心に傷を負った少年と、ノンナさん 作:ジャーマンポテトin納豆
長らく投稿していませんでしたがそれでも読んでいただけるのであれば幸いです。
ノンナと出会ってから半年。
たった半年なのに本当に色々な事があった。
一つはノンナが戦車道の選手として物凄く優秀だという事。
本当にこれは驚いた。
ノンナに、
「私が戦車道をやっている所を見てみませんか?そうすれば少しでも症状が改善されるはずです」
と言ってこなければ知ることは無かっただろう。
見に行ってみたのだが驚いたことにその時はフラッシュバックを起こすことは無かった。どうしてなのか理由は分からないが。
まぁ、以前学校に俺と一緒に暮らすことを認めさせる時に認めないと言ったら辞めてやると言われた先生方の顔からして何となくそうなのではないかと思っていたが予想の遥か上をいくものだった。
ノンナは砲撃、隊の指揮、判断能力等々。すべてが一流だった。
特に秀でていたのは砲撃だった。
実際に上級生との模擬戦でバンバン砲弾を当てまくったのだ。相手の車両に吸い込まれるように当たるもんだから驚いた。
奇襲を仕掛けられた時も冷静に対処して二両やったところで自分もやられてしまった。
その時はヒヤッとしたもんだ。いくら特殊なカーボンだか何だかでコーティングされているとはいえだ。
それとは別にカチューシャがノンナ以上に指揮能力や作戦立案能力に長けている事にも驚いた。
カチューシャの立案した作戦は上級生との実力を見る模擬戦で遺憾なくその実力を発揮していた。負けはしたがかなりいい所まで先輩方を追い詰めていた。敗因としては隊長さんが思わぬところで奇襲を仕掛けた事だろう。
残った車両の中から数両の別動隊で奇襲を仕掛けてきた。
それに勝てると思っていた所に奇襲と来たもんだから一年生はパニックとまではいかないものの混乱してしまいその隙を突かれた、と言うところだろう。
他にあった事と言えば、フラッシュバックを何度か起こした事だろう。
この半年でフラッシュバックを三回起こしたことがある。
その時はフラッシュバックよりもノンナの方が大変だったと思う。
医務室に運ばれて目を覚ますと泣き腫らした目をしながら俺の手を握ってずっと傍に居てくれたのだ。
俺の目が覚めたと分かると飛びついてきて大泣きしてしまったのだ。
その声に驚いた先生が飛んで来てくれたのだがノンナを見るなり、ニヤニヤしながら出て行った。
その日から数日はノンナは俺から風呂、トイレ、飯を作る時以外は常に俺の傍から離れようとはしなかった。
飯は横に来て食べさせようとするし、寝る時は俺をその大きな胸に抱きしめて頭を撫でながら寝る。
もう本当にこっちの方が大変だった。
ゴリゴリと削られて行く理性を必死こいて修復する。
まぁ一時間もすれば俺も寝てしまうのだが。
それともう一つ。
ノンナに戦車道の練習もあるし洗濯とかよりもそっちを優先したらどうだ、と提案したことがある。
その時の事は本当に後悔している。
何故ってそう言った瞬間にノンナが泣き出してしまったのだ。
そりゃもう大泣き。
どうすればいいのか分からず、ただ俺の発言がいけなかった事は分かる。
オロオロするばかりの俺。
その日は何とかなったのだが次の日から数日口を利いてもらえず、もうどうすればいいのか分からなくて隊長さんとカチューシャに相談したところ、周りに居た他の先輩方や同級生にも満場一致で、
「「「「「「ハルーシャ(春馬君)(坂本君)(坂本)(春馬)がどう考えても悪い」」」」」」
と言われてしまった。
悪いとは分かってはいたが、皆にも言われてしまってはどうしようもない。
という事で、練習が終わるまでノンナを待っていた。
そして出てきたノンナを捕まえてどうにか話を聞いてもらいながら謝罪する事二十分。
なんとか許してもらった。
しかしその後が大変だった。
もう二度とあんな事を言わない事。今まで以上にノンナに甘える事等々。
色々と約束させられた。
しかもその日の夜は何時も以上にノンナがくっついてくるもんだから本当に大変だった。
今日も今日とて俺はノンナと一緒に過ごしている。
珍しく今日は戦車道の練習が休みらしく一日中家でゴロゴロしている。
「春馬、何をしているのですか?」
「んー?ノンナに似合いそうな服が無いか考えてた」
「私に似合う服、ですか?」
「あぁ」
そう。俺は今何かノンナに似合う服は無い物かと考えていた。
日頃お世話になっているしそれの恩返しとまではいかないが何か出来ないかと思っていた。
「それで、どんな服が似合いそうですか?」
「そうだなぁ……セーターとか似合いそうだなぁ」
「セーター、ですか?」
「あぁ。あの丈が長いセーターあるだろ?あれとかいい」
まぁノンナってむっっっっっちゃスタイル良いから隠すか強調するかなんだけど、なんでか分からないけどあんま他の奴に見せたくないから強調路線は無しで。
セーターなら余り身体のラインとかで無さそうだし。
そう思ってノンナを見るが、
(これ、どんな服を着ても身体のライン出ちゃうんじゃね?)
そう思わずにはいられないぐらいスタイルが良いのだ。
まぁこの際そんな事を言ったら何も着れなくなってしまうので妥協しよう。
「後はジーパンみたいなカッコいい系とか綺麗系の服も良く似合いそうだな」
「ふむ」
「後は結構可愛い系も似合うかもしれないな。まぁ何でも似合いそうだけど」
そう言うとノンナは考えていた。
「どうかしたのか?」
「いえ……自分がその様な服装をしている事が想像できないのです」
「え?」
「今まで余り服装を考えた事など無かったもので」
「そうなのか……ならこれからそう言う服を沢山着ればいいんじゃないか?」
「そう…ですね。それに春馬も居ることですしね」
「あぁ。沢山見せてくれよ?」
「勿論です」
そう言うとノンナはキッチンに入って行った。
時計を見ると十一時半になったところ。そろそろ昼飯を作り始めるのだろう。
暫くすると良い匂いがし始めてきた。
今の俺の楽しみと言えばノンナと過ごす日常とノンナの作ってくれる料理だろう。
短時間で手の込んだ料理を作ってくれるし、しかも美味しいと来た。それにレパートリーも豊富で食べ飽きない。
「今日はパスタです。カルボナーラですが宜しいですか?」
「勿論。ノンナの作る飯は旨いからな。何でも食えるぞ」
「ふふっ。そうですか。なら手を洗ってテーブルを拭いておいてくれませんか?」
「お安い御用だ」
言われた通りにする。
拭き終わったのと同じタイミングでノンナが飯を持って来た。
言っていた通りにカルボナーラで上に乗っている半熟卵が何とも美味しそうではないか。
「胡椒はかけますか?」
「頼む」
そこに胡椒が掛かってきて更に良い匂いを放つ。
「それでは食べましょうか」
「「頂きます」」
「うめぇ」
「そうですか。良かったです」
そう言って俺を見るノンナは嬉しそうに笑う。
「ノンナ……食っている俺を見ていて楽しいか?」
「えぇ。とても。美味しそうに食べてくれますから見ていて嬉しいですし楽しいです」
「そっか……」
そう言って本当に嬉しそうに答えるがこればっかりは慣れない。
そうしているうちによそられた分を食べ終わってしまった。
それを見たノンナは、
「お代わりしますか?」
「頼む。大盛で」
「はい。分かっていますよ」
直ぐにお代わりをよそいに行ってくれる。
もう今更だが俺の胃袋はノンナにがっしり掴まれてしまっているようだ。
今日の飯も美味かったです。
そして今日も一日、ノンナと過ごすことが出来てとても幸せだった。
ーーーー side ノンナ ----
春馬と初めて出会ってから既に半年。
その間に色々な事がありました。
カチューシャ達にもう付き合っているのかと聞かれたり。
まぁ付き合っている訳ではないと言ったら死ぬほど驚かれましたが。
好きなんですが、勇気が出ないというか……
フラッシュバックを起こした春馬を見て泣いてしまったり。
他にも春馬に戦車道の練習を見てもらった事でしょうか?
その時はフラッシュバックを起こさなかったので大きな進歩でしょうね。
後はそうですね……
あぁ、戦車道の練習が忙しいのなら春馬の事よりもそっちを優先してはどうかと春馬自身に言われた事もありましたね。
まぁその後数日程口を利かなかったら謝って来たので許してあげました。
幾つか約束事をさせましたが、それぐらいならいいでしょう。
出来ない事では無いですし。
そして今日は戦車道の練習がお休みです。
だから一日春馬と一緒に居る事が出来ます。これ程嬉しい事は無いでしょう。
春馬を見てみると何やらボーっと考え事でもしているのでしょうか?
声を掛けてみれば私に似合う服を考えていたと。
私に似合う服、ですか……
考えた事などありませんでしたね。
私にはどんなものが似合うのでしょうか?
聞いてみるとセーターや、カッコいい系綺麗系、可愛い系。
最後に何でも似合うと言ってくれました。これは嬉しいですね。
今までの私服と言えば部屋で着るTシャツに短パンのようなジーンズに同じような感じで外着が二、三着あるぐらいでしたから考えた事など本当にありませんでしたし。
土日は練習があって出かけることなど殆ど無く、休みがあっても疲れて寝ている事が多かったです。
と、考えていると春馬が声を掛けてきました。私が考え事をしていたからでしょう。
何を考えていたのか教えるとこれから沢山着ればいいと言ってくれました。
その時は春馬、貴方に沢山見てもらいますよ。
そう言って時計を見てみると昼食を作り始めるのには丁度いい時間になっていました。
今日はどうしましょうか……
パスタでいいでしょうか。よし、そうしましょう。
たしか、カルボナーラなら作れる材料が揃っていたはず。
あぁ、ありました。
パスタを茹でてソースを作って……
それに茹で卵を乗せてしまえば……
はい。カルボナーラの完成です。
春馬にテーブルを拭いておいてもらったので盛り付けて運びます。
あぁ、胡椒を忘れるところでした。
春馬もかけるので持って行っておきましょう。
念の為聞いてからかけることにしますが。
挨拶をしてから食べ始める。
春馬は見ていてこちらが嬉しくなるような食べっぷりなので見ていて飽きることがありません。
春馬は直ぐに食べ終わってしまってお代わりするか聞くと、いつも通り大盛でお代わりを頼むと。
作った物を此処まで美味しそうに食べてくれるのは嬉しいです。
私は春馬の胃袋を掴む事が出来ているでしょうか?
今日も一日、春馬と過ごす事が出来てとても幸せでした。
ーーーー side out ----
こんな感じです。
本当に待たせてしまって申し訳ない。
これからも投稿期間が開いてしまう事がありますがそれでも読んでくれるのなら嬉しいです。
感想、評価等くださいな。