

「あぁ、すまない。とても綺麗な女性を目にして、つい」

「まあ、野郎より女のほうがいいしな」

 

飄々としてファーンさんと会話に花を咲かせて、言い訳についても朝倉さんはしぶしぶながら納得してしまい、雲のように掴み所がないような人だな。

 

「朝倉さんって筋肉凄いですけど格闘家のような仕事をしていたんですか?」

「あ~前の仕事は用心棒みたいなとこに就いてたんだ」

「ボディーガードをしていたのでしたか。見かけによらず優秀な人ですわね」

「違う違う。どの組かは言えねぇがヤクザの用心棒をしてたんだよ。今となっちゃあカタギだな」

「日本のマフィアでしたか。別の組織とやりあって亡くなったのですの?」

「いや、何をとち狂ったのか味方……雇い主に殺されたんだ」

 

同じ組同士の喧嘩ってヤクザだと内部抗争って言うんだよね?それに身体に刺青をして高いスーツにサングラスをかけた厳つい人たちで朝倉さんはそんな人には見えないし。

 

「あんたらまだ大人になりきってないガキんちょに見えるが俺みたいな野良犬の死に方はしてないよな?」

「僕は工事現場の外壁に捲き込まれて」

「私は銃による射殺ですわ」

「そっちの兄ちゃんはどうなんだ?」

「俺は病気で死んだんだ。家も裕福じゃないから治療出来ず、そのまま亡くなった」

「悪い言い方だが嬢ちゃんは海外で銃を持てる社会だし、お前ら二人も俺よりマシな死に方をしたか。けっこう、けっこう」

 

自分より醜い死に方ではない事に安堵しているというか。汚い人生を歩んでないことに喜んでいるようだ。

 

「湿っぽい空気にしちまったな。わりぃ」

「お気になさらず。こう言うのもあれですが一度、死んだおかげで誰にも縛られず本当の私として人生を歩めるようになりましたので」

「そうそう。肺結核で満足に動けなかったし、外の空気を思いっきり吸えるっていいな!」

 

僕も何か言おうとしたが、二人と違ってただ平凡な日常を過ごしていてどんな言葉をかければいいか分からず、口を閉じたまま黙ってしまう。

 

「そろそろルーシェン本部に着くよ」

 

ラムダさんの声と同時に大型バスが停車して目的地に着いたようで降りていくと目の前には高層ビルのようなとても高い建物がズラリと建てられていた。

 

「ここが今日から君たちが所属する新たな職場だ。改めてようこそルーシェンへ。契約者(コネクター)になる道を選んだ君たちを心から歓迎するよ」




今回登場したキャラの口調は設定を元にこちらで判断しました

ファーン・ヘイルダルト(フゥ太様)
気品のあるお嬢様のような感じ

朝倉武(銃頭様)
溝を作らず、誰にでも話しかけてくる兄貴分

リョウヘイ・トリスタン・ツペェリ(鳳凰院龍牙様)
礼儀正しいがレディファースト精神の伊達男

自分のキャラはそうではないというのがありましたらコメントください

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