一夫多才の|契約者《コネクター》   作:如月ユウ

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今回は大和とユーリがメインです
あと大和の年齢は15歳でしたが18歳に変更しました


外出

ルーシェンに所属する人は基本的に寮で生活する事となっていて男女は別々の寮で生活している。

歓迎会を楽しんだ後は割り当てされた部屋に行くと内装はシンプルでベッドと机とテーブルなど備え付けの家具が置かれて、トイレとシャワーは別々になっていた。

身体を休めて次の日から個人の能力を確認するために体力測定などをして評価していくと上位に食い込み、周りから称賛の言葉を貰った。

 

(趣味で始めたパルクールがこんなときに発揮するとわね)

 

フランス発端の移動動作で、人が持つ本来の身体能力を引き出し追求する鍛練方法で肉体と精神を鍛えて、どのような環境でも自由に、かつ機能的に動くことのできる心身を得ることを目的にしている。

動画はもちろん、実践者からの視点も人気でヒヤヒヤしたり、身の毛のよだつような場面も多々ある。

 

「壁を蹴って登ったり、屋根の上を飛んだりと縦横無尽だな」

「武がゴクドウなら剛はヨコズナ、大和はニンジャね」

「俺はお相撲さんかよ。まあ、体格からして間違ってはないかもしれないが」

 

ファーンさんや武さん、剛さんは体力に自信があったのか僕より上の成績で趣味じゃなくて本職で身体鍛えているから格差を感じる。

 

「このままでは足手まといになる」

「一人で抱えるなよ。俺も同じ気持ちだから」

「すまない」

 

生前は病弱だったリョウヘイさんはともかく一番意外だったのがアルタープライムさんで、成人した平均女性とほぼ同じくらいの成績で軍人なのか疑問に思えたが乗り物や銃火器に関する知識が豊富で整備士として働いていたのかもしれない。

体力がない同士、スタミナ増加させるために空いた時間にグランドで走り込みをしている。

 

「ユーリも体力あるんだね」

「戦うときはナイフとかリーチの短い武器を使ってたから」

 

一日を生きるのに精一杯だったのか無駄のない動きで歓迎会のときはスーツを着ていたから見えなかったが、今はタンクトップと短パンという動きやすい服を着ていて、ユーリの身体には無数の傷が付いていて一部の人たちには避けられている。

 

「兄ちゃん、すっげぇ傷がたくさんあるな」

「ちょ、ちょっと待って、ルィ」

 

中学生くらいの茶髪の兄弟が傷だらけのユーリの身体を見て怯えたりせず近付いてきた。

 

「兄ちゃんたちってラムダさんから直々に選ばれれたんだよな。俺はルィ!こっちは弟のエル。よろしくな!」

「エル……です、よろしく」

 

兄のルゥは活発で弟のエルがオドオドした性格をして二人の手には紋章が刻まれている。

 

「二人ってオプロイドの兄弟?」

「うん、ルィと僕は剣になるの」

「もし、契約(コネクト)するときは弟と一緒にやってほしいんだ。俺たち兄弟は二人で一つの武器だからな」

 

お互い違う人同士の契約者になったら寂しいと思うよね。もし、契約者になるはこの兄弟を候補の一つとして入れておこう。

 

「僕たちは誰と契約するか決まってないから誰もいなかったら考えておくよ」

「俺たち絶対、兄ちゃんたちの役に立つから」

「もし、契約したときは精一杯頑張る。じゃあ、僕たちは行くね」

 

手を振ってオプロイドの兄弟と別れるとユーリは浮かない顔をして二人の姿を見送っていた。

 

「どうしたの?」

「貧困街にいたときにあのくらいの子供もいた事を思い出して」

 

ストリートチルドレンだった頃を思い出してもう会えないことに寂しいかもしれない。こういう時はやはり──

 

「ユーリはこのあとは暇?」

「やることはないな」

「だったら一緒に外に出ない?ほら、僕たちが持ってた物のおかげでお金とか余裕あるし」

 

アーストにも携帯電話はあるが折り畳み式……過去の遺産であるガラケーが主流で、スマートフォンのような画面にタッチする携帯電話は存在しないので解析材料と新型装備の一つにするために渡したのでそのお礼としてお金を貰ったのだ。

 

「いま着てる服だって借り物だし、自分がほしい物とかあるでしょう?」

「俺、買い物とかしたことないが」

「なら、僕と一緒に行こうよ。検問所で合流ね」

「わかった」

 

ユーリは前世の出来心で自分を責めていて、転生してからは天地がひっくり返るような自身の優遇さに肩身が狭い思いをしている。その溜め込んでしまえば今後に悪い影響に転がりこんでしまう。

そうならないために今まで体験したことない刺激を与えて余計なことを考える余裕のないようにすれば大丈夫だろう。

 

「外出届けと身分証の提示」

「はい、どうぞ」

「問題なし、通っていいぞ」

 

検問所で外出届と支給された身分証を見せてルーシェン本部から外に出る。

お互いの格好だが僕は制服でユーリは前世で着ていたぼろぼろの服は処分したらしく、与えられたスーツを着ている。

 

「ルーシェン本部があるオムニアは都会だから服とか簡単に見つかるよ」

 

アーストには五つの大陸が存在してルーシェン本部が設置されている『オムニア』は近代的な造りをしていて前世の東京都のような土地をしている。

その他の四つの大陸は支部が設置されて乾燥した土地である『ニグラル』は車など乗り物の燃料となる石油があり、地下から掘っている。

ここから遥か北にあるのは山に囲まれて雪に覆われた大陸『サラセン』で鉱脈が豊富で山に穴を掘って天然のワイン貯蔵庫として有名だ。

オムニアから南にある砂漠に囲まれた大陸『イステ』は海岸付近は魚介類が豊富でほとんどがこの大陸から他の土地に出回っている。

 

(もし、配属されるならフサンかな。なんと言っても米があるんだし)

僕と武さんの出身地と誤魔化している『フサン』は、なんと米があるのだ。日本人として米は唯一無二と言える存在で本当かどうかまだ未確定だが江戸時代のような街造りをしている。

 

「まずは服から選んで次はご飯。それからは雑貨を幾つか買ってと」

 

指折りしながら計画を立てて街まで歩いていく。その後ろを無言のままついて来ているユーリに何処に行きたいか聞くが。

 

「任せるよ」

 

その一言で終わってしまう。

ストリートチルドレンとして生きていたから自分がどうしたいか考えられないから無理もないか。

でも、服だけは絶対に購入する。

メンズ専門の服のお店に到着して入り、店員の一人を捕まえて服について聞く。

 

「いらっしゃいませ。どのようなご要件ですか」

「彼が着る服ですが肌の露出を控えた服をお願いします」

「かしこまりました」

 

店員にオススメを聞きながら目に見えた服を選んで試着室にいるユーリに渡して、着替えるのを待つ。

しばらくしてカーテンが開かれると試着した上着は長袖のトレーナーでズボンはルーズストレートのジーンズを着ていて、カーキ色で裏地が橙色のジャケットを羽織っている。

着なれてないスーツから軍人気取りのカジュアルな青年に変わった。

 

「いいね、それに決めた。次は」

「まだ買うのか?」

「当たり前だよ」

 

一着しか買わないなんてあり得ない。次々と良さそうな服を選び、ときに店員に素敵なアドバイスを貰ってコーディネートして、会計を終えたときにはユーリの手には服の入った紙袋を持っていた。

 

「こんなに買っても着る時間がないんだが」

「訓練期間が終わったら買い物する余裕なんてないよ。休みが取れる時間にやれることをしないと」

 

ルーシェンに所属する人は訓練期間が設けられて別名基本戦闘訓練と呼ばれるのを十週間かけて技術を学び、クリアした人は初めてルーシェン所属になれる。

それ以外にランクという階級制度があって訓練期間中は新米という事でランク一で、無事に卒業したらランク二に昇格して本部または各支部に配属されて仕事をすることになる。

ランク五からは部隊の指揮権を持つことになっ、てランク九はランク十の推薦がないとなれない階級である。ラムダさんが所持しているランク十は文字通り世界最強の契約者なのだ。

 

「時間もいいし、雑貨は後にしてご飯食べよう。なににする?」

「任せるよ」

「ご飯くらいは自分が食べたい物にしようよ。ユーリってロシア出身だよね?なにがあるの?」

「お前が知ってるのと言えばボルシチとブリヌイだな。あと殺した人の金を盗んでコトレータを食べたな」

「コトレータ?」

「こねたひき肉を丸めてパン粉をまぶして油で揚げたやつだよ」

 

ハンバーグを揚げたような食べ物かな?パン粉をまぶして揚げるからトンカツとも言えるかもしれない。

 

「まあ、前世にいた頃はライ麦パンと味が薄いスープが普通だったからな」

 

しまった。ユーリの故郷の食べ物について聞いたら自分の処遇の話になってしまった。なにやってるんだよ僕。

 

「ユーリが食べた物は気になるけど、フードコートに行ってからでいい?」

「そうだな」

 

無理矢理だが、着いてから何を食べようか決めようというかたちで話を切り上げた。フードコートだが、お昼時なので満席でベンチに座って食べている人も多い。

 

「まずは席の確保が最優先だけど、こうもいると場所なんて」

「あそこが空いたぞ」

 

指を差した場所を見ると受け取り皿を持って立ち上がり、返却口に行こうとしていて人たちがいたので直ぐ様、そこに移動して席を確保した。

 

「とりあえず座れたから最初はどっちが行く?」

「俺は後でいいよ。ここで待ってるから」

「オッケー、ソッコーで選んで戻るから」

 

ユーリが席を保持してくれるようなので何を食べるか

 

(定番はハンバーガーかホットドッグだけど、食べるならもっとユニークな物を頼もう)

 

どのお店も美味しそうでお互いが切磋琢磨して料理を作っているのを眺めていると気になる料理を見つけた。

 

(ケバブとブリトーか。ケバブは屋台で見るし、ブリトーはコンビニで売ってたよね)

 

違うお店だがこの二つにしよう。ユーリには悪いけど、もう少し待っててほしい。

頼んだのはビーフのケバブとチキンブリトーでドリンクはメロンソーダにしてユーリが座っている席に戻る。

 

「ごめん、頼んだのが別々のお店だったから遅れた」

「気にするな」

 

交代して僕が待つことになる。来るまで暇なので、フードコートを見渡していると腰まである長い銀髪の女性が、お昼ご飯を乗せたトレーを持って一人うろうろしている。座る場所もないし、幸い四人席にいるから声をかけよう。

 

「あの、ここに座りますか」

「えっ? でも、他の人が座ったりしますよね?」

「後で来ますが、一人しかいませんから大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。すぐ食べて離れますので」

 

対極するように座って黙々と食べ始める。

彼女が食事しているのに何もしない訳にはいかず、メロンソーダをストローをすすって飲みながら時間をつぶしているとユーリがお昼ご飯を持って戻ってきた。

 

「大和、この人は?」

「席が見つからなかったからここを使っていいって言ったんだ」

「あ、すいません。もう少しで食べ終わりますから」

「俺らのことは気にせず、ゆっくり食べていいぞ」

「はい、ありがとうございます」

 

お互いにお昼ご飯を購入したので、いただきますと言って食べる。

チキンブリトーはカレー風味。ケバブのビーフは照り焼きでチリソースの辛味が食欲がそそる。野菜サラダも一緒に入っていて栄養バランスが良く摂れる。

ユーリはさきほど説明してコトレータと串焼きを頼んで食べている。

 

「それって焼き鳥?」

「これはシャシリクでロシアの串焼きだよ。食うか?」

「いいの?ありがとう」

 

一つ貰ってシャシリクを食べると香辛料が濃い味付けしてるな。

 

「そういえば、そろそろオプロイドとの契約する話になってるけど、候補は見つかった?」

「いや、全然。そっちは?」

「目をつけた人はいるよ」

 

歓迎会で一人でいたので会話したフレイ・アンダーソンを候補にしていて、訓練しているときにたまに見かけては話をするが素っ気ない態度で返されてしまうがめげずに今も奮闘している。

 

「得意な武器はなに?」

「スピードと手数で戦うスタイルだからナイフとかリーチの短い武器だな。大和はなんだ?」

「中国武術の部活に入部して槍の演舞をしたんだ。あとヌンチャクも好きだったから棍術も習った」

 

世界的有名な中国武術の達人の映像を見て憧れて中学校から中国武術の部活に入って練習を重ねて努力した。

 

「あ、でも一度で良いから銃は使ってみたいかな。僕がいた国は銃社会が厳しくて、本物なんて死ぬまで一度も──」

 

カシャン!

金属の何かが落ちる音が隣から聞こえて、なんだと思って見ると一緒の席で食べていた女性がスプーンを落としたようだ。

 

「すいません、手が滑ってしまって」

「僕たちは平気ですよ。スプーンが置いてる場所は……」

「拭けば使えますので心配なさらず」

 

床に落ちたスプーンを拾って紙ナプキンで綺麗にして、あまり噛まずに残りの料理を食べ終えた。

 

「ありがとうございます。あとはごゆっくりどうぞ」

 

はや歩きで自分が注文したお店に皿を返却して何処かに行ってしまった。

 

「なんだっただろう?」

「さあな?ほら、はやく食わないと帰る時間になるぞ」

「わわっ、そうだね」

 

食事を再開して食べ終えた皿を返却してフードコートを出た。

 

 

 

 

お昼が過ぎて夕暮れになる頃、殺風景な部屋を鮮やかにしようと雑貨店で色んな物を購入して、背中には丈夫な造りをしている登山用リュックサックを背負ってルーシェン本部に戻った。

 

「疲れた……」

「こんなことでへばるなよ。でも、楽しかったでしょう?」

「楽しいかどうかと言えば楽しいと思った」

 

慣れないことにげっそりしているが、嫌そうにはしていないようだ。

 

「じゃあ、明日もよろしくね」

「あぁ、またな」

 

寮に入ってお互いの部屋に戻り、リュックサックから買った物を取り出す。

 

「写真立てと目覚まし時計に置物と」

 

ノートや本を読むテーブルに写真立てと置物を置いて、ランプスタンドに目覚まし時計を設置する。

 

「これでようやく部屋らしくなってきた」

 

本当なら本も数冊買っておきたかったが本棚がないし、それも買ったら荷物が大きくなって帰るのが大変になるので、それらは次の休みにして今はこれで十分。

 

「今日は色んな場所に行ったけど、どんなに探してもゲーセンがないのが一番不満だな」

 

都会であるオムニアにはゲームセンターが存在してなく、ルーシェン本部の遊戯場にあったのはビリヤード台やダーツ台、トランプをするテーブルしかなかった。

現代っ子である僕にとってゲームがないのは生き地獄のような牢屋で前世の人生が恋しくなる。

 

「スマホのアプリにもゲームあったけど、通信が繋がらないからこんな事ならバックに入れておけば良かった」

 

学校に携帯ゲームなんか持って行ったら没収されるのがオチだが、こう言わざるを得ない。




ルィ&エル(もくじん様)
兄のルィはやんちゃ坊主で弟のエルはおとなしい少年をイメージしました

大和たちと食事をした人は次回から登場しますのでまだ発表しません

活動報告に契約勧誘を貼りました。契約者かオプロイドを登録した読者様は確認どうぞ。

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